ITEM2019 エレクタ ブースレポート 
オンコロジーとニューロサイエンスの2つの部門を軸に,最新の放射線治療機器・ソリューションを紹介


2019-5-10


エレクタブース

エレクタブース

オンコロジーとニューロサイエンスの治療において,他社に先駆けて卓越したイノベーションを提供してきたエレクタ。近年,放射線治療に関する統合的なソリューションの提供を進めており,治療計画策定や治療などのさまざまな段階で医療従事者のサポートをめざす。ITEM2019では,オンコロジー,ニューロサイエンス部門別に各種放射線治療機器・ソリューションを紹介した。オンコロジー部門では,高精度放射線治療システム「Versa HD」と光学式体表面リアルタイムスキャンシステム「Catalyst」による治療室の環境が再現された。また,ニューロサイエンス部門では,頭部専用の定位放射線治療機器ガンマナイフの最新モデル「Leksell Gamma Knife Icon(アイコン)」の治療計画装置「GammaPlan Ver11.1」が初出展された。

●高精度放射線治療システム「Versa HD」と体表面スキャンシステム「Catalyst」の組み合わせでSRT,IMRTなどをより高効率に実現

高精度放射線治療システム「Versa HD」は,エレクタが持つリニアック装置の最上位機種で,1台で全身のさまざまな部位のがんの治療に対応できる。高線量率モード(FFF)や呼吸同期インターフェイス,光学式体表面スキャニングによるリアルタイムモニタリングシステム「Catalyst」(C-RAD社製)により,定位放射線治療(SRT)や強度変調放射線治療(IMRT)などの複雑な治療を安全かつ効率的に行うことが可能である。ブースでは,Versa HDのテーブルとCatalystを配置した治療室の環境をセッティングして展示した。Catalystは,光学式カメラを使用した画像誘導システムで,1台または3台のカメラで体表面をリアルタイムにスキャンし,無被ばくで位置決めからモニタリングまで提供する。治療前の位置合わせ,治療中のモニタリング,呼吸同期照射(gating)が可能で,位置合わせでは,患者の体表面に位置情報や補正方法を直接投影する。モニタリングでは照射中に患者の状態をリアルタイムで観察し,照射中に設定した閾値を超えた体動を検知した場合は自動的に照射を停止することができる。頭部の定位照射では,体幹部に比べてより精密さが求められることから,Catalystには専用モードを搭載(オプション)し,専用のマスクで固定,モニタリングを行う。ブースでは,エンジニアリングシステムの頭部定位照射用マスク「エスフォーム」が紹介された。なお,Catalystは,薬機法上,国内ではエレクタ社のリニアック装置と組み合わせた場合のみ使用可能である。

ブースでは高精度放射線治療システム「Versa HD」(イメージ)とCatalystによる治療室の環境を再現

ブースでは高精度放射線治療システム「Versa HD」(イメージ)とCatalystによる治療室の環境を再現

 

体表面スキャンシステム「Catalyst」。定位放射線照射の場合は,3台のカメラを設置,それぞれ120°方向に設置し,360°をモニタリングする。

体表面スキャンシステム「Catalyst」。定位放射線照射の場合は,3台のカメラを設置,それぞれ120°方向に設置し,360°をモニタリングする。

 

Catalystで取得した体表面データをモニタに表示する。

Catalystで取得した体表面データをモニタに表示する。

 

エンジニアリングシステムの頭部定位照射用固定マスク

エンジニアリングシステムの頭部定位照射用固定マスク

 

●導入施設からの声を受けより使いやすく改良された放射線治療計画システム「Monaco」と放射線治療情報マネジメントシステム「MOSAIQ」

複雑化する放射線治療では,正確な治療計画策定や患者情報管理の重要性が増している。放射線治療計画システム「Monaco(モナコ)」や,放射線治療情報マネジメントシステム「MOSAIQ(モザイク)」は,導入施設から得たフィードバックに基づき改良を重ね,その最新のバージョンが紹介された。

