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RSNA2019 AI Showcase 実装化に向けてプレイヤーの動きが加速

2019-12-6

144の企業・団体が出展したAI Showcase会場

144の企業・団体が出展したAI Showcase会場

RSNA 2019のTechnical Exhibitも人工知能(AI)が主役となった。ディープラーニングの登場により,放射線医学においてもAI技術が加速度的に進化している。PACSなどのITベンダーはもちろんのこと,CTやMRIなどの大型モダリティを扱う企業もこぞってAIの開発,製品搭載を進めており,Technical Exhibit会場内でも出展者が盛んにアピールを行っていた。特に今回,2017年に設けられたMachine Learning ShowcaseがAI Showcaseに名称を変更し,さらに会場もTechnical Exhibitから独立して,ノースビルディングの2階に専用のエリアが設けられた。このAI Showcaseには144の企業・団体がブースを構えたほか,出展企業がプレゼンテーションを行うAI Theaterや,AI Hands-on Workshop,Deep Leaning Labが設けられた。

AI Showcaseには,GE HealthcareやPhilipsといったモダリティメーカー,AIアルゴリズムを提供する企業のほか,NVIDIA,Google Cloud,Amazon Web Serviceといった大手ITベンダーもブースを出した。

この中で,ディープラーニングを支える重要技術,GPUを提供するNVIDIAは,RSNA 2019において新しいソリューションを発表。AIコンピューティングカンパニーとしての存在感を示した。NVIDIAはAIの開発・利用のための技術を提供しているが,今回発表した“NVIDIA Clara Federated Learning”は,複数の医療機関でAIの開発を行うソリューションである。NVIDIA Clara Federated Learningでは,各医療機関がNVIDIAのGPUである「Tesla T4」を搭載した「EGXサーバ」を導入することで,機微な医療情報を自施設内に保管しセキュリティを確保した状態で,AIアルゴリズムの共同開発を行うことが可能となる。すでに,米国放射線学会(ACR),英国国民保健サービス(NHS)およびキングス・カレッジ,北京大学第一医院,カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)が,関連施設との間で,NVIDIA Clara Federated LearningによるAI開発を進めている。これらの施設では,Philipsの「IntelliSpace」などの画像ビューワで使用できる“NVIDIA Clara AI-Assisted Annotation SDK”を用いてアノテーションを自動的に行い,開発時間の短縮を図っている。
さらに,NVIDIAは,RSNA 2019において,モダリティなどにAIを組み込むための“NVIDIA Clara AGX”を発表した。同社のブースには,NVIDIA Clara AGXによるAIを搭載したHyperfineの小型MRI(W.I.P.)が展示された。

AIの開発環境が整ってきたことで,AIアルゴリズムが次々と登場しているが,今後はそれらをどのように既存の画像ビューワなどで使用するのかが課題となっている。すでに,海外ではEnvoyAIのようなAIを提供するサービスを展開する企業があるが,日本ではこのような企業はほぼない。こうした状況の中,RSNA初出展となる遠隔読影サービス企業のドクターネットは,「AI-RAD」という新しいサービスを始めようとしている。AI-RADでは,同社の「Tele-RAD」の仕組みを利用して,現在約700人いる同社ユーザーの遠隔読影医と約900の依頼施設向けに,AIアルゴリズムを提供する。これにより,遠隔読影におけるレポートの質の向上を図るという。

AIアルゴリズムを提供する企業もAI Showcaseに数多く出展していたが,多くは米国,中国,イスラエル,韓国といった国の企業であった。このような状況の中,日本企業で1社気を吐いていたのが,エルピクセルである。同社はMR画像から脳動脈瘤を検出する「EIRL aneurysm」を2019年10月に上市し,日本における医用画像向けAI開発をリードしている。ブースでは,EIRL aneurysmのほか,開発を進めている胸部単純X線写真,マンモグラフィ,胸部CTの病変検出アルゴリズムのデモストレーションを行った。EIRL aneurysmについては,2020年の早期に米国での共同研究をスタートさせ,上市をめざすという。さらに,胸部単純X線写真の結節検出については,今後日本の薬機法承認に向けた準備を進めるとしている。

多くの参加者を集めたAI Theater

多くの参加者を集めたAI Theater

 

AI Hands-on Workshop

AI Hands-on Workshop

 

Deep Leaning Lab

Deep Leaning Lab

 

“NVIDIA Clara Federated Learning”に必要となる「Tesla T4」搭載「EGXサーバ」

“NVIDIA Clara Federated Learning”に必要となる「Tesla T4」搭載「EGXサーバ」

 

NVIDIA Clara AGXを用いて開発されたHyperfineの小型MRI

NVIDIA Clara AGXを用いて開発されたHyperfineの小型MRI

 

初出展のドクターネットはAI利用のための「AI-RAD」を紹介

初出展のドクターネットはAI利用のための「AI-RAD」を紹介

 

米国での上市をめざすエルピクセルの「EIRL aneurysm」

米国での上市をめざすエルピクセルの「EIRL aneurysm」

 

日本での製品化を進めている胸部単純X線写真の結節検出アルゴリズム

日本での製品化を進めている胸部単純X線写真の結節検出アルゴリズム


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