阪急阪神ホールディングス,日立製作所,大阪大学大学院医学系研究科 心臓血管外科学講座がデジタル活用による心不全患者の在宅ケアを支援する新サービスの構築とその社会実装に向けた共同検討を開始
~超高齢社会における持続可能な医療モデルの構築を推進~
2026-1-26
阪急阪神ホールディングス(株)(以下,阪急阪神HD)と(株)日立製作所(以下,日立),国立大学法人大阪大学大学院医学系研究科 心臓血管外科学講座は,超高齢社会における持続可能な医療モデルの構築をめざし,健康・医療・介護に関する情報を集約したPHRアプリ※1などのデジタル活用による「在宅心不全自己管理支援サービス(以下,本サービス)」の構築および社会実装をめざした共同検討(以下,本検討)を開始した。
本検討では,日本の3大疾病の一つであり超高齢社会において患者の急増が危惧されている心疾患の領域に着目している。そこで,心不全患者を対象にデジタルなPHRアプリとリアルな生活サービスを組み合わせ,自己管理・行動変容を促進することで重症化・再入院の予防を支援する「在宅心不全自己管理支援サービス」を構築する。本サービスを用いて,患者・介護者と,医療機関や医療・介護従事者(以下,多職種)の間での情報連携を促すことで,患者・介護者のQOL向上や多職種の業務効率化の実現を支援する。阪急阪神HD,日立,大阪大学大学院医学系研究科は,本サービスが心不全の再発・重症化予防にもたらす効果などのエビデンスを蓄積し,持続可能なビジネスモデルの確立をめざす。
本検討の背景・経緯,詳細,めざす成果などについては以降のとおり。
■本検討の背景・経緯について
超高齢社会を迎えた日本の医療・介護費は,2018年度に約50兆円となった後も増え続け,2040年度には約94兆円に達する見込み※2であることから,国民一人ひとりが健康に暮らすうえで,社会保障制度の充実とその費用の抑制が大きな社会課題となっている。また,多職種の不足や地域格差が危惧されるなか,デジタル活用による医療・介護サービスレベルの底上げや持続可能な地域医療体制へのシフトが求められている。
阪急阪神HDと日立は,2024年に(株)ウェルビーイング阪急阪神,(株)おいしい健康と共同で,経済産業省の「令和5年度補正PHR社会実装加速化事業(PHR利活用促進に向けた調査及び日常生活におけるPHRを活用したユースケース創出に向けた実証調査事業)」における「PHRの異業種企業間の連携を通じた日常生活におけるユースケース創出に向けた実証事業」※3の実証事業者として採択されるなど,健康寿命が延びる沿線・地域づくりに寄与すべく,ヘルスケア分野における新たなサービス創出を共同で推進してきた※4。
また,大阪大学大学院医学系研究科 心臓血管外科学講座の宮川 繁 教授の研究グループは,特に重症の心不全患者(心不全ステージD※5)に対する左室補助人工心臓(LVAD)の植え込み治療およびその後の在宅治療に取り組む中で,2024年より,患者・介護者の負担軽減と医療資源の適正配分を目的に,多職種情報連携ICTを活用した地域医療主体の在宅LVAD治療システムの臨床研究を推進している。ICTの活用により,在宅LVAD患者と介護者のQOLに有意な改善がみられることを確認している。
■本検討の詳細について
これまでの取り組みの成果を踏まえ,阪急阪神HD,日立,大阪大学大学院医学系研究科は,心不全患者を対象として,ICT・PHR・AIを活用した自己管理により,重症化・再入院の予防を支援するサービスの構築に向けた共同検討を開始した。患者の自己管理の継続と行動変容の促進に加えて,多職種へのPHRデータの共有を図るとともに,患者・多職種間の双方向のコミュニケーション機能により,多職種から患者への適切な介入の継続実施を支援する。2025年度は,経済産業省の「令和7年度ヘルスケア産業基盤高度化推進事業(PHRを活用した多職種連携におけるユースケース創出に向けた実証調査事業)」における「多職種連携におけるPHR活用ユースケース創出実証事業」(以下,本実証)の実証事業者として参加し,サービス実証を行う※6。
本実証では,2025年11月~2026年1月の3カ月間,大阪大学医学部附属病院に通う心不全ステージDの患者を対象としてPHRアプリおよび多職種情報連携ICTを活用したサービスの提供を行う。
具体的には,PHRアプリ「いきいき羅針盤」(運営:阪急阪神HD)内で提供する心不全患者向け自己管理アプリ(「LVAD自己管理記録ノート」)に,日々のバイタルデータや問診への回答などを入力してもらう。また,PHRアプリ内にて,管理栄養士監修の心不全患者向け食事レシピ(協力:(株)おいしい健康)や,VAD外来看護師など専門職協力のセルフケア動画(協力:「大阪大学医学部附属病院心臓血管外科」)などを提供し,患者の健康行動の継続をサポートする。患者がアプリに記録したPHRデータは多職種に共有され,多職種はその記録から必要に応じて患者および他職種と双方向でのコミュニケーションをとることで,適切な診察・ケアを行うことが可能となる。
