Dual Energy Imaging 
Single Source CTによるDual Energy Imagingの臨床応用 
丹羽 徹(東海大学医学部専門診療学系画像診断学)
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2014-11-25


丹羽 徹(東海大学医学部専門診療学系画像診断学)

多様化するDual Energy Imagingの撮影手法は,Dual Source CTのほか,Single Source CTでスキャンを2回行って情報を得るSuccessive Scanning,Low kVとHigh kVを切り換えて撮影するFast kV-switchingやSlow kV-switching,2層のディテクタで情報を得るDual Layer Detectorなどがある。当院では,シーメンス社製Single Source CT「SOMATOM Definition Edge」を用いて,Successive ScanningにてDual Energy Imagingを行っており,本講演では,その特徴および概略を述べ,臨床例を提示する。

装置の特徴とSuccessive Scanningの概略

SOMATOM Definition EdgeによるDual Energy Imagingは,0.6mm×128列で撮影を行う。FoVは500mmが可能なため,肩や骨盤内,撮影中心から離れた部位にも適応可能である。撮影は,1回目のスキャンを80kVで行い,連続して寝台移動後に2回目の撮影を140kVで行うが,20cmを約10秒,40cmを約20秒で施行可能であり,通常の息止めの範囲内で,120kVpの撮影と同等の被ばく線量でDual Energy Imagingを行うことができる(図1)。スキャンを2回行うことによる被ばくの増大は,自動管電流調整機構“CARE Dose4D”,raw dataを使用したモデルベース逐次近似画像再構成法“SAFIRE”,次世代型検出器“Stellar Detector”などの被ばく低減機構により,従来の1回撮影と同等の被ばく線量での撮影を可能としている。さらに,2回目の撮影ではピッチを2倍にするため,全体的な撮影時間はあまり延長しない。

図1 SOMATOM Definition EdgeによるDual Energy Imaging

図1 SOMATOM Definition EdgeによるDual Energy Imaging

 

主な適応は,動きがない,もしくは動きの少ない四肢や椎体,後腹膜などであり,造影CTや動きの多い部位,広範囲撮影は現時点では適応とならない。
Dual Energy Imagingの解析処理は,同社の画像診断ITソリューションである“syngo.via”を用いて行う。syngo.viaは読影端末の横に設置して画像を呼び出し,リアルタイムに観察しながら診断する読影支援システムというコンセプトで作られている。実際の解析処理は,低エネルギー画像と高エネルギー画像の自動位置合わせを非剛体処理にて行い,その結果が自動的に表示される。患者によっては,短い息止め時間でも体動によりズレが生じ,位置が合わないこともあるが,その場合はアラートが表示されるほか,2つの画像を比較し,画像処理の状態を確認しながら読影することができる。
syngo.viaには多くのアプリケーションが搭載されているが,そのうちSingle Source CTによるDual Energy Imagingの解析処理に用いられるものを図2に示す。一般的に,腎結石を解析する“Kidney Stones”や,金属アーチファクトを軽減する“Monoenergetic”などがよく用いられる。

図2 syngo.viaに搭載されたSingle Source CTのDual Energy解析アプリケーション

図2 syngo.viaに搭載されたSingle Source CTの
Dual Energy解析アプリケーション

 

症例提示

1)金属アーチファクト軽減
金属アーチファクトの軽減に用いられるmonoenergetic image(monochromatic image,仮想単色X線画像)は,80kVと140kVの画像から任意のエネルギー(40〜190keV)に相当する仮想的なイメージを作成する技術である。金属アーチファクトは,金属を通過する際に高エネルギー成分が残り,低エネルギー成分を吸収(ビームハードニング)することで生じるが,monoenergetic imageによって大幅に軽減することができる。通常,100〜140keVが良好であるが,syngo.viaではスライディングバーで画像を動かしながら,アーチファクトの少ない最適なエネルギーでの画像を確認し,リアルタイムに診断することができる。
症例1は,60歳代,女性,大腿骨頸部骨折。かなり厚い金属プレートで骨折部位が固定されているが,その骨癒合の状態の評価のためにDual Energy CTが施行された。撮影パラメータを図3に示す。monoenergetic image(図4a)では,金属アーチファクトが大幅に軽減した画像が得られ,自動作成される3D画像(図4b)と併せて診断可能である。
図5は,syngo.viaで表示されるmonoenergetic imageである。実際には1keVごとに表示されるため,その中から最も評価しやすい画像を選択する。患者がリハビリに移行するタイミングの評価などにきわめて有用である。

図3 症例1:金属アーチファクト軽減症例の撮影パラメータ

図3 症例1:金属アーチファクト軽減症例の撮影パラメータ

 

図4 症例1:monoenergetic image(a)とその3D画像(b)

図4 症例1:monoenergetic image(a)とその3D画像(b)

 

図5 症例1:monoenergetic image におけるkeVと金属アーチファクト軽減の関係

図5 症例1:monoenergetic image における
keVと金属アーチファクト軽減の関係

 

2)腎結石
腎結石にはさまざまな種類があるが,Dual Energy Imagingでその性状を分析することができる。なかでも,尿酸結石は薬物治療が可能なため,性状を分析することは臨床的にも意義が大きい。
症例2は,40歳代,男性。腎結石と腎盂腎炎を繰り返しており,結石性状評価のためにDual Energy CTを施行した。撮影範囲は480mmと広いが,1回目のスキャンが約11秒,寝台移動が5秒,2回目のスキャンが約5.9秒と,計約22秒で施行できた(図6)。本症例は腹部のためやや動きがあるが,syngo.viaでは各画像の自動位置合わせが行われ,結石の位置が自動認識される(図7)。まれに金属が留置されている症例で結石が誤認識されることがあるが,3D画像で確認すれば十分に認識可能である。結石の性状を示すプロット図も自動で表示され(図8),本症例の結石は基準となるラインよりも下側のため,尿酸結石と診断された。

図6 症例2:腎結石症例の撮影パラメータ

図6 症例2:腎結石症例の撮影パラメータ

 

図7 症例2:120kV相当の混合画像(a)とsyngo. viaによる結石の自動認識結果(b)

図7 症例2:120kV相当の混合画像(a)と
syngo. viaによる結石の自動認識結果(b)

 

図8 症例2:腎結石のサイズと体積の自動計測結果(a)と腎結石の性状を示すプロット図(b)

図8 症例2:腎結石のサイズと体積の自動計測結果(a)と
腎結石の性状を示すプロット図(b)

 

まとめ

SOMATOM Definition Edgeは,Single Source CTでのDual Energy Imagingが可能なシステムであり,通常のCT撮影の延長線上でDual Energy CTを施行可能である。CARE Dose4Dによる線量の最適化や逐次近似画像再構成法SAFIREの搭載,次世代型検出器Stellar Detectorにより,撮影を2回行っても被ばく線量が増大しない機構となっている。現時点では造影時のDual Energy Imagingは困難だが,動きのない,もしくは少ない部位であれば十分に臨床応用可能である。

 

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