展示会に見るMRI技術の変遷(ITEM in JRC 国際医用画像総合展)(フィリップス・ジャパン)

●2005

1.5テスラMRI装置「Intera Achieva」は,8chのSENSEや先進のRFシステム「FreeWave」をはじめとした独自の先端技術を搭載することにより,高画質画像の超高速検査を実現する。オプションで16ch(W.I.P. 32ch)のRFコイルでマルチチャンネル化をめざす。薬事申請中の3T MRIやRSNAで話題になった超電導1.0TオープンMRI「Panorama」を加え,さまざまな臨床ニーズに対応していく。

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●2006

「Achieva 1.5T」では,認識・学習・実行の機能を持ち,MRI自体がまるで人口知能を持っているかのように判断し撮影を行うという,知性を持ったMRI“SmartExam”を紹介しています。これは,フィリップスが持っているGPSナビゲーション,指紋認識,オートパイロット機能などの技術を駆使し,MRIに搭載したものです。“SmartExam”により,簡単な設定で1回クリックすれば検査を行えるので,大幅なスループットの向上が図れ,撮像断面設定をMR自身が決定するため,再現性の高い画像を得ることができます。 3T装置「Achieva 3.0T(WIP)」では,マグネット,グラディエントコイル,RFのすべてを3T装置用に独自に開発し,頭部だけでなく腹部でも十分な検査が行えます。また,ワークステーションでの新しい解析機能の紹介を23インチのモニタで行っているほか,透明シールドのMR室“模型展示(協力:鹿島建設)”など,新しい技術を紹介しております。
(今野麻木さん マーケティング本部MRマーケティング)

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●2007

● マグネットの小型軽量化とヘリウムガスゼロを実現した「Achieva 3.0T X-series」

昨年のRSNAで発表された「Achieva 3.0T X-series」だが,本邦ではこのITEMでお披露目され,同時に販売も開始された。マグネットの重量が4.6tと3T MRIとしては小型で,ガントリのサイズも1.5T装置ほぼ同じサイズとなっている。また,ヘリウムガスの蒸発をゼロに抑えており,メンテナンスやランニングコストなどの面でメリットがある。FOVは50cmで,全身の撮像に対応している。こうしたことから,今後1.5T装置の更新を検討している施設などへの販売が見込まれる。フィリップスでは,昨年 10月に「Achieva 3.0T」を発売し,ITEM時点で20台以上販売しているが,「Achieva 3.0T X-series」は年間の販売目標を30台以上としている。

このほか,MRIのコーナーでは,“SmartExam”をPRしていた。この“SmartExam”は,MRI検査のプランニングから,撮像,後処理に至るワークフローを自動化するもので,被検者のセッティング後,ワンクリックですべてを実行するというソフトウエアである。昨年,頭部領域を対象として国内で発表されたが,今回のITEMでは,さらに対象領域を拡大。膝や脊椎領域もカバーするようになった。
(取材協力:上村英治 マーケティング本部MR営業推進マネージャー)

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●2008

● 1.5T MRI装置「Achieva 1.5T A-series」を販売開始

MRIコーナーでは,「Achieva 3.0T X-series」と4月から販売が開始された新製品である「Achieva 1.5T A-series」を紹介した。

今回発表されたAchieva 1.5T A-seriesは,Single Gradient とDual Gradientの2機種で構成されている。また,傾斜磁場コイル,パルスシーケンス制御によりSingle Gradientでも従来の1.5Tと同等の最高機種のMin TE/TRを実現。さらに標準で16チャンネルコイル,最大32チャンネルコイルに対応が可能になっている。初年度は80台の受注をめざす。

また,Achievaシリーズは,3.0T装置と1.5T装置がまったく同じサイズであることが特長であり,Achieva 3.0T X-seriesは,3.0T MRIとしては世界最軽量を誇る装置であるという。

このほか, 3.0T X-seriesと1.5T A-series双方に搭載可能な自動読影機能の「SmartExam」が機能拡張され,注目を集めていた。SmartExamは,各施設の検査におけるスライスの位置決めや撮像シーケンスをシステムが学習し,撮影後の画像処理までを容易に行うことができる機能である。従来の頭部から,膝,脊椎,肩にも対応するようになった。これにより,MRI検査の約70%を同機能で行うことができるという。さらに,今後も使用可能な領域を広げていく予定。
(取材協力:吉澤 裕介さん マーケティング本部 MRプロダクトマネージャー)

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●2010

● Magnetic Resonance:3T MRI「Achieva 3.0T TX」の臨床的有用性をアピール

国内の受注100台達成を発表した3T MRI「Achieva 3.0T」の中から,昨年発売された最高機種の「Achieva 3.0T TX」を展示した。Achieva 3.0T TX は,国内で約10台稼働しており,ブースでは,臨床画像を掲示して同装置の実績と臨床的な有用性をアピールした。次のバージョンでは, MRマンモグラフィの撮像において,容易な脂肪抑制を可能にするSmartExam Breast機能をオプションで搭載することが可能になる。これは,患者さんの乳房の形に沿ったシミングを自動でかける技術で,撮影者のスキルによらず,安定した画像の取得を可能にする。またAchieva 3.0T TXは,従来装置からデザインが一新されており,アンビエントリングと呼ばれる光のリングを前面カバーに配することで,患者さんの不安を軽減させるための工夫が施されている。

