展示会に見るMRI技術の変遷(ITEM in JRC 国際医用画像総合展)(キヤノンメディカルシステムズ)

●2005

ブースデモでは歪みの少ない高精度画像を高速で撮影できる点などが強調された短軸・静音の1.5T MRIシステム「EXCELART Vantage F2-Edition」(新製品)。現在注目を集めている躯幹部の拡散強調画像“Body Diffusion”や,非造影で末梢血管の動静脈分離を可能にする“Flow-Spoiled FBI”,血液励起の非造影動静脈分離法“t-SLIP”など最新のアプリケーションに対応する。

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●2006

短軸,静音,非造影が特長の1.5TMRI「EXCELART Vantage F2-Edition」のPROシリーズを新発売しました。Vantageは全世界で300台以上の実績があり,国際的な評価が高いMRIです。今回は特に,FBIやBody Diffusionといった独自の非造影アプリケーションを充実させました。なかでも,NEO(Non-contast Enhancement and Organic selective)と名づけた東芝独自の選択的非造影MRAでは,腎臓の動脈を選択的に,非常に高画質で描出できるようになりました。従来は,さまざまな脈管系がすべて写ってしまっていたのですが,NEOの技術を使うと,例えば移植腎の評価でも目的とした血管がきちんと描出されていますし,血流を確認することもできます。腎臓以外にも肝臓の門脈だけの描出も可能です。ブースにご来場いただいたお客様からも,「こんな画像はいままで見たことがない」と大変高い評価をいただき,関心を集めました。新しいコイルも開発しています。
(臼井嘉行 MRI事業部参事 ※写真左は塙 政利 MRI事業部長)

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●2007

● 広領域をカバーするRFコイル「Atlas SPEEDER」

RSNA2006で発表した,高精細画像を広領域で得ることができるRFコイル「Atlas SPEEDER」をメインに展示した。Atlas SPEEDERは,高いS/Nをもつ小さいサイズのコイルエレメントをたくさん配列することで広い領域をカバーするもの。最大128エレメントを配列することが可能で,最長205cmまでカバーする。躯幹部の検査用では,32個のエレメントで体軸方向50cmの領域を高密度に撮影可能。スループットが大幅に向上し,さらに検査途中でのコイルの入れ替えが不要のため,ワークフローがさらに高まる。また,コイルは患者さんの負担を考慮し,1エレメントあたりの重量を75gと世界最軽量を実現。患者さんの体に密着して装着できる柔らかい構造となっている。今回は,VantageにAtlas SPEEDERを搭載した機器(薬事未承認)も参考展示した。また,東芝が長年実績を積み上げてきた非造影MRAでは,Time-SLIP法による画像など,さまざまな部位の非造影イメージを紹介していた。非造影MRAは最近,国外でも注目され始め,MRIの今後のトレンドの1つとして期待される。
(取材協力:臼井 嘉行さん MRI事業部参事)

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●2008

● 全身用マルチチャネルRFコイルを搭載した「EXCELART Vantage Powered by Atlas」

MRIコーナーには,1.5T MRI「EXCELART Vantage Powered by Atlas」が展示され,全身対応マルチチャネルRFコイル「Atlas SPEEDERコイル」を中心に紹介していた。Atlas SPEEDERコイルは,同社従来比で1/3に軽量化された軽いコイルである上,柔らかい素材を採用していることが特長。患者さんの負担や圧迫感が少ない検査を行うことができる。また,全身に128個のエレメントを同時に装着したまま検査を受けることが可能で,頭部からつま先まで広範囲を撮像することができる。本体は,ボア軸長が1495mmと全身用MRIとしては世界最短クラスの奥行きを実現しながら,ガントリの開口系は65 cmと患者さんにゆったりと検査を受けてもらえる広さとなっている。このほか,静音機構である「Pianissimo」を搭載するなど,患者さんの不安軽減に配慮された装置である。
また,アプリケーションを紹介したコーナーで特に注目を集めていたのが,同社独自の非造影技術のTime-SLIP法である。造影剤を使用しない患者さんの負担が少ない検査で,血管の選択描出や動態情報の取得が可能である。
(取材協力:後藤 克人さん MRI事業部 主任)

