Session Ⅳ : New Horizon in CT Diagnosis 
整形 Ⅱ 
運動器領域におけるDE-CTの利用 福田国彦(東京慈恵会医科大学放射線医学講座)

2013-11-25


福田国彦

本講演では,Dual Energy Imaging(以下,DEイメージング)におけるmaterial decomposition(組織識別)のうちのBM image(bone marrow:non-calcium image)と,virtual monoenergetic image(仮想単色エネルギー画像)による金属アーチファクト低減について報告する。

BM image

●足関節外傷

2012年,Radiology誌でGuggenbergerらが,BM image(bone marrow image:骨髄イメージ)について報告している1)。24歳,男性の足関節外傷に対してDEイメージングを行い,距骨ドームレベルについて,80kVと140kVのweighted-average imageとBM imageを比較した(図1)。weighted-average image(図1a)では所見は認められなかったが,BM image(図1b)で高吸収域(→)が見られ,MRI(図1c)にて該当箇所に骨挫傷(→)が認められた。
従来のCTでは,骨髄内を観察することはできなかったが,DEイメージングのカルシウム・サブトラクション・イメージにより,骨髄の状態をある程度観察することが可能となってきている。

図1 24歳,男性,足関節外傷1)

図1 24歳,男性,足関節外傷1)

 

●脊椎圧迫骨折におけるDEイメージングによるBMEの評価

Wangらは2013年のRadiology誌で,圧迫骨折によるborn marrow edema(BME:骨髄浮腫)をDEイメージングで評価した報告を行っている2)。SOMATOM Definition Flashを用いて63症例,112か所の脊椎圧迫骨折を対象にDEイメージングを撮影し,MRIをゴールドスタンダードとして評価した。DEイメージングのアプリケーションであるLiver VNC(Virtual Non Contrast)を用いてBM imageを作成し,CT値を計測している(図2)。L2のCT値は,−84.80HUで通常の脂肪髄の値を示しているが,L1は−9.52HUであり,急性期の新鮮骨折であると判断できた。
BM imageでは,極端な骨硬化のある慢性化した骨折や,偽関節化したガスのあるようなBMEは検出できなかったが,それ以外では,新鮮骨折の鑑別が可能であったと報告している。

図2 脊椎圧迫骨折におけるDEイメージングによるBMEの評価2)

図2 脊椎圧迫骨折におけるDEイメージングによるBMEの評価2)

 

●骨悪性リンパ腫の治療後

当院にて診療中の72歳,男性の骨悪性リンパ腫の治療効果をBM imageにて評価した(図3)。weighted-average imageでは,寛骨臼蓋から腸骨翼にかけて骨硬化が見られる(図3a)。BM image(図3b)を作成し骨髄の様子を観察すると,脂肪髄に変わっていることが確認でき,治療効果が得られたと判断できた。

図3 72歳,男性,骨悪性リンパ腫の治療後

図3 72歳,男性,骨悪性リンパ腫の治療後

 

●右腰部痛と発熱

44歳,男性。右腰部痛と発熱にて当院を受診した症例に対して,DEイメージングを行った(図4)。右腰部痛と発熱という症状から,weighted-average image(図4a)でも関節炎であることが考えられるが,BM image(図4b)で観察すると,右仙腸関節を中心に,右腸骨翼から左仙骨翼にかけての骨髄内の高吸収化が認められ,仙腸関節炎との診断を付けることができる。

図4 44歳,男性,右腰部痛と発熱

図4 44歳,男性,右腰部痛と発熱

 

Metal artifact reduction
金属アーチファクト低減

●金属アーチファクト低減のファントム実験

Lewisらは2013年,SOMATOM Definition Flashを用いたvirtual monoenergetic imageによる金属アーチファクト低減についてのファントム実験を行い3),Skeletal Radiology誌で発表した。ファントムを100kVpと140kVpで撮影し,40〜190keVまでの10keVきざみでvirtual monoenergetic imageを作成し評価した(図5)。200mA,40keVでは非常に強いストリークアーチファクトが見られた(図5a)。通常のMix画像(図5b)でもアーチファクトが認められるが,200mA,190keV(図5c)では,コントラストは失われるものの,ほとんど金属アーチファクトは見られなかったと報告している。

図5  metal artifact reductionのファントム実験3)

図5  metal artifact reductionのファントム実験3)

 

●後方椎体間固定術のフォローアップ

後方椎体間固定術を行った当院の症例では,120kVp相当のweighted-average image(図6a)や,80keVのmonoenergetic image(図6b)では,金属アーチファクトによりスクリューの状態を観察することは難しい。一方,130keVのmonoenergetic image(図6c)では,比較的明瞭にスクリューの溝まで観察することができ,術後早期からスクリューの弛みの状態を確認することができると考えられる。
なお,2011年にEuropean Radiology誌でBambergらが,DEイメージングにて,術後早期にスクリューの弛みの状態がスクリュー表面の透亮像として認められたことを報告している(図74)

図6  metal artifact reduction

図6  metal artifact reduction

 

図7 loosening of pedicle screws4)

図7 loosening of pedicle screws4)

 

まとめ

DEイメージングによるBM imageとmetal artifact reductionはともに,臨床的に有用性のある画像と言えるだろう。特に,BM imageについては,急性外傷の患者に対して最初からDEイメージングを撮影するという適用も見込める。
metal artifact reductionについては,現在はsyngo.viaを用いて後処理で容易に行えるため,使用価値が高いと思われる。

 

●参考文献
1)Guggenberger, R., et al.:Diagnostic Performance of Dual-Energy CT for the Detection of Traumatic Bone Marrow Lesions in the Ankle ; Comparison with MR Imaging. Radiology, 264, 164〜173, 2012.
2)Wang, C. K., et al : Bone Marrow Edema in Vertebral Compression Fractures ; Detection with Dual-Energy CT. Radiology, 2013(Epub ahead of print).
3)Lewis, M., et al. : Reducing the effects of metal artefact using high keV monoenergetic reconstruction of dual energy CT (DECT) in hip replacements. Skeletal Radiology, 42, 275〜282, 2013.
4)Bamberg, F., et al., : Metal artifact reduction by dual energy computed tomography using monoenergetic extrapolation. Eur. Radiol., 21, 1424〜1429, 2011.


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