Claris,札幌市消防局が iPad とローコード開発ツールを基盤とした救急隊向けアプリで救急搬送をデジタル化
救急医療における DX が,命を救う現場での情報共有の迅速化および救急隊員の働き方改革を実現
2025-11-4
札幌市消防局
Claris International Inc.(本社:米国カリフォルニア州)は,札幌市消防局が TXP Medical (株)(本社:東京都文京区)の救急隊向けアプリ「NSER mobile」を導入し,救急搬送業務のデジタル化を実現した事例映像を公開した。NSER mobile は Claris が提供するローコード開発プラットフォーム「Claris FileMaker」を基盤に構築され,全国の救急医療を支えている。
背景と課題:増加し続ける救急出動と「搬送困難」問題
人口約 200 万人,年間 1500 万人以上の観光客を受け入れる札幌市では,年間およそ 12 万件の救急出動がある。高齢化が進むなか,救急搬送件数は右肩上がりで増加し,現場の隊員の疲弊が課題となっていた。
札幌市消防局 救急課の渡邊 佳祐氏 は次のように述べている。
「救急搬送時の病院への受け入れ確認の電話は,コロナ禍では 1 件あたり 30 医療施設を超えるなど,搬送困難事例が頻発していました。現場の隊員が疲弊していたので,労働負荷を軽減するためにはシステム導入が必須でした」
このような背景から,札幌市消防局は TXP Medical と連携し,救急隊の現場で活用できるデジタルソリューションの導入を決定した。
ソリューション:Claris FileMaker を基盤に開発された救急隊向け iPad アプリ「NSER mobile」
札幌市消防局は,ローコード開発プラットフォーム Claris FileMaker を基盤とし,TXP Medical が開発した救急隊向けアプリ「NSER mobile」を導入。NSER mobile は,救急現場で iPad や iPhone を使用し,患者情報の入力や受け入れ可否,搬送先の医療機関情報などをリアルタイムで共有でき,これまで電話と紙で行っていた医療機関とのやり取りをデジタル化することで,救急搬送のスピードと精度を大幅に向上させることができる。現在,札幌市内 36 救急隊(約 350 名)と 66 の医療機関が NSER mobile を活用しているほか,札幌市周辺の恵庭市消防本部,石狩北部地区消防事務組合とも同一プラットフォームで連携している。
Claris FileMaker を基盤に開発された救急隊向け iPad アプリ「NSER mobile」
導入効果
⚫︎ 医療機関への受け入れ確認を複数病院に一括で送信
従来は 1 件ずつ電話で医療機関に受け入れ確認をしていたのが,アプリ導入後は複数の病院に一括で搬送要請を送信できるようになり,救急搬送時間を大幅に短縮。
⚫︎ 医療機関への事前の写真送付による情報共有
搬送時,外傷の写真を医療機関に送れるようになり,写真から衝突による衝撃の方向が確認できるなど事故現場の状況もわかるように。受け入れ前に医師が損傷を想定できるようになった。言葉では伝えきれなかった情報が,画像で正確に伝わるようになり,医師からも高い評価を受けている。
⚫︎ iPad で免許証・保険証・お薬手帳を撮影し医療機関へ事前共有
iPad で免許証・保険証・お薬手帳などを撮影するだけで,自動的に OCR 処理されて文字データとして病院へ送信されるため,受付準備もスムーズに行えるようになった。
⚫︎ 救急隊員の事務処理時間の短縮
iPad とアプリの導入によって救急隊員が報告書を作成する事務処理時間を大幅に短縮。救急隊員の休憩時間の確保や,後輩の教育など,本来必要なことに時間を使えるように。
⚫︎ GPS による救急車の情報把握
iPhone,iPad で動作する NSER mobile を利用することで,GPS による救急車の正確な位置情報の取得が可能に。
⚫︎ 周辺地域の消防局,医療機関との連携の強化
札幌市のほか,周辺地域の消防本部,医療機関と同一プラットフォーム上で情報共有できる体制になり,救急搬送の効率化と医療機関の受け入れ体制強化を同時に実現。
医師がつくった,現場に寄り添うシステム
自らの医療現場経験からシステム開発に着手した,TXP Medical の代表取締役 CEO であり救急科の専門医の園生 智弘氏は次のように述べている。
「2017 年に急性期医療機関が利用するシステム『NEXT Stage ER』を Claris FileMaker で自ら開発し,TXP Medical を設立しました。その後,『NEXT Stage ER』から派生して救急隊向けアプリ『NSER mobile』をリリースしました。
TXP Medical は,最新の IT 技術を無理に導入するのではなく,現場の声に寄り添うことを大切にしています。救急隊が日々どのような課題を抱えているのか,どのような情報が医師にとって有用かを丁寧に聞き取り,アプリを通じて救急隊と医療機関のコミュニケーションを改善することを目指しています」
Claris FileMaker の柔軟性が支える,現場発の開発
TXP Medical で FileMaker の開発を担当するエンジニア菅 繕久氏は,開発基盤としての FileMaker の優位性について次のように述べている。
「FileMaker は毎年進化しています。『こんな機能が欲しい』と思うものが次々と実現し,拡張性と柔軟性に優れていて非常に使いやすいプラットフォームです。こうした進化が,救急隊の活動を支えるアプリ開発を後押ししています」
Claris FileMaker のローコード開発環境により,TXP Medical は医療現場のニーズに即応しながら,運用後も改善・拡張を重ねるアジャイル開発を実現している。
「札幌モデル」を全国へ広げる挑戦
札幌市消防局の取り組みは,現在,全国の消防本部から注目を集めている。
園生氏は今後の展望について次のように述べている。
「医療と救急隊のデジタル化の歩みを止めてはいけません。札幌での成功を全国に広げ,医療の質をさらに高めていきたいと考えています」
札幌市の取り組みは,デジタル技術が救急医療の現場で“人を支える力”として機能することを証明し,人とテクノロジーが共に命を救う社会の新たなかたちを示している。
本事例の詳細とビデオは下記参照。
https://www.claris.com/ja/customers/stories/sapporo119
動画撮影協力:札幌市消防局・石狩北部地区消防事務組合消防本部・札幌美しが丘脳神経外科病院
●問い合わせ先
Claris International Inc.
https://www.claris.com/ja