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●2010

● 満を持して発売する国産初の3T MRI「Vantage Titan 3T」

今回の展示の目玉として注目を集めたのが,国産メーカー初の3T MRI「Vantage Titan 3T(以下Titan 3T)」だ。Titan 3Tは,先行する3T MRIのユーザーの声を聞き,「日々の検査に安心して使える3T MRIとは」を追求して開発を進めたという。開発のポイントは「躯幹部の画質の向上」「快適な検査環境の提供」の2点。
「躯幹部の画質の向上」としては,1.5Tに比べた画質の問題が指摘される3Tの腹部領域について,「Multi-Phase Transmission」を搭載し均一なRF送信を行うことで,高磁場でもムラのない高画質な腹部画像の撮像を実現した。また,同社のMRIの特長のひとつである非造影MRA(Time-SLIP法)を3Tで実現するため,人体の形状に合わせて磁場領域を最適化する「comform」技術,3Tに最適化したRFコイル「Atlas SPEEDER」などを新たに開発した。
「快適な検査環境の提供」では,検査時の圧迫感を解消するため開口径71cmを実現。開口径を広げながら静磁場均一性を保つため,マグネット本体ではなく内側のグラディエントコイルをスリム化した「Super Slim Gradient」を搭載した。また,3Tでさらに増した検査時の騒音対策として,1.5Tで定評のある静音化機構「pianissimo」を搭載して,ノイズを10分の1まで低減している。
展示では,3Tとしてはコンパクトで開口径の大きい本体のデザインが注目され,実際にベッドに載ってガントリ内での広い空間を体験する姿が見られた。

3T MRI「Vantage Titan 3T」。 ガントリ内に入って検査空間の広さをアピール

3T MRI「Vantage Titan 3T」。 ガントリ内に入って検査空間の広さをアピール

71㎝のオープンボア。テーブルの位置がさらに低くなっているため,検査時の開放感が大きい

71㎝のオープンボア。テーブルの位置がさらに低くなっているため,検査時の開放感が大きい

 

●Spring of 2011

Vantage Titan™ 3T

● Everyday Clinical Use—毎日の臨床に使える新しい時代の3T MRI

Vantage Titan™ 3Tは,毎日の日常臨床において,有用性と実用性を兼ね備えた新しい時代の3Tです(図2)。
Multi-Phase Transmissionにより,躯幹部の画質を大幅に向上
2チャンネル4ポートのMulti-phase TransmissionによりRF磁場の(B1)の不均一が改善されました(図3)。従来では課題が多かった躯幹部の撮像でも,プリスキャンをせずに画像の濃度ムラの少ない均一な高画質を得ることが可能になりました

図2 最新型MRI装置Vantage Titan™ 3T

図2 最新型MRI装置Vantage Titan™ 3T

図3 2チャンネル4ポートのMulti-phase Transmission

図3 2チャンネル4ポートのMulti-phase Transmission

 

患者開口径71cmを実現したSlim Gradientコイル
患者開口径71cmという広い検査空間が実現されています。従来,検査が困難であった腰の曲がった方など,より多くの患者さんに対応できる可能性が大きく広がっています。マグネットの基本性能は従来のまま,傾斜磁場コイルをスリム化するSlim Gradientにより,開放感と高い臨床性能の両立を実現しました。

検査効率を向上できるAtlas SPEEDER™
コイルが寝台に組み込まれたAtlas SPEEDER™が搭載されています。コイル交換の手間が省略でき,検査スループットの大幅な向上が可能です。

静かな検査を実現するPianissimo™
当社独自の静音化技術Pianissimo™により,高磁場で問題となる検査時の騒音を低減させています。患者さんにやさしい装置です。

非造影MRA
従来困難とされていた躯幹部の非造影MRAがMulti-phase Transmissionによって撮像可能になりました。3Tの高いSNRを生かし,より微細な血管を描出できる可能性が広がります。

●2012

● 心臓MRIに強い新型1.5T MRIのVantage Titanが登場

初日のプレスカンファレンスで発表された1.5T MRI「Vantage Titan」は,前機種からのフルモデルチェンジとなる。外観を一新し,オプションでガントリにLED照明を施すなど,同社が進めている被検者に優しい装置を意識して開発された。ガントリの開口径は従来機の65cmから6cm拡大して71cmとなっており,独自の静音機構である「Pianissimo」も受け継いでいる。この最新MRIでは,プラットフォームである「M-Power」の機能を強化。「Path Finder, Easy Tech, Pace Maker(迷わない,探さない,失敗しない)」を特長とする機能を盛り込んだほか、安定稼働を維持しながら電源を切ることができる「エコモード」を搭載しており,電力消費量を年間1万5500kW/hも削減することが可能である。

