技術解説(富士フイルム)

2022年1月号

FUJIFILM TECH FILE 2022

撮影画像からポジショニングのズレを推定し再撮影の要否判定をサポートする“Reviewingナビ” AI技術を設計に活用しX線撮影室でのワークフロー効率化に貢献

地曵裕二(富士フイルム株式会社メディカルシステム事業部)

はじめに

現在の医療では,画像診断は疾患の把握や治療方針の決定などで欠かせない検査となっている。それだけに,検査数の増加や画像診断装置の高性能化に伴い,読影にかかる負担は増え続けている。こういった背景から,診断の質向上と読影の効率化をサポートする手段の一つとして,人工知能(AI)技術を活用した画像診断支援機能などに期待が寄せられており,富士フイルムでも肺結節検出や臓器セグメンテーションなどのソフトウエアを提供している。
その中で,当社では,“画像診断を行う上で,撮影業務は欠かせない”という部分にも注目し,撮影担当者のワークフロー効率化をめざして,さまざまな製品やソフトウエアを開発してきた。
本稿では,当社のカセッテDR*1用画像処理ユニット「Console Advance」(図1)に新しく搭載されるX線画像確認支援機能“Reviewingナビ”について紹介する。

図1 カセッテDR用画像処理ユニット「Console Advance」

図1 カセッテDR用画像処理ユニット
「Console Advance」

 

撮影画像確認作業におけるリスク

画像診断の中で最も検査数の多い一般X線撮影の画像診断において,適切なポジショニングで撮影された画像を読影医に提供することは最も重要である。そのために,撮影後には迅速に画像確認を行い,再撮影の要否を判断することが求められている。しかし,画像確認に多くの時間をかけられないという背景もあり,実際には再撮影が必要にもかかわらず,見逃してしまうといったリスクが存在する。
そこで,撮影担当者の見逃しのリスク低減をめざし,撮影後のX線画像確認時にポジショニングのズレ*2による再撮影の要否判断をサポートする機能として,Reviewingナビを開発した。

Reviewingナビの特徴

今回,撮影数が最も多い胸部撮影と,写損率が最も高い膝側面をターゲットとした。胸部撮影では肺野欠損の推定,膝側面では判断が難しいとされている内外旋の推定を行い,肺野欠損もしくは関節内外旋の可能性があると推定した場合に,Console Advance上で確認の注意を撮影担当者に促し,必要に応じて推定結果の詳細を表示することができる。

1.Reviewingナビの機能

〈推定結果をConsole Advance上に表示〉
Reviewingナビは撮影後のX線画像を解析し,ポジショニングのズレがあると推定された場合は,撮影メニュー上にアラートアイコンを表示し,撮影担当者に確認を促す(図2)。

図2 推定結果をConsole Advance上に表示

図2 推定結果をConsole Advance上に表示

 

〈推定結果詳細表示〉
撮影担当者は,必要に応じで詳細表示アイコンをクリックすることにより,推定結果のイラストと説明文をConsole Advance上に表示することができる(図3)。イラストと説明文の推定結果詳細により,再撮影の要否判断および再撮影時の再ポジショニングにおける参考情報として活用することが可能である*3

図3 推定結果詳細表示

図3 推定結果詳細表示

 

2.推定結果詳細表示例

〈胸部X線画像〉
肺野全体が写っている画像が求められるが,肺野全体が入っていないと推定された場合は,その欠損の可能性のある箇所を示したイラストと説明文をConsole Advanceに表示し注意を促す(図4)。

図4 胸部X線画像から,肺野欠損の推定結果を表示する画面イメージ

図4 胸部X線画像から,肺野欠損の推定結果を表示する画面イメージ
a:肺野欠損なしと推定 b:肺野の一部が欠損していると推定

 

〈膝関節側面画像〉
真横から撮影された画像が求められるが,ポジショニングのズレが生じやすい部位であり,再撮影の要否判断が難しいとされている内旋・外旋の推定を行う。ポジショニングのズレが生じている可能性がある場合には,Console Advance上にイラストと説明文を表示し注意を促す(図5)。また,人工関節(TKA)が留置された膝関節側面画像も学習ずみとなっている。

図5 膝関節側面のX線画像から,膝関節の内旋・外旋の推定結果を表示する画面イメージ

図5 膝関節側面のX線画像から,膝関節の内旋・外旋の推定結果を表示する画面イメージ
a:膝関節の内旋・外旋なしと推定 b:膝関節の内旋ありと推定

 

おわりに

当社では,2020年10月にAI技術を用いた“ポジショニングナビ機能”を搭載したX線診断システム「CALNEO Compact」*4を発売している。ポジショニングナビ機能は,X線撮影時にあらかじめ登録した撮影メニューと被検者のポジショニングが一致しない場合にConsole Advanceにアラートを表示する機能で,ポジショニングの不整合による再撮影低減に貢献してきた(図6)。
今後も,より多くのシーンで撮影業務支援機能の導入を行うことで,ワークフロー向上や撮影技術向上などに貢献することをめざしていく。

図6 「CALNEO Compact」の“ポジショニングナビ機能”

図6 「CALNEO Compact」の“ポジショニングナビ機能”

 

*1 FUJIFILM DR CALNEO Flow
販売名:デジタルラジオグラフィ DR-ID 1800
認証番号:第302ABBZX00021000号
FUJIFILM DR CALNEO Smart
販売名:デジタルラジオグラフィ DR-ID 1200
認証番号:第226ABBZX00085000号
*2 胸部PA画像における上下左右の肺野欠損の推定,および膝関節側面画像におけるローテーション(内旋・外旋)推定
*3 必ず撮影画像の目視確認を行い再撮影の要否を判断してください。
*4 CALNEO Compact
販売名:X線診断装置 CALNEO XR
認証番号:第302ABBZX00055000号

TOP