ITEM2014 富士フイルム ブースレポート
携帯型超音波のFC1,類似症例検索など画像認識,画像処理技術を生かした新製品を多数出展


2014-4-25


富士フイルムメディカル ブース

富士フイルムメディカル ブース

富士フイルムは創業80年を迎え,新たに設定された“Value from Innovation”のコーポレートスローガンを掲げて展示を行った。ブースの中央2Fにプレゼンテーションコーナーを設け,ITソリューションとモダリティソリューションをその左右に配するレイアウトで展示を構成した。今年のプレゼンテーションは,“イノベーティブ・セッション”として事前登録制で行われ,今回の展示のトピックとなったDRの画像処理技術やトモシンセシス機能,SYNAPSE VINCENTの画像認識技術,肝がんなど対象疾患を拡大する類似症例検索システムの技術など,7つのテーマで開発者のプレゼンテーションやビデオによる講演を行った。
モダリティソリューションの新製品としては,ITEMに合わせて発表された携帯型超音波画像診断装置「FUJIFILM FC1」,グリッドレスの撮影を可能にするDRの新しい画像処理ソフトウエア「Virtual Grid」,診断目的に合わせた2つのトモシンセシス機能を持つマンモグラフィ「AMULET Innovality」などが展示された。また,ITソリューションでは,これもITEM直前にリリースされた,肝がん症例が追加された類似症例検索システム「SYNAPSE Case Match」,頭部,泌尿器領域の解析機能やモバイル対応が強化された3D画像解析システム「SYNAPSE VINCENT」など,同社の画像処理,画像認識技術を生かして診療をサポートする機能の数々をアピールした。
富士フイルムは,2014年に創立80周年を迎えるが,ブースでも“80th Anniversary”のマークが入ったロゴが掲示されていた。(4月11日取材)

●Sonosite社との共同開発で誕生したコンパクト・高画質の超音波「FUJIFILM FC1」

4月2日にリリースされた新しい携帯型超音波画像診断装置である「FUJIFILM FC1」は,2012年に買収したSonosite社(現在は富士フイルムソノサイトとして子会社化)との共同開発で誕生した初めての製品である。ブースでは,“80周年記念製品”としてディスプレイされたほか,コンパクトな本体やプローブの堅牢性,高画質を実機で大きくアピールした。FC1は,画像処理アルゴリズムや音速補正技術を搭載した独自開発の超並列MPUを搭載し,超音波データの高速処理を実現。富士フイルムのX線画像で培われた画像処理技術を応用した,スペックルノイズリダクションによって,ノイズを半減し組織の境界や性状が明瞭な高解像度の画像描出を可能にする。また,落下や振動に対する耐久性の高い堅牢設計を採用しているほか,操作パネルはボタンの隙間がない一体成形とすることで清掃性を確保するなど,医療現場の使用環境に配慮している。操作性については,前面に大型タッチパネルを搭載し,画像保存や計測結果などを確認しながら直感的に操作できるようになっているのが特長だ。

“80周年記念製品”として大きくアピールされたFUJIFILM FC1

“80周年記念製品”として
大きくアピールされた
FUJIFILM FC1

 

一体成形のパネルによってボタンの隙間がなく清掃性に配慮

一体成形のパネルによってボタンの隙間がなく
清掃性に配慮

独自の画像処理技術とMPUでコンパクトながら高画質を実現

独自の画像処理技術とMPUで
コンパクトながら高画質を実現

 

●画像処理技術によって散乱線の影響を排除しグリッドなしの撮影を可能にする「Virtual Grid」

ITEM2014に合わせて発表された,DRのCALNEO Cシリーズに提供される新しい画像処理ソフトウエア「Virtual Grid」を出展した。X線撮影では散乱線を除去し画像コントラストを高めるために,グリッドと呼ばれる金属製フィルタが使用される。Virtual Grid処理は,富士フイルムが新たに開発した撮影条件や部位などの情報から散乱線成分を推定する“散乱線推定技術”を使用した画像処理である。Virtual Grid処理では,散乱線推定技術で作成された“散乱推定画像”を元画像から除去することで,散乱線の影響が除かれ画像コントラストが高くなり画質向上につながる。これによって,病棟や救急でのポータブル撮影など,グリッドが使えないケースでも画像のコントラストを高め,画質の向上が期待できる。また,パラメータの調整によって,グリッド比を変えた場合と同様のコントラストの調整が可能になる。ブースでは,胸部のほか,より散乱線の影響が大きい腹部領域でも大きな効果が得られることをアピールした。