なかでも最大のトピックは,心臓MRIでの位置決めをスピーディに行える世界初の「CardioLine」をオプションで採用したことである。位置決めアシスト機能であるCardioLineは,事例ベースで特徴的な部位を推定する技術により,心臓MRIの基本的な6断面を高精度に決定することを支援する。このため,従来約50分かかっていた検査時間を約40分に短縮することが可能となる。さらに,折り返しアーチファクト回避機能によってスキャンミスをなくし,被検者の息止めの負担を軽減する。この技術は杏林大学付属病院放射線医学教室などとの共同研究により開発されたという。近年,撮像技術の進歩により心臓MRIがニーズが高まり,診療報酬においても「心臓MRI撮影加算」がある。一方で心臓MRIは,検査時間が長く,操作に習熟していないと撮像が難しいといった問題があった。CardioLineはこれらの問題を解決する技術として,普及が期待される。
このほか,MRIに関しては,同社の非造影MRI技術が今年度の「文部科学大臣表彰・科学技術賞」を受賞したことが発表された。

新デザインを採用したVantage Titan

新デザインを採用したVantage Titan

 

心臓MRI検査を効率化するCardioLine

心臓MRI検査を効率化するCardioLine

 

●2013

● 「CardioLine」が搭載可能になった「Vantage Titan 3T」

MRIコーナーで来場者を迎えたのは,同社が国内メーカー初の3T装置として2010年に発表した「Vantage Titan 3T」。同機は,3T MRIの課題とされていた腹部や骨盤部領域の画像濃度ムラを改善する「Multi-phase Transmission」を搭載。同社装置が得意とする非造影MRAについても,腹部・骨盤部領域ともに高精細な画像を提供することができる。さらに,「Vantage Titan 3T」は,ガントリの開口径が710mmという広さを有しており,閉所恐怖症などの被検者であっても,リラックスして検査を受けることができる。被検者がリラックスして検査を受けられる技術としては,ほかにも同社MRI独自の静音化機構である「Pianissimo」が採用されている。
今回は,2012年に発表された1.5T MRIの「Vantage Titan」に搭載できる心臓検査向けのアプリケーション「CardioLine」が「Vantage Titan 3T」にも搭載可能になったことがアナウンスされた。「CardioLine」は,心臓診断用の基準6断面の位置決めを支援する。高精度な位置決めを自動的に行い,心臓MRIの検査時間を短縮化する。新たに「Vantage Titan 3T」にも搭載可能になったことで,3T MRIによる心臓検査が行いやすくなる。
MRIコーナーでは,このほか新開発のコイルが発表された。1つは3T MRIの頭部用「32chヘッドSPEEDER」で,もう1つは1.5T装置用の「16ch フレキシブル SPEEDER」である。

3T MRI「Vantage Titan 3T」

3T MRI「Vantage Titan 3T」

新開発のコイル「32chヘッドSPEEDER」と「16ch フレキシブル SPEEDER」

新開発のコイル「32chヘッドSPEEDER」と
「16ch フレキシブル SPEEDER」

 

「Vantage Titan 3T」に搭載可能になった「CardioLine」

「Vantage Titan 3T」に搭載可能になった「CardioLine」

 

●2014

● 省スペースで設置が可能な1.5T MRIのVantage ElanがITEM初登場

MRI装置本体としては,3T MRIの「Vantage Titan 3T」と昨年の北米放射線学会(RSNA 2013)直前に発表されたVantage Elanが展示された。
Vantage Elanは「きれい,簡単,コンパクト」をコンセプトに開発された同社新製品の1.5T MRI。従来装置から29%省スペース化し,約23m2という最小設置面積を実現した。システム全体の設計を見直し機械室を不要としている。また,クラス最小の25kVAという電源容量と不要な電力消費を抑える“エコモード”により,最大消費電力量を従来機種から約50%削減している。
画質面でも妥協はしていない。高いSNRを得られる“Octave SPEEDER”をオプションで用意。さらに,高精度の位置決めを容易に行える“NeuroLine”“SpineLine”“CardioLine”により,短時間で効率的な検査を可能にしている。このほか,独自の静音化技術である“Pianissimo”を進化させた“Pianissimo Σ”を搭載。被検者の負担を抑えた検査を行える。
このほか,乳房の形状に合わせてコイルを動かして密着させて,高SNRの画像を得られる「ブレストSPEEDER」などが紹介された。

