マルチモダリティ/マルチベンダー対応医療放射線情報一元管理システム「Radimetrics」による線量管理の実際 
佐藤 和彦/上田 淳平/遠地 志太/井窪 俊介/藤埜 浩一(大阪大学医学部附属病院医療技術部放射線部門)
大阪大学医学部附属病院 × 医療放射線情報一元管理システム「Radimetrics」(バイエル薬品)

2019-11-27


被ばく線量管理ケーススタディ

はじめに

CTは日常診療の中で欠かせないイメージングモダリティとなっており,装置ならびにワークステーションなどの周辺機器の性能向上により,CT画像の利活用の領域は大きく広がっている。本邦におけるCTの装置台数ならびに実施検査数は増加の一途をたどっており,医療放射線被ばく増加の大きな要因となっている。2018年度の診療報酬改定にて新設された画像診断管理加算3の施設要件には,被ばく線量管理が盛り込まれ,2020年4月から医療被ばくの線量管理・記録が義務化されることとなる。本稿では当院に導入した医療放射線情報一元管理システム「Radimetrics」(バイエル薬品社)の導入と運用経験を紹介する。

システム導入の動機

当院では,これまで照射録の仕組みを用いて線量情報の管理を行ってきた。検査終了時にCTで生成される照射線量情報(線量レポート)の数値を,放射線情報システム(以下,RIS)に手入力し,線量情報,オーダ情報,そして,実施スタッフなどの情報とともに照射録として登録,管理するものであった。
年間何万件と実施されるCT検査の線量情報を蓄積するに当たり,これまでのデータ収集方法は正確性を考慮すると不十分であり,入力者の負担となることは想像に難くない。加えて昨今のCT検査数は増加傾向にあり,高齢の患者も増える中,各検査の線量情報を漏れなく自動で蓄積する仕組みは,線量管理を継続的に行う上で非常に魅力的なものであった。
線量管理システム導入を検討する上で,長期的な運用を考慮したシステム選定の主なモチベーションは,(1) 線量データを自動収集できること,(2) DICOM線量レポート規格(Radiation Dose Structured Report:RDSR)に則ったマルチベンダー対応であること,(3) 解析データのビジュアライズ機能が豊富であることであった。

システム導入の経緯

これまでCT検査による被ばく線量を管理,シミュレーションするソフトウエアはいくつか発売されていた。院内の各CTから出力される被ばく線量データを統合的に管理できる良い仕組みがないか模索をしていたところ,以前より注目していたRadimetricsを,バイエル薬品社が国内で取り扱いを開始することを知ることとなる。それをきっかけとし,2014年3月にマルチモダリティに対応したRadimetricsを本邦初のシステムとして当院に導入することとなった。導入後,CTの線量情報の管理を開始し,現在では血管造影装置,PETなどマルチモダリティに対応した線量管理を行える環境となっている。

システム構築の工夫

Radimetricsはマルチモダリティ対応であり,CTメーカーに依存しないベンダーニュートラルなシステムである。自動的に収集されるデータの通信は,DICOM RDSR規格に対応している。図1に,当院の線量管理システムのネットワーク構成を示す。Radimetricsはゲートウェイを介してPACSサーバと接続されており,さまざまなモダリティの線量情報を自動収集することができる。Radimetricsは,実効直径から求められるsize-specific dose estimates(以下,SSDE)線量指標に加え,水等価直径を用いたSSDE線量指標の算出も可能である。これらの算出にはCTから出力された画像データを用いるため,すべての画像をRadimetricsに取得する。CTからRadimetricsサーバに転送される画像データならびにRDSRデータは,ネットワーク上のトラフィックを軽減させるため,ゲートウェイを介して送信されている。院内のHIS・RIS端末からはWeb連携にて患者がこれまで受けた検査の累積被ばく線量を閲覧できるようにもなっている(図2)。

図1 線量管理システムネットワーク構成図

図1 線量管理システムネットワーク構成図

 

図2 HIS・RISとのWeb連携による累計被ばく線量管理画面

図2 HIS・RISとのWeb連携による累計被ばく線量管理画面

 

