CTの臨床・研究・開発に携わるすべての人をつなぐ日本X線CT医学会を設立
X線CT技術の医学的価値を最大限に引き出し,さらなる発展と革新をめざす
陣崎雅弘 理事長〔慶應義塾大学医学部放射線科学教室(診断)教授〕に聞く
2026-4-23
医療現場に広く浸透し,現在も著しい技術進歩を続けるX線CTについて,あらゆる関係者が集い職種を超えた議論を行うため,2025年に「日本X線CT医学会」が設立された。2026年5月16日(土),17日(日)には,品川シーズンテラスカンファレンス(東京都港区)で第1回学術集会が開催される(5月末〜7月31日までオンデマンド配信を予定)。新学会の設立と第1回学術集会の見どころについて,大会長を務める陣崎雅弘理事長にインタビューした。
CTを柱に3つの研究会を合併し職種を超えて横断的に議論できる場を創出
─日本X線CT医学会を設立した背景と経緯についてお聞かせください。
近年,フォトンカウンティングCTや超高精細CT,四次元CT,マルチポジションCT,さらに人工知能(AI)の導入と,CT技術は大幅な進化を遂げています。しかし,CTに特化して,関係者が職種を超えて横断的に議論できる場はあまりありませんでした。これは世界的に見ても同様で,MRIや核医学,IVRと違って,CTは誰もが携わる,あまりにも普遍的な検査となっていることが影響していると思います。同じく,動態撮影など新たな技術が開発,臨床応用されているX線も含めて,進化が著しい技術について議論する場が必要だと考えていました。
国内では,日本医学放射線学会という基盤的な学会に加えて,日本磁気共鳴医学会,日本超音波医学会,日本核医学会,日本IVR学会,日本放射線腫瘍学会があるのに対してCTには柱となる学会がありませんでした。そこで,学会設立を見据えて,Society of Advanced Medical Imaging(SAMI)の分科会として2016年に「最先端CT研究会」を設立しました。また,2024年の日本医学放射線学会総会で開催した,海外の著名なCT研究者を招いた国際CTシンポジウムをとおして,最新のCT技術に関する議論の場の必要性を改めて強く認識し,学会設立に向けて準備を進めました。最先端CT研究会で学会設立の意向を表明したところ,2つの研究会から合併の申し出をいただきました。一つはCTの基礎概念を世界に先駆けて提唱した高橋信次先生らが設立した「断層映像研究会」,もう一つは当教室前教授の栗林幸夫先生が立ち上げた「循環器MDCT研究会」です。50年以上にわたり断層映像を主体として基礎的・臨床的な研究を推進してきた断層映像研究会と,循環器内科医と放射線科医が心臓CTの進歩と普及を図ってきた循環器MDCT研究会との合流は,X線・CT技術を包括的に扱う学会として大変意義深いものです。こうして3つの研究会が合併し,2025年9月に一般社団法人日本X線CT医学会を設立しました。
─学会の目的と事業内容,会員資格について教えてください。
本学会の目的は,教育・研究・臨床を融合させた新たな学術基盤を構築して,国内外の専門家との交流と協働を促進することにより,X線・CT技術がもたらす医学的価値を最大限に引き出すことです。そのために,学術集会やセミナー,シンポジウムの開催,学会誌などの発行,調査研究やその助成といった事業に取り組んでいきます。
本学会の特徴の一つが,CTに携わる人々が職種や立場を超えて参加する点です。従来は,医師,診療放射線技師,工学系研究者,技術者,産業界がそれぞれバラバラに取り組んでいることが課題だと感じていたため,そこに横串を刺して垣根を越えて議論ができる場とすることをめざしています。放射線科や循環器内科を中心とした医師だけでなく,診療放射線技師などのコメディカル,学生,企業が一堂に会することで,学術的な視点,臨床的な視点,産業的な視点が一体となり,CT医療のいっそうの向上が図れると考えます。学会の理事・評議員には,放射線科医,診療放射線技師,工学系研究者,メーカーの方も名を連ねており,今後,さらに参加いただく方を募っていく予定です。CTにかかわるすべての人々が参集し,議論することで,研究や臨床だけでなく,新しい機器やサービスの開発につながっていけばと思います。
フォトンカウンティングCTなどの臨床最前線の技術とこれからの新技術,予防医療など幅広いトピックを提供
─第1回学術集会の概要を教えてください。