Vantage Elanは省スペース,省エネルギーの1.5T MRI

Vantage Elanは省スペース,省エネルギーの1.5T MRI

 

乳房MRIで高い評価を得ているブレストSPEEDER

乳房MRIで高い評価を得ているブレストSPEEDER

Vantage Elanに搭載されるアプリケーションのSpineLine

Vantage Elanに搭載されるアプリケーションの
SpineLine

 

●2015

● 「Vantage Titan 3T」の画質を向上する「Saturn Gradient」

MRIでは,ハイエンド装置のVantage Titan 3T,「きれい,簡単,コンパクト」が特長の1.5T MRI「Vantage Elan」が展示された。
Vantage Titan 3Tは,新しいオプションとしてRSNA 2014で発表されたSaturn Gradientの技術がその臨床画像とともに紹介された。最新ソフトウエアバージョンの“M-Power V2.5”を搭載したSaturn Gradientがもたらすメリットは,“BOOST Quality”“BOOST Speed”“BOOST Flexibility”という3つのキーワードから説明できる。BOOST Qualityとしては,冷却性能の強化やローレンツ力の抑制により発熱と振動を抑え,高分解能撮像でも安定した高画質を得られるようにした。また,BOOST Speedとして,プレスキャンの大幅な削減や再構成時間を1/10にするなど検査時間の短縮化を図った。BOOST Flexibilityとしては,ユーザーインターフェイスの設計を見直したほか,パラメータ変更の自由度を高めている。
このほか,新開発のコイル「16ch フレキシブル SPEEDER」も展示された。柔軟性があるため整形外科領域などで撮像部位に密着できるため,SNRの高い画像を得られるようになる。

Saturn Gradient搭載可能な「Vantage Titan 3T」

Saturn Gradient搭載可能な
「Vantage Titan 3T」

新開発の「16ch フレキシブル SPEEDER」

新開発の「16ch フレキシブル SPEEDER」

 

●2016

● 高画質,コンパクトの1.5T「Vantage Elan」と次世代3T MRIの技術を発表

MRIでは,1.5Tの「Vantage Elan / eS Edition」をコーナーのセンターに展示した。Vantage Elanは2013年11月に発売され,高画質とコンパクトを両立した1.5T MRIとして評価を受け,国内で約150台が稼働している。2015年11月に発売されたVantage Elan / eS Editionは,コンパクトな設計は維持したまま,16チャンネルの多チャンネルフェーズドアレイコイルの利用を可能にし,アプリケーションソフトウエア“M-power V3.1”を搭載して,より高度な検査環境をコストを抑えて提供できるのが特長だ。展示では,装置周囲の床面に検査室の最小設置面積である16m2を赤枠で示し,Vantage Elan / eS Editionのコンパクト設計をアピールした。
また,同社は4月12日に次世代の3T MRIの新技術の開発について技術発表(ニュースリリース)を行った。この新技術は,高スリューレートで高画質化と静音化を実現したSaturn Technologyを1.5Tクラスの省スペースで実現,最大99%まで騒音を低減する静音化,さらなる撮像時間の短縮などを提供する。さらに,RSNA2015に合わせて技術発表され,シカゴの展示ブースで大きな注目を集めた“広視野バーチャル映像技術(薬機法未承認)”についても合わせて紹介した。
もう1つの目玉として注目を集めたのが,2015年に東芝メディカルシステムズが買収したフランスの医療画像処理ソリューションベンダーであるオレア メディカル社の,33のMRI向け解析アプリケーションが利用可能になったことだ。アプリケーションは画像処理ワークステーション「Vitrea」に搭載され提供される。Wall Motion Tracking,Permeabilityなど,すでに臨床で高い評価を受けているアプリケーションが搭載されることになり,東芝メディカルシステムズのMRIの競争力を高めることが期待される。

