次世代の画像解析ソフトウェア(AZE)

2016年3月号

No. 167 脳神経外科領域におけるAZE VirtualPlace 雷神の使用経験

藤本  勤(医療法人社団 函館脳神経外科 函館脳神経外科病院放射線科)

はじめに

当院は128床の脳神経外科単科病院で,北海道道南地域の急性期脳神経外科疾患を取り扱う中核病院である。年間検査数は,MRIが3台合計約2万4000件,CTが約3300件,DSAが約300件である。2005年5月にAZE社製ワークステーションのスタンドアローン型を導入した後,2009年にはPACS端末から利用できる「AZE VirtualPlace 雷神(以下,VirtualPlace)」に更新した。2015年4月にMRIを1.5Tから3Tに更新したのを機に,さらにバージョンアップを行っている。VirtualPlaceの運用環境は,本体とMRI用3台(3T:2台,1.5T:1台),CT(64列)用1台,DSA用1台,放射線中央操作室2台,手術室2台の計10台の端末から使用可能であり,どこでも3D画像作成・読影が行える環境になっている。3D画像は診療放射線技師(以下,技師)がすべて作成しており,手術支援画像が中心である。
本稿では,当院での頭部・頸部CTAでの使用経験と手術支援画像を主に紹介する。

頭部・頸部CTAサブトラクション

1.頭部CTA

当院では,頭部CTAの全例でサブトラクション処理を行っている。VirtualPlaceの操作画面が視覚的に理解しやすいため,経験年数が浅い技師でもマルチレイヤー機能を使用した動静脈分離画像や,マルチボリュームを使用した未破裂脳動脈瘤クリッピング術後評価画像などを簡便に作成することができる(図1)。
更新前のVirtualPlaceのサブトラクション機能は,造影画像から非造影画像を差分する際に,血管も含めた画像全体で差分してしまうために血管のCT値が低下する傾向があった。更新により,現在のワークステーション(WS)では一般的になりつつある,脳実質を差分対象から外して抽出する“骨以外抽出モード”が追加され,サブトラクションによる血管のCT値低下がなくなり,末梢血管の描出能が向上している(図2)。

図1 未破裂前交通動脈瘤術後CTA

図1 未破裂前交通動脈瘤術後CTA
a:クリップなし b:クリップあり c:動静脈分離画像

 

図2 頭部CTAサブトラクション

図2 頭部CTAサブトラクション
a:従来法。全体的に血管のCT値低下が認められる。
b:骨以外抽出モード。CT値の低下がなく,末梢血管の描出能が向上している。

 

2.頸部CTA

頸部頸動脈内膜剥離術(carotid endarterectomy:CEA)やステント留置による経皮的頸部頸動脈形成術(carotid artery stenting:CAS)前後の評価を行うために,頸動脈CTAも積極的にサブトラクションを行うようにしている。大動脈弓から頭部までを撮影することが多く,以前は呼吸の動きによる胸郭や咽頭などのミスレジストレーションにより,精度の高いサブトラクションができていなかった。更新後は高度な非剛体レジストレーション技術が搭載されたことで,呼吸の動きによる位置ズレを補正し,高精度なサブトラクション画像を得ることができるようなった。そのため骨除去などの作業が軽減され,画像作成時間が短縮している(図3)。
また,従来はサブトラクションを行うと石灰化病変も引き算されていた。そのため頸動脈病変での石灰化評価を行うには,造影画像から3D画像を追加作成するか,石灰化病変を抽出した画像を作成していたが,“石灰化部分除外”機能が追加されたことにより,石灰化病変を簡単に表示することが可能となった。

図3 頸部CTAサブトラクション

図3 頸部CTAサブトラクション
a:従来法
b:非剛体レジストレーション。肋骨・胸骨がサブトラクションされている。部分が補正されている。

 

マルチモダリティフュージョン

当院では,さまざまなモダリティを使用して手術支援画像を作成している。主な対象は,微小血管減圧術(microvascular decompression:MVD)前,脳腫瘍摘出術前,未破裂脳動脈瘤手術後の評価である。本項では,脳腫瘍摘出術前の手術支援画像の作成について紹介する。
図4は,左中頭蓋窩髄膜腫の症例である。腫瘍摘出術を前提に,腫瘍栄養血管評価のための血管撮影と脳腫瘍栄養血管塞栓術を行った。CTで骨と皮膚,造影3D-MRIで腫瘍,3D-DSAで内頸動脈と外頸動脈を抽出し,フュージョンして画像を作成した。これにより,腫瘍の栄養血管である中硬膜動脈が頭蓋内に流入する個所や,血管,腫瘍,骨の位置関係を容易に把握することができるようになった。当院では,追加CTA検査を行わずにCTと3D-DSAのフュージョン画像作成を積極的に行っている。

図4 症例:左中頭蓋窩髄膜腫

図4 症例:左中頭蓋窩髄膜腫
3D-DSAで内頸動脈(赤色)・外頸動脈(青色)を抽出,3D-MRIで腫瘍(緑色)を抽出,
3D-CTで骨・皮膚を抽出して,フュージョン画像を作成する(a〜c)。

 

一般的に,3D-DSAのサブトラクション機能は,DSA装置付属のWSでは標準機能となっている。DSA装置付属のWSでサブトラクションした血管のみの画像(以下,血管画像)は,高精細かつ骨情報がないため画像作成が行いやすい利点があるが,骨や組織情報がないことでほかのモダリティとのフュージョンには不向きである。当院では,骨情報のあるサブトラクション前の元画像(以下,骨血管画像)を位置合わせに利用し,CTと血管画像のフュージョンを行っている。
CTと3D-DSAのフュージョン画像の作成手順を説明する。
(1) DSA装置付属のWSで血管画像と骨血管画像を作成する。
(2) VirtualPlaceのフュージョンで,ベース画像にCT,重ねる画像に骨血管画像,予備画像に血管画像を読み込む。
(3) CTと骨血管画像をオートで位置合わせする。位置合わせが終了後,骨血管画像を血管画像と入れ替える。骨血管画像と血管画像は位置情報が同じであるため,CTと血管画像の位置合わせが完成する(図5)。

図5 CTと骨血管画像(DSA)による位置合わせ

図5 CTと骨血管画像(DSA)による位置合わせ
骨血管画像と血管画像を入れ替える(入れ替えボタン)ことによって,CTとDSAの位置合わせが完成する。
a:CTと骨血管画像の位置合わせ
b:CTと血管画像の位置合わせ

 

まとめ

当院で作成している画像を中心に紹介した。作成している画像の多くは技師側からの提案で作成しているが,3D画像作成に精通している技師側から画像作成の提案を行うことは重要と考えている。
また,われわれ技師は臨床に有用な画像を作成するために,3D画像に関して医師とディスカッションを行い,解剖や疾患を理解して自ら作成した画像に責任を持たなければならない。WSの機能に精通し,画像作成の技術を磨き,新たな知見を得るなど日々研鑽を行い,WS業務に携わることが重要と考えている。

【使用MRI装置】
Ingenia 3.0T CX(フィリップス社製)
【使用CT装置】
Ingenuity Core(フィリップス社製)
【使用DSA装置】
AlluraClarity FD20/20(フィリップス社製)
【使用ワークステーション】
AZE VirtualPlace 雷神(AZE社製)

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