Case 11 カレスサッポロ時計台記念病院 
現場がコントロールできるFileMakerによるユーザーメードシステムとベンダー製基幹システムを連携してシステム構築
院長 戸島雅彦氏  システム管理課課長 赤澤孝司氏

2013-2-1


時計台記念病院・クリニック システム概念図

時計台記念病院・クリニック システム概念図

カレスサッポロ時計台記念病院は,大通公園近く札幌市の中心部に位置し,病床数は250,総合リハビリテーションセンター,形成外科・創傷治療センター,循環器センターなど9つのセンターを中心に専門性の高い診療を提供している。同院では,リハビリテーション総合実施計画書をはじめ,部門ごとにFileMakerを使ったユーザーメードシステムが構築されていたが,電子カルテ導入の計画に合わせて院内のシステムを整理し,核となるベンダー製の病院情報システムとFileMakerによるユーザーシステムを組み合わせた再構築を進めている。同院のFileMakerを中心とするシステム構築の現況について,戸島雅彦院長,システム管理課の赤澤孝司課長に取材した。

●リハビリ総合計画書の作成システムをFileMakerで構築

戸島雅彦院長

戸島雅彦院長

赤澤孝司課長

赤澤孝司課長

同院では,現在,病院の基幹システムとしてオーダリングシステムおよび医事会計システムが稼働しているが,診療録としては紙カルテで運用され,各部門ごとにベンダー製のサブシステムやFileMakerによるユーザーメードのシステム構築が行われてきた。
戸島院長は,以前の勤務先で脳神経外科医として2001年からFileMakerを使って患者データベースを自作してきた。2003年に時計台記念病院に移ってからは,リハビリテーション科で,この患者データベースをベースにして,新たにリハビリテーションの実施状況や進捗,患者の所見などを記録し,その情報から"リハビリテーション総合実施計画書"を作成するシステムを構築した。戸島院長は,「リハビリの際の患者さんの評価は,多岐にわたる項目と多職種による作成が要求されます。この作成業務を,手書きや重複入力をなくし,入力したデータから提出に必要な総合実施計画書が自動的に作成できるようにしました」とその経緯を説明する。
このシステムは「けいかく君」と名づけられて,サーバ・クライアントで運用し,オーダリングシステムからの患者基本情報の取り込みなど機能を充実させ,リハビリにかかわるスタッフには欠かせないシステムとなった。

時計台記念病院・クリニック システム概念図

時計台記念病院・クリニック システム概念図

 

●基幹系と連携した部門ごとのFileMakerシステムが稼働

同院は,2005年にカレスサッポロに法人が変わり,2007年にシステム担当として赴任したのがシステム管理課の赤澤孝司課長だ。カレスサッポロは,同院のほか,北光記念病院(札幌市東区,145床)など2病院2診療所を運営するが,赤澤課長は北光記念病院で診療放射線技師として放射線科のレポートシステムなどをFileMakerで開発,その後,"現場のわかるSE"として,FileMakerによるユーザーメードシステムを含めて,法人全体のシステムの管理・運用に携わっている。
時計台記念病院では,リハビリテーション科のけいかく君のほかにも,健診センターの健診システムや循環器レポートシステムなど自作やベンダー製のFileMakerを使ったシステムが各部門で構築,導入されていた。赤澤課長は,部門ごとのFileMakerシステムを統括して管理し,FileMaker Serverと基幹系システムのODBC接続による連携の仕組みなどを構築した。
「基幹系との連携や外部の構築ベンダーとのやりとりなど,トラブルがあった時に対応できるように一本化しました。FileMakerのライセンスについても,購入方法もバージョンもバラバラでしたので,病院全体としてボリュームライセンスの契約を進めています」(赤澤課長)。
赤澤課長は,FileMakerによる院内でのシステム構築のメリットを次のように説明する。
「FileMakerを使うことで,自分がコントロールできる環境でシステムを構築することができます。FileMakerであれば,現場の要望にすぐに対応できますし,高度な機能が必要であれば開発会社に依頼するという判断が可能です。ほかの開発ツールでは,この部分がブラックボックスとなって,仕様の変更にも時間がかかり,診療データの継続性にも影響します」

リハビリテーション総合実施計画書作成システム「けいかく君」画面

リハビリテーション総合実施計画書作成システム「けいかく君」画面

 