高画質とコンパクトを両立した1.5T MRI「Vantage Elan / eS Edition」

高画質とコンパクトを両立した1.5T MRI
「Vantage Elan / eS Edition」

オレア メディカル社の豊富なMRI向け解析アプリケーションをアピール

オレア メディカル社の豊富なMRI向け
解析アプリケーションをアピール

   
新しいデザインの3T MRIの技術を参考出展(薬機法未承認)

新しいデザインの3T MRIの技術を参考出展
(薬機法未承認)

快適な検査環境を提供する広視野バーチャル映像技術(薬機法未承認)を紹介

快適な検査環境を提供する広視野バーチャル映像技術(薬機法未承認)を紹介

 

●2017

● 最大99%の静音効果を実現した1.5T「Vantage Elan / Zen Edition」など新製品を出展
MRIでは,こちらもITEM2017に合わせて発表された1.5T「Vantage Elan / Zen Edition」を展示した。Vantage Elan / Zen Editionは,従来からの最小設置面積約16m2のコンパクト設計,低ランニングコストなどはそのままに,最大99%の静音効果を実現する“Pianissimo Zen”や3Tのハイエンドの最新アプリケーションを多数搭載したことが特長だ。Pianissimo Zenは,撮像の際の電流波形の変動を限りなく小さくすることにより,検査時の騒音を最大99%低減する。検査室内だけでなく室外の診察室や待合室なども含めてMRIの騒音の少ない検査環境を提供する。また,Vantage Elan / Zen Editionでは,検査時の位置決めを支援し検査時間を短縮する生体構造認識技術を搭載している。新たに搭載された“SUREVOI”では,心臓検査での各種の設定を生体構造認識で自動で設定され,1回の撮像で同時に14断面を取得する“CardioLine+”と併用することで大幅な操作時間短縮を可能にする。さらに,「Vantage Galan 3T」に搭載されている“mUTE(minimized acoustic noise utilizing UTE) 4D-MRA”,腹部検査対応の横隔膜同期,整形分野での活用が期待されるUTEなど,ハイエンドのアプリケーションを多数搭載した。
その3T MRIのVantage Galan 3Tは,ITEMでは初出展となった(昨年は参考出展)。Vantage Galan 3Tは,画質ムラを低減する“Multi-phase Transmission”や,“Saturn Technology”,SNRを20%向上する“PURERF”などで,3Tとしての高画質を追究すると同時に,コンパクトな設置環境やEcoモードなどの導入のしやすさ,Pianissimo Zenやオープンボア(開口経71cm)など快適な検査環境にも配慮した装置となっているのが特徴だ。Vantage Elan / Zen Editionにも搭載されたmUTE 4D-MRAでは,静音化した頭部非造影MRA検査が可能になる。
さらに,MRIコーナーでは,薬機法認可を得たばかりの,映像による快適なMRI検査空間を演出する「MRシアター」を展示し,実際にその映像を体験できるようになっていた。そのほか,オレアメディカル社の豊富なMRI解析アプリケーションや,Pianissimo Zenによる静音検査を体験できるコーナーを設けて,MRIのアドバンテージをアピールした。

最大99%の静音効果を実現した1.5T MRI「Vantage Elan / Zen Edition」

最大99%の静音効果を実現した1.5T MRI
「Vantage Elan / Zen Edition」

3T MRI「Vantage Galan 3T」では快適な検査空間を演出する「MRシアター」と合わせて紹介

3T MRI「Vantage Galan 3T」では快適な検査空間を演出する「MRシアター」と合わせて紹介

   
Pianissimo Zenの静音効果を体験できるコーナー

Pianissimo Zenの静音効果を体験できるコーナー

オレアメディカル社のMRIアプリケーションをモニタで紹介

オレアメディカル社のMRIアプリケーションを
モニタで紹介

 

