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第14回富士通病院経営戦略フォーラム地域包括ケアを実現する病院経営,ICT活用のあり方を多面的に議論

2013-5-23

第14回富士通病院経営戦略フォーラム

第14回富士通病院経営戦略フォーラムが,“富士通フォーラム2013”の医療特別セミナーとして,2013年5月16日(木),東京・千代田区の東京国際フォーラムで開催された。富士通フォーラムは,同社の最先端の製品やサービス,技術についてセミナーや展示で紹介するイベントだが,その中のヘルスケア向けのセミナーとして企画されたもので,「地域包括ケアを多面的視点で展望する〜患者さんと医療者の明るい健康社会を求めて」をテーマに講演が行われた。今年は2部構成となり,第1部では「地域包括ケアの本質は何か」について,鎌田實氏(諏訪中央病院名誉院長)と長谷川敏彦氏(日本医科大学特任教授)が特別講演を行った。第2部は「地域包括ケアを患者さん視点,ICT活用の切り口で考える」をテーマに,長谷川氏がコメンテーターを務め,3名の演者が講演を行った。また,展示会場では健康・医療コーナーで“HumanBridge EHRソリューション”,“患者案内カードNAVIT”などを展示した。

病院経営戦略フォーラムの会場風景

病院経営戦略フォーラムの会場風景

富士通フォーラムの展示会場ではヘルスケア領域のソリューションを紹介した。

富士通フォーラムの展示会場では
ヘルスケア領域のソリューションを紹介した。

 

第1部の最初の特別講演は,鎌田氏による「心温まる地域包括ケアとは」。鎌田氏は2001年に諏訪中央病院の院長を退任後,名誉院長として患者の診療を続けながらNPO法人を設立し,イラク,チェルノブイリ,福島などでの医療支援に携わっている。講演では,諏訪中央病院を立て直すために地域に出て始めた“健康づくり運動”によって,脳卒中など病気への理解と予防の取り組みが地域に着実に広がり,現在では長野県が長寿日本一になったこと,寝たきり老人を何とかしたいという思いから往診やボランティアによるデイケアを開始し,それが在宅医療や保健・医療・福祉複合体の組織運営に繋がっていったことなどを紹介した。“医療が温かでないと国民は救われない”として,医療側の都合を押しつけるのではなく,患者が生き方も死に方も選択できることが大切であり,地域包括ケアシステムの構築は,長いスパンで考え持続可能な体制を作ることが重要だと述べた。
続いて,「ケアサイクル論〜社会が変わる 医療が変わる そして病院が変わる」と題して講演した長谷川氏は,人類の歴史の中で平均寿命が50歳を超えたのは約100年前,日本では戦後になってからに過ぎず,50歳以降の医療をどう運営するかは未知の領域であり,これから超高齢社会を迎える日本は“人類のための研究実験国家”であると述べた。今後,少子高齢化によって大きく変わる家族のあり方や国の姿に対応するためには,“治す医療”から“支える医療”への大転換が必要だとした。高齢者への継続的な医療,介護を提供するためにはケアサイクルの概念が必須となるが,地域包括ケアシステムは資源論に過ぎず,社会で支えるための地域を含めた新たなヘルスケアサービスの提供体制の構築が必要であるとまとめた。

鎌田 實 氏(諏訪中央病院名誉院長)

鎌田 實 氏
(諏訪中央病院名誉院長)

長谷川敏彦 氏(日本医科大学特任教授)

長谷川敏彦 氏
(日本医科大学特任教授)

 

第2部では,最初に山口育子氏(NPO法人ささえあい医療人権センターCOML理事長)が「患者が望む地域包括ケア」と題して講演し,COMLで続けてきた医療に関する電話相談の経験を紹介しつつ,患者側から見た地域包括ケアへの期待と課題について述べた。山口氏は,地域包括ケアなどの国の制度や仕組みの情報提供や周知が十分でないことが問題で,患者側もシステムへの理解が不足しているのと同時に医療や介護が必要になった時にどうすべきか,常に考えておくことが大切だと述べた。
続いて,清水史郎氏(静岡県立総合病院,川根本町いやしの里診療所所長)が「いやしの里診療所〜“ふじのくにねっと”と遠隔診療支援システムを用いた超高齢者社会におけるバーチャルホスピタルの構築」を講演した。清水氏は,静岡県山間の過疎地域である川根本町の診療所において,静岡県の全県地域医療ネットワークであるふじのくにねっとと,ビデオ会議システムによる遠隔診療支援システムなどを活用して構築した“バーチャル・ホスピタル”の現状と今後の構想について紹介した。

最後に,木村博典氏(長崎川棚医療センター)が「“あじさいネットワーク” 糖尿病患者の地域包括ケアへの取り組み」と題して講演した。木村氏は,大村市を発祥として長崎県全体の地域医療連携ネットワークとして発展したあじさい ネットワークを利用して,糖尿病患者の検査結果を収集しリスクの高い患者を層別化,マッピングする糖尿病疾病管理システムを構築し,地域で連携しながらど のようにデータを生かしていくか,構想を含めて紹介した。

山口育子 氏(COML理事長)

山口育子 氏
(COML理事長)

清水史郎 氏(静岡県立総合病院)

清水史郎 氏
(静岡県立総合病院)

木村博典 氏(長崎川棚医療センター)

木村博典 氏
(長崎川棚医療センター)

 

システム展示(地下2階展示ホール)
ICTを活用して健康を見守る最新のヘルスケア・ネットワークを展示
富士通フォーラムの展示会場の中の「ソーシャルイノベーションゾーン」で健康・医療コーナーとして,ヘルスケアソリューションが紹介された。

患者案内ソリューション「NAVIT(ナビット)」。電子ペーパーを採用した携帯端末で診察待ち時間などの情報を患者に提供。端末が画面が大きくなり薄く軽くなったことをアピールした。

患者案内ソリューション「NAVIT(ナビット)」。電子ペーパーを採用した携帯端末で診察待ち時間などの情報を患者に提供。端末が画面が大きくなり薄く軽くなったことをアピールした。

 

ヘルスアップWeb。個人の健康情報をインターネット上で蓄積,管理するPHRシステム。

ヘルスアップWeb。個人の健康情報をインターネット上で蓄積,管理するPHRシステム。

地域医療ネットワーク「HumanBridge EHRソリューション」。医療圏の中の患者情報を集約し地域での1患者1IDを実現する医療連携システム。

地域医療ネットワーク「HumanBridge EHRソリューション」。医療圏の中の患者情報を集約し地域での1患者1IDを実現する医療連携システム。

 

高齢者ケアクラウド「往診先生」。“在宅医療支援SaaS”や“在宅チームケアSaaS”などクラウドでサービスを提供することで往診などでの移動や多職種の情報連携をサポートする。

高齢者ケアクラウド「往診先生」。“在宅医療支援SaaS”や“在宅チームケアSaaS”などクラウドでサービスを提供することで往診などでの移動や多職種の情報連携をサポートする。

 

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第13回 富士通病院経営戦略フォーラム開催 医療と介護をつないだ患者中心のシームレスな連携を考える

 

●問い合わせ先
富士通(株)
富士通病院経営戦略フォーラム事務局
TEL 03-6252-2572
http://jp.fujitsu.com/

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