Session I CT Image Contest 2014 Japanese Edition
Best Clinical Outcomes with Right Dose

2014-11-25


Care Right

シーメンス・ジャパンは“Best Clinical Outcomes with Right Dose”,すなわち適切な線量で臨床における最大の成果を上げるCT画像をコンセプトに,CT Image Contest 2014 Japanese Editionを昨年に引き続き開催しました。
CT Image Contest 2014 Japanese EditionはCT検査における画質と被ばく低減の両立というコンセプトのもと,3つの審査基準を設けました。
(1) 画質と被ばくのバランス:画質を担保した上でのLow Doseの実現
(2) 臨床的有用性:病態を的確に描出し,治療法の選択において重要な指針となる,臨床現場で生まれた最も有用で必要とされる画像
(3) 理想のCT画像を撮影するための技術的取り組みと貢献
審査に際しては,上記3つの基準に照らし合わせ,撮影条件や訴求ポイント,画像所見などを重視し,5名の審査委員が厳正な審査を行いました。
応募ケースの中から,カテゴリー別部門賞6名と最優秀賞1名が選出され,「SOMATOM Symposium 2014」のSessionⅠにおいて受賞者の発表が行われました。いずれも撮影者の創意工夫によるすばらしいCT画像が紹介されました。

【審査委員長】
今井 裕(東海大学医学部専門診療学系画像診断学)
【審査委員】
内藤博昭(国立循環器病研究センター病院)
福田国彦(東京慈恵会医科大学放射線医学講座)
市川勝弘(金沢大学医薬保健研究域保健学系)
平野雅春(東京医科大学内科学第二講座)

【対象機種】
SOMATOM 全ラインナップ
SOMATOM Spirit
SOMATOM Emotionシリーズ
SOMATOM Sensationシリーズ
SOMATOM Perspectiveシリーズ
SOMATOM Definition ASシリーズ
SOMATOM Definition Edge
SOMATOM Definition
SOMATOM Definition Flash
その他SOMATOM CT

【対象カテゴリー】
General, Cardio-Vascular, Neuro,Oncology, Dual Energy, Pediatric, Technical

Best Overall(最優秀賞)

長田弘二

長田弘二
(金沢医科大学病院医療技術部診療放射線技術部門)

腸回転異常
【背 景】腸回転異常術後の経過観察中に嘔吐を繰り返し当院紹介となった男児(検査時1歳1か月,78.7cm,10.2kg)。腹部超音波検査で中腸軸捻転再発と診断され,術前の血管および腸管状態把握のためCT検査施行となった。
【所 見】腸回転異常,中腸軸捻転再発。動脈相,門脈相の画像では十二指腸,結腸静脈,SMVがSMAを時計回りに回転走行し,SMAの狭窄,圧排,SMVの怒張が認められ,十二指腸近傍の静脈のうっ滞が考えられた。平衡相画像では腸管は右側優位に液体貯留・軽度の壁肥厚・十二指腸近傍の腸管虚血が認められたが,正中左寄り(十二指腸近傍)の腸管の一部を除いて腸管壁の造影効果は認められた。以上の所見より,腸管虚血の確認と捻転解除のため手術が施行された。
【訴求ポイント】(1) 血管走行の確認(動静脈の把握):血管走行の正確な把握には高い造影効果画像が有用である。特に静脈系の描出には造影剤の減量は好ましくない。しかし,本症例は幼児のため注入量・注入速度の検討を考え,管電圧70kVを使用した。これにより, 注入量の減量(600mgI/kg → 450mgI/kg)および注入速度の低速化にもかかわらず,3D画像作成が可能な高い造影効果画像を得ることができた。(2) アーチファクトの少ない良質な画像における腸管状態:幼児は腸管ガスのアーチファクトが問題となる。アーチファクトを低減するに当たり,シングル管球検査はFlash Spiralと比較し良好な画質となるが,被ばく線量は増加する。そこでFlash Spiralを使用し,ヘリカルピッチを変更(HP 3.2→2.35)した結果,アーチファクトの軽減および被ばく線量低減(CTDIvol約45%低減*シングル管球検査80kV/HP 1.0/0.33s/水ファントム比)の両立が可能となった。こうした工夫により,術前シミュレーションに役立つ良質かつ低被ばく検査が達成できた。

腸回転異常
腸回転異常

 

General部門

田村文香

田村文香
(東京都保健医療公社 大久保病院放射線科)