●2018

●3Tの高画質技術を継承したプレミアム1.5Tの「Vantage Orian」を発表
MRコーナーでは,ITEMに合わせてリリースされた1.5Tの新製品「Vantage Orian(オライアン)」を中心に展示した。Vantage Orianは,3T MRIで培ってきた“Saturn Gradient”や“PURERF Rx”などの高画質化技術を継承し,さらに新たに開発した高精度出力予測技術の“PUREGradient”によって,傾斜磁場の発生を高度に制御し,ディフュージョンの高分解能撮像を実現している。直接sagital画像を収集するdirect sagital撮像でも,従来と同じ撮像時間でも歪みが少なく空間分解能の高い画像が得られる。
撮像時間を短縮するアプリケーションとしては,高速な3D撮像を可能にする“Fast 3D”,ディフュージョンの時間短縮技術である“MultiBand SPEEDER”,1回20秒の息止めで心臓シネ撮像を可能にする“k-t SPEEDER”,息止めや心電同期,呼吸同期を必要とせず自然呼吸下の撮像を可能にする“Quick Star”,1スキャンでマルチコントラストが得られ確実な脂肪抑制を実現する“WFS”などを搭載する。また,“ForeSee View”は計画断面をリアルタイムでプレビューできる撮像計画用のツールで,ROIを動かすことで撮像結果の事前予測を可能とし,失敗しない検査の実現が期待できる。
また,ワークフローの効率化として,ガントリからそのまま脱着が可能なドッカブルテーブルを同社のMRIとしては初めて採用。ガントリ上部に設けられたインテリジェントモニタと合わせて検査の効率化や使いやすさが向上した。さらに,検査室の最小設置面積18.3m2(操作室を含めて25m2)であり,スタンバイ時の消費電力削減と夜間の冷凍機間欠運転で約21%の消費電力削減を実現する“ECO Mode Plus”など,経済性についても最大限に考慮されたMRIとなっている。
キヤノンメディカルシステムズでは,横浜開発センターに次世代MRI開発部門を設け,Compressed Sensingやディープラーニングを用いた再構成処理などの先進的な研究開発を進めている。ボルドー大学や熊本大学との共同研究の取り組みがアナウンスされているが,ブースではMR画像のDeep Learning Reconstruction(DLR:W.I.P.)を用いた画質向上の成果や,3T装置で撮像された,1024×1024マトリクス,0.2×0.2×3mmの7T MRIに匹敵する超高精細画像(W.I.P.)なども紹介した。

1.5Tの新製品「Vantage Orian(オライアン)」

1.5Tの新製品「Vantage Orian(オライアン)」

 

高精度出力予測技術“PUREGradient”でディフュージョン画像の画質が向上

高精度出力予測技術“PUREGradient”でディフュージョン画像の画質が向上

 

1024×1024マトリクス,0.2×0.2×3mmの7T MRIに匹敵する超高精細画像(W.I.P.)

1024×1024マトリクス,0.2×0.2×3mmの7T MRIに匹敵する超高精細画像(W.I.P.)

 

●2019

●1.5T「Vantage Orian」や“Ultra Gradient system”の高分解能画像を展示
MRでは,1.5T MRI「Vantage Orian」が展示され,“MRシアター”を体験できるセットアップで来場者にアピールした。Vantage Orianは,3T装置で培った技術を投入して高画質化を図っているほか,ガントリから脱着が可能な寝台(ドッカブル寝台)を採用し,検査効率などを高めている。
また,研究機として国内では5台が稼働中の3T MRI「Vantage Galan 3T ZGO」について,稼動サイトの放射線科教授を対象としたインタビューVTRと,AIを用いた画像再構成技術“DLR:Deep Learning Reconstruction(W.I.P.)”を用いた最新の臨床画像をディスプレイで紹介した。“Ultra Gradient system”であるZGOでは,最大傾斜磁場強度(Gmax)100mT/mという磁場強度での撮像が可能で,従来よりも高分解能画像の撮像ができる。ブースではDLRと組み合わせて実現された高分解能で低ノイズの臨床データを含めて紹介した。さらに,ブースではデザインが一新された3.0Tの新装置(W.I.P.)を展示。これは研究機であるZGOの一般販売モデルとして開発している装置とのことだ。
MRの最新アプリケーションや機能としては,Ultra Gradientシステムによる歪みの少ない“High Quality DWI”,高速な3D撮像を可能にする“Fast 3D”,非造影で1回のスキャンで動態撮像が可能な“mASTAR”,ステントの内腔評価を可能にする“UTE with Time-SLIP”,動態撮像と金属に強い“mUTE 4D-MRA”などを紹介した。“ForeSee View”は,ROI操作に沿ってリアルタイムに撮像結果がわかるため,断面設定の失敗が少なくなり検査時間の延長を防ぐことができる。

