次世代の画像解析ソフトウェア(AZE)

2013年9月号

No. 137 AZE VirtualPlace雷神 救急領域への可能性

須山 貴之(聖路加国際病院放射線科)

●はじめに

「AZE VirtualPlace 雷神」(AZE社製)に代表されるネットワーク型ワークステーションは,今後の救急医療現場において重要な役割を担っていくものだと推測する。

●ネットワーク

当院では以前より「AZE VirtualPlace」を使用していたが,2010年8月に「AZE VirtualPlace 雷神Plus」(以下,雷神)へ更新した。雷神はフリーライセンス・フリーアクセスにより,院内に約1500台ある電子カルテ端末すべてからアクセス可能である(図1)。

図1 救急センター診察室内の電子カルテ端末

図1 救急センター診察室内の電子カルテ端末

 

●当院CT室の現状

当院CT室の1か月の依頼内訳は,全検査数の半数が外来での当日発生オーダとなっている(図2)。
現在の診療において,CTの診断への寄与は非常に大きいと認識している。救急領域や整形領域においては3Dでの画像観察が半ば日常化しており,CTの撮影件数増加のみならず,3D作成依頼が増加の一途をたどっており,3年前(2010年)の倍近い件数となっている(図3)。

図2 CT依頼の内訳(2013年6月)

図2 CT依頼の内訳(2013年6月)

図3 3D作成件数の推移

図3 3D作成件数の推移

 

おおむね依頼時にオーダリングシステムにて3D作成を含む部位を選択していただいているが,MDCTの特性が広く知られるようになってからは,数日前にさかのぼっての3D作成依頼も多々見られるようになってきた。
当院の平均的な1日の画像処理検査は,予約においては頭部や大動脈など5件,冠動脈8件となっている。CT検査室の診療放射線技師の人員配置については,撮影技師のみで3D画像処理を行うと3D画像提供が非常に遅くなってしまうため,当院では画像処理担当技師を配置し,雷神をはじめ他社製ワークステーションを併用することで画像提供を行っている。3Dオーダ以外の過去画像からの3D作成にも対応するためには,ある程度の人員配置も必要となる(図4)。

図4 操作室 画像処理担当技師を配置し,2台のワークステーションおよび雷神で3D作成に対応。

図4 操作室
画像処理担当技師を配置し,2台のワークステーションおよび雷神で3D作成に対応。

 

●画像処理の即時性

図5 RIS端末での画像処理

図5 RIS端末での画像処理

年間3000件近い件数の3D作成を画像処理担当技師がすべて処理するのでは即時性が損なわれてしまう懸念があるが,雷神の特徴を生かすことで,緊急性の高い救急部への3D画像提供が可能となる。
雷神の特徴であるフリーライセンスを生かし,撮影技師が検査を行いながら,RIS端末でもある電子カルテ端末で雷神にアクセスして3D画像処理を行うことで,画像提供の時間短縮を図ることができる(図5)。また,雷神の別の特徴であるフリーアクセスを生かし,CT室以外でも手の空いている技師が,それぞれの持ち場を離れることなく画像処理をすることが可能であり,場所を移動せずとも3D画像処理に参加することで,画像処理の即時性を保ち人員の有効活用にも期待が持てる。

●患者に不利益なタイムラグの解消

通常運用で作成された3D画像は,DICOM画像としてキャプチャしてPACSに送信するが,時として臨床医の意図する方向・角度を提供できず,再作成を行うためにタイムラグが発生する場面もしばしば見られる。
一刻を争う救急医療では,このタイムラグを短縮することが命題でもあるが,技師が雷神にて構築した3Dモデルを雷神にそのまま保存することで,臨床医は3Dモデルを電子カルテ端末から参照し,自由な方向・角度からの観察を行うことが短時間で可能となる。
診断可能な画像提供へのタイムラグ解消に,雷神が非常に有用であると言えよう(図6)。

図6 救急センター処置室 救急センター処置室内の電子カルテで3Dモデルを参照可能。

図6 救急センター処置室
救急センター処置室内の電子カルテで3Dモデルを参照可能。

 

●今後の課題

救急センターを担当する医師は,レジデントや救急センター以外の医師も担当するため,雷神の使用方法をレクチャーする方法や頻度,接続クライアント数の制限などが課題であると,協力していただいている救急センターの医師から指摘されている。
また,発生画像のPACS保存ルールやクライアントIDによる制限などを明確にする必要があるため,実際の運用開始は慎重に行う必要がある。

●まとめ

雷神に搭載されているツール類や自動解析機能を活用し,即時性の高い画像作成は日常的に運用しているが,他部署から雷神の3Dモデル参照を行う連携に関しては,ごく一部の救急医の協力の下,トライアルとして仮運用しているにすぎない。トライアルの結果を踏まえ,今後は救急センターでの全面的な運用開始と,手術室や一般診療科への展開も検討していきたい。
また,画像診断医への早期診断材料提供のツールとして,外部参照サーバとタブレット端末での参照なども併用し,患者にとって不利益なタイムラグをハードウェアの観点から排除することも重要だと考えている。
今後の救急医療において,ネットワーク型ワークステーションは必須となっていくだろう。

【使用ワークステーション】
AZE VirtualPlace 雷神Plus(AZE社製)

TOP