BNCT(ホウ素中性子捕捉療法)を自費診療で導入・提供している江戸川病院,BNCT特定臨床研究のフェイズ2(有効性確認)経過報告
~対象疾患を広げたBNCT最新研究の再発・初発乳がんで腫瘍消失症例を確認~
2026-3-27
社会福祉法人 仁生社 江戸川病院は,特定臨床研究フェイズ2(有効性確認段階)において再発乳がんおよび未手術の初発乳がんの症例で,腫瘍の消失(完全奏功:CR)を含む良好な治療経過を確認したことを報告した。
BNCTは,がん細胞に取り込まれるホウ素化合物を利用し,中性子照射により腫瘍細胞内で反応を生じさせる放射線治療の一種。本研究においては,フェイズ1(安全性確認段階)で安全性および基礎的な有効性を検討し,フェイズ2では対象疾患を拡大して臨床応用の可能性を検証している。
※特定臨床研究は厚生労働省が定める臨床研究法に基づく,医療機関での治療評価を目的とした研究。
■【最新報告】特定臨床研究フェイズ2:FDG-PET陽性の浅在性腫瘍を対象とした研究(jRCTs031240204 / 2024年8月開始)
フェイズ1の研究結果を踏まえ,2024年8月よりFDG-PET陽性の浅在性腫瘍を対象とした特定臨床研究を実施した。本研究では計10例の患者登録が行われ,全例でBNCT治療および必要な経過観察が終了している。症例の内,女性は9例で,乳がんがその7例を占めている。従来BNCTでは,ホウ素化合物の腫瘍への集積を評価するFBPA-PETが用いられてきたが,同検査は実施可能な施設が限られている。一方,FDG-PETはがん細胞の代謝活性を評価する検査として臨床現場で広く用いられているため,本研究ではこのFDG-PETを用いて評価を行い,その有用性について検討している。
https://www.edogawa.or.jp/features/bnct/research-report.html
▼症例における具体的な観察経過
今回の個別症例においては,以下のような変化が観察されている。
・FDG-PET陽性の浅在性腫瘍に対するBNCT(jRCTs031240204)治療4例目:再発乳がん
治療前約37mmの腫瘍が,治療3カ月後の画像診断で消失している。
また,もともと基準値内(25以下)だった腫瘍マーカー(CA15-3)は20.9から10.7まで低下している。
・FDG-PET陽性の浅在性腫瘍に対するBNCT(jRCTs031240204)治療10例目:初発乳がん(未手術)
FDG-PETにおける集積がSUV5からSUV1へ低下。治療1カ月後の時点で触診上腫瘍が確認できなくなり,その後2~4カ月の画像診断においても腫瘍は確認されなかった。(効果判定はCR)
(PET画像) 左:照射前 右:照射後
(MRI画像) 左:照射前 右:照射後4か月
▼安全性に関する観察結果
本研究においては,主に軽度から中等度(Grade1~2)の有害事象が確認されている。一部の症例では照射部位に関連した脱毛が認められたが,照射後3カ月頃より発毛が確認され,4カ月後には脱毛が確認できなくなるなど,経過に伴う変化が観察されている。なお,有害事象の発現には個人差があり,引き続き慎重な観察が必要とされている。
本研究は,BNCTの臨床応用に向けた基礎的データの蓄積を目的として実施されたものである。江戸川病院では今後も,症例数の拡大や長期的な経過観察を通じて,治療効果および安全性に関するさらなる検証を進めるとともに,臨床現場での適用可能性について検討を継続していく。
<参考>
■特定臨床研究フェイズ1:再発乳がん対象パイロット試験(jRCTs031220371 / 2023年7月開始)
今回のフェイズ2に先立ち,同院では2023年7月より,放射線治療後に再発した乳がんを対象とした特定臨床研究を実施し,乳がんに対するBNCTの安全性と有効性を検討する試験を実施してきた。本研究では,当初2025年10月までを予定していた症例登録が,2024年春には完了し,所定の症例数において治療および経過観察を実施した。