低管電圧(80kV)を使用した胸部CTA
【背 景】70歳代,男性。肺アスペルギルス症にて外来通院中に喀血出現。肺実質の炎症性病変の分布,気管支動脈-肺動脈シャントの評価,経カテーテル的治療に必要な血管解剖の把握を目的に,低管電圧(80kV)を使用した胸部CTAを施行した。
【所 見】肺野に著明な気腫性変化があり,ブラが散見された。左上葉の気管支拡張と炎症瘢痕形成が認められた。造影CTでは両側気管支動脈が発達しており,左気管支動脈は一部拡張蛇行している。逆行性に造影される左上葉肺動脈が描出され,気管支動脈-肺動脈シャントも確認できた。
【訴求ポイント】(1) 造影剤注入方法:24 mgI/kg/sを採用し,秒間4.0 mL以上で10秒急速注入。(2) 生理食塩水の後押し:秒間4.5 mLで4.4秒,20 mLの生理食塩水を注入。目的となる血管の描出能が向上した。(3) 管電圧:80kVの低管電圧を選択し,CARE kVのSemi modeで撮影。コントラストの向上と被ばく線量の低減を実現。(4) 術前プランニング画像:ワークステーションにて画像を作成。IVRの被ばく低減に寄与した。
胸部CTAにより気管支動脈-肺動脈シャントを良好に描出することができた。Right Doseテクノロジーを駆使することで,低管電圧,低ヨード造影剤量,低被ばく,IVRの被ばく低減が可能であった。

低管電圧(80kV)を使用した胸部CTA
低管電圧(80kV)を使用した胸部CTA

 

Cardio-Vascular部門

鷲塚冬記

鷲塚冬記
(東邦大学医療センター大森病院中央放射線部)

急性大動脈解離と下肢動脈血栓症を有す患者の造影
【背 景】急性大動脈解離Stanford Bの診断で緊急入院した76歳,男性(181cm,76.8kg)。腹部大動脈瘤,両側大腿動脈瘤に対して人工血管置換術が施行されている。入院後,下肢エコーで右大腿動脈から膝窩動脈にかけての血栓が確認され,大動脈解離のフォローアップと下肢動脈血栓の確認の目的で造影CTが依頼された。
【所 見】大動脈遠位弓部より腎動脈分岐下の腹部大動脈にかけて偽腔開存型の解離を認める。腹腔動脈,上腸間膜動脈,右腎動脈は真腔分岐,左腎動脈は偽腔分岐。右腎中極および左腎の造影効果が遅延しており,血流低下が示唆される。右膝窩動脈の造影効果が約14cmにわたり消失している。下肢3分岐の血流は左より細いものの描出されている。
【訴求ポイント】本症例は急性大動脈解離と下肢動脈血栓症を有している患者であり,スキャン対象範囲は163cmと広範囲となった。CARE Bolus,Test Bolusを利用しても,胸部から下肢すべての血管が造影されているタイミングを得るのは非常に難しい。そこで,テストインジェクション時に撮影近位部でモニタリングを行い造影剤到達時間を得て,すぐに撮影遠位部に移動しモニタリングすることにより撮影時間を得るプロトコルを作成した。それにより,スキャン範囲が広範囲でもスキャンが造影剤を追い越すことなく,良好なCTAを得ることが可能となる。本症例は左右の足関節レベルにおける造影剤到達時間に約12秒の差があるため造影剤の増量が必要となったが,症例によっては大幅な造影剤の減量が可能と考えられる。さらに,最適な撮影時間が予測できるためDual Energyでの撮影も可能となり,virtual non-contrast,石灰化除去,monoenergetic imagingなどのアプリケーションも使用できる。

急性大動脈解離と下肢動脈血栓症を有す患者の造影
急性大動脈解離と下肢動脈血栓症を有す患者の造影

 

Oncology部門

吉田亮一

吉田亮一
(東海大学医学部付属病院診療技術部放射線技術科)

右肺動脈INTIMAL SARCOMAと血栓の鑑別
【背 景】35歳,男性,既往歴なし。呼吸に伴う右胸痛,右肩痛にて来院。胸部X-P,胸部CTにて右肺動脈に腫瘍性病変を認め,腫瘍と血栓の鑑別のため精査にて造影Dual Energy CT(動脈相,平衡相)撮影を行った。
【所 見】Right main PA〜下行枝内を中心に,動脈相にて低吸収を示す部位が認められる。動脈相,平衡相で見ると,同部位はやや不均一であり造影効果が疑われる。動脈相と平衡相でのDual Energy Iodine Imageを比較してみると,動脈相では右肺動脈全体の造影効果が乏しいが,その後の平衡相では腫瘍部分が染まっていることが確認できる。末梢部分は腫瘍塞栓によって血栓化したものと考えられ,血栓+腫瘍の存在が疑われる。肺野末梢には浸潤影が多発し,特に下葉では胸膜直下に多数認められ,肺梗塞による変化と思われる。動脈相と平衡相でのLung PBV画像を比較してみると,動脈相での虚血領域が平衡相では補われていることが確認できる。これは気管支動脈,側副血行路による血流により保たれていると考える。
【訴求ポイント】Liver VNCを用いたIodine Imageと比較することで右肺動脈腫瘍の浸潤範囲を同定し,腫瘍と血栓を鑑別できた。通常のCT 画像では腫瘍と血栓の境界が判断しづらいが,Iodine Imageでは視覚的に境界を認識することができている。また,動脈相のLung PBV画像では肺梗塞部を視覚的に確認でき,平衡相のLung PBV画像では気管支動脈や側副血行路により血流が保たれていることが確認できる。