Achieva 3.0T TX

Achieva 3.0T TX

 

●Spring of 2011

Ingenia

● MR装置の常識を超えた新技術dStreamを搭載

Ingeniaは,MR装置の常識を超えた新技術dStreamを搭載しています(図2)。従来のMR装置はコイルからアナログ・デジタル変換器(ADC)までの間は,アナログケーブルで信号が伝送されていました。dStreamはADCがコイルに内蔵され,MR信号がコイル内でいきなりデジタル変換されることで,アナログケーブルによる信号減衰がなくなり,SNRが従来と比べて最大40%向上します。ガントリは70cmボアでありながら,静磁場の均一性を高め最大FOVは最大55cmあり,一度に広範囲を撮像することができます。MR適応領域における検査需要は広がりオンコロジーやカーディオロジーといった領域でもMRがその役割を担いつつあり,Ingeniaはその威力を遺憾なく発揮します。

図2 Ingenia

図2 Ingenia

 

●2012

MRIでは,フルデジタルテクノロジーdStreamを搭載し,最大40%のSNRの向上とチャンネルフリーによるワークフローの改善を実現した「Ingenia 3.0T」を展示した。Ingeniaでは,アナログデジタル変換器をワンチップ化してコイルに内蔵し,アナログケーブルによる信号ロスをなくしてSNRの向上を図ったほか,チャンネルの概念がなくなったことで,デジタルコイルのバリエーションが増え,高画質の検査が可能になった。ITEMでは今回初めての展示となるが,すでに日本では20施設以上に導入されており,MRIコーナーでは日本の医療機関で撮影された臨床画像をフィルムに出力して展示,ユーザーが見慣れた条件でIngeniaの高画質を実感できるように工夫されていた。通常は横断像で撮像するDWIを矢状断で撮像することで,短時間で高画質の画像が得られるDirect Coronal DWIの画像などに注目が集まっていた。さらに,MultiTransmit4Dによる3Tの心臓MRI検査,非造影Perfusion ASL,非造影MRAなどの新しいアプリケーションをアピールした。

また,MRIコーナーのIntelliSpace Portalでは,Tumor Trackingのほか,膝の軟骨解析などのアプリケーションを紹介した。

フルデジタルテクノロジーdStream搭載し,SNRを向上したIngenia 3.0T

フルデジタルテクノロジーdStream搭載し,
SNRを向上したIngenia 3.0T

日本の医療機関で撮像されたIngeniaの画像をフィルムで展示

日本の医療機関で撮像されたIngeniaの画像をフィルムで展示

   
ADCの小型化の歴史を紹介した。左がIntera,一番右がIngeniaのチップ

ADCの小型化の歴史を紹介した。左がIntera,一番右がIngeniaのチップ

 

 

●2013

● スループットの向上を追究した「Multiva 1.5T」

MRIでは,基幹病院や総合病院を主対象とし,ワークフローの改善を追究したシステム「Multiva 1.5T」を発表した。Multivaは,コンパクトな設計で,狭い検査室にも導入可能な装置となっている。SNRが最大になるRFコイルエレメントを自動的に選択できるSmartSelectを搭載し,また,軽量化RFコイル(コイルは薬事未承認)を採用することで,セッティングにかかる時間を約40%短縮。さらに,撮影時間の倍速(SENSE倍速)を最大16倍速としたことで,頭部や腹部のルーチン検査が約10分で実施可能となっている。
また,昨2012年にMRI対応の植え込み型心臓ペースメーカーが薬事承認を取得したことを受け,検査条件の1つである被検者のモニタリングのためのワイヤレスMR用生体情報モニタ「Invivo Essential」と「Invivo Expresssion」(国内では2012年7月に発売)もMultivaと併せて展示し,トータルソリューションを提案した。
アプリケーションとしては,動き補正の“MultiVane2.0”や脂肪抑制の“mDIXON TSE”,非造影パフュージョン撮像“pCASL”,肝脂肪の定量化“mDIXON Quant”に加え,日本のニーズを反映して新しく開発した整形領域の三次元撮像法“3DMSK View”などが紹介された。
モックアップが展示された,2010年発売のフラグシップモデル「Ingenia 3.0T」は全世界で230台,日本国内では45台(受注ベースで64台)が導入され,2011年発売の「Ingenia 1.5T」も国内導入32台に上り,Ingeniaは国内の受注ベースで合わせて100台を超えている。ユーザーからは,種類の多いデジタルコイルが高く評価されており,これまでに全国から集まった多くの臨床画像とともに紹介された。

「Multiva 1.5T」とMR用生体情報モニタ「Invivo Essential」(テーブル上)と「Invivo Expresssion」。Invivo Essentialはガントリ内にも入れることができる。

「Multiva 1.5T」とMR用生体情報モニタ
「Invivo Essential」(テーブル上)と
「Invivo Expresssion」。
Invivo Essentialはガントリ内にも
入れることができる。

フラグシップモデル「Ingenia 3.0T」

フラグシップモデル「Ingenia 3.0T」

 