Monacoは,主要な治療モダリティに対応する統合的な治療計画システムである。高精度な線量計算が可能なモンテカルロアルゴリスムを搭載すると同時に,処理速度の大幅な高速化を実現,モンテカルロアルゴリズムを採用する放射線治療計画システムの中でも高い処理速度を誇る。ブースでは,操作者の眼の負担を軽減するダークモードの採用など,インターフェイスデザインの改良点を紹介した。さらに,線量分布の評価やMOSAIQへの転送などの作業が,より少ない手順で実施可能になったことがアピールされた。MOSAIQは,放射線・粒子線治療に関する患者データを一元管理可能なシステムで,情報システム機能と照合・記録機能を併せ持ち,治療に関わるスタッフがさまざまな場所からアクセスできる。今回の展示では,患者の線量や各検査データ,スケジュールなどのMOSAIQで管理する内容を新しいユーザーインターフェース「Smart Clinic」で表示可能になったことが紹介された。また,業務の進捗状況を全体的に俯瞰できる機能である「Smart Board」も用意され,スタッフ間の情報共有がよりスムーズになり,業務の効率化につながることが期待される。

放射線治療計画システム「Monaco」。インターフェイスデザインの改良により,1クリックでMonacoからMOSAIQへのデータ転送が可能となった。

放射線治療計画システム「Monaco」。インターフェイスデザインの改良により,1クリックでMonacoからMOSAIQへのデータ転送が可能となった。

 

放射線治療情報マネジメントシステム「MOSAIQ」

放射線治療情報マネジメントシステム「MOSAIQ」

 

iPadで,MOSAIQで管理する患者ごとの治療状況やスケジュールが確認・共有できる

iPadで,MOSAIQで管理する患者ごとの治療状況やスケジュールが確認・共有できる

 

●国内でも設置が進む国際的な品質管理(QA)規格に準じた品質管理ソリューション「AQUA」

欧米では,放射線治療装置のQuality Assurance(QA)に関する規制強化が進んでおり,今後は日本でも同様の流れが予測される。エレクタは,カナダの医療機関と共同で放射線治療部門のさまざまな機器のQAプロセスを統合・調整・管理する品質管理ソリューション「AQUA(アクア)」を開発,その性能を紹介した。

AQUAは,設定されたワークフローに基づいて各装置の定期的なモニタリングを行い,装置の精度を確認する。QAプロトコールは,米国医学物理学会(AAPM)が発行した放射線治療装置の精度管理プログラムであるガイドラインタスクグループレポート142(TG-142)に準拠し,治療の品質と安全性に関するコンプライアンスを確保する。また,アプリケーションプログラムインターフェイス(API)により,複数の装置・機器,システムをベンダーを問わずに統合的に管理することが可能である。また,エレクタ社のリニアックの場合は,QAが自動で行える。

品質管理ソリューション「AQUA」のデモンストレーション画面。複数の装置の稼働状況を一目で確認できる。

品質管理ソリューション「AQUA」のデモンストレーション画面。
複数の装置の稼働状況を一目で確認できる。

 

AQUAでは計測データを保存し,経時的に確認することで異常を検知する。

AQUAでは計測データを保存し,経時的に確認することで異常を検知する。

 

●マスクシステム採用により高精度かつ柔軟性のある治療を実現する定位放射線治療機器ガンマナイフ「Leksell Gamma Knife Icon」

ニューロサイエンス部門では,頭部専用の定位放射線治療機器ガンマナイフの最新モデル「Leksell Gamma Knife Icon(アイコン)」の治療計画装置「GammaPlan Ver11.1」を初出展した。

ガンマナイフは1968年の開発以降,臨床現場のニーズに応えるべくモデルチェンジを重ね,Iconは第6世代にあたる。Iconは,フレームを頭蓋骨にピンで固定するフレーム固定システムに加え,ガンマナイフとしては初めて専用マスクシステムを採用。単回照射・分割照射治療,定位放射線治療(SRT)・マイクロラジオサージェリーなどが選択でき,個別の患者の状態や希望に応じたオーダーメイド治療を可能にする。コバルト線源はコリメータ本体の8個の独立した可動セクタに搭載され,セクタごとに4,8,16mmのコリメータ径を選択でき,6万5000通り以上の照射野が作成可能である。また,正常脳組織への線量は通常の放射線治療と比較して1/2〜1/4に抑制できる。治療計画策定や固定具(マスク)作成に要する時間が短く,一連の治療を一日で終えることができ,患者と施設双方に負担が少ない点もメリットである。