右肺動脈INTIMAL SARCOMAと血栓の鑑別
右肺動脈INTIMAL SARCOMAと血栓の鑑別

 

Dual Energy部門

川嶋広貴

川嶋広貴
(金沢大学附属病院放射線部)

変型性足関節症における骨髄浮腫の描出
【背 景】78歳,女性。過去に右距骨骨壊死を認め手術歴あり。術後約20年の経過で右足関節の疼痛,腫脹が悪化し,足関節固定術の適応と判断され当院に紹介された。骨評価用画像に加え骨髄浮腫の状態を確認するため,Dual Energy CT(DECT)による撮影が依頼された。
【所 見】CT骨画像では距踵舟関節を主体に骨棘形成および骨癒合あり。高度な距骨下主体の変形性関節症も認められる。MRI(STIR像)では骨髄浮腫も強く,距骨や舟状骨,踵骨,立方骨の信号変化も目立つ。DECTのアプリケーションであるLiver VNC Boneを用いて解析したBone Marrow Image(BMI)では,MRI(STIR像)と比較し,矢状断で見られる距骨全体の骨髄浮腫が見られる。冠状断では,MRIの信号変化と類似した脛骨の信号変化も認められた。
【訴求ポイント】過去の解析結果から作成した当院オリジナルのカラーLUTを使用し,Dual Energyを用いたBMIに重ね合わせることで視覚的にも骨髄浮腫の評価が明確となった。また,80kV/Sn140kVの組み合わせを使用することで,100kV/Sn140kVよりも解析精度の向上と20%程度の被ばく低減が可能であった。さらに,術前に施行される両側足関節のCT検査に付随する形でDECTによる骨髄浮腫の評価を行ったことにより,健側がその範囲や程度を比較する指標として役立った。

変型性足関節症における骨髄浮腫の描出
変型性足関節症における骨髄浮腫の描出

 

Pediatric

佐藤和宏

佐藤和宏
(東北大学病院診療技術部放射線部門)

小児における低被ばく撮影
【背 景】胎児期に左胸腔内病変が指摘されていた10か月の男児。肺分画症が疑われ,術前精査目的にCT検査が依頼された。分画肺の性状,動静脈の走行,気管支の走行の評価,および血管の3D構築が依頼された。
【所 見】左下肺縦隔側にconsolidationを認める。この部位に胸部下行大動脈から体循環系の異常血管が2本流入している。流出静脈は肺静脈と奇静脈への2方向に認める。気管支構造と思われるair densityをconsolidation内に認めるが,正常気管支との連続性は認められない。肺葉内分画症が疑われる。また,漏斗胸を認める。
【訴求ポイント】肺分画症の術前診断および術前プランニングを目的としたCT検査が依頼された。肺分画症では動静脈および気管支の走行を正確に把握する必要があるが,乳幼児では息止めが困難である。そこで,Flash Spiralによる高速撮影を行い,モーションアーチファクトの低減を図った。造影タイミングの異なる肺動静脈,大動脈系,静脈系を明瞭に描出するためには,ある程度の注入時間を確保することが必要である。そのため本症例では,造影剤を18秒間で注入した。本症例は生後10か月であることから,可能な限り被ばくを低減し,かつ診断可能な画質が担保できる撮影条件を設定した。

小児における低被ばく撮影
小児における低被ばく撮影

 

Technical部門

永澤直樹

永澤直樹
(三重大学医学部附属病院中央放射線部)

画像加算平均処理を用いた遅延造影CTによる心筋梗塞の描出
【背 景】61歳,女性。1か月前より胸部症状があり,異型狭心症疑いにて心臓CTがオーダされ,冠動脈CTや心筋パーフュージョンを撮影した際に心筋遅延造影CTが施行された。
【所 見】心筋遅延造影CTでは,心尖部(セグメント#14,15,16,17)にほぼ貫壁性の遅延造影が認められた。側壁(#16)には菲薄化が認められた。
【訴求ポイント】心筋梗塞検出のための遅延造影CTは一般的にコントラストが低く,梗塞巣の評価が難しいことがある。また,心電同期によるハーフ再構成特有のアーチファクトにより,心筋の評価が難しいことがある。そこで今回,心筋パーフュージョンと冠動脈CTAで使用した体内に残っている造影剤を利用し,画像加算平均処理を用いた遅延造影を撮影した。SNRを高めるため連続4回撮影し,non-rigidの位置合わせ(ズレの補正)も含めた画像加算平均処理を行った。この処理はコンソール上のVPCTソフトウェアを用いるため,簡便かつルーチンに行うことが可能である。撮影にはコントラストを高め,被ばくを抑えるため低管電圧(80kV)を使用し,さらに心電同期によるハーフ再構成特有のアーチファクトを防ぐため,再構成関数はB23(targeted spatial frequency filtration)を選択した。

画像加算平均処理を用いた遅延造影CTによる心筋梗塞の描出
画像加算平均処理を用いた遅延造影CTによる心筋梗塞の描出

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