◆治療効果解析も可能なマルチモダリティ解析ワークステーション「IntelliSpace Portal」

CT/MRI/NMのマルチモダリティの画像をサーバで一元管理し,豊富なクリニカルアプリケーションを利用できるIntelliSpace Portalでは,腫瘍の治療効果解析アプリケーション“tumor tracking”が紹介された。RSNA2012やECR2013において,化学療法の治療効果をtumor trackingで確認するという発表が行われ,注目を集めている。tumor trackingは,簡単に腫瘍をモニタリングできることが特徴で,治療前の画像上で腫瘍部分をクリックすると自動的にトレースされ,さらに治療後の画像上でも同じ部分の腫瘍が自動でトレースされる。解析結果はヒストグラムとして表示され,一目で治療の効果を確認することができる。

横軸の悪性度(ADC)と縦軸の腫瘍ボリュームで治療効果を確認できる“tumor tracking”

横軸の悪性度(ADC)と縦軸の腫瘍ボリュームで
治療効果を確認できる“tumor tracking”

 

●2014

● ハイエンド装置「Ingenia CX」によりルーチン検査の画質を向上

展示会場入口すぐのところに配置されたMRIコーナーでは,“臨床現場でのルーチン検査にこだわる”をテーマに,新製品のハイエンド装置「Ingenia CX」(3.0T/1.5T)を中心に,進化したアプリケーションや,生検,治療に役立つソリューションが紹介された。
Ingenia CXは,SNRを向上させるフルデジタルテクノロジー“dStream”と,最大傾斜磁場強度80mT/m(3.0T),66mT/m(1.5T)のグラディエントコイルを搭載した最上位機種。開口径は60cmで,従来機「Ingenia」より狭まるが,グラディエント強度はIngenia(3.0T:45mT/m,1.5T:33mT/m)と比べて大幅に高くなり,高速撮像法での画質が向上し,脳神経領域のEPIやDTI,心臓領域でハイパフォーマンスを発揮する。加えて,dStreamテクノロジーの“dS SENSE”も使用できるようになり,撮像時間の短縮が可能になっている。
新しいアプリケーションとしては,歪みやすい側頭葉などの歪みを抑えた拡散強調画像を得られる“TSE DWI”や,3.0Tで腹部や乳腺の拡散強調画像に現れやすいアーチファクトを低減する“LIPO”を展示。これらは,3.0T装置が普及している日本国内で研究が進められ,製品化に至ったもので,ITEM2014にて世界初展示となった。より高度な機能やオプション検査に向けたアプリケーション“Advanced MR”も紹介された。
また,ユーザーインターフェイスを一新し,シンプルな画面で簡単に操作できる“iPatient”も紹介。設定項目を限定し,日本語表示にするなど,MRI操作に慣れていない診療放射線技師でもクオリティを保った検査を行えるようにしている。なお,iPatientは,Multiva,Achievaも含め,すべての装置に2014年1月より搭載されている。
MRのソリューションとして,MRIガイド下前立腺生検システム「MR Therapy」を展示。ワークステーション「DynaCAD」でのシミュレーションにより,従来の超音波ガイド下よりも正確な穿刺が可能で,すでに導入している熊本中央病院では高い臨床評価を得ているという。このほか,Ingenia CXに搭載可能な放射線治療位置決めシステム「Ingenia MR-RT」も紹介した。これにより,患者の正確な軸情報を得ることができ,MRI特有の高コントラスト画像で腫瘍範囲を把握しながら,CTと同じようなスライス断面でのプランニングが可能になる。

グラディエントパフォーマンスの高いハイエンドMRI Ingenia CX

グラディエントパフォーマンスの高いハイエンドMRI
Ingenia CX

MRIガイド下前立腺生検システムMR Therapy

MRIガイド下前立腺生検システムMR Therapy

 

拡散強調画像に現れやすいアーチファクトを低減する“LIPO”

拡散強調画像に現れやすいアーチファクトを低減する“LIPO”

 

