日立製作所,京都大学との共同研究を通じ,住民と地域をつなぐ「社会的処方」による地域共生社会モデルを策定

2026-5-21

医療DX

介護

日立(日立製作所,日立ハイテク)


(株)日立製作所(以下,日立)は,京都大学との共同研究を通じ,住民と地域をつなぐ「社会的処方」による地域共生社会モデル(以下,本モデル)を策定した。
本モデルは,医療・福祉や地域資源*1を住民とつなぎ,ハイリスクアプローチ*2とポピュレーションアプローチ*3を一体で進める社会的処方の仕組みを体系化したものである。薬を処方するように「社会とのつながり」を処方する「社会的処方」により,健康寿命の延伸や孤立の解消を通じて,医療・介護費の適正化や持続可能な地域共生社会への貢献をめざす。

*1 地域資源: 健康づくりに寄与する地域住民が主体となった活動や,民間事業者のサービス,さらにはインフォーマルなものを含む地域の取り組み
例えば,地域のイベントや体操教室,趣味サークルなど 
*2 ハイリスクアプローチ: 特定の疾患や生活習慣病など健康リスクが高い対象者へ直接的な介入を行う手法
*3 ポピュレーションアプローチ: 集団全体を対象とし,健康リスクの有無に関わらず介入する手法

日立と京都大学が策定した,「社会的処方」による地域共生社会モデル

日立と京都大学が策定した,「社会的処方」による地域共生社会モデル

 

「社会的処方」の目的と背景

社会的処方とは,1980年代にイギリスで始まった,医療だけでは解決できない健康問題に対して社会的な働きかけを行う取り組みである。医師による治療や薬の処方だけでなく,趣味活動やボランティア,コミュニティ活動など人とのつながりや社会参加の機会を処方することで,人々の健康の維持・向上や孤立解決を図る。
近年,日本においても,少子高齢化にともなう孤立問題や認知症リスクへの懸念などから,社会的処方の必要性が高まっている。政府も社会的処方を推進する方針*4を示すなど,医療に加えて,予防の観点での取り組みを促進している。こうした背景から,社会参加をより広く定着させていくことや,医療機関と地域をつなぐ制度整備を進めていくことが重要となっており,今後さらに社会的処方を公的制度に組み込み,社会実装を加速させていくことが期待されている。

*4 内閣府「経済財政運営と改革の基本方針 2022 新しい資本主義へ ~課題解決を成長のエンジンに変え,持続可能な経済を実現~」

本モデルの特長

今回,日立は,京都大学との共同研究を通じて,「社会的処方」により住民の健康と地域のつながりを同時に高めていく「地域共生社会」を実現する双循環モデルを策定した。本モデルは,医療・福祉と地域資源を横断的につなぎ,ハイリスクアプローチとポピュレーションアプローチを一体で進める社会的処方の仕組みを体系化したものである。
本モデルに描く社会では,住民は,医療機関での診察や健康診断,自治体の保健師との相談などをきっかけに,自身の健康状態や生活状況に応じた支援を受ける。リンクワーカー*5の伴走支援のもとで地域とのつながりを見つけ,民間事業者やNPOなどが提供する地域イベントや活動へと参加していく。こうした個人の行動変容の成果は,地域全体の予防施策や社会参加の基盤強化へと還元される。
また,本モデルを支える基盤として,医療機関,自治体,民間企業などの連携やEBPM*6の実現を支援する「社会的処方支援プラットフォーム」が重要となる。このプラットフォームは,ハイリスクアプローチおよびポピュレーションアプローチを通じて得られる医療・保健データに加え,住民の社会参加状況や生活背景といった社会生活情報を総合的に分析することで,地域予防と個別支援の高度化,ならびに地域全体の医療費適正化を推進するものである。

* ハイリスクアプローチにおける社会的処方の循環サイクル (図の右側)
本モデルにおけるハイリスクアプローチでは,特定保健指導対象者など,健康に課題を有する人を対象としている。医療・介護サービスに加え,社会生活面の課題解決に向けて地域資源へとつなぐことで,健康状態の改善をめざす循環サイクルを築く。この循環を通じて,医療だけでは解決しきれない健康問題の解消を図るとともに,医療・介護費の適正化や持続可能な地域共生社会の実現に貢献する。社会的処方の定着に向けては,医療機関や自治体などへの報酬・インセンティブの仕組みづくりや,リンクワーカーの専門職化など,制度面での後押しが重要と考えている。京都大学との共同研究では,本モデルの策定や,制度化を含む社会実装に向けた仕組みの検討を進めてきた。
また,日立は,関連する社会実装の取り組みの一つとして,生成AIで面談業務を効率化し,住民支援の質を高めるリンクワーカー業務支援システムを開発した*7

