技術解説(フィリップス・ジャパン)

2019年7月号

企業における医療向けAI技術の開発動向

深層学習を活用した脳腫瘍セグメンテーションへの取り組み

グリオブラストーマ(GBM)は頻度の高い脳腫瘍であり,治療方針決定やフォローアップにおいては,腫瘍全体だけではなく造影濃染領域や壊死領域の正確な把握が重要である。フィリップスでは,患者予約管理,検査,画像診断,読影,治療方針決定,フォローアップと,“Health continuum”のすべてのプロセスで人工知能(AI)技術の開発を行っている。そこで本稿では,治療方針決定へのAIの取り組みとして,「IntelliSpace Discovery」(ISD)を用いた,深層学習を活用した脳腫瘍(GBM)のセグメンテーション研究について紹介する1)。ISDは,教師データ作成,前処理,AIモデル開発・評価といったすべてのプロセスを1つのプラットフォーム上で行うことが可能である。

BraTS Challengeの220人分の造影前後のT1W,T2W,FLAIR画像を教師データに用いて,DeepMedic2)をベースにディープラーニングモデル開発を行った。ディープラーニングの課題の一つとして,学習用データを取得した施設においては高精度であるが,異なるデータセットでは精度が変わりうる。そこで本研究では,マルチセンタートライアルとして,15施設,ベンダー・磁場強度が混在した8種類のMRI装置,撮像条件(プロトコール)に幅を持たせた64例のデータでディープラーニングモデルの評価を行った(図1)。ディープラーニングモデルによるセグメンテーション結果は,医師によるセグメンテーションを参照にDICEスコアを用いて評価した。

図1 ディープラーニングによるGBMセグメンテーション

図1 ディープラーニングによるGBMセグメンテーション

 

DICEスコアは,whole tumor(0.86±0.09),contrast enhance tumor(0.78±0.15),necrosis(0.62±0.30)であった。マルチセンタートライアルでは,ディープラーニングモデルが高精度でGBMのセグメンテーションが可能であることを示している。

今後は,治療後評価やフォローアップでの評価を行い,広く臨床で使用できるよう,さらなる開発に取り組んでいきたい。

●参考文献
1)Perkuhn, M., et al. : Clinical Evaluation of a Multiparametric Deep Learning Model for Glioblastoma Segmentation Using Heterogeneous Magnetic Resonance Imaging Data From Clinical Routine. Invest. Radiol., 647〜654, 2018.
2)Kamnitsas, K., et al. : Efficient multi-scale 3D CNN with fully connected CRF for accurate brain lesion segmentation. Med. Image Anal., 36, 61〜78, 2017.

 

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