●2015

● 映像と音楽で被検者がリラックスできる検査空間を提供する「In-bore Experience」

MRIの展示テーマは,「MRIが魅せる新しい世界」。フィリップスが日本国内でMRIの販売を開始してから35年が経ち,現在,フラッグシップモデル「Ingeniaシリーズ」の国内稼働は200台を超える。1800を超えるMR関係の特許を保有し,コンパクトマグネットや高速撮像シーケンスなど,さまざまな技術革新を行ってきた。そのフィリップスが今回,これまでにないまったく新しい考え方で開発・上市したのが,国内初展示となったMRIソリューション「In-bore Experience」である。映像と音楽,オートガイダンス,サイレントスキャンの3つが大きな柱であるIn-bore Experienceは,被検者がリラックスしてMRI検査を受けられることをめざして開発された。被検者は,ヘッドコイルに取り付けられた鏡で壁面に映し出される映像を見ながら,また,ヘッドホンで音楽を聴きながらMRI検査を受けることができる。オートガイダンス機能“AutoVoice”は,息止め指示や検査の残り時間などが自動でアナウンスされ,確かな検査と被検者の不安軽減に貢献する。さらに,サイレントスキャン“ComforTone”は,最大80%のノイズを低減しつつ,通常の撮像と変わらない撮像時間で同等の画像を得ることができる。映像は環境映像やアニメーションなど被検者自身がコンテンツを選ぶことができ,最も恐怖を感じやすいガントリへの進入時から映像が目の前に広がるため,恐怖感を軽減し,検査の体感時間も短縮されることが期待される。
アプリケーションを紹介するコーナーでは,ルーチン検査の画質を向上させる“Premium IQ”と,より高度な機能やオプション検査を追究した“Advanced MR”を紹介し,画質や診断能の向上にフォーカスした展示を行った。Premium IQは,日常の検査におけるニーズに応えるアプリケーションをそろえており,従来からあった高速撮像法“dS SENSE”に加え,動き補正の“MultiVane XD”,脂肪抑制“mDIXON XD”,金属アーチファクト抑制“O-MAR”を新しく紹介した(いずれもオプション)。これらは組み合わせて使用できることも大きな特長で,適応領域の拡大や診断能向上に貢献する。なかでもmDIXON XDは,心電図同期との併用が可能になったことで非造影心臓MRIを実現。特許技術を用いた短時間撮像・高分解能の両立と正確な水・脂肪分離により,mDIXON XDはグラディエントエコー系,スピンエコー系のどちらの撮像も可能となり適応領域を大きく広げた。O-MARは,従来の金属アーチファクトの低減がスライス面内に限られていたのに対し,体軸方向の金属アーチファクトも抑えられるようになった。
Advanced MRでは,Spine,骨盤部,ブレストにも対応した3D撮像の“3D VIEW”や,初展示となるRFパルスを矩形にしてFOVを絞ることで折り返しアーチファクトを低減する“ENCASE”,また心筋機能の定量評価に有用なT2マップ,T2*マップを得られる“Star Quant”や“T1マッピング”をアピールした(いずれもオプション)。
また,1回の撮像でさまざなシーケンスの画像を合成する“SyntheticMR”(医薬品医療機器等法未承認品)を開発中で,モニタを使って開発状況が来場者に説明された。現在のところ,フィリップスではこの技術をPACSに実装することを検討している。検査の時間短縮という観点では,MRI装置の性能向上により,例えば救急の頭部検査ではDWI,T2,T1,T2*,FLAIR,MRAの一連の検査が合計5分ほどで撮像可能になっていることから,SyntheticMRは,解析,読影において医師が活用し,定量性や診断能の向上に寄与することをイメージしているという。

会期中に約700名が体験した「In-bore Experience」(装置はIngenia 3.0T)

会期中に約700名が体験した「In-bore Experience」(装置はIngenia 3.0T)

被検者の目の前には映像が広がり,リラックスして検査を受けられる。

被検者の目の前には映像が広がり,リラックスして検査を受けられる。

 

心電図同期も併用できる脂肪抑制“mDIXON XD”

心電図同期も併用できる脂肪抑制“mDIXON XD”

 

スライス方向の金属アーチファクトも低減する“O-MAR”

スライス方向の金属アーチファクトも低減する“O-MAR”

 

1回の撮像で多様なシーケンス画像を得られる“SyntheticMR”(医薬品医療機器等法未承認品)

1回の撮像で多様なシーケンス画像を得られる“SyntheticMR”(医薬品医療機器等法未承認品)

 

●2016

● 体内デバイスを管理し安全な検査を支援する“ScanWise Implant”など未来を見据えたソリューションを紹介

MRIでは,今回の展示テーマを「MRIと未来について考える」とし,団塊の世代が75歳を迎える2025年問題に向けて,何にフォーカスすべきかを考える展示を行った。
安全なMRI検査のためのアシストインターフェイス“ScanWise Implant”は,ペースメーカーやインプラントなど,高齢化に伴い増加すると考えられる体内インプラントデバイスを持つ被検者の検査に対応するためのアプリケーション。近年は,ある条件下でのMRI検査が可能なインプラントデバイスが増えているが,実際には臨床現場でのリスク管理は容易でない。そこで,ScanWise Implantでは,ペースメーカーであれば添付文書に書かれた条件となるパラメータ(SARやB1+rms)を入力することで,近づけてはいけないガントリの場所を確認できるとともに,パラメータの上限値制限を行うことで自動的にパラメータが調整され,安全なMRI検査を施行することができる。
また,昨年のITEM2015で発表された映像と音楽で快適な検査環境を演出する“In-Bore Experience”は,1.5T MRI装置「Ingenia 1.5T」のモックアップとを組み合わせて展示され,来場者が次々と体験していた。In-Bore Experienceは今回,新バージョンの2.0が登場。残り検査時間や息止め時間をわかりやすく映像に示すことができ,被検者の負担を軽減したさらに優しい検査を実現する。なお,In-Bore Experienceはすでに国内施設への納入が始まっており,現場から高い評価を得ている。ブースでは導入事例をまとめた冊子を配布し,「閉所恐怖症で検査ができない被検者がゼロに」「初めて患者さんに検査後に握手を求められた」といった導入施設の声を紹介した。
また,Advanced Applicationとしては,国内ユーザーとともに共同研究し製品化に至ったアプリケーションを臨床画像とともに展示。非造影で脳血流イメージを得られる“3D-CINEMA”やblack blood imagingの“iMSDE”,高空間分解能の神経鞘を描出する“3D-SHINKEI”などをアピールした。

“ScanWise Implant”ではインプラントデバイスを近づけてはいけない場所もわかりやすく表示される。

“ScanWise Implant”ではインプラントデバイスを近づけてはいけない場所もわかりやすく表示される。

 