●ベンダー製電子カルテシステムの導入で院内システムを再構築

同院では,2013年春をメドに新しい病院情報システム構築に向けてプロジェクトがスタートしている。新システムでは,電子カルテを中心に看護支援,検査,放射線など部門システムを導入し,全病院的な病院情報システムへ移行する予定だ。戸島院長は,FileMakerからベンダー製システムへの流れを次のように説明する。
「FileMakerは,バージョンが上がるにつれ高度になり,できることの幅が広がっていますが,それ故にユーザーメードシステムでは個人の能力だけではカバーしきれない部分が出てきています。病院組織としては,事業継続性を考慮する必要があり,電子カルテの導入を機にシステムの役割を見直し,基幹系が担う部分とユーザーメードで構築する部分を切り分けることにしました」
新しい病院情報システムでは,リハビリ部門も含めて,これまでFileMakerで構築してきた部門システムを基幹系に取り込むことが検討されている。赤澤課長は,システムの切り分けについて次のように語る。
「今回,部門システムについても,パッケージとして電子カルテとの接続に実績のあるものについてはベンダー製のシステムを採用する予定です。特に保険請求に関係する部分については,データをしっかりと反映できる信頼性の高いシステムを導入したいと考えています。一方で,そのシステムではカバーしきれないが,現場では必要とされるデータ収集や入力のための仕組みは,FileMakerを使って積極的に開発していきます。FileMakerのいいところは,ODBC連携などによるデータの受け渡しによって基幹系のデータベースへの影響が少ないことです。これまで構築したデータベースを利用して,より使いやすい,役に立つものにできると思います」
新システム導入時には,全端末にFileMakerを導入し,利用できるようにする予定だ。

健診システム画面

健診システム画面

 

●基幹系とFileMakerを組み合わせて高いユーザビリティを実現

同院は,北海道広域医療連携研究会 の参加施設として,総合リハビリテーションセンターを中心にFileMakerによる医療連携システムであるDASCH Pro を利用して脳卒中の連携医療にも積極的に取り組んでいる。戸島院長は,病院でのFileMakerの利用を次のように語る。
「ある程度の規模の医療機関では,患者情報を扱うシステムを構築するには電子カルテや部門システムが中核となることがほとんどだと思いますが,病院の役割や規模,診療科などの違いで,それだけではどうしても埋められない部分が出てきます。そこをカバーできるのが,FileMakerによるユーザーメードのシステムです。自分で作るのが大変だと思ったら,FileMakerでの開発を専門に行う業者に相談すればいいと思います。FileMakerであれば,運用しながら少しずつ構築することも,変更することも可能です。現場に本当に必要なシステムを,ユーザーフレンドリーなスタイルで構築することがきっとできるでしょう」
赤澤課長は,「われわれとしては,FileMakerならば自分たちのコントロールを手放すことなく,ベストな形でシステムの開発,管理が行えます。何か業務を効率化したい時にはFileMakerで構築するのが一番ですし,以前に比べて医療系のユーザーも多く,開発ベンダーも増えています。恐れずにトライしてみるのが一番です」とユーザーメードの構築のメリットを強調した。

 

 
In-side Column

北海道における地域医療連携をサポートするDASCH Pro

DASCH Pro(http://www.dasch-pro.jp/ )は,脳卒中の多施設での医療連携において,FileMakerを利用して情報共有を行うことを目的として開発された地域医療連携システムであり,医療や介護,医師や看護師,ソーシャルワーカー,行政などさまざまな職種の人たちが,北海道という地域間の距離が長く日常的な交流が難しいという地域性をITを使ってカバーする仕組みとしてバージョンアップを重ねてきた。そのスタートは,北海道広域医療連携研究会において構築されたFileMakerベースの患者情報共有ツールであるDASCH(DAtabank of Seamless Care in Hokkaido)である。DASCHは,VPNを利用したFileMakerによる共有を行うバージョン1から,連携先の負担軽減のためインスタントWeb公開(IWP)によるバージョン2と発展してきたが,さらなる機能強化のため,北海道に拠点を置きFileMakerでの開発を行っているDBPowers (代表取締役:有賀啓之氏)に開発を委託し,2012年10月にDASCH(DAtabank as Solution for your Care and Health) Pro ver1.0がリリースされた。DASCH Proでは,Webアプリケーション機能,権限設定,日常生活機能評価,モバイル端末での使用を考慮したタッチ操作などが強化され,健康関連情報を含めた広域での情報共有・連携のツールとして発展している。

 

北海道広域医療連携研究会

北海道全体での医療連携を推進することを目的に,時計台記念病院の戸島雅彦院長,札幌白石脳神経外科病院の高橋明副院長らを 中心に2008年に発足。医療・介護に携わる医師,看護師,メディカルソーシャルワーカー,セラピストや行政などの幅広い職種が参加し,これまで14回の 研究講演会を開催している。対象疾患として脳卒中だけでなく,認知症,糖尿病,高血圧不整脈などを対象とし,ITを活用した連携を進めることを方針として FileMakerを使った情報連携システム「DASCH Pro」の開発,運用を行っている。

 

ファイルメーカー株式会社
Email:japan-sales@filemaker.com
医療分野でのユーザー事例 : www.filemaker.co.jp/medical
ライセンスご相談窓口
0120-983-878 (平日 10 : 00~17 : 30)

 

カレスサッポロ時計台記念病院

カレスサッポロ時計台記念病院
札幌市中央区北1条東1丁目2-3
TEL 011-251-1221
FileMaker Site License:230


(インナービジョン2013年2月号 別冊付録 ITvision No.27より転載)
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