New Horizon of 4D Imaging(ザイオソフト)

2016年1月号

放射線科、循環器内科が連携した心臓チームと3Dラボの循環器画像診断をZiostation2がサポート 〜ネットワークによるPACSと連携した3Dデータの運用とPhyZiodynamicsの活用環境を構築〜

神戸大学医学部附属病院

神戸大学医学部附属病院

神戸大学医学部附属病院では、2014年1月に病院情報システムをリニューアル、放射線部門システムについてもPACSや3D医用画像処理ワークステーション(3DWS)の環境が一新された。3DWSは、ザイオソフトのZiostation2のネットワークタイプが導入され、PACSシステムと連動した環境を構築した。放射線部では、3D画像処理を専門に行う部署として“3Dラボ”を立ち上げ、診療科からのオーダに対応するほか、放射線科と循環器内科による心臓チームと連携して、より精度の高い心臓3D画像を提供している。Ziostation2を核とした3Dラボ、心臓チームの取り組みを取材した。

最新のDSCT、ADCTなど4台のCTを駆使して診療を展開

同院では診断用CTとして、Area Detector CT「Aquilion ONE」(東芝社製)、2管球CTの最上位機種「SOMATOM Force」(シーメンス社製)など4台が稼働している。MRIは、診断用の5台と手術室に設置した1台を含めて6台(3T 4台、1.5T 2台)が稼働する。CTの検査件数は1日140〜150件、MRIは1日約60件である。
同院では、2014年1月に電子カルテシステムの更新に合わせ、PACSや3DWSのネットワークについてもリニューアルした。放射線部の髙橋 哲特命教授は、放射線診断部門のネットワーク構築のコンセプトについて、「CT、MRIなどますます膨大になる画像データに対して、迅速で正確な読影が求められます。日常の読影の中では、3D画像は読影の確信度を上げるために重要な役割を果たしています。2Dと3Dのデータをシームレスに利用できるのと同時に、シンスライスデータを適切に管理・運用できることが重要で、PACSとZiostation2を連携したネットワークによって、最適な読影環境が構築できました」と説明する。

髙橋 哲 放射線部特命教授

髙橋 哲 放射線部
特命教授

西井達矢 放射線科特定助教

西井達矢 放射線科
特定助教

森 俊平 循環器内科特定助教

森 俊平 循環器内科
特定助教

根宜典行 放射線部主任

根宜典行 放射線部
主任

 

3D解析からPhyZiodynamicsをネットワークで利用可能

Ziostation2のネットワーク(Type1000)は、画像処理サーバ(VGS)が院内配信のVersaWeb用を含めて3台、データサーバ用のZIOBASE(12TB)1台を導入。クライアント端末は、フル機能クライアント(VGR)がCT操作室、読影室、3Dラボに7台、PACS端末にインストールした相乗り端末が読影室、医局などに24台。院内ではVersaWebで電子カルテ端末での3D画像の参照が可能になっている。また、ザイオソフトの独自の画像処理技術である“PhyZiodynamics”を利用するための「PhyZioMaker Server」を導入し、院内2か所の端末で処理と結果参照が可能になっている。
放射線科の西井達矢特定助教は、Ziostation2の利用について、「日常業務の読影時に、診断の根拠となる所見や重要な解剖構造などを、診療科の医師と確実に情報共有できることをめざして、視認性が高く理解しやすいキー画像を作成し診断レポートに添付しています。それだけに読影の流れを妨げないスピードとアクセシビリティが求められますが、PACSビューワからワンクリックでフル機能のさまざまな画像後処理が可能で、読影レポートにすぐに反映できます」と説明する。

オーダの確認から3D作成まで専門的に対応する“3Dラボ”

放射線部では、2014年10月に3D画像解析を専門に行う3Dラボを開設した。Ziostation2など3DWSを駆使して、診療科からの3D画像のオーダに対応するだけでなく、放射線科医や各診療科の医師とも連携しながら、より的確な3D画像の提供をめざしている。髙橋特命教授は3Dラボの役割について、「診療科からのオーダに対して、的確で真に臨床に役に立つ3D画像の提供が求められており、診療科のニーズを正しく把握し、3D画像の作成を専門的に行う部署として立ち上げました」と述べる。
3Dラボを担当するのは、CT室の根宜典行主任で、現在はCTを中心に1日15件前後を作成している。根宜主任は3Dラボの運用について、「3D画像の作成は、CT担当のほか一般撮影など他部署からの応援も得て行っています。3Dラボは、基本的に各診療科に対してオープンにしており、循環器内科の心臓チームや脳神経外科などの医師に利用されています。また、診療科がどんな情報を必要としているのかや提供画像のフィードバックのため、カンファレンスにも参加しています。さらに、提供可能な3D画像や解析内容を紹介するなどの活動を行っています」と説明する。

