セミナーレポート(キヤノンメディカルシステムズ)

2019年5月24日(金)〜26日(日)の3日間,日本超音波医学会第92回学術集会など超音波関連の4つの学会・研究会によるUltrasonic Week 2019がグランドプリンスホテル新高輪(東京都港区)を会場に開催された。25日に行われたキヤノンメディカルシステムズ株式会社共催のランチョンセミナー6では,兵庫医科大学病院超音波センター/内科・肝胆膵科の飯島尋子氏が座長を務め,虎の門病院肝臓内科の斎藤 聡氏と川崎医科大学検査診断学内視鏡・超音波部門の畠 二郎氏が,「知っていますか?Aplio i-seriesの魅力〜腹部・超高周波編〜」をテーマに講演を行った。

2019年9月号

Ultrasonic Week 2019ランチョンセミナー6 知っていますか? Aplio i-seriesの魅力〜腹部・超高周波編〜

i can see it ! ─i seriesで見えるもの─

畠  二郎(川崎医科大学検査診断学内視鏡・超音波部門)

キヤノンメディカルシステムズの超音波診断装置「Aplio i-series」は,“iBeam”技術による高画質をベースに進化を続けている。本講演では,“見渡す”“見通す”“見出す”“見抜く”の4つのキーワードで,Super-wide Scan,Doppler Luminance,Fluctuational Imagingなど,Aplio i-seriesの新技術を中心に紹介する。

見渡す:少ない死角で均一に見る

“見渡す”とは,広いエリアをカバーして死角をなくし,かつ均一な画質を提供する技術を指す。

1.Super-wide Scan(W.I.P.)
画質を保ちつつ広角に表示する方法として開発されたのが,Super-wide Scanである。馬蹄腎は,通常の表示方法では両側の腎臓を同時に追跡することが難しく,診断に困ることがある。Super-wide Scanでは,画質を保ったままより広角に表示することが可能で,1スキャンで両側の腎臓を認識しながら追跡し,腎門部で連結している様子が確認できる(図1)。Super-wide Scanは,単に画角を広げるだけでなく“iBeam”技術によって高画質を保ちながらワイド表示を実現していることがポイントである。
広角表示によって大きな構造物の全体像が表示できることから,計測も容易に可能になる。また,Super-wide Scanでは,ビームを鋭角に送信送出することで死角が減少することもメリットで,やせ型の体型でプローブ両端の接触が不良な場合や,肺で妨害される横隔膜直下の領域などを鋭角にのぞき込むように描出できる。さらに,消化管や血管など,連続する細く長い構造物をパノラミックビューなどを使わずにリアルタイムに表示できることから,一過性型虚血性大腸炎や総腸骨動脈瘤などの観察にも有効である。

図1 馬蹄腎のSuper-wide Scan(W.I.P.)

図1 馬蹄腎のSuper-wide Scan(W.I.P.)

 

2.Focusless Scan(W.I.P.)
見渡すためには,深さ方向についてもあらゆる距離を均一に表示できることが必要となる。Focusless Scanは,表示領域全体を均一に表示する技術である(図2)。フォーカスを当てた場合の分解能には及ばないものの,ある程度の解像度で深さ方向に均一な画像で表示できる。従来の画像では,フォーカスされていない領域に病変があった場合には見逃す確率が高くなると考えられるが,Focusless Scanを使えば検出可能な解像度で均一な画像が得られ,スクリーニング検査やPOCUS(Point-of-Care Ultrasound)など,どの深さに病変があるかわからない場合に有効と考えられる。このFocusless ScanをSuper-wide Scanと同時に使用することで,肝臓の広範囲をほぼ1スキャンでクリアに描出することができ,効率的なスクリーニングが可能になることが期待される(図3)。

図2 クローン病のFocusless Scan(W.I.P.)

図2 クローン病のFocusless Scan(W.I.P.)

 

図3 Super-wide Scan+Focusless Scanによる効率的なスクリーニング(W.I.P.)

図3 Super-wide Scan+Focusless Scanによる効率的なスクリーニング(W.I.P.)

