ITEM2021 伊藤忠商事 ブースレポート 
MRI一体型でAdaptive Radiation Therapy(ART)を可能にするViewRay MRIdian Linacを出展


2021-5-10


伊藤忠商事ブース

伊藤忠商事ブース

伊藤忠商事は,米国ViewRay社のMRリニアックシステム「MRIdian Linac」を出展した。MRIdian Linac(メリディアンリニアック)は,MRIとリニアックを組み合わせて画像誘導放射線治療(IGRT)によって精度の高い治療を可能にする装置で,現在,世界41施設で稼働している。国内では,伊藤忠商事が2016年から販売しており,国立がん研究センター中央病院(照射装置がコバルト60)と江戸川病院の2施設で稼働中だ。ブースでは,MRIガイド下で腫瘍を確認しながら治療が行える特徴などを紹介するプレゼンテーションのほか,1号機が稼働する国立がん研究センター中央病院が監修したMRIdian Linacによる治療のワークフローをビデオで紹介した。

●MRIとリニアックを一体化し画像誘導下で高精度の放射線治療を提供

MRIdian Linacは,MRIとリニアックが一体になった放射線治療装置だ。ビームが発生する照射部を,2つに分割したMRIのマグネットが挟み込むように設置されている。これによってMR画像を用いた治療計画だけでなく,照射直前に治療寝台上でMR画像を撮像し,治療計画を修正する“On-line Adaptive RT”や,照射中にシネMRIによって腫瘍や臓器の動きを観察し,ビームをコントロールする“Real Time Gating”などが可能になった。これによって,リスク臓器を避けてターゲットに対して線量を集中することができ,治療期間の短縮や治療効果の向上が期待できる。
主なスペックとして,リニアックは6MVのフラットニング・フィルタ・フリー(FFF),アイソセンタ距離90cm,最大照射野サイズは横(x)方向27.4cm,頭尾(y)方向24.1cm,線量率600cGy/min,上下2段で138枚のダブルフォーカスのマルチリーフコリメータ(MLC)を搭載し,最小4.15mmのリーフ幅でコリメートを行える。また,MRIは超伝導0.35Tで開口径70cmとなっている。照射技術としては,三次元原体照射(3D-CRT),強度変調放射線治療(IMRT),体幹部定位放射線治療(SBRT)など従来行われている治療方法はすべて行うことができる。治療対象は,前立腺がん,肺がん,乳がんなど全身のがんに適応可能であり,海外の導入施設から膵がんや前立腺がんに対して良好な成績が報告されたことで世界各国での導入にはずみがついたという。
MRIdianは,2012年にViewRay社によってコバルト60(Co-60)線源を用いた装置(MRIdian Cobalt)として開発された。日本に導入されたのもMRIdian Cobaltだが,江戸川病院では2021年1月にコバルト60からリニアックにアップグレードして国内初のMRIdian Linacとしての稼働が始まっている。同院では,前立腺がん,肺がん,肝がんなどに1日20例以上の治療を行っていることなどをプレゼンテーションした。

MRリニアックシステム「MRIdian Linac」

MRリニアックシステム「MRIdian Linac」

 

2つのMRマグネットをリニアックを挟んで設置

2つのMRマグネットをリニアックを挟んで設置

 

●腫瘍や臓器を確認しながら照射を行う“On-line Adaptive RT”を実現

MRIdian Linacでは,以下の3つをコンセプトとして開発されている。

1) SEE〜MRI-IGRT
IGRTとしてMRIを使うメリットは,MRIはCTに比べてコントラストが良く,腹部領域の軟部組織の描出能が向上し,前立腺と尿道の走向が確認できることだ。小腸など軟部組織が重なっている腹部では,臓器の境界がわかりやすくなり,より正確な照射が可能になる。MRIdian LinacのMRIには,超伝導0.35Tの低磁場が採用されている。これは,高磁場MRIの場合に発生するelectron return effect(磁場の影響下での電子の再入射)による線量分布の不均一,画像の歪み,シネMRIでのSAR(specific absorption ratio)の上昇などを考慮し,より安全で放射線治療に最適な磁場強度として選択されたものだ。

2) SHAPE〜On-line Adaptive RT
On-line Adaptive RT(ART)は,治療の直前に患者が治療台に寝た状態で撮像した位置合わせ用のMR画像を利用して,再計算を行って治療計画を修正し,当日の患者の状態に合わせた治療を行うことが可能になる。従来の放射線治療は,事前に作成したプランに基づいて行われるため,治療による腫瘍の変化や,体形変化に対応できていなかった。On-line ARTでは,毎回撮像されたMR画像を基に修正できるため,正常臓器を避けて腫瘍に対してより正確に照射が可能で,治療効果の向上が期待できる。

3) STRIKE〜Real Time Gating
Real Time Gatingは,治療中にMR画像によってリアルタイムに撮像を行う。これによって腫瘍の状態を確認しながら照射ができるほか,MRIdian Linacでは照射野から腫瘍がはずれた場合にはビームをストップする自動認識機能を搭載する。ビームの自動制御機能を搭載しているのは,MRIベースでの画像の自動認識による治療ビームの制御を行う機能を搭載しているのはMRIdianだけだ。

伊藤忠商事では,MRIとリニアックの組み合わせという新たな価値を提供することで,放射線治療を進化させるViewRayの製品を国内でも広げていくことをアピールした。

On-line Adaptive RT,Real Time Gatingなどで精度の高い放射線治療を提供

On-line Adaptive RT,Real Time Gatingなどで精度の高い放射線治療を提供

 

国内1号機が稼働している国立がん研究センター中央病院監修のビデオでMRIdian Linacのワークフローを紹介

国内1号機が稼働している国立がん研究センター中央病院監修のビデオでMRIdian Linacのワークフローを紹介

 

MRIによるIGRTのメリットを最大限に生かした治療を実現

MRIによるIGRTのメリットを最大限に生かした治療を実現

 

●お問い合わせ先
社名:ViewRay, Inc.
住所:2 Thermo Fisher Way, Oakwood Village, OH 44146
URL:http://viewray-japan.com/contact/


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