MRシアターとともに展示された1.5T MRI「Vantage Orian」

MRシアターとともに展示された1.5T MRI「Vantage Orian」

 

Ultra Gradient systemで描出された歪みの少ない“High Quality DWI”

Ultra Gradient systemで描出された歪みの少ない“High Quality DWI”

 

信号収集の効率化で撮像時間を短縮する“Fast 3D”。18秒で1回の息止めでMRCPの撮像が可能。

信号収集の効率化で撮像時間を短縮する“Fast 3D”。18秒で1回の息止めでMRCPの撮像が可能。

 

撮像プランニングをアシストする“ForeSee View”

撮像プランニングをアシストする“ForeSee View”

 

ZGO+DLR(W.I.P.)による高分解能画像をパネルで紹介

ZGO+DLR(W.I.P.)による高分解能画像をパネルで紹介

 

●2021

●DLR-MRIのこれまでの実績や導入施設の評価ポイントをアピール
MRIでは,実機としてフラッグシップ機の3T MRI「Vantage Centurian」を展示し,Deep Learningを用いたSNR向上技術であるDeep Learning Reconstruction(DLR,AiCE)が,同社のMRI装置にフルラインアップで搭載されたことを大きくアピールした。
キヤノンメディカルシステムズでは,DLR-MRIの開発を2018年からボルドー大学,熊本大学と共同でスタート,2019年に3TのVantage Centurianに世界で初めて搭載したのを皮切りに,2020年には3T MRI「Vantage Galan 3T / Focus Edition」,1.5Tの「Vantage Orian」「Vantage Gracian」へと拡充,2021年3月時点ですでにDLR-MRIが約100施設に導入されている。
DLR-MRIは,SNRの低い画像と高い画像の関係性を深層学習させて高精度なニューラルネットワーク(DCNN)を設計。これによってSNRの低い画像をSNRの高い画像に再構成することが可能で,DLR-MRIとはノイズを除去しSNRを向上させる技術だと言える。DLR-MRIの特長の1つは高いSNRの改善効果で従来と比べて最大で3.2倍の効果が得られている(同社比)。また,学習方法を工夫して高周波成分であるノイズのみを選択的に除去することで,コントラストやシーケンスを問わず,コイルや撮像部位などに依存せず,全身のさまざまな撮像に適用できるのもメリットである。
臨床での有用性としては,高精細画像の取得と短時間撮像という2つが考えられる。高精細画像では,空間分解能を上げて撮像することで従来は難しかった脳血管領域のLSA(穿通枝)が非造影で描出でき,術前や術中のシミュレーションに使われていることを紹介した。また,高速撮像技術と組み合わせることで高画質化と短時間化の両立が可能となる。柔軟な飛び込み検査に対応可能になったことで,月間の検査件数が増加した施設の例を紹介した。
また,最新バージョン(V7)では,“Compressed SPEEDER”“Fast 3D mode”が機能拡張され,“Exsper”“Fat Fraction Quantification”などのアプリケーションが追加されたが,これらとAiCEが実現するMRI検査の新標準を導入施設の使用経験とともに説明した。すでに,DLR-MRIが日常臨床で大きな成果をあげており、MRI検査の標準となっていることをアピールした。

最初にAiCEが搭載された3T MRIのフラッグシップ「Vantage Centurian」

最初にAiCEが搭載された3T MRIのフラッグシップ「Vantage Centurian」

 

DLR-MRI(AiCE)で従来は難しかった頭頸部のLSAを非造影で描出

DLR-MRI(AiCE)で従来は難しかった頭頸部のLSAを非造影で描出

 

“Fat Fraction Quantification”での定量評価にもAiCEを適応

“Fat Fraction Quantification”での定量評価にもAiCEを適応

 