* ポピュレーションアプローチにおける社会的処方の循環サイクル (図の左側)
本モデルにおけるポピュレーションアプローチでは,生活習慣病や孤立のリスクを未然に低減することを目的に,地域全体を対象とした社会的処方の循環サイクルを築く。民間事業者やNPO,リンクワーカーなどが住民と継続的につながり,日常的な社会参加や健康づくりの機会を提供することで,疾病や孤立の予防を図る。これにより,住民一人ひとりの行動変容が地域全体の予防基盤の強化へと還元され,地域全体で健康とつながりを育てる循環が生まれる。この循環を通じて,産学官の協創促進や,住民同士の共助の広がりが期待される。
また,日立は,社会実装の取り組みの一つとして,兵庫県養父市とともに,認知機能の低下を早期発見し,孤立リスク低減や個々のウェルビーイングの向上を支援するヘルスケアチェックサービスを構築した*8。 

*5 リンクワーカー: 支援を必要としている人を,住民の健康を支える行政や民間の地域活動やサービス(地域資源)につなぐ役割を担う人。
*6 EBPM(Evidence Based Policy Making): 政策効果の測定に重要な関連を持つ情報や統計などのデータ(エビデンス:証拠)に基づいて,政策を企画立案し,質の高い行政サービスの提供を行うもの。 
*7 生成AIで面談業務を効率化し,住民支援の質を高めるリンクワーカー業務支援システムを開発
*8 養父市と日立,認知機能の低下を早期発見し,孤立リスク低減や個々のウェルビーイングの向上を支援するヘルスケアチェックサービスを構築

今後の展望

今後も,本モデルの実現に向けた制度化の検討に加え,ハイリスクアプローチおよびポピュレーションアプローチのそれぞれにおける,自治体などでの社会的処方の実装で得られた知見をふまえ,両アプローチを横断した,相互に循環させる事業プロセスの実証に取り組む。具体的には,制度内で得られるハイリスク層への介入成果やデータを地域全体の予防施策に還元するとともに,ポピュレーションアプローチによって醸成された地域のつながりや予防基盤を,ハイリスク層の支援にも活用していく。このような双方向の循環構造により,医療・介護費の適正化と地域活性化を同時に実現する,持続可能な社会的処方モデルの構築をめざす。

本モデル策定の狙い・位置づけ

日本を取り巻く社会課題が年々複雑化・深刻化する中,日立は公共分野の事業において,自治体や官公庁の基幹システムに長年携わってきた知見や技術,ノウハウを生かし,One Hitachiで社会課題の解決に取り組んでいる。
なかでも,「医療・介護DX」分野では,「予防を文化に」をコンセプトに,予防から医療・介護までを見据えた幅広い取り組みを推進している。健康・予防サービスなどを通じた医療・介護費の適正化に貢献するとともに,誰もが安心して最適な医療・介護サービスを受けられる社会の実現をめざす。今回の京都大学との,「社会的処方」による地域共生社会モデルの策定は,こうしたビジョンの実現に向けた取り組みの一つである。

京都大学 大学院医学研究科 社会健康医学系専攻 近藤尚己教授からのコメント

人々の健康や暮らしを取り巻く課題が多様化する中で,医療や福祉だけでは十分に対応できない場面が増えています。こうした状況において,リンクワーカーを介して人々を地域の多様な資源につなぐ「社会的処方」は,住民の暮らしを支える有効なアプローチであると考えています。
本共同研究で整理された地域共生社会モデルは,医療・福祉と地域活動を切れ目なく結び,予防から支援までを地域全体で支える枠組みを示すものです。本モデルが各地域の実情に応じて展開され,全国に広がっていくことで,誰もがつながりの中で健康に暮らし続けられる社会の実現につながることを期待しています。 

京都大学国際シンポジウム 社会的処方・文化的処方国際会議(ISPC2026)で紹介

2026年5月27日(水)~28日(木)に,京都大学で開催される「京都大学国際シンポジウム 社会的処方・文化的処方国際会議(ISPC2026)」のトークセッションにおいて,日本における先行的な社会的処方の取り組みや本モデルについて紹介する。
京都大学国際シンポジウム 社会的処方・文化的処方国際会議 (ISPC2026)
-トークセッション: 5月28日(木) 11:00~12:30

 

●問い合わせ先
(株) 日立製作所 公共システム営業統括本部
カスタマ・リレーションズセンタ
公共ITソリューション お問い合わせページへ

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