CureAppが慢性心不全治療アプリを開発開始
心不全在宅診療を推進するゆみのハートクリニックをパートナーに

2021-12-28

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〜2030年の「心不全パンデミック(1)」を防ぐ〜

(株)CureApp(以下,同社)は,心不全の在宅診療を幅広く展開するゆみのハートクリニックなどを運営する医療法人社団ゆみのをパートナーに,慢性心不全治療アプリの開発を開始した。

慢性心不全治療アプリはスマートフォンアプリなどを通し,患者へ運動療法や服薬管理,疾患教育などの包括的心臓リハビリテーションをオンラインで提供し,再入院予防,QOL向上,全死亡率の減少など慢性心不全患者の予後改善を目指す。

慢性心不全治療アプリの概要

 

●心不全治療における課題

心疾患はがん(悪性新生物)に続く日本人の死因の第2位で,その心疾患の中で最も多いのが心不全である(2)。さらに,重症化した心不全の生存率は全がんの生存率より低く,予後の悪い病態と言える(3)。心不全罹患率は年齢とともに高くなるため高齢化が進む日本では今後患者数が急増,2030年には130万人に達すると推計されている(4)。慢性心不全患者の40%は1年以内に再入院する(5)と言われコントロール不良の場合,急性増悪(急性心不全)による緊急入院を繰り返し,1回あたり120万円の医療費が発生するなど(6),今後医療機関での病床不足や医療費が増大する「心不全パンデミック」状態となることが懸念されている。

以上のことから,非可逆性の病態である慢性心不全をコントロールし急性増悪を予防することが肝要。そのための治療としては心臓リハビリテーション介入(多職種による疾病管理および運動療法)が効果的であり,心臓リハビリテーションの施行で再入院率が約40%低下することが報告されている(7)。しかし,医療機関で実施される心臓リハビリテーションは施設の認定要件が厳しく,実施できる医療機関が少ないため,患者が住んでいる地域によっては通院でのリハビリがそもそも提供されていないということが多くある。また,高齢の患者やその付き添いをする家族にとって,リハビリのために週に何度も発生する通院が大きな負担となり継続することが難しいという課題がある。2019年には循環器対策基本法が施行されるなど国も取り組みを進めているが,心不全患者の退院後外来での心臓リハビリテーションへの参加率はわずか7%であると言われている(8)

(1):心不全の疫学:心不全パンデミック
https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika/109/2/109_186/_pdf
(2): 令和元年(2019)人口統計の概況(厚生労働省)
(3): 脳卒中と循環器病克服5ヵ年計画p21図17心不全とがんの生命予後
https://www.j-circ.or.jp/five_year/files/five_year_plan.pdf
(4):Yuji Okura,et al:Impending Epidemic―Future Projection of Heart Failure in Jpan to the Year 2055―.Circ J 2008;72(3):489-91
(5): 脳卒中と循環器病克服5ヵ年計画p21図17心不全とがんの生命予後
https://www.j-circ.or.jp/five_year/files/five_year_plan.pdf
(6): 慢性心不全の臨床像と疫学 和泉徹
https://jams.med.or.jp/event/doc/122006.pdf
(7): Exercise-based rehabilitation for heart failure
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/24771460/
(8): Nationwide Survey of Multidisciplinary Care and Cardiac Rehabilitation for Patients With Heart Failure in Japan ― An Analysis of the AMED-CHF Study
https://www.jstage.jst.go.jp/article/circj/83/7/83_CJ-19-0241/_html/-char/en

