バイエル ソリューションレポート

2024年1月号

第39回日本診療放射線技師学術大会ランチョンセミナー11

マルチユースCTインジェクションシステムMEDRAD Centargoの導入経験と今後の展望

山田 公治(茨城県立中央病院放射線技術科)

開催日:2023年9月30日(土)
会 場:熊本城ホール(熊本県熊本市)
座 長:久冨 庄平(山口大学医学部附属病院放射線部)

座長:久冨庄平 氏

座長:久冨庄平 氏

演者:山田公治 氏

演者:山田公治 氏

 

演者はこれまで,血流動態を研究テーマとしており,ヘリカルCTの国内稼働当初から造影CTの研究に取り組んできた。質の高い造影検査のためには,患者ごとの至適造影剤投与量,検査の再現性の高さなどが重要である。本講演では,当院での造影検査にさまざまなメリットをもたらすバイエルのマルチユースCTインジェクションシステム「MEDRAD Centargo CTインジェクションシステム」(以下,Centargo)について,導入の経緯や特長などを述べる。

Centargo導入の経緯

当院にてメーカーの異なる2台のCT装置を更新するに当たり,異なる特性を持つ装置のそれぞれの至適造影剤投与量の検討を計画した。患者ごとに使用する製剤やその容量を変更せずに必要な量を投与できるインジェクタがあれば,効率的に至適用量を検討できると考えた。また,複数の患者に連続して造影剤を投与できるマルチペーシェントインジェクタであれば,造影剤を無駄なく投与可能であり,検証に必要な期間や製剤使用量・廃棄量を抑制できるほか,CT装置の特性や設定に応じて注入条件を標準化できる可能性がある。さらに,低管電圧撮影でヨード量を減量する際,注入総量は変えずに造影剤濃度のみ変更し,従来造影法を用いて管電圧に見合ったヨード造影剤を用いることが重要である。これらを考慮し,マルチユースCTインジェクションシステムであるCentargo(図1)の導入に至った。当院で以前から使用していたCT用インジェクタがバイエルの「MEDRAD Stellant CT Injection System」であり,Centargoと同時期に導入した被ばく線量管理システム「Radimetrics」(バイエル)と接続することにより,両インジェクタの造影検査情報を一元管理できることも選定理由の一つであった。

Centargoの使用方法と特長

Centargoのセットアップ方法は以下のとおりである(図1)。まず24時間連続使用できるデイセット(2本の造影剤用シリンジと1本の生理食塩水用シリンジキット,それらと生理食塩水バッグや造影剤のボトル製剤を接続するスパイク,シリンジキットと患者ラインをつなぐチューブから構成)を,Centargo前面の開閉部を開けて取り付けると,ピストンによってプランジャーが自動で上方向に前進する。続いて,デイセットのチューブをアウトレットエアセンサに押し込んだ後,生理食塩水バッグと造影剤ボトルに接続する3本のスパイク針をセットする。各製剤のバーコードを読み取り,製剤名を確認後,ボトルホルダーに製剤を取り付ける。続いて,スパイク針をそれぞれのバッグやボトルに差し込んでからタッチスクリーンの充填ボタンを押すと,選択したシリンジへの充填が開始される。デイセットに薬剤を充填する作業はインジェクタが自動でエア抜きまで行うため,人が介入する作業は,空になったボトルやバッグの交換と,最終的な安全確認だけである。1日の初めにCentargoのセットアップに要する時間は10分弱である。その後,ドアを閉めて患者ラインを取り付けると,自動的にエア抜きされ,患者ラインポートが青く点灯し,視覚的に準備完了が確認できる。症例後,患者ラインを交換するとエアが自動で抜かれる。所要時間は1~2秒である。
ボトルの取り付けは,当院では午前と午後に1回ずつで運用できている。デイセットは24時間使用可能で,検査ごとに交換が必要な消耗品は使用ずみの患者ラインのみである。廃棄物の量はシリンジ製剤と比べるときわめて少ない。使用ずみ患者ラインは,新しいものと交換するまでは赤い色が点灯し,ヒューマンエラー防止に貢献するなど安全性に優れた製品となっている。なお,Centargo本体と操作パネルはWi-Fiで接続されており,どちらからでも注入開始が可能である。

図1 MEDRAD Centargo CTインジェクションシステム

図1 MEDRAD Centargo CTインジェクションシステム

 