●2022

●DLR-MRIの新製品「Vantage Fortian」の自動化機能を中心に展示を構成
MRIでは,ITEMに合わせて発表された1.5T DLR-MRI「Vantage Fortian」が大きくフィーチャーされた。DLR-MRIは,ディープラーニングを再構成に応用した“Deep Learning Reconstruction”を搭載したMRI装置である。Vantage Fortianでは,DLRによるSNRの向上効果で高分解能画像の短時間収集やさらなる高精細画像の収集が可能になっているほか,新たに検査をアシストするさまざまな機能を搭載して新しい検査ワークフロー(Intelligent Workflow)を提案する装置となっている。Intelligent Workflowの一つが,キヤノン製のカメラを採用したシーリングカメラを用いたポジショニングやコイルセッティングのサポート機能だ。天井に設置されたシーリングカメラの映像から寝台上の患者体位を認識して,ポジショニングやコイルのセッティングに必要なガイド線を,ガントリ上部に設置されたインテリジェントモニタに表示する。検査者はこの画像を見ながら適切なポジショニングやコイルの設置が行える。また,“タブレットUXアプリケーション”は,これまで操作卓(コンソール)で行ってきた作業をすべてタブレット端末で行えるようにしたソフトウエアだ。検査前の患者情報や検査部位の確認,プロトコールの選択などが可能で,検査中の画像の確認も行うことができる。さらに,AI技術を応用した撮像断面アシスト機能“Auto Scan Assist”が搭載され,肝臓の位置決めをアシストする“LiverLine and SUREVOI Liver”,前立腺の位置決めをアシストする“ProstateLine+”,全脊椎の自動スライス設定や椎体のナンバリングをアシストする“W-SpineLine+”が新たに追加された。

“Intelligent Workflow”と“Intelligent Image Quality”を提供する新しいDLR-MRI「Vantage Fortian」

“Intelligent Workflow”と“Intelligent Image Quality”を提供する新しいDLR-MRI「Vantage Fortian」

 

シーリングカメラの映像からガントリのインテリジェントモニタにセッティングのガイド線を表示

シーリングカメラの映像からガントリのインテリジェントモニタにセッティングのガイド線を表示

 

“タブレットUXアプリケーション”ではコンソールレスで検査画像の参照なども可能

“タブレットUXアプリケーション”ではコンソールレスで検査画像の参照なども可能

 

●2023

●DLR-MRIに新たに加わった超解像技術「PIQE」について臨床画像を交えてアピール
MRIでは,3Tの「Vantage Galan 3T」,1.5Tの「Vantage Fortian」を実機展示し,DLR(Deep Learning Reconstruction)-MRIのラインアップが5機種に広がったことをアピールした。Vantage Galan 3Tではボア内に映像を投影して患者の不安を和らげる「MRシアター」と,Vantage Fortianではシーリングカメラによるポジショニングサポート機能と合わせて展示を構成した。
同社では,2019年からMRIへのディープラーニングを用いて設計したSNR向上技術のAiCEの搭載を開始し,2021年には5機種に搭載されフルラインアップとなった。さらに,今回のITEM 2023では,Area Detector CT(ADCT)で先行して搭載された超解像画像再構成技術「Precise IQ Engine(PIQE)」がMRIにも搭載されたことを発表した。CTのPIQEはAquilion Precisionの高精細画像データをベースにしてADCTの高精細化を図るものだが,MRIのPIQEではdenoisingとup-samplingの2つのDLRによって低い空間分解能の画像から高分解能画像を生成する。up-samplingの工程では,zero-filling処理(zip)というk空間の周辺をゼロで埋めることで擬似的に解像度を上げる技術が採用されている。zipは1990年代から使われている古い手法だが,ボケが残ることやリンギングアーチファクトが発生することが課題だった。このボケやアーチファクトを除去するためにDLR処理を行うことで,処理の精度を向上すると同時に汎用性を高めているのが特徴だ。PIQEでは,分解能を落として撮像することでコントラストを担保でき撮像時間の短縮も期待できることを臨床画像を含めてアピールした。

シーリングカメラによるポジショニングサポート機能と合わせて展示された1.5T「Vantage Fortian」

シーリングカメラによるポジショニングサポート機能と合わせて展示された1.5T「Vantage Fortian」

 

MRIの超解像技術「PIQE」を発表。低解像画像から高SNR高解像画像を生成MRIの超解像技術「PIQE」を発表。低解像画像から高SNR高解像画像を生成

MRIの超解像技術「PIQE」を発表。低解像画像から高SNR高解像画像を生成

 

PIQEでは収集マトリクスを減らすことで撮像時間の短縮も可能

PIQEでは収集マトリクスを減らすことで撮像時間の短縮も可能

 

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