●慢性心不全向け治療アプリ開発の背景

慢性心不全治療の課題に対し,自宅にいながら適切な治療介入を受けられる「治療アプリ®︎」というデジタル療法を用いることで,これまで充分な心臓リハビリテーションを受けることが難しかったより多くの慢性心不全患者へ心臓リハビリテーションを届けることができると同社は考えている。慢性心不全治療アプリは,患者用アプリ,医師用アプリ,支援者用アプリ(家族や介護・医療系スタッフなど)の3つで構成され,スマートフォンなどを通じ患者の個別情報をもとに最適化された運動プログラムや疾病管理をオンラインで提供する。さらに画像解析技術やIoT技術を活用した非監視下での在宅運動モニタリングシステムを搭載し,患者に安心して在宅運動療法に取り組んでもらえる自宅での包括的心臓リハビリテーションを実現し,患者の予後改善を目指していく。

同社が持つ治療アプリの研究開発への強みに加え,慢性心不全の在宅での治療やリハビリテーションに対し幅広い知見を持つゆみのハートクリニックが運営する医療法人社団ゆみのをパートナーに迎えることで,慢性心不全治療アプリの医療機器承認を目指し研究・開発を進めていく。

医療法人社団ゆみの 弓野大理事長からのコメント
地域で心不全患者を多く診てきた医師として,IT機器を活用した心臓リハビリテーションにより,いきいきとした在宅療養が維持できる可能性に,大きな意義を感じております。

大多数の慢性心不全患者さんは十分なリハビリを行えていないという現状があります。当院が持つ慢性心不全患者さんの在宅医療・心臓リハビリテーションで培ってきた知見をCureApp社が持つ治療用アプリの技術と掛け合わせることで,患者さんやそのご家族の役に立つ新しいプロダクトを生み出せることにうれしく思います。

●(株)CureAppと「治療アプリ®︎」について

ガイドラインの推奨治療や専門家の知見をベースにアルゴリズムを開発し,医療機関で治療のために医師から患者へ処方されることを目指すアプリ。患者自身のスマートフォン上のアプリが,認知行動療法などを用いた適切な介入を個別化して提供し,来院と来院の間の治療空白を埋め治療効果をあげることを実現する。「治療アプリ®︎」を用いれば,医療者の習熟・実施コストを下げながら,質の担保された介入を行うことが可能となる。

(株)CureAppは,高度なソフトウェア技術と医学的エビデンスに基づいた疾患治療用プログラム医療機器創出に向け,研究開発,製造販売をしているMedTechベンチャー。「アプリが病気を治療する効果を持つ」という新しい医療サービスを日本で推進するために,病気を治療する「治療アプリ®︎」の開発に取り組んでいる。2020年8月には,疾患治療用アプリとして国内初となる,ニコチン依存症向け治療アプリ及びCOチェッカーの薬事承認を取得し,同年12月に保険収載に至った。

現在,研究開発中の治療アプリ®︎は他に

  • 高血圧症向け治療用アプリ(自治医科大学内科学講座循環器内科学部門と共同研究・治験終了・薬事申請中)
  • NASH(非アルコール性脂肪肝炎)向け治療用アプリ(東京大学医学部附属病院と共同開発・臨床試験中)
  • アルコール依存症向け治療用アプリ(独立行政法人国立病院機構久里浜医療センターと共同研究,岡山市立総合医療センター 岡山市立市民病院での臨床試験開始)
  • がん患者支援向け治療用アプリ(第一三共(株)と共同開発中)

 

がある。

加えて,これら医療機関向け治療アプリの開発で蓄積した知見を活用し,民間法人向けモバイルヘルスプログラムの「ascure卒煙プログラム」,「特定保健指導対応型ascure卒煙プログラム」を提供し,230を超える多くの企業,健康保険組合などに導入されている。また,医療向けと民間法人向けの両方の知見を活かして,健康保険組合,企業,自治体向けにニコチン依存症向け治療用アプリの処方が可能なオンラインの禁煙診療「ascureDr.卒煙TM」の提供もしている。

さらには,日本で生み出したモデルをベースに「日本発のデジタルヘルスソリューション」として,順次グローバルにも展開していく予定。

※「治療アプリ」は(株)CureAppの登録商標。

 

●問い合わせ先
(株)CureApp
http://cureapp.co.jp/

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