画像処理によって散乱線成分を除去するVirtual Grid。右がVirtual Gridを適用後

画像処理によって散乱線成分を除去するVirtual Grid。
右がVirtual Gridを適用後

散乱線の影響が大きい腹部でもVirtual Gridで画像コントラストが向上

散乱線の影響が大きい腹部でもVirtual Gridで
画像コントラストが向上

 

●新たに2つの撮影モードと2つの画像処理を搭載したAMULET Innovalityのトモシンセシス機能を紹介

昨年のITEM2013で発表された同社のマンモグラフィ“AMULETシリーズ”の最上位機種である「AMULET Innovality」は,“HCP(Hexagonal Close Pattern)”構造のTFTパネルの搭載によって低線量で高画質の撮影を可能にして高い評価を受けている。また,AMULET Innovalityでは,用途に応じて使用可能な2つの撮影モードを搭載しており,撮影角度±7.5度で高速撮影によって検診などに適したST(standard)モードと,振り角±20度で深さ方向の分解能を向上し精密検査などに適したHR(High Resolution)モードを選択できる。
AMULET Innovalityのトモシンセシス画像では,従来の2D画像に近く自然な断層画像を提供するパターン1(濃淡画像)と,線構造や石灰化をより強調した断層画像を提供するパターン2の2つの表示モードを利用できる。パターン1の濃淡画像では,従来の見慣れたマンモグラフィ感覚でトモシンセシス画像を診断できる。さらに,トモシンセシス画像を再構成することで,合成2D画像を作成する“S-View”が新たに搭載された。S-Viewは,トモシンセシス画像が持っている詳細情報を1画像にまとめることで,石灰化などの病変の広がりを把握しやすくする表示方法だ。これらの画像は,超音波画像やMR画像とともに、SYNAPSEをベースとしたマルチモダリティビューワ「SYNAPSE EX-V」にて,同時に表示することを可能としている。

ST,HRの2つのモードでトモシンセシス撮影が可能なAMULET Innovality。ハローキティの装飾用シールで展示

ST,HRの2つのモードでトモシンセシス撮影が可能なAMULET Innovality。
ハローキティの装飾用シールで展示

トモシンセシス画像を再構築して2D画像を作成するS-View表示

トモシンセシス画像を再構築して
2D画像を作成するS-View表示

 

●泌尿器領域,頭部領域に対応した3D画像解析システムSYNAPSE VINCENT

ITソリューションコーナーでは,PACSからRIS,レポート,診療支援までSYNAPSEシリーズを中心とする診療統合ソリューション,3D画像解析システム,遠隔読影,救急,循環器・生理/内視鏡・手術の部門システム,クラウドサービスなど多様なソリューションが展示された。
3D画像解析システムの「SYNAPSE VINCENT」は,2014年2月にリリースした最新のバージョン4の機能をアピールした。新バージョンでは,富士フイルムの画像認識技術による臓器の自動抽出技術を適用して,50以上のソフトウエアがアップデートされているが,新しく追加されたソフトウエアとして“泌尿器科領域の腎臓手術シミュレーション”,“頭部の開頭シミュレータ/テンソル解析”,“心臓4チェンバー解析”などが紹介された。泌尿器領域では,腎臓解析・計測が可能になり,腎臓領域を抽出して腎臓切除シミュレーションが行えるほか,鏡視下シミュレータによって腹腔鏡下手術の術前シミュレーションを可能にする。また,頭部系のシミュレーションソフトでは,開頭シミュレータ/テンソル解析によって,CT,MR画像から脳や血管,DWI画像からのテンソルデータを抽出して合成し,術前シミュレーションを支援する。心臓4チェンバー解析では,左心室以外の右心室,左心房,右心房の4チェンバーの解析が可能で,心臓の4つの領域を自動認識して抽出し解析を行う。心拍の各フェーズでの体積を計測して一覧できる機能を搭載する。また,SYNAPSE VINCENTでの解析結果をモバイル端末で参照できる機能もバージョン4で搭載された。