第1回日本X線CT医学会は,5月16日(土),17日(日)の2日間,品川シーズンテラスカンファレンス(東京都港区)で開催します。「X線・CTの未来を拓く:イノベーションによる価値創造」を基調テーマとし,X線CT技術に関する多岐にわたるセッションを企画しています。領域別では,Dual Energy,4D-CT,Photon Counting CT,造影剤・造影技術,動態X線撮影,動態補正,新技術,心臓CT,小児CT,予防医療,AI/DXがあり,シンポジウムや一般演題,技術セミナー,共催セミナーを予定しています。2つの会場でコンパクトに行いますので,参加者は専門とするセッションや,普段は接していない技術について効率良く聴講できると思います。
─AIに関するセッションも多く企画されていますね。
AIは多くの方の関心が高いところかと思いますので,セッションを2日目にまとめ,集中的に参加できるようにしました。X線撮影とCTは,検査数・データ量が圧倒的に多く,先んじてAIが導入されました。しかし,現場ではまだ十分に活用されているとは言えない状況です。読影支援にしても業務効率化にしても,ワークフローにいかに組み込むかというAIアダプションが非常に重要で,その議論が必要です。CTはAIの医療応用の入り口となっているため,本学会でAIを取り上げる意義は高いと考えています。
─そのほかの見どころを教えてください。
記念講演の一つとして「高橋信次記念講演」を企画しました。高橋先生のようにCTに貢献された著名な先生をお招きしてご講演いただくもので,次回以降も継続していきます。第1回では,高橋先生に師事していた竹原康雄先生に,本学会の原点として高橋先生の功績やお人柄についてお話いただく予定です。
また,CTを柱とした学会として最新技術はもちろん,その先の新技術・領域も取り上げます。新技術のシンポジウムも設けており,位相コントラストCT,立位CT,極超高解像度CTについてご報告いただきます。超高齢社会では,健康寿命の延伸やQOL向上に貢献する予防医療の領域へとCTの活用が広がると考えられるため,新技術でも取り上げる立位CTなど予防医療に資する技術についても議論していきます。さらに,関心の高まるGreen Radiologyや,CT大国として医療経済・政策の視点での課題も取り上げる予定です。1日目のプログラム終了後には懇親会もありますので,ぜひご参加ください。
第1回日本X線CT医学会学術集会ポスター
日本の強みである産学協働で臨床・研究・開発を推進しアジアにおけるCTの学術基盤をめざす
─X線,CTは日本発の技術も多くあります。世界へ向けた発信については,どのようにお考えですか。
CTをテーマとした国際学会として,私も理事を務めるISCT(International Society of Computed Tomography)があります。1999年から長年,米国内で開催されてきましたが,2025年に初めてヨーロッパ(ベルギー)で開催され,将来的に日本での開催も予定されています。そのような機会をとらえて,積極的に日本のこの学会をアピールしていきたいと思います。
─学会の展望についてお聞かせください。
国内のCTにかかわるすべての人をつなぎ,交流と協働を促進することに加え,いずれはアジアにおけるCTの学術基盤の柱になれればと考えています。CTを中心に据えた学術団体は世界的にも限られているため,アジア各地から専門家が集まる場にしていきたいですね。
また,他国に比べて日本は画像診断関連の大きな企業が複数あることが特徴で,産学連携をしやすい環境です。立位CTや動態X線撮影のように,独自のアイデアをもって企業に働きかければ実用化できる可能性が高い,恵まれた環境と言えます。本学会には企業にも多く参加いただくので,産学連携を後押しできればと思います。
─読者へのメッセージをお願いします。
画像診断において,X線・CTは最も基本的で,誰もが知っているべき技術です。放射線診療にかかわるすべての人にとってためになる学会になると確信していますので,ぜひ多くの方に参加いただければと思います。
(取材日:2026年4月2日,文責・編集部)
第1回日本X線CT医学会学術集会Webサイト
https://jsctm.org/jsctm2026/
(じんざき まさひろ)
1987年慶應義塾大学医学部卒業。同大学医学部放射線科学教室入局。日本鋼管病院などを経て,1999年に米国Brigham and Women’s Hospitalに留学。2006年に慶應義塾大学医学部放射線科学教室講師となり,准教授を経て,2014年に教授に就任。2026年4月よりJRC(日本ラジオロジー協会)代表理事。