造影剤減量のポイントとCentargoの有用性

1.造影剤減量の考え方
造影剤腎症(CIN)のリスクが高い患者に対し,欧米の学会では造影剤減量を推奨しており,わが国においても,造影剤投与量を必要最小限とすることや,造影効果の改善および画質劣化を防ぐために低管電圧撮影と逐次近似画像再構成を併用することが推奨されている1)。当院では,CINの高リスク患者に対し,推算糸球体濾過量(eGFR)の値に応じて,造影剤を除脂肪体重法で換算した量の2〜5割減量して検査を行っている。
造影剤の減量に当たり,当院のCT装置2機種におけるX線管電圧と実効エネルギーおよびヨードのCT値との関係について検討したところ,機種によって実効エネルギーやヨードのCT値に違いを認めた。その結果を基に,当院では,管電圧120kVpを基準として,装置ごとに管電圧ごとの造影剤減量率を算出している。造影プロトコールは,管電圧や患者の体重などに合わせてCentargoで容易に作成可能であり,保存することもできる。

2.症例提示
ヨード量を低減しつつ,注入量を維持して造影CT検査を施行した症例を提示する。161cm,55kgの男性で,eGFRは40mL/min/1.73m2であった。造影剤量を4割低減し,造影剤・生理食塩水同時注入法(190mgI/mL)にて3.5mL/s,97mL(28s)を注入,生理食塩水:3.5mL/s,20mLで後押しを行った。X線管電圧は80kVpとした。実際の画像を見ると,十分に読影可能な画質が得られている(図2)。
ただし,高体重の症例では,上記の方法で低管電圧撮影を行うと画質が劣化する可能性がある。そのような場合は,dual energy CT撮影を行い,仮想単色X線画像(VMI)の低keV画像を用いることで,良好な画質が得られる。

図2 造影剤を減量して造影CT検査を施行した症例

図2 造影剤を減量して造影CT検査を施行した症例

 

3.Centargoの有用性
Centargoは,低管電圧撮影やdual energy CTのVMIの作成に適した造影濃度を自由に設定可能である。撮影条件設定が変化しても,従来造影法の注入速度・注入時間での撮影が可能なほか,事前準備の簡素化,自動エア抜きによる安全性の確保も図られ,常に生理食塩水での後押しもコストを気にせず行うことができる。また,患者の体型や症例によって造影剤の濃度や容量を逐一選択する必要がないことも有用である。

X線線量管理システム「Radimetrics」

医療法施行規則の一部改正によって,2020年4月から,各医療機関における医療被ばくの線量管理および線量記録が義務化され,当院では,被ばく線量情報をRadimetricsで管理している。
Radimetricsは,RDSR(Radiation Dose Structured Report)やDose sheet,DICOM情報,secondary capture画像などから検査情報や線量情報を自動取得し,検査ごとの照射線量や被検者の被ばく線量を管理・記録するとともに,統計的に分析することができる。なかでも,蓄積された線量情報を解析・分析するための統計処理を行うダッシュボード機能は,ユーザーごとにヒストグラムや散布図,箱ひげ図など20種類以上のグラフを作成でき,効率的な線量管理を支援する(図3)。また,他院で撮影されたCT画像と自施設の画像を判別し,撮影プロトコールを施設や装置,部位などに振り分けるプロトコール管理機能や,事前に設定した閾値を超えた検査のみの抽出やアラートを通知する機能なども有用である。
図4に,当院におけるシステム連携の概要を示す。全インジェクタとRadimetricsを連携させて,造影剤情報を含めた造影検査記録などもすべて一元管理している。また,RISを中心に,Radimetricsの情報を取り入れたヒューマンエラー防止を目的とした検査前のプレチェックシステムを構築し,診療放射線技師の教育などにも役立てている。

図3 Radimetricsのダッシュボード画面例

図3 Radimetricsのダッシュボード画面例

 

図4 当院におけるシステム連携の概要

図4 当院におけるシステム連携の概要

 

まとめ

当院ではRISを中心に放射線科のデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進しており,Centargoもその一部として導入した。Centargoを活用することで業務を効率化するとともに,今後もより安全な検査を実施可能な体制を構築していきたい。

●参考文献
1)腎障害患者におけるヨード造影剤使用に関するガイドライン2018. 日本腎臓学会, 他編, 東京医学社, 東京, 2018.

管理医療機器:多相電動式造影剤注入装置
販売名:Centargo CTインジェクションシステム
認証番号:302AABZX00091000

管理医療機器:造影剤用輸液セット
販売名:Centargo ディスポーザブルセット
認証番号:303AABZX00003000

PP-M-CEN-JP-0095-27-11

 

問い合わせ先:
バイエル薬品株式会社 ラジオロジー事業部
TEL:0120-609-040
https://radiology.bayer.jp/

TOP