定位放射線治療機器ガンマナイフ「Leksell Gamma Knife Icon」。本体とテーブル,CBCTが一体化している。

定位放射線治療機器ガンマナイフ「Leksell Gamma Knife Icon」。
本体とテーブル,CBCTが一体化している。

 

Iconでは,治療の正確さを確認し,精度を保つ“Adaptive DoseControl”をコンセプトに,さまざまな機能を搭載している。エレクタ独自のステレオタクティックCBCTは,骨の画像情報を用いて3D定位座標を決定し,CBCTと事前に取得したMR画像などとのコ・レジストレーション(位置同期)により治療計画を作成する。また,実際の照射を行う前に再度CBCT撮影を行い,“Virtual 6D Couch”というソフトウエアで治療計画を実際の患者の体位にあわせて自動的に補正する。さらに照射中は,“Real Time HD Motion Management”システムにより,赤外線HCカメラでマスクアダプタと患者の鼻につけたペイシェントマーカーをリアルタイムにモニタリングし,設定した閾値以上の体動があった場合は照射を中断,閾値内に復帰後に照射を再開する。

Icon専用マスクと枕。患者の頭部に合わせて形状を作り,頭部を包み込むように固定する。

Icon専用マスクと枕。患者の頭部に合わせて形状を作り,頭部を包み込むように固定する。

 

赤外線カメラ(右)で患者の鼻に貼ったペイシェントマーカーとマスクアダプタを監視,設定した閾値以上の体動があった場合は,直ちに照射を中断する。

赤外線カメラ(右)で患者の鼻に貼ったペイシェントマーカーとマスクアダプタを監視,設定した閾値以上の体動があった場合は,直ちに照射を中断する。

 

Iconのコントロールシステム。シンプルな構成で,業務の安全性と効率を向上させる。

Iconのコントロールシステム。シンプルな構成で,業務の安全性と効率を向上させる。

 

●複雑な治療計画も容易に作成するIcon専用の治療計画装置「GammaPlan Ver11.1」を初展示

今回,ITEM初展示となったGammaPlan Ver11.1は,Icon専用の治療計画装置である。MRIやCT,PETなどあらゆるモダリティを治療計画に使用可能で,複雑な症例の治療計画も容易に作成できることが特長。放射線治療情報マネジメントシステム「MOSAIQ」にも接続できる。

治療計画策定に際しては,4,8,16mmのコリメータを腫瘍の大きさや形状に合わせて組み合わせて照射エリアを設定していく。3D画像も含め,さまざまな画像をカスタマイズしながら表示でき,それらの画像を参照しながら治療計画を策定する。治療計画策定後はマスクを作成,CBCT撮影を行うと,自動的に治療計画に用いた画像と比較し,必要に応じて治療計画を修正する。リニアックなどの放射線照射装置は,治療計画ではなく患者の位置を補正するが,ガンマナイフは治療計画を補正することで,正確な照射を行う。

治療計画修正後は,治療計画補正前後の線量分布をevaluation(評価),承認後にIcon装置側にデータを送信,照射を行う。これにより,治療の精度や正確性が保持される。また,Icon再治療の際に前回の治療部位も表示可能で,線量曲線などを再治療に反映させることができる。

治療計画装置「GammaPlan Ver11.1」のデモンストレーション画面。腫瘍を囲むように照射エリアを設定する。

治療計画装置「GammaPlan Ver11.1」のデモンストレーション画面。
腫瘍を囲むように照射エリアを設定する。

 

CBCT撮影後,治療計画を補正,確認する。破線が治療計画時,実線が補正後の照射範囲。

CBCT撮影後,治療計画を補正,確認する。破線が治療計画時,実線が補正後の照射範囲。

 

●お問い合わせ先
社名:エレクタ株式会社 ニューロサイエンス事業本部 オンコロジー事業部
住所:〒108-0023 東京都港区芝浦3-9-1 芝浦ルネサイトタワー7F
TEL:03-6722-3808
mail:Neuro-Japan@elekta.com Oncology-japan@elekta.com
URL:www.elekta.co.jp


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