観察した症例においては,画像診断上の腫瘍の縮小や,PET検査における集積消失が確認された例が報告されている。また,腫瘍マーカーの低下が認められた症例も含まれている。さらに,本研究で胸部領域に対するBNCTが実施されたことにより,当該領域における臨床応用に関する知見が得られた。
【江戸川病院が導入するBNCTとは】
BNCTは,ホウ素を含む薬剤を体内に取り込み,中性子線を照射することで,がん細胞のみを選択的に破壊する放射線治療。
2泊3日の入院期間で治療プロセスが終了し,患者の身体的負担も軽減可能といった特性がある。
BNCTが保険適用となる「頭頚部がん」に対する治療や治験としてBNCTを実施している医療機関は存在するが,江戸川病院では乳がんに対して自由診療でBNCTを実施している。
江戸川病院では,BNCT装置を院内に保有し,放射線治療後の再発乳がんを対象とした特定臨床研究を実施した。
現在は,身体への負担を抑え,再照射も可能な「低侵襲な乳がん治療」としてBNCT(ホウ素中性子捕捉療法)を自由診療にて提供している。
※都内には江戸川病院の他に国立がん研究センターがBNCT装置を有している。
BNCTのメカニズム
※江戸川病院のBNCT治療
◇流れ,期間
治療の約2週間前:事前のチェック(診察,検査,CT撮影)
治療の約1週間前:治療計画(CTから中性子線の投与線量,照射位置を計算)
治療 :基本的には2泊3日の入院
1日目 入院,治療当日のリハーサル
2日目 ホウ素製剤を点滴投与(約2時間)
BNCT装置で中性子線を照射(治療時間は約1時間)
3日目 治療後の診察,退院
照射の約1ヶ月後:定期的な経過観察(MRIや超音波検査など)
◇治療回数
1回の照射(2泊3日)で完了
◇費用
通常税込440万円程(自由診療,見込み金額となり場合によって異なる)
※医学的見地に基づきBNCT 治療により予測される副作用・リスク
放射線性肺炎,皮膚疼痛,多汗症,乏汗症,クレアチニン増加,腫瘍崩壊症候群,皮膚欠損,吐気,食欲不振,部分脱毛など
※江戸川病院のBNCTの装置・医薬品について
江戸川病院のBNCT治療で使用される医療機器(BNCT装置)・医薬品(ホウ素製剤)は医薬品医療機器等法上,未承認となる。万が一重篤な副作用が出た場合は,国の医薬品副作用被害救済制度の対象外となる。
江戸川病院で使用している機器・薬品の承認の有無
BNCT装置 なし
ホウ素製剤 なし
江戸川病院で使用している機器・薬品の入手経路
BNCT装置 国内の株式会社CICS製の装置を導入
ホウ素製剤 台湾の台湾製薬株式会社製の製剤を江戸川病院で個人輸入
※個人輸入された医薬品等の使用リスクに関する情報は下記を確認。
https://www.yakubutsu.mhlw.go.jp/index.html
(厚生労働省ページ)
国内の承認医薬品・装置の有無
BNCT装置 あり(住友重機械工業株式会社製)
ホウ素製剤 あり(ステラファーマ株式会社製)
諸外国における安全性等に係る情報
BNCT装置 諸外国でも未承認のため,重大なリスクが明らかになっていない可能性がある。
ホウ素製剤 諸外国でも未承認のため,重大なリスクが明らかになっていない可能性がある。
【江戸川病院について】
江戸川病院は,地域に根ざした総合医療機関として,24時間体制の二次救急医療や急性期治療に加え,がん医療・予防医療・在宅支援に力を注ぐとともに,動物やアートに囲まれた温かな環境づくりを通じて,快適な療養環境づくりに取り組んでいる。
がん治療分野では,手術・放射線・薬物療法を診察科の枠を超え連携して行うチーム医療を展開している。2023年には「新外来化学療法センター」を開設し,外来での抗がん剤治療を快適に受けてもらうためのがん治療環境を整備。さらに,放射線治療機器3台体制で19時までの放射線治療に対応しているほか,BNCTをはじめとする先進的ながん治療の臨床研究にも積極的に取り組んでいる。
江戸川病院HP:https://www.edogawa.or.jp/
新外来化学療法センター |
江戸川病院が保持するBNCT装置 |
江戸川病院 本館外観 |
●問い合わせ先
社会福祉法人仁生社江戸川病院
https://www.edogawa.or.jp/
