シーメンスヘルスケア,フォトンカウンティングCT「NAEOTOM Alpha」の臨床知見を報告する「NAEOTOM Symposium 2025」を開催
2025-11-27
「NAEOTOM Symposium 2025」を
オンラインで開催
シーメンスヘルスケア(株)は2025年11月19日(水),「NAEOTOM Symposium 2025」を開催した。「See the Unseen—見えなかったものが見えてくる」をテーマに,フォトンカウンティングCT(PCD-CT)「NAEOTOM Alpha」の技術的な特長や,2022年に国内に導入されてから積み重ねられてきた臨床知見が報告された。
冒頭,Siemens HealthineersのCT統括責任者であるPhilipp Fischer氏のビデオメッセージが流された。Fischer氏は,2025年末までに全世界で250万人以上の患者の診断にNAEOTOM Alphaが貢献する見込みであると報告。その上で,PCD-CTの知識が臨床に広がることで,より多くの患者の診断に役立つとともに,これまでCT診断の対象外であった患者を支援可能となることに大きな喜びを感じていると述べた。
次に,同社CT事業部プロダクトマネージャーの鈴木和明氏が,「Photon-counting CT is NAEOTOM,今こそフォトンカウンティングの時代へ」と題して講演した。NAEOTOM Alphaの特長として,高分解能,低侵襲,高画質,スペクトラル解析を挙げ,これらを実現するための技術的背景や開発の歴史を紹介した。また,NAEOTOM Alphaの実績として,世界で250台以上,国内で17台が稼働していることなどを報告。さらに,2040年までに販売するすべてのCTをPCD-CTにしていくというビジョンを示し,その実現に向けて,2025年8月からPCD-CTのラインアップを,Dual Sourceで最上位機種の「NAEOTOM Alpha.Peak」(旧・NAEOTOM Alpha),Dual Sourceでプロフェッショナルモデルの「NAEOTOM Alpha.Pro」,Single Sourceの「NAEOTOM Alpha.Prime」の3機種に拡大したと述べた。
続いて,5名のユーザが,「NAEOTOM Alphaの臨床アドバンテージ」をテーマに領域別に講演した。
はじめに,名古屋市立大学医学研究科脳神経外科学分野の西川祐介氏が,「頭部領域」の臨床知見を報告した。西川氏は,PCD-CTが頭部領域にもたらした変化の一つとして,金属アーチファクトの軽減によるflow diverter stent術後評価を挙げた。PCD-CTでは,ステントおよびステント周辺部を高分解能CBCTと遜色なく描出できることを示したほか,従来は金属アーチファクトによって判別しづらかったステント近接部の詳細な評価が可能であると述べた。また,もう一つの変化として,空間・時間分解能に優れた高度な撮影が可能なことを挙げ,特に硬膜動静脈瘻(dAVF)の静脈評価および診断・治療支援に非常に有用なツールであるとまとめた。
大阪大学大学院医学系研究科放射線統合医学講座放射線医学教室の秦 明典氏は,「胸部領域」について報告した。NAEOTOM Alphaでは高い空間分解能が得られるため,伸展固定肺を用いた組織像との対比において,従来CTよりも結節や気道を良好に描出できることを示した。また,高い空間分解能を生かすためには適切な画像再構成設定が必要であるとし,マトリクスサイズを大きく,FOVを小さくすることで,より微細な構造を明瞭に描出できると述べた。さらに,NAEOTOM Alphaの特長として,通常の撮影に加えてスペクトラルイメージングが可能なことを挙げ,低keV画像やヨードマップは病変検出の補助として非常に有用であると述べた。
東京科学大学病院放射線診断科の横山幸太氏は,「腹部領域」におけるNAEOTOM Alphaについて,実臨床における有用性や機器の価格に見合う価値,機器導入につながる活用法といった観点から,肝胆膵領域および消化管領域におけるスペクトラルイメージングに焦点を当てて報告した。低keV画像やヨードマップを用いることで病変の視認性が向上し,造影1相での膵がん評価が可能となるほか,造影剤量を低減しても視認性が保たれるため,腎機能低下例でも造影CT検査を躊躇なく行えるとの考えを示した。また,これらの特長に加え,消化管領域においては平衡相における線維化成分の検出に優れることや,ヨード密度による炎症の定量化に有用であることなどを挙げ,NAEOTOM Alphaは新たな臨床的価値を見出すことが可能なCTであると評価した。
昭和医科大学医学部内科学講座循環器内科学部門の酒井孝志郎氏は,「循環器領域」をテーマに,冠動脈疾患に焦点を当てて講演した。PCD-CTの高い空間解像度やさまざまな技術によって,ノイズやアーチファクトの少ない詳細かつ明瞭な冠動脈CT画像の取得が可能となっている。酒井氏は,その効果として,石灰化病変やステント内病変の評価におけるPCD-CTの有用性を検討し,いずれも従来CTの限界を克服する可能性を示す良好な結果が得られたと述べた。また,近年注目されている冠動脈狭窄と心筋虚血の非侵襲的な検査法であるFFR-CTについても言及し,PCD-CTがより正確な解析に寄与する可能性を示唆した。
最後に,「全身/救急領域」について,Faculty of Medicine in Pilsen, Department of Imaging MethodsのJiří Ferda氏が講演した。同院では, NAEOTOM Alpha.Peak,NAEOTOM Alpha.Pro,NAEOTOM Alpha.Primeの3機種が稼働しており,救急領域をはじめ,全身のあらゆる領域で活用している。講演では,頭頸部,胸部,心血管,救急,腹部,整形などの領域におけるPCD-CTの臨床応用として多数の症例を提示。高解像度画像による微細構造の描出や,高速・高分解能画像による血流評価,低エネルギー画像による造影剤コントラストの向上,被ばく低減や造影剤低減への貢献など,PCD-CTはあらゆる領域で診断の質を向上し,より安全で正確な医療を支えていると述べた。
●問い合わせ先
シーメンスヘルスケア株式会社
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TEL 03-3493-7500
https://www.siemens-healthineers.com/jp