 

見通す:どの部位もクリアに見る

“見通す”ために必要なことは,浅部・深部にかかわらず,どの領域もクリアに見えることである。

1.High-density Scan(W.I.P.)
High-density Scan(HDS)は,Super-wide Scanとは反対に,画角を狭めてラスタ密度を増すことで,リニアスキャンに近い高密度の画像を描出する技術である。図4は,転移性胆囊腫瘍の症例で,胆囊が萎縮しており,4MHzの通常モードでのスキャンでは内部の様子はよくわからない。HDSに切り替えて拡大表示すると(図4 a),SNRが向上し細かい構造までクリアに描出され,6MHzコンベックスプローブの通常(図4 b)と同等の画質が得られていることがわかる。6MHzのHDS(図4 c)ではさらにクリアになっており,HDSを使うことで分解能がワンランクアップすると言える。実際の臨床では,ペネトレーション(深部感度)の関係で,4MHzや6MHzのコンベックスプローブを選択せざるを得ないことが多いが,そういった場合にHDSを使うことで,7MHzリニアプローブと同等の画像が得られれば大きなメリットとなる。

図4 転移性胆囊腫瘍のHigh-density Scan(W.I.P.) a:4MHz通常→HDS b:6MHz 通常 c:6MHz HDS

図4 転移性胆囊腫瘍のHigh-density Scan(W.I.P.)
a:4MHz通常→HDS
b:6MHz 通常 c:6MHz HDS

 

2.33MHz超・超高周波プローブ&Boost(W.I.P.)
“見通す”という意味では,超音波ビームが通過する近距離(浅部領域)であれば視認性は高いはずと考えがちだが,実際には音場などの関係で,音波が通っていてもきちんと視認できているかは別問題である。33MHz超・超高周波プローブについては24MHzで十分といった意見もあるが,皮膚科や表在領域では33MHzプローブが必要と感じることが多々ある。図5の霰粒腫では24MHz(a)に比べ,33MHz(b)では内部構造までクリアに描出されている。さらに,33MHzでは高周波化によって低速流や低パワーの血流の検出感度が向上し,血流が明瞭かつ詳細に分析できることもメリットである。
ただし,超・超高周波プローブの課題はペネトレーションである。図6は毛嚢炎・皮下膿瘍の症例だが,33MHzプローブでは毛嚢がクリアに描出され,毛嚢炎に起因した皮下膿瘍であることが確認でき,SMIで炎症があり真皮の血流も増えていることがわかるが(a),その奥の筋膜の部分ははっきりと確認できない。そこで,Boostを使うことで3cm程度までの深部の描出能が向上できた(図6 b)。これによって,膿瘍は筋膜には到達していないことが確認でき,外来で切開,排膿して治療が終了した。超・超高周波プローブのペネトレーションの課題は,Boostによってある程度の深さまでは描出できる可能性があると考えられる。

図5 33MHz超・超高周波プローブによる霰粒腫の描出 a:24MHz b:33MHz

図5 33MHz超・超高周波プローブによる霰粒腫の描出
a:24MHz b:33MHz

 

図6 毛嚢炎・皮下膿瘍における33MHz+Boost(W.I.P.)(b)による深部の描出

図6 毛嚢炎・皮下膿瘍における33MHz+Boost(W.I.P.)(b)による深部の描出

 

見出す:強調してわかりやすく見る

“見出す”は,血流情報やゆらぎを視覚情報として強調し,わかりやすく表示する技術である。

1.Doppler Luminance
Doppler Luminanceは,カラードプラやSMIの血流表示に対してパワーと速度の情報を“高さ”に変換して表示し,立体感によって信号の強い血流を強調する表示法である(図7)。Luminance効果は3D画像の表示方法として使われているが,ライティング処理によって血管を浮き出させて,立体的かつ明瞭に認識することができる。立体感は認識しやすくなるだけでなく,高速で高いパワーを持つ血流を強調することから,炎症であればより強いものを,腫瘍であれば悪性度の高いものを一目で把握できることになる。図8の胃悪性リンパ腫(a)は,SMIでも血流は乏しいが,Luminanceモードでも強調される血流は少なく,悪性度が低いと考えられる。一方で胃がん(図8 b)では,全体的に立体感を持って描出されており,悪性度が高いことがわかる。通常は,スペクトラム分析で求める血流の流速やPI(拍動係数)の情報を,視覚的にカラードプラやSMIの情報に反映できることがメリットである。

図7 Doppler Luminance

図7 Doppler Luminance

 

図8 胃悪性リンパ腫と胃がんのDoppler Luminanceの比較 a:胃悪性リンパ腫 b:胃がん

図8 胃悪性リンパ腫と胃がんのDoppler Luminanceの比較
a:胃悪性リンパ腫 b:胃がん

 

2.Fluctuational Imaging(W.I.P.)
遅く,ゆっくりとした変化を画像化する“ゆらぎイメージング”については,開発状況を継続的に報告してきたが,Fluctuational Imaging(FLI)として完成した。FLIはフレーム間の画像の相関性を表示する手法で,課題となっていた拍動などそのほかの動きを2段階の補正を採用することで低減し,組織のゆらぎのみを表示することが可能になった。Aplio i-seriesに搭載可能であり,肝血管腫ではBモード画像では認識しづらいゆらぎでも,FLIではゆらぎのない部分は青,ゆらぎありの部分には黄色や赤といった色で表示することで見落とすことなく確認できる(図9)。反対に転移性肝腫瘍の場合は,Bモードでゆらいでいるようにも見えても,FLIではゆらぎは描出されない。今後,FLIがスクリーニング領域で応用されれば,腫瘍と血管腫の鑑別の精度が向上して,無駄な精密検査が減ることが期待される。実際に,当院でBモード画像にFLIを取り入れたところ,診断能の上乗せ効果が確認された。ただ,当然ながらゆらぎのない血管腫もあり,FLIネガティブがすべて血管腫ではないことにはならないので注意が必要である。

図9 肝血管腫のFluctuational Imaging(W.I.P.)