読影室ではPACS端末との相乗りで読影と連携しながらZiostation2を利用可能。端末で読影・画像作成を行う西井特定助教。

読影室ではPACS端末との相乗りで読影と連携しながらZiostation2を利用可能。端末で読影・画像作成を行う西井特定助教。

3Dラボではスペースを開放して循環器内科をはじめ診療科の医師が3DWSを活用する。心臓の3D画像を作成する森特定助教。

3Dラボではスペースを開放して循環器内科をはじめ診療科の医師が3DWSを活用する。心臓の3D画像を作成する森特定助教。

 

放射線科と循環器内科による心臓チームで3D画像作成に対応

循環器画像については、放射線科と循環器内科の画像診断グループ、診療放射線技師からなる心臓チームが、検査から3D画像の提供までをフォローアップしている。西井特定助教は、心臓チームでのZiostation2の運用について、「心臓CTの3D解析では、従来の断面像ではとらえられない複雑な構造や動態の観察が可能になっています。臨床の循環器内科医、画像の放射線科医、そして検査実施の技師というそれぞれの専門性を連携して、各患者に対して最適な画像情報を提供するために、チームを構成しています。前日に検査目的などを精査し、撮影のプロトコールなどを確認します。撮影時には放射線科医も立ち会い、最適な検査画像を取得します。撮影後の3D画像の作成は、循環器内科医が3Dラボで直接行います。その画像に対して、臨床的解釈および画像的解釈をレポートとして循環器内科と放射線科で作成します。その流れの中心となるのがZiostation2です」と述べる。
循環器内科の森 俊平特定助教は、「循環器内科領域では、構造的心疾患に対する血管内治療の手技が増えており、治療の安全性と成功率向上のために三次元的に心臓の形態を把握することが重要になっています。治療に役立つ3D画像の提供のためには、臨床医の意図に合った撮影と、3D画像の作成が必要で、心臓チームとしてコミュニケーションを取りながら、質の高い3D画像を提供しています」と説明する。
同院の心臓CT検査では、通常の冠動脈撮影だけでなく、構造的心疾患、心臓腫瘍、心筋症など症例は多岐にわたり、複雑な画像評価が要求される。心臓チームでは、森特定助教を中心に、治療時に主に参照する透視画像に合わせたFluoroscopy-like画像や、画像グループ独自のDye-cast法、Shell法、Virtual dissection法などの再構成法を駆使してリアリティのある画像の提供を行い、臨床に貢献している。

■Ziostation2とPhyZiodynamicsによる臨床画像

PhyZiodynamicsを用いたノイズ低減の臨床例

PhyZiodynamicsを用いたノイズ低減の臨床例
ノイズ低減により有意狭窄が明瞭化。負荷CT心筋Perfusion検査と矛盾しない結果である。

 

左心系の生体心解剖

左心系の生体心解剖
僧帽弁葉を含む局所構造解剖を明瞭に可視化できる。

 

PhyZioMakerによる処理でノイズ低減などに活用

森特定助教は、心臓領域でのZiostation2の使い勝手について、「マニュアルで再構成できる部分の自由度が高く、心臓の複雑な解剖を再構成するのに有用です」と評価する。また、根宜主任は、「CT冠動脈解析やTAVR術前プランニングで解析のスループットが大きく向上しました。また、時相の異なるデータを使うことの多い腹部領域では、非剛体位置合わせで正確な画像が作成できます」と述べる。
同院では、PhyZioMakerによる処理をほぼルーチンで行っている。当機能は、画像補完により、自然な4D画像の作成やノイズ低減が可能となる。西井特定助教は、PhyZiodynamicsへの期待について、「当院ではSOMATOM Forceなどの導入によって、さらなる低被ばく、低造影剤量に積極的に取り組んでいますが、やはりイメージノイズとのトレードオフになります。心臓CTでは、PhyZiodynamicsを適用することで、これまでと同様の画質を維持しながら、低侵襲検査の実施が可能になっています。処理時間も1検査5〜10分程度で、実臨床でも積極的に活用する価値があると考えています。また、ポストプロセッシングのため、各社の逐次近似応用再構成法などとも併用できることも大きなメリットです」と述べる。
また、ライブキャプチャ(LC)による、診療科への3D画像の提供を予定している。LCでは、作成した3D画像を保存することで、院内の電子カルテ端末からWebクライアントのVersaWebで、ボリュームデータを自由に参照可能だ。西井特定助教と根宜主任は「3Dラボのスタートで、今後、電子カルテ上でもWebベースでのLCの本格的な活用が可能になり、臨床側にさらに有益な情報を提供できます」と期待する。西井特定助教は、「CTは機器のさらなる進化で新しいステージを迎えたと感じています。それぞれの患者に合わせたテーラーメード検査を進めていくためには、CTの情報を最大限利用することが重要であり、その解析を行うソフトウエアが必要で、Ziostation2やPhyZiodynamicsには期待しています」と述べる。臨床・研究の最先端の現場でのZiostation2のさらなる活用が期待される。

(2015年11月9日取材)

 

神戸大学医学部附属病院

神戸大学医学部附属病院
兵庫県神戸市中央区楠町7-5-2
TEL 078-382-5111
http://www.hosp.kobe-u.ac.jp/

 

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