多くの来場者が“In-Bore Experience”を体験

多くの来場者が“In-Bore Experience”を体験

In-Bore Experience 2.0では検査や息止めの残り時間を映像に表示でき,被検者の負担を軽減する。

In-Bore Experience 2.0では検査や息止めの残り時間を映像に表示でき,被検者の負担を軽減する。

 

●2017

● “First time right(1回の検査で確実に診断する)”を実現する機能や技術を展示
MRIは,“今ある課題を,妥協しない未来へ”をテーマに,快適な検査環境を提供する“In-Bore Experience”の新機能や,MRI全体のデジタル化を図ったハードウエア“dSync”,さらにdSyncにより実現する最新のアプリケーションを来場者にアピールした。会場にはMRI部門グローバルトップのEric Jeanゼネラルマネージャーも訪れ,フィリップスのMRIのビジョンについてコメントした。Jean氏は,より短時間のMRI検査で確実な診断を行うこと,そして診断に限らず治療へも活用を拡大していくことを,「More accessible」「More definitive」「More impact」の3つのビジョンで説明した。
国内では30施設で稼働しているIn-Bore Experienceには,被検者の負担をさらに軽減する新しい機能が追加された。In-Bore Experienceでは,被検者はガントリ背部の壁面に映される映像を頭部コイルに設置された鏡で見ながら検査を受けられるが,この映像上に,息止めや検査の残り時間をプログレスバーや円グラフで表示する機能が追加された。検査の進捗状況がわかることで,被検者の心理的負担の軽減に貢献する。
新ハードウエアdSyncは,従来から実装されていた受信系のフルデジタルコイルシステムdStreamに,送信系のデジタル化と画像再構成システムの高速化を加え,超高速・高精度のデジタル制御により今後実装される次世代アプリケーションに対応する。2016年から標準搭載が始まっており,既存システムのアップグレードも可能だ。会場では併せて,dSyncにより可能になる最新のアプリケーションも紹介された。
まず,新シーケンス“Compressed SENSE”(W.I.P.)は,圧倒的な撮像時間短縮を実現する。一例として頭部ルーチン検査では,T2強調画像,T1強調画像,FLAIR,T2*強調画像,DWI,MRAの一連の撮像時間が,従来のパラレルイメージングSENSEでの17分37秒から,9分14秒まで短縮する。Compressed SENSEに応用されている圧縮技術とは,画像を圧縮して繰り返しデノイズ処理を行うため画像再構成時間の延長が懸念されるが,検査全体の時間短縮をめざして開発されたCompressed SENSEでは,検査終了後10秒で画像再構成が完了する。また,2D・3D撮像への対応やユニークなオプティマイズドサンプリングの採用,k space中心を重点的に埋めることでモーションアーチファクトを低減できるといった特長を持つ。まずは頭頸部,脊椎,四肢関節領域を対象にリリースし,次期バージョンで体幹部,循環器領域にも対応する予定である。将来的にはすべての領域,すべてのシーケンスに適用することをめざしており,フィリップスがMRIにSENSEを実装したときのようなイノベーションがCompressed SENSEによってもたらされることが期待される。
dSyncにより実現するもう一つのアプリケーションが,モレキュラー(分子)イメージングによる新しいコントラスト“Amide Proton Transfer(APT) imaging”(W.I.P.)である。これは,プロトン単体でなく,タンパクとペプチドのCEST効果を見るイメージングで,カラーマップで表示される。造影剤を使用することなく,脳腫瘍のグレーディングや治療効果のモニタリング,また,放射線治療後の再発と放射線壊死の鑑別ができるといった臨床的メリットを提供する。

In-Bore Experienceの新機能をアピール

In-Bore Experienceの新機能をアピール

MRI部門ゼネラルマネージャーのEric Jean氏

MRI部門ゼネラルマネージャーのEric Jean氏

   
dSyncにより実現するAPTイメージング(W.I.P.)

dSyncにより実現するAPTイメージング(W.I.P.)

 

 

