次世代の画像解析ソフトウェア(AZE)

2015年8月号

No.160 MRCP検査におけるワークステーションの活用法

天野  淳(公立学校共済組合関東中央病院放射線科)

はじめに

MRCP(magnetic resonance cholangiopancreatography:MR胆管膵管撮像)の撮像法は,1991年にWallnerら1),Morimotoら2)によって初めて報告された。しかし,当時はMRCPの空間分解能が低く,拡張した膵胆道は描出できても,正常の膵胆道は描出困難であったという。
当院でもMRCPの撮像を始めた当初,3D MRCPの撮像は何回もの息止めを繰り返してデータを収集していた。その後,装置の進歩に伴い,現在では数種の呼吸同期などを駆使することで,短時間で空間分解能の高い画像を臨床の現場に提供できている。そして,モニタ診断の普及,ワークステーションの整備によって,当院でもMRCPをMIP(maximum intensity projection)画像だけではない,画像の特徴を生かした情報提供を行っているので紹介する。

MRCPの見せ方

現在では,ERCP(endoscopic retrograde cholangiopancreatography:内視鏡的逆行性胆管膵管造影)の検査は治療手技を目的とするケースが多く,当院でもMRCPはERCPの治療手技前に行われることが少なくなく,プランニング検査となっていることが多い。当院のMRI室においては,緊急MRCP検査が行いやすい体制をとっているため,消化器科医からの需要が多い。来院した患者に対し,早期に診断でき治療へと直結できるような体制をとることは重要である。
MRCPの検査でも3D画像が有効に利用されている。3D MRCPでは,任意の断面での観察や病変との連続性などの関係を,詳細に検討することが可能である。当院では「AZE VirtualPlace雷神」(AZE社製)を使用し,3D MRCPの画像をすべてVR(volume rendering)画像で作成してリアルタイムに提供している。3D画像の有用な点は,立体的に構造詳細が把握できることである。コントラスト分解能や空間分解能の高い,そして同期によって動きを抑制されたMRCPのVR画像は,MIP画像よりも視覚的情報量が多く,細部構造物の評価がしやすい(図1)。しかし,VR画像やMIP画像では内部の情報が埋もれてしまうことが欠点である。そこで,管腔内部を透明化(transparency)させたVR画像を作成し,内部の病変(結石や腫瘍)を別に抽出し,2つをマルチボリュームにて合成した画像を作成している(図2)。画像処理も短時間で容易に行うことができる。transparency MRCPは,内部の病変の位置関係を膵胆道系のVR像と同時に表現でき,構造物が重なっても他方向からの観察が可能となる。

図1 VR画像(a)とMIP画像(b)の見え方の違い

図1 VR画像(a)とMIP画像(b)の見え方の違い
立体的に構造物が見えるということは,視覚的情報量が多い。

 

図2 transparency MRCP

図2 transparency MRCP
内部の胆石の位置情報を得ることができる。

 

次に,構造物の内腔に観察の視点を置き,膵胆道系を内視鏡的に観察する。endoscopic MRCP(図3)は,観察中心を拡大する透視投影法を利用することで遠近感を生む,古くから行われている手法であるが,現在では元画像の高分解能化やワークステーションの性能が向上したことにより,POCS(peroral cholangioscopy:経口的胆管内視鏡)やPOPS(peroral pancreatoscopy:経口的膵管内視鏡)前のプランニングの一助となっている。そして,一番の利点は観察する方向の制限を受けないことであり,管腔が病変によって閉塞・狭窄していても,管腔内が液体で満たされていれば観察することが可能である。AZE VirtualPlace雷神での動作は非常にスムーズであり,観察した経路をワンクリックすることで動画として保存することが可能である。

図3 endoscopic MRCP

図3 endoscopic MRCP

 

まとめ

ワークステーションの進化は目覚ましいものがある。MRIの多彩なコントラストや情報を1つの画像で見せることを可能とし(図4),ほかのモダリティとのフュージョンにより多くの情報を1つの3D画像で提供できる。しかし,画像を作成する際,解剖学的構造の把握や元画像のていねいな観察は重要である。また,いろいろな画像を作成することができるが,画像が独り歩きすることは危険であり,臨床医とのディスカッションを通して施設で提供していく画像の統一化を考慮していかなくてはならない。

図4 胆嚢がん症例における3D MRCP

図4 胆嚢がん症例における3D MRCP

 

●参考文献
1)Wallner, B.K., et al. : Dilated biliary tract ; Evaluation with MR cholangiography with a T2-weighted contrast-enhanced fast sequence. Radiology, 181, 805〜808, 1991.
2)Morimoto, K., et al. : Biliary obstruction ; Evaluation with three-dimensional MR cholangiography. Radiology, 183, 578〜580, 1992.
3)竹原康雄 : 胆道系のMRCP. 消化器画像, 5・6, 825〜837, 2003.
4)増井孝之・他 : 膵臓のMRCP. 消化器画像, 5・6, 869〜877, 2003.
5)原 太郎・他 : 膵疾患診断における膵管鏡の役割─IPMNの診断. 肝胆膵画像, 14・2, 161〜168, 2012.
6)米田憲秀, 小坂一斗, 蒲田敏文 : 胆管内乳頭状腫瘍(IPNB). 画像診断, 34・1, 61〜63,  2014.

【使用MRI装置】
MAGNETOM Symphony 1.5T(シーメンス社製)
【使用ワークステーション】
AZE VirtualPlace雷神(AZE社製)

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