RSNA 2025 President's Address and Opening Sessionでは,プレシジョンメディシンにおける放射線医学の役割を展望
2025-12-1
RSNA 2025会場のマコーミックプレイス
RSNA 2025が,マコーミックプレイス(米国イリノイ州シカゴ市)を会場に,現地時間11月30日(日)から始まった。5日間の日程で,12月4日(木)まで行われる。ハーバード大学医学部放射線科教授,マサチューセッツ総合病院放射線科画像科学副部長のUmar Mahmood, M.D., Ph.D.が大会長を務め,テーマには“Imaging the Individual”が掲げられた。
11月30日16時からは,Arie Crown Theaterにおいて恒例のPresident's Address and Opening Sessionが行われた。President's Addressの中で,Mahmood大会長は,“Imaging the Individual”をテーマに,プレシジョンメディシンにおける放射線医学の役割を提示し,会場に集った参加者とともに未来像を展望した。Mahmood大会長は,過去に経験したメラノーマ症例を取り上げ,BRAF遺伝子変異を標的とした新薬により完全寛解したと述べた。この劇的な変化を目の当たりにした経験から、同氏は「適切な薬を,適切な用量で,適切なタイミングで,適切な患者に」提供するプレシジョンメディシンの意義を説明した。その上で,CTにおける空間分解能と時間分解能の向上,MRIにおける機能評価の進歩,PETにおける分子イメージングといった画像診断技術の進歩について言及。特に分子イメージングの進歩でセラノスティクスによって多くの患者にプレシジョンメディシンを提供できるようになったと述べた。また,画像診断技術の向上は疾患の早期発見を可能にし,これにより,臨床での診断から,より早期のリスク評価へと画像診断の役割もシフトしていると説明した。Mahmood大会長は,一方で,データ量の増大という課題を指摘し,そのカギを握るのはAIだとし,データ統合によるプレシジョンメディシンの未来像を示した。さらに,Mahmood大会長は,免疫療法の進歩により,治療効果をリアルタイムで可視化できるようになったとして,多分野との協調により放射線医学が発展してきたと説明。医療が変革していく中で,放射線医学はその中心にあり,未来を創る主体となっていると強調した。
President's Address and Opening Sessionが行われたArie Crown Theater
RSNA 2025の大会長を務める
Umar Mahmood, M.D., Ph.D.
続くOpening Sessionでは,米国国立衛生研究所(NIH)のAll of Us Research ProgramでChief Medical and Scientific Officerを務めるGeoffrey S. Ginsburg, M.D., Ph.D.が登壇。“The All of Us Research Program: Advancing Precision Medicine for the Nation”をテーマに講演した。All of Us Research Programは2015年に発足し,多様な職種や地域の人々を含め,現在約87万人分のデータセットを持っている。このような膨大なデータセットを有する強みを生かして研究を加速させており,Mass General Brighamの研究チームが7年で8つポリジェニック・リスク・スコア(PRS)を開発,実用化させたと説明した。All of Us Research Programの有するデータは,41万4000以上のゲノム情報や約40万件の電子カルテデータ,5万9000件のウエアラブルデバイスデータなどを保管している一方で,こうしたデータを提供者に還元することにも取り組んでおり,遺伝子変異などの価値ある情報を返している。その上で,Ginsburg氏は,今後の課題として画像情報との統合を挙げ,現在NIHが進めているEyes on Healthプロジェクトなどを紹介した。さらに,Ginsburg氏は,国際的な取り組みについても言及して,画像データが不足しているという課題を挙げた。これを踏まえて,講演のまとめとして,画像情報と電子カルテ,ゲノム情報などが統合されることで,一人ひとりの健康増進が可能になると強調。放射線医学がプレシジョンメディシンの未来を創る主体となるために,RSNAと参加者への協力を訴えた。
Opening Sessionで講演した
Geoffrey S. Ginsburg, M.D., Ph.D.
President's Address and Opening Sessionでは,このほか,米国医学物理学会(AAPM)会長のM. Mahesh, Ph.D., FAAPM.が挨拶したほか,Mahmood大会長がユタ⼤学放射線科教授の蓑島 聡氏など受賞者の紹介を行った。
多くの参加者を集めたPresident's Address and Opening Sessionの会場
マコーミックプレイスのグランドコンコース
Technical Exhibitsは11月30日10時に開場