●2018

●検査時間を50%短縮し,空間分解能を60%向上する“エリート”MRI「Ingenia Elition 3.0T」
画期的なフルデジタルMRIとして初代「Ingenia 3.0T」が2011年に日本国内で発売されてから7年の年月を経て,大幅な進化を遂げたIngenia Elition 3.0Tがデビューした。この新型MRIは,「確信が持てる診断(confidence)」「さらなる高速化の実現(speed)」「検査ストレスからの解放(comfort)」をコンセプトに開発されている。最大の技術的トピックは,「確信が持てる診断(confidence)」に寄与する新開発のハイパフォーマンスグラディエントシステムの開発である。このグラディエントシステムは,磁場均一性の高いマグネット,高SNRを実現するデジタルコイル,被検者に合わせ最適なRF送信を行う“MultiTransmit4D”とともに,同社MRIのデジタル技術のプラットフォームである“dSync technology”を構成するキーテクノロジーである。スリューレート220T/m/sというトップクラスのハイスペックの傾斜磁場コイルを採用。また,コイルデザイン,ダイレクトクーリングなどを新設計し,渦電流の発生を抑えて信号ロスを軽減したほか,高いduty cycleを実現した。これにより,高分解能撮像でのブラーリングを改善し,Ingenia 3.0Tと比較し空間分解能が60%向上するという。また,信号ロスを抑えたことは拡散強調画像の画質向上にも寄与し,b値10,000s/mm2,15,000s/mm2でも診断に有用な画像を作成できる。
新型グラディエントシステムは,オプションとして提供される圧縮センシングのアプリケーション“Compressed SENSE”と組み合わせることで,「さらなる高速化の実現(speed)」も可能にした。Compressed SENSEは,独自のサンプリング技術である“Optimized Variable-density Sampling”と,フルデジタルMRI用のSENSEアルゴリズムである“dS-SENSE”により,ノイズを抑え,画像を劣化させることなく,高速にデータを収集することが可能である。頭部,心臓,腹部,整形などで,造影,2D,3D撮像に対応する。この2つの技術により,全身領域の検査において,従来装置と比べ50%以上の高速化を図れる。さらに,操作性も向上させることで,撮像時間だけでなく検査時間全体も短縮できる。ガントリの両サイドに配置された「VitalScreen」では,患者情報や体位,心電図,造影剤などのデータを表示,心電図同期の設定などが行える。これにより検査の効率化が図れ,スループットが大幅に向上する。
Ingenia Elite 3.0Tの「検査ストレスからの解放(comfort)」の技術としては,ドイツの寝具メーカーと共同開発した「ComfortPlus Mattress」がトピックである。従来のマットレスよりも厚みがあり,弾力に富んだComfortPlus Mattressは,通常のマットレスと比較して90%の被検者が快適であると回答している。加えて,ガントリの奥側に配置されたスクリーンを用いて,映像と音楽で快適な検査環境を実現する「In-Bore Experience」も組み合わせられる。さらに,静音化技術“ComfortTone”とガイダンス機能“AutoVoice”も搭載。これらの技術により,再撮像を70%減少させたとのデータもある。
このほか,MRIのコーナーでは,2017年7月に発売した「Prodiva 1.5T CX」も展示された。最小設置面積25m2というコンパクト設計,高齢の被検者にも優しい最低高が47cmの患者寝台,「Flexible MSK-M/S coil」など新開発の軽量コイルが採用されている。臨床的に有用な高画質画像を得られるだけでなく,効率的な検査環境を実現し,病院経営にも貢献する装置として評価を受けている。

「Ingenia Elition 3.0T」は最新のグラディエントシステムを採用

「Ingenia Elition 3.0T」は最新のグラディエントシステムを採用

 

ガントリ両側に配置された「VitalScreen」

ガントリ両側に配置された「VitalScreen」

 

寝具メーカーとの共同開発による「ComfortPlus Mattress」

寝具メーカーとの共同開発による「ComfortPlus Mattress」

 

「In-Bore Experience」は被検者に優しい検査を実現(「Prodiva 1.5T CX」との組み合わせ)

「In-Bore Experience」は被検者に優しい検査を実現(「Prodiva 1.5T CX」との組み合わせ)

 

●2019

●“ヘリウムフリー”の新型MRI「Ingenia Ambition 1.5T」を披露
MRIエリアでは,4月に発売されたばかりの1.5T MR装置「Ingenia Ambition 1.5T」を大きくアピールした。Ingenia Ambition 1.5Tは,新開発の“BlueSealマグネット”により,わずか7Lの液体ヘリウムで超電導状態を維持できる“ヘリウムフリー”が大きな特徴となっている。従来の超電導MRI装置は,約1500Lの液体ヘリウムでマグネットを冷却する必要があるため,近年の世界的なヘリウム供給問題や,装置重量やクエンチパイプによる設置制限,クエンチ時のダウンタイムやヘリウムの再充填によるコスト負担などが課題となっていた。フィリップスは,この課題に対するソリューションとして,マグネットに巻き付けた細いチューブに液体ヘリウムを循環させてマグネットを冷却する“Micro-coolingテクノロジー”を開発。これを採用したBlueSealマグネットには,7Lの液体ヘリウムが密封されており,クエンチ発生時にも外部にヘリウムを排出する必要がなく,また,耐用期間中のヘリウム補充も必要なくなった。
ヘリウムフリーとなったことで,マグネットの重量が従来装置と比べて約900kg軽量化し,クエンチパイプも不要となった。そのため,建物の上層階や,屋外に隣接しない部屋でも設置することが可能で,設置の自由度が向上し,設置時の施工コストも削減することができる。
また,ユーザーによるクエンチマネージメントを可能とする新機能“EasySwitch Solution”が実装された。スイッチひとつで一時的に消磁,励磁が可能で,吸着事故が起きてしまった場合にも約1時間で磁場を落とし,吸着物を取り除いた後は自動ランプアップが開始され24時間以内に復旧することができる。磁場立ち上げ時にヘリウムの補充が必要ないため,コスト負担やダウンタイムを最小限に抑えられる。
Micro-coolingテクノロジーでは,高い静磁場安定性(0.001ppm/hour)と傾斜磁場直線性(1.4%)を実現し,最大FOV55cmを歪みのない精度の高い画像を取得できる。高速化技術“Compressed SENSE”による撮像も可能で,時間短縮や画質向上に貢献する。
あわせて新製品としてリリースされた“VitalEye”がデモ展示で紹介された。VitalEye は赤外線カメラによる呼吸同期システムで,被検者にセンサーを装着することなく,ガントリに設置した赤外線カメラで呼吸の状態を検知し,呼吸同期をすることができる。咳などの突発的な動きがあった場合には,その時の信号を排除して同期することが可能である。動きの検知精度は1mm以下で,精度の高い検査を支援する。Ingenia Ambition 1.5Tと「Ingenia Elition 3.0T」に搭載が可能となっている。
またブースでは,Ingenia Ambition 1.5TとともにMRI対応生体情報モニタリングシステム「Expression MR400」も展示された。MRIのボア中心から1.5mの位置で使用することができ(磁場制限5000ガウス),EtCO2も測定可能なため,呼吸が止まった場合にもすぐに検知することができる。