図9 肝血管腫のFluctuational Imaging(W.I.P.)

 

見抜く:隠れた性質や動きを見る

“見抜く”は,形に現れない隠れた性質や動き,目ではとらえられない動きを画像化する技術である。

1.7MHz Shear wave Elastography(SWE)(W.I.P.)
従来,弾性を計測するShear wave Elastography(SWE)に対応するプローブは4MHzまでだったが,新たに7MHzでSWEが可能になった。消化管領域においても組織の性質を見抜くにはBモード画像が基本だが,虚血性腸炎か,閉塞性腸炎かの鑑別など,Bモード画像だけでは判断に迷うことがある。
図10の症例(70歳代,男性)は,腹痛と血便があり,Bモードでは虚血性腸炎と思われたが,高周波プローブによる画像では肛門側端の層構造が消失し腫瘍と思われる影が確認でき,閉塞性腸炎を否定できなかった(a)。組織性状の確認には硬さを映像化するSWEを施行する方法があるが,4MHzでのSWEは消化管領域では音場が不安定で,きれいな剪断波を得ることができず計測は難しかった(図10 b)。新たに開発された7MHzプローブでのSWEでは,伝播波形や等高線表示からがん(図10 c)と炎症(図10 d)の硬さを計測して,閉塞性腸炎として適切に処置することができた。Bモード画像にSWEをプラスすることで,形状だけでは判断できない隠れた情報を取り出して画像化し,確実に診断することができる。
消化管領域でのSWEは,潰瘍性大腸炎(IBD)のモニタリングを超音波診断装置で行う際の有力な指標となる可能性も考えられる。そのほか,クローン病の評価,腫瘍性疾患の鑑別にも有効になると期待される。

図10 閉塞性大腸炎の7MHzプローブによるSWE(W.I.P.) a:Bモード画像 b:4MHz SWE c:がん(6.24m/s) d:炎症(2.63m/s)

図10 閉塞性大腸炎の7MHzプローブによるSWE(W.I.P.)
a:Bモード画像
b:4MHz SWE c:がん(6.24m/s) d:炎症(2.63m/s)

 

2.超高速Contrast Vector Imaging(W.I.P.)
Aplio i-seriesで,造影超音波の際にバブルの動きを高い時間分解能でトラッキングし画像化するContrast Vector Imaging(CVI)が開発された。CVIは,高フレームレート技術によってバブルの動きをとらえ,方向(directional imaging)と速度(velocity imaging)として表示することができる。
そのCVIがさらに進化し,超高速CVIとなった。従来のCVI(44fps)に比べ,超高速CVIでは70fpsと高速化し,スライス間の移動にも対応したため,より多くのバブルのトラッキングが可能になり,より高速で動くものをキャッチして画像化できるようになった。図11は,悪性黒色腫(malignant melanoma)の胆嚢転移の症例だが,超高速CVIを施行すると胆嚢内部にオレンジや赤の高速な血流が確認でき,周囲に凝固塊あるいは壊死があることが確認できる。超高速CVIでは,非常に高速な血流に対しても対応可能で,肝細胞がんなどへの適応も期待される。また,消化管領域では,腸閉塞における単純性と絞扼性の違いを超高速CVIで鑑別することも可能になる。

図11 超高速CVI(W.I.P.)による悪性黒色腫の胆嚢転移の描出

図11 超高速CVI(W.I.P.)による悪性黒色腫の胆嚢転移の描出

 

まとめ

Aplio i-seriesの新しい技術が,“見渡す”“見通す”“見出す”“見抜く”の4つの方向で,“見る”ことをきわめていることを紹介した。われわれの臨床は,得られた情報から患者にとってベストな選択を提供することであり,進化を続けるAplio i-seriesがその選択をサポートすることを期待している。

 

畠  二郎(Hata Jiro)

畠  二郎(Hata Jiro)
1985年 自治医科大学医学部卒業。現在,川崎医科大学検査診断学(内視鏡・超音波部門)教授。
専門領域:消化器病学,超音波診断学,特に消化管と急性腹症の超音波診断。

 

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