SYNAPSE VINCENTの腎臓解析・計測と鏡視下シミュレータ

SYNAPSE VINCENTの腎臓解析・計測と
鏡視下シミュレータ

新バージョンに搭載された頭部の開頭シミュレータ/テンソル解析

新バージョンに搭載された
頭部の開頭シミュレータ/テンソル解析

   
4室の自動認識と解析,計測が可能な心臓4チェンバー解析

4室の自動認識と解析,計測が可能な
心臓4チェンバー解析

iPadなどモバイル端末での解析結果参照機能を新たに搭載

iPadなどモバイル端末での解析結果参照機能を
新たに搭載

 

●肝がん症例の追加など検索対応疾患の拡大を進めるSYNAPSE Case Match

肝臓腫瘤の類似画像検索が新たに可能になったSYNAPSE Case Match

肝臓腫瘤の類似画像検索が新たに可能になったSYNAPSE Case Match

類似症例検索システム「SYNAPSE Case Match」は,静岡県立静岡がんセンターとの共同開発によって,肺がん(孤立性陰影)の症例1000例の確定診断のついた症例を搭載し,読影の際に独自の画像解析技術を用いて病変の特徴が似た画像を検索し,類似度の高い順番にレポートと合わせて表示し,読影医の診断をサポートするシステムとして2012年に発売された。今回,これに約300例の肝臓腫瘤の症例データベースを搭載して新たにリリースされる。肝臓腫瘤では,複雑で多様な病変部の特徴に加え,造影剤による濃染パターンなどについても特徴量を解析することで,より類似性の高い症例を提示する。SYNAPSE Case Matchでは,自院で診断した画像について症例としてデータベースに登録可能でティーチングファイルとしても利用できるほか,電子医学書なども標準搭載し読影業務を幅広くサポートする。富士フイルムは,虎の門病院と肺のびまん性病変についての共同研究を進めており,今後も対象疾患を拡大していく予定だ。

●画像認識技術を生かし読影をサポートするPACSビューワ「SYNAPSE EX-V」

富士フイルムの画像認識技術は,SYNAPSE VINCENTのほか放射線科向けの3Dビューワである「SYNAPSE EX-V」にも横展開されており,高速処理を行う「IP-Xサーバ」の画像処理結果を表示する読影サポート機能として搭載されている。SYNAPSE EX-Vには,新たに“非剛体位置合わせ”,“骨ラベル”などが搭載された。胸部の骨転移などの画像診断では,椎体や肋骨が何番目にあたるのかナンバリングする必要があるが,骨ラベルでは骨を三次元的に自動認識して抽出することができる。ラベリングは自動的にすべての椎体に番号を振ることも可能だが,個人差もあるため任意の椎体を選択してナンバリングすることで,残りの骨のラベリング(色づけ)を行うこともできるようになっている。非剛体位置合わせは,シリーズの違うCT検査の位置合わせを画像認識技術で自動的に行う機能だ。ねじれや移動によって変形する臓器を自動認識して位置合わせを可能にする。

SYNAPSE EX-Vに搭載された非剛体位置合わせ

SYNAPSE EX-Vに搭載された非剛体位置合わせ

椎体などを自動認識してナンバリングをサポートする骨ラベル機能

椎体などを自動認識してナンバリングをサポートする骨ラベル機能

 

●お問い合わせ先
富士フイルムメディカル株式会社
住所:東京都港区西麻布2-26-30
TEL:03-6419-8033
FAX:03-5469-2922
URL:http://fms.fujifilm.co.jp/


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