ヘリウムフリーの1.5T MR装置「Ingenia Ambition 1.5T」

ヘリウムフリーの1.5T MR装置「Ingenia Ambition 1.5T」

 

わずか7Lの液体ヘリウムが密封され,クエンチ時の外部排出もない。

わずか7Lの液体ヘリウムが密封され,クエンチ時の外部排出もない。

 

約900kgの軽量化とクエンチパイプが不要になることで,設置環境の自由度が向上

約900kgの軽量化とクエンチパイプが不要になることで,設置環境の自由度が向上

 

咳などで呼吸が乱れても適切に呼吸同期を行う“VitalEye”

咳などで呼吸が乱れても適切に呼吸同期を行う“VitalEye”

 

この近さでも使用可能なMRI対応生体情報モニタリングシステム「Expression MR400」

この近さでも使用可能なMRI対応生体情報モニタリングシステム「Expression MR400」

 

●2021

●MRIヘリウムフリーの「Ingenia Ambition 1.5T」を中心に社会課題への対応やAI応用をPR
MRIエリアでは“The new reality in MR”をテーマに掲げ,COVID-19やヘリウムの需要増といった社会課題への対応や,AI応用を切り口にソリューションを紹介した。超電導MRIで使用されるヘリウムは世界中の消費量の約20%を占めると言われており,半導体製造などで需要も増え,輸入量減少・価格上昇の傾向が続いている。また,吸着事故が起こるとクエンチによるダウンタイムの発生,復旧費の発生など,病院経営にも大きく影響する。これらの課題に対するソリューションが,ヘリウムフリーの「Ingenia Ambition 1.5T」である。わずか7Lのヘリウムで超電導状態を維持するBlueSealマグネットを搭載することで,ヘリウム依存からの脱却を実現。ヘリウム排出管が不要であり,約900kg軽量化したことで,上層階などフレキシブルな設置が可能になっている。また,吸着事故時に施設スタッフが消磁・励磁を実施できる“EasySwitch Solution”を実装し,万が一吸着事故が起きた場合にも6時間以内での復旧が可能となる。復旧に当たってヘリウムの追加は不要で,迅速な復旧により検査や経営への影響を最小限に抑えることができる。
また,臨床アプリケーション「R5.7」(Release 5.7)の各領域に特化したシーケンスやアプリケーションも数多く展示された。脳神経領域の“iMSDE”は,Black Blood Imagingに有効なプリパルスで,ステントやコイルが留置されていても血流信号をしっかりと抑制する。展示では,大型脳動脈瘤に対するフローダイバーターステント治療の効果判定への活用を紹介し,非造影で安全・低侵襲に評価できることをアピールした。整形領域の “FRACTURE”は,皮質骨,腱,靭帯を強調したコントラストが得られるシーケンスで,骨折や腱断裂,後縦靭帯硬化症などの評価に用いることができる。CTを追加する必要がなくなり,診断の迅速化,被ばくや医療コストの抑制に役立つ。
循環器領域としては,マルチモダリティワークステーション「IntelliSpace Portal 12」で解析可能なの2つのアプリケーションを紹介した。StreamLineやPathLineで血流を可視化する“MR Caas 4D flow”は,解析時間の短縮化を実現し,バルブトラッキングによりバルブフロー定量化の信頼性が向上。フローパターンの視覚化・定量化による血流評価,心臓内の血流解析による弁機能評価,StreamLineによる大動脈瘤内の血流評価などが可能になる。また,“MR Caas Strain”は,心周期にわたる心筋のゆがみの評価や各種のグローバルストレインを算出することで,心筋症や弁膜症の診断やモニタリングを支援する。
MRI関連のAIソリューションについては,Speed,Comfort,Confidenceの3つのコンセプトに基づき紹介した。Speedでは,EasySwitch SolutionのクエンチマネージメントをAIで管理するほか,ダウンタイム発生を未然に防ぐAIを用いたモニタリングを提供。Comfortでは,撮像アシスト機能“SmartExam”やIntelliSpace Portalの心臓・肝臓セグメンテーションにAIが活用されていることを紹介した。またConfidenceとしては,高精細カメラとAIによる呼吸同期システム「VitalEye」を取り上げた。動作検知と認識アルゴリズムにAIを用いることで,咳などで波形が乱れた領域のデータは収集せずに,画質の劣化を軽減することができる。さらに,新しい取り組みとしてCTとMRIのデータセットのペアでトレーニングしたAIアルゴリズムにより,MR画像から放射線治療の線量分布計算を行う“MRCAT Brain”を展示。CTで治療計画を行った場合とほぼ同等の結果を得られることをアピールした。