画像診断管理加算3における線量管理システムの役割

画像診断管理加算3の施設基準では,特定機能病院を対象とし,画像診断を専らとする医師が画像情報の管理を行い,核医学診断およびCT診断の8割以上の読影結果が翌診療日までに報告されていることなどが定められている。また,関係学会の定める指針に基づいて,適切な被ばく線量管理を行っていること,その際,施設内すべてのCT検査の線量情報を電子的に記録し,患者単位および検査プロトコール単位で集計・管理の上,被ばく線量の最適化を行っていることを定めている。関係学会の定める指針とは,日本医学放射線学会の「エックス線CT被ばく線量管理指針」1)などを指している。この指針では,診断参考レベル(diagnostic reference level:DRL)を利用して,適切な被ばく線量管理が行えるよう,具体的な管理方法を提示している。これらに準じて管理をすることで,CT検査がより安全に精度高く実施されるとして,(1) 線量管理体制,(2) 被ばく線量の記録,(3) 撮影プロトコール,(4) 被ばく線量管理,(5) CTの品質管理,(6) 線量調査への参加の6項目を提示している。
ここでは,(2) 被ばく線量の記録,(3) 撮影プロトコールを中心に,線量管理システムを用いた当院の対応状況を紹介する。(2) 被ばく線量の記録については,「DICOM規格の線量レポート(DICOM RDSR)を作成し記録・保存すること。RDSRが作成できないCT装置の場合は,検査ごとの被ばく線量やスキャン条件(mAs)等を記録・保存すること」としている。Radimetricsの導入当初,当院のPACSサーバはDICOM RDSRに未対応であった。このため,CT検査ごとに出力される照射線量情報レポートをRadimetricsに搭載のOCR機能にて,数値・文字データとして記録・保存することで対応していた。このOCR機能は,各メーカーのCTやソフトウエアバージョンによりレイアウトの異なる照射線量情報レポートの読み取りを可能としている。DICOM RDSR規格に対応できない状況においては,構成システムの仕様や費用に応じて施設ごとに対応策を模索する必要があるだろう。
また,(3) 撮影プロトコールについては,「撮影プロトコルをリスト化し,適宜見直しを行うこと。小児用のプロトコルは成人用とは別に作成すること」としている。当院では,これまで自施設で定めた撮影プロトコールを共通の番号で管理し,各メーカーのCT装置に登録し運用してきた。プロトコール名は半角英数字とし,当院固有の共通番号を割り振り管理してきた(「6.01 Whole Abdomen」など)。共通番号による管理方法は,収集された線量データの解析においても効果を発揮する。今後,JJ1017コード2)やRadLexコード2)との紐づけを行うことで,線量アンケートや線量登録制度への対応がより速やかに行えるものと考えている。また,小児用の撮影プロトコールでは,これまでに年齢や体重ごとに専用メニューを作成しており,ガイドライン3)に基づき被ばく線量低減を考慮したプロトコールを設定できていた。撮影プロトコールの登録ルールやメニューの見直しなどは,メーカーの異なる複数のCTの線量情報を管理する上で重要となる。施設の状況に応じて,撮影プロトコールの管理や線量管理を考慮した仕組みづくりを工夫することが,これらをスマートに進めるポイントとなる。

おわりに

当院における線量管理システム導入の経緯とシステム構築の工夫,そして,画像診断管理加算3に対応したシステム活用の一部を紹介した。現在,線量管理システムはたくさんの製品が提供されている。各施設の実情や導入後の目的に沿ったシステムを選定の上,価値あるシステムの構築をめざしていただきたい。

●参考文献
1)日本医学放射線学会:エックス線CT被ばく線量管理指針. 2015.
http://www.radiology.jp/content/files/20150418_x-ray_ct_guideline.pdf
2)日本放射線技術学会撮影部会 : X線CT撮影における標準化 ~GALACTIC~(改訂2版). 京都, 日本放射線技術学会, 2015.
3)日本医学放射線学会, 日本放射線技術学会, 日本小児放射線学会 : 小児CTガイドライン─被ばく低減のために─. 2005.

 

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