■本検討のめざす成果について
本実証を通じ,これらのサービスが患者・介護者のQOL向上および多職種の業務効率化・ケアの質向上にもたらす効果の検証や,そのために必要なPHRデータ項目の抽出などを行う。さらに,患者・多職種双方からのマネタイズによる持続可能なサービスの構築に向け,地域医療を担う多職種からの意見を集め(協力:インテディックス(株)※7),ビジネスモデルの具体化を進める。まずは最も細やかな情報連携が必要となる心不全ステージDの患者を対象としたサービスを構築したうえで,今後,より患者数が多く社会的インパクトが大きいステージC,ステージBの患者への適用拡張をめざす。
さらに,2026年度以降は参画医療機関および対象患者数を拡大し,患者の重症化・再入院の予防による医療・介護費の削減効果,患者・介護者の就労継続による経済効果なども含めたエビデンス・データの蓄積を進める。これにより,本サービスの社会実装や蓄積データを活用したAI診療支援などへのサービスの拡張を行い,国や自治体を巻き込んだ持続可能な医療モデルの実現と,ヘルスケアエコシステムの構築をめざす。
■共同検討事業者の役割
企業名:阪急阪神ホールディングス(株)
役割:阪急阪神HDグループは,鉄道事業をベースに住宅・商業施設などの開発から魅力あふれるエンタテインメントの提供に至るまで,多岐にわたる分野において人々の暮らしを支え,暮らしを彩り,豊かなライフスタイルを提供するグループ。本検討では,PHRアプリ「いきいき羅針盤」や心不全患者向け自己管理アプリ「LVAD自己管理記録ノート」の提供,今年度の実証全体の取りまとめ,実証事業の実施・運営管理を行う。
企業名:(株)日立製作所
役割:日立は,IT,OT(制御・運用技術),プロダクトを活用した社会イノベーション事業を通じて,環境・幸福・経済成長が調和する「ハーモナイズドソサエティ」の実現をめざしている。本検討では,実証事業の計画・実施・評価に関わる業務の支援やビジネスモデルの検証,モデルの横展開の検討を行う。
企業名:国立大学法人 大阪大学 大学院医学系研究科 心臓血管外科学講座
役割:本検討では,実証参加患者の選定,検証項目の検討支援,食事・運動などコンテンツの監修,ビジネスモデル構築に向けた検討支援を行う。
※1 PHRアプリ:PHRとはPersonal Health Recordの略称で,健康・医療・介護に関する患者の情報を総合的に取集し,活用できるアプリのことをいう。阪急阪神HDではこうした機能を有するアプリとして「からだサポートアプリ『いきいき羅針盤』」を運営
https://healthcare.hankyu-hanshin.co.jp/info/15159/
※2 厚生労働省「2040年を見据えた社会保障の将来見通し(議論の素材)」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000207382.html
※3 経済産業省「令和5年度補正PHR社会実装加速化事業(PHR利活用促進に向けた調査及び日常生活におけるPHRを活用したユースケース創出に向けた実証調査事業)」報告書
https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/r5_hosei_seikatsu_houkokusho.pdf
※4 2024年9月12日リリース
阪急阪神ホールディングス,ウェルビーイング阪急阪神,おいしい健康,日立製作所の4社が シニア層に向けてデジタル×リアルで食事・運動を支援するサービスの実証をします
https://www.hankyu-hanshin.co.jp/release/docs/c9092219c5cb0c36e70bf7f48a4ad1ebf258ce4d.pdf
※5 心不全のステージ分類については,日本循環器学会/日本心不全学会合同ガイドライン「2025 年改訂版 心不全診療ガイドライン」を参照
https://www.j-circ.or.jp/cms/wp-content/uploads/2025/03/JCS2025_Kato.pdf
※6 経済産業省「令和7年度ヘルスケア産業基盤高度化推進事業(PHRを活用した多職種連携におけるユースケース創出に向けた実証調査事業)」
https://phr-cycle.meti.go.jp/ja/portal/articles/detail?articleId=68e738d1abdedf6dbd2f73b1
※7 インテディックス(株):2023年10月設立。ITとDXによる新たな社会インフラ構築,医療・ヘルスケアでの改革を目的とした事業を行っている
●問い合わせ先
(株)日立製作所 社会イノベーション事業統括本部
お問い合わせフォーム:https://www8.hitachi.co.jp/inquiry/totalsolutions/general/form.jsp
