RPAを用いた診断レポート見落とし管理業務の効率化 〜RPAは見落とし対策に有用か〜
吉田 誠治(香川県立中央病院 医療情報管理室)

2020-7-1


画像診断レポートの見落としを防げ!

はじめに

近年,多くの医療機関において診断レポート見落とし事例が発覚し,社会的にも注目される問題となっている。2018年においては,厚生労働省や日本医療機能評価機構からこの問題に対し,注意喚起や医療安全情報が相次いで発出される事態となった。当院においても,2018年時点では部分的な管理しか実施できておらず,同年6月より全体的な診断レポート見落とし管理を開始した。

システム構成

・電子カルテ:富士通社HOPE EGMAIN-GX(V08)
・データウエアハウス(DWH):富士通社HOPE DWH-GX
・RPA:NTTアドバンステクノロジ社WinActor(Ver. 6.1.0)

見落とし管理業務の詳細

1.管理対象とした診断レポート
・放射線検査:CT,MRI,RI,PET/CT
・病理検査:組織診・細胞診検査(2019年実績で年間約6万4000検査)

2.管理内容と管理方法
・検査依頼医師(代行入力含む)が診断レポートを見たか→上記を管理する電子カルテのデータベース(DB)よりSQLでデータ抽出
・研修医が依頼した検査の診断レポートを研修医と指導医の両方が見たか→DWHを用い抽出した複数のデータを処理してデータ抽出

3.管理の実施サイクル
・検査から3週後のチェック(1回目のチェック)
・検査から2か月後のチェック(2回目のチェック)

4.未確認医師への対応方法
・1回目のチェック,2回目のチェックともに未確認医師には電子カルテのメール機能で確認依頼通知を送信
・要注意所見検査については,担当医が着手するまで医療安全管理室が監視

見落とし管理業務の問題点

当院が取り組んでいる見落とし管理業務は上記となるが,見落としデータ抽出を担当する医療情報部門,見落としデータを確認し医師に確認依頼通知を行う医療安全部門としては,上記業務は新たに加わった業務であり,さらに,運用当初はすべての工程を手動で実施するのに半日程度の時間を要するなど,業務負荷は少なくなかった(図1)。
また,運用開始からの約1年半の未確認件数の推移を見ても,これらの取り組みにより医師の意識が変わり,未確認件数が減少するような傾向はまったくなく,継続的な取り組みが必要であることは明白となった(図2)。この状況を改善するため,われわれは診断レポート見落とし管理業務全体の効率化に取り組んだ。

図1 管理業務に必要な時間(運用開始当初)

図1 管理業務に必要な時間(運用開始当初)

 

図2 診断レポートの見落とし管理(確認依頼通知数の推移)

図2 診断レポートの見落とし管理(確認依頼通知数の推移)

 

業務効率化の詳細

1.見落としレポート抽出処理の効率化
・電子カルテDB,DWHからのデータ抽出:7処理
・Excelデータ処理:200工程以上
Excel VBA(Visual Basic for Applications)機能とRPA(Robotic Process Automation)を組み合わせ,上記処理をほぼ自動化した(図3)。

図3 見落としレポート抽出処理の効率化

図3 見落としレポート抽出処理の効率化

 

2.医師への確認依頼メール送信処理の効率化
・この工程を自動化するために,見落としデータから「メール通知用データ」を作成する処理を追加
・電子カルテを操作し,「メール通知用データ」の内容を各医師にメール送信する。
Excel VBA機能とRPAを組み合わせ,上記処理を自動化した(図4,5)。

図4 確認依頼メール送信処理の効率化

図4 確認依頼メール送信処理の効率化

 

図5 確認依頼メール送信処理におけるRPA

図5 確認依頼メール送信処理におけるRPA

 

得られた効率化(図6)

・見落としデータ抽出処理の効率化:3時間→15分
・医師への確認依頼メール送信処理の効率化:2〜3時間→30分
このように,Excel VBAとRPAを組み合わせて処理の自動化を行うことにより,全工程の作業時間は6時間から1時間以下へと大きく効率化した。また,200工程以上のExcel処理や,手作業によるメール送信を自動化することにより,データ処理を含め作業全体の正確性が向上し,さらに,作業者のスキルを必要としないなど,時間短縮以外の効果も得られた。

図6 得られた効率化

図6 得られた効率化

 

まとめと今後の課題

当院では,画像診断のみでなく,病理診断レポートも対象とした診断レポートの見落とし管理体制を構築した。また,検査依頼医師の見落としを管理するのみでなく,依頼医師が研修医であった場合の運用も考慮した見落とし管理体制とした。このように,対象検査数も多く,かつ管理内容も複雑な見落とし管理を行うためには,多くの作業量が必要となり担当部署には業務負荷となるが,RPAといった新しい技術を積極的に活用することにより効率化が図られ,業務負荷軽減に大きく寄与できることが確認できた。
「RPAは見落とし対策に有用か?」
編集部からいただいたテーマではあるが,もちろんRPAが直接見落としを防止することはできない。しかし,われわれが実施している見落とし管理を継続的に行っていく上ですでに欠かせない存在であり,間違いなく「RPAは見落とし対策に有用である」と実感している。
今後の課題としては,現在は「診断レポートを開く=確認ずみ」という管理しかできていないが,医師の意思をもって「このレポートを確認した」という操作が可能な環境や,電子カルテなど日々の業務で使用する画面で未確認レポートの存在を見える化する機能など,診断レポート見落とし管理をさらに向上させる機能の整備も必要であると感じており,現在構築中の次期システムに生かしていこうと考えている。

 

吉田 誠治(香川県立中央病院 医療情報管理室)

(よしだ せいじ)
1990年徳島大学医学部附属診療放射線技師学校卒業,同年診療放射線技師として屋島総合病院入職。2013年医療情報担当として香川県立中央病院に入職。現在,同院医療情報管理室副主幹。上級医療情報技師,医用画像情報専門技師,診療放射線技師。

 

 


(ITvision No.42 画像診断レポートの見落としを防げ!)
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