BlueSealマグネットや“EasySwitch Solution”で医療機関の課題を解決する「Ingenia Ambition 1.5T」

BlueSealマグネットや“EasySwitch Solution”で医療機関の課題を解決する「Ingenia Ambition 1.5T」

 

フローダイバーターステント治療の効果判定に有用な脳神経領域の“iMSDE”

フローダイバーターステント治療の効果判定に有用な脳神経領域の“iMSDE”

 

カラーマップで血流を可視化する“MR Caas 4D flow”

カラーマップで血流を可視化する“MR Caas 4D flow”

 

●2022

●ヘリウムフリーで次世代高速化技術“SmartSpeed”を搭載する新装置「MR5300」が登場
2022年3月に発売されたMR5300の最大の特徴は,BlueSealマグネット搭載により,ヘリウムフリーを実現したことにある。7リットルの液体ヘリウムで超電導状態の維持を可能にし,ヘリウム補充を不要にした。また,“EasySwitch Solution”機能により,ダウンタイムが発生する前にトラブルを予測,迅速に対応し,持続可能なMR運用を実現する。さらに,検査室から操作室までのワークフローを効率化するSmart Workflow Solutionを搭載。ガントリ前面のタッチパネル“VitalScreen”やカメラとAI解析を用いたタッチレスの呼吸センサ“VitalEye”などのAIを活用したソリューションにより,複雑な臨床タスクや運用タスクを自動化する。Smart Workflow Solutionの一つであるデジタルコイル「Breeze coil」は軽量かつ柔軟で,検査部位への密着性に優れている上,SNRを最大限に引き出し,高い空間分解能が得られる。
MR5300のもう一つの特徴が,次世代高速化技術SmartSpeedである。圧縮センシングを使用した高速化技術“Compressed SENSE”に新開発のSmartSpeedエンジンを統合したもので,従来のパラレルイメージングより最大65%の高速化,高空間分解能化を実現する。加えて,ラジアルスキャンやEPIにもCompressed SENSEの併用が可能になり,適応シーケンスが97%に拡大した。

国内初展示の1.5TのMRI装置「MR5300」。「BlueSealマグネット」により,ヘリウムフリーを実現した。

国内初展示の1.5TのMRI装置「MR5300」。「BlueSealマグネット」により,ヘリウムフリーを実現した。

 

ワークフローを効率化する“Smart Workflow Solution”

ワークフローを効率化する“Smart Workflow Solution”

 

軽量で柔軟性が高い「Breeze coil」。ケーブルの取り扱いも容易で安全性にも優れている。

軽量で柔軟性が高い「Breeze coil」。ケーブルの取り扱いも容易で安全性にも優れている。

 

MR5300搭載の“Ambient Experience Inbore Solution”。患者は音楽を聴きつつ鏡を利用して映像を見ることができ,検査中の不安を軽減する。

MR5300搭載の“Ambient Experience Inbore Solution”。患者は音楽を聴きつつ鏡を利用して映像を見ることができ,検査中の不安を軽減する。

 

●2023

●多核種イメージングへの対応が可能な3Tの最新装置「MR 7700」が登場
MRI領域では,3Tの最新装置MR 7700がITEM初展示となったほか,1.5T「MR 5300」や高速イメージング「SmartSpeed」が紹介された。MR 7700は最先端の分子イメージングが可能な研究用システムで,プロトン(水素原子)に加え,カーボン,ナトリウムなどの多核種イメージングへの対応が可能となる(多核種用コイルは薬機法未承認)。また,MR 7700は,ボア内で投影された映像を観る「In-boreソリューション」も搭載可能である。In-boreソリューションは,フィリップスが以前からMRI装置に実装しているもので,頭部コイルのミラーで反射した映像と音楽により,検査中の患者をリラックスさせる。検査の残り時間の表示や息止めの合図も行うこともでき,患者負担をさらに軽減させる。

3Tの最新MRI装置「MR 7700」

3Tの最新MRI装置「MR 7700」

 

ボア内で映像を見ることでリラックスできる「In-boreソリューション」

ボア内で映像を見ることでリラックスできる「In-boreソリューション」

 

ITEM2022でローンチしたMR 5300は,7Lという少ない液体ヘリウムで運用が可能な「BlueSealマグネット」により,世界的にヘリウムが高騰する中で高い評価を得ており,発売後の1年間で26台の受注があった。ブースでは,MR 5300に搭載されている「Breezeコイル」などが展示された。

軽くてフレキシブルな「Breezeコイル」

軽くてフレキシブルな「Breezeコイル」

 

スピードとImage Qualityを追求する高速イメージングSmartSpeedは,圧縮センシング技術「Compressed SENSE」のアルゴリズムにAIを融合した「One-Go Physics driven」というノイズ低減を行っている。その結果,スキャン時間を最大設定倍速32倍にすることが可能となり,加えて最大2048マトリクスの高分解能画像を時間内に撮像可能になった。また,基本シーケンスの97%に適応可能な汎用性の高さもポイントである。

高速イメージング「SmartSpeed」

高速イメージング「SmartSpeed」

 

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