セミナーレポート(キヤノンメディカルシステムズ)

第85回日本医学放射線学会総会が2026年4月16日(木)〜19日(日)の4日間,パシフィコ横浜(神奈川県横浜市)で開催された。17日(金)に行われたキヤノンメディカルシステムズ(株)共催のランチョンセミナー21では,金沢大学医薬保健研究域医学系放射線科学の小林 聡氏が座長を務め,秋田大学大学院医学系研究科放射線医学講座の森 菜緒子氏と聖マリアンナ医科大学放射線診断・IVR学講座の森本 毅氏が,「『変化を読む』 ─Abiertoによる日常読影の進化」をテーマに講演した。

2026年7月号

第85回日本医学放射線学会総会ランチョンセミナー21「変化を読む」─Abiertoによる日常読影の進化

〈講演1〉骨を“経時で読む”CT:骨サブトラクションが変える骨病変評価

森 菜緒子(秋田大学大学院医学系研究科放射線医学講座)

骨転移は,初期段階では骨髄転移として存在し,腫瘍の増大に伴って骨組織へと浸潤する病態である。骨転移は溶骨型,造骨型,骨梁間型,混合型に分類される。がん種によって骨転移の頻度は異なり,前立腺がんは約89%と非常に頻度が高く,乳がん,腎がん,肺腺癌でも高頻度に発生する。好発部位は脊椎,大腿骨,骨盤,肋骨などで,神経圧迫や骨破壊により疼痛やしびれなどの症状が生じるが,無症状のまま進行することも少なくない。そのため,骨転移の早期発見には,画像診断が非常に重要となる。
本講演では,このような背景を踏まえ,キヤノンの読影支援ソリューション「Abierto Reading Support Solution(Abierto RSS)」の骨経時差分処理「Temporal Subtraction For Bone(TSB)」を用いた骨転移の診断と,その有用性を報告する。

骨転移の診断法

骨転移の診断は,単純X線撮影,CT,MRI,骨シンチグラフィ,18F-FDG-PETなど複数のモダリティを組み合わせて総合的に評価することが重要である。診断能はそれぞれ,CTが感度73%・特異度95%,MRIが感度90%・特異度92%,骨シンチグラフィが感度86%・特異度81%,18F-FDG-PET が感度90%・特異度97%と報告されている。これらのうち,CTは全身の広範囲な読影が必要なため読影負荷が大きく,疲労による見落としリスクが高くなる可能性が指摘されている。また,18F-FDG-PETでは前立腺がんなど一部腫瘍でFDG集積が弱く,原発巣によっては診断能が低下することに注意を要する。

骨サブトラクションの概要とTSBの特長

1.骨サブトラクションの概要
骨サブトラクションの原型となる手法は,2017年に京都大学の坂本らによって提案された1)。過去画像と現在画像を高精度に位置合わせし,その差分を取ることで骨の経時的変化を強調する。これにより,新規病変や骨の変化を視覚的にとらえることが可能となった。
骨サブトラクションの有用性として,診断精度を保ったまま読影時間を短縮できる可能性や,レジデントにおける硬化性骨転移の検出能向上および読影時間の短縮,さらに,溶骨性病変でもレジデントの診断能が有意に向上することなどが,複数の論文で報告されている。また,前回CTと今回CTに骨シンチグラフィを追加した場合と,骨サブトラクションを追加した場合を比較した検討では,骨サブトラクションを追加した方が感度が有意に高く,診断能の総合指標であるFOM(figure of merit)も良好な傾向が示された。

2.TSBの特長
この骨サブトラクションの原理を基に製品化されたのがTSBである。TSBは,フォローアップの現在のCT画像と過去画像との骨差分画像を生成し,骨の経時的変化を見える化する技術である。現在画像と過去画像を基に骨領域を抽出し,線形・非線形位置合わせ処理を行った上で,差分処理によって骨のCT値変化のみを強調表示する。
図1はTSBの解析結果の画面例で,青はCT値の上昇(硬化性変化),赤はCT値の低下(溶骨性変化)を示す。中央下のFusion画像では変化した部分が強調表示され,右の3D画像では全体的な骨領域の変化を一目で把握することができる。また,TSBでは椎体・肋骨のラベル表示によって位置の把握が容易なほか,解析結果から所見文案を作成するなど,骨領域の読影をサポートする。

図1 TSBの解析結果の画面例

図1 TSBの解析結果の画面例

 

3.骨転移の症例提示
症例1は,89歳,男性,前立腺がん術後の症例である。Fusion画像では骨盤に広範な硬化性変化を認め,3D画像では全身の病変の分布が一目で把握できる(図2)
症例2は,67歳,男性,腎がん術後の症例である。Fusion画像および3D画像では,頸椎椎弓の溶骨性変化が明瞭に描出されている(図3→)

図2 症例1:前立腺がん術後

図2 症例1:前立腺がん術後

 

図3 症例2:腎がん術後

図3 症例2:腎がん術後

 

4.骨転移以外の疾患の症例提示
症例3は,70歳代,女性,子宮頸がん化学放射線療法後の症例である。TSBでは椎体の硬化性変化が強調されており,矢状断像では圧迫骨折が確認できる(図4)
症例4は,40歳代,女性,乳がんの右腸骨転移に対する緩和照射後の症例である。TSBで硬化性変化が明瞭に描出されており(図5),放射線治療による骨の変化を評価可能であることがわかる。

図4 症例3:子宮頸がん化学放射線療法後

図4 症例3:子宮頸がん化学放射線療法後

 

図5 症例4:乳がんの右腸骨転移に対する緩和照射後

図5 症例4:乳がんの右腸骨転移に対する緩和照射後

 

縦断の縦断(2回以上の縦断的な評価)

骨サブトラクションは経時的変化を見る縦断的な手法であるが,さらに複数回の検査を比較することで,より縦断的な評価が可能となる。
前立腺がんの治療効果判定における骨病変の変化の評価に当たっては,現在,国内外のガイドラインでは骨シンチグラフィのみが客観的な検査であるとされている。一方,骨シンチグラフィは治療後の変化として,フレア現象による真の増悪の区別が難しい場合があり,新規病変の出現を確認する際には,2個増加後にさらに2個増加した時点で増悪と判定する「2+2ルール」が用いられている。
こで,当院にて,前立腺がん骨転移症例に対し,同日に撮影されたCTのTSBと骨シンチグラフィを比較した。対象は,2014年1月〜2023年12月の28症例,143回の撮影で,2か所以上の明らかな増悪を2点,増悪が疑われるが不明瞭なものを1点,増悪なしを0点として,硬化性変化,溶骨性変化ともに評価した。対象症例のうち,経過観察中に36%に硬化性変化の進行,8%に溶骨性変化の進行を認めた。硬化性変化においてはTSBと骨シンチグラフィに有意な相関を認めた(p<0.0001)。一方,溶骨性変化では両者に有意な相関を認めなかった(p=0.46)。
症例5は,66歳,男性,前立腺がん骨転移の増悪症例である。骨シンチグラフィでは時間の経過とともに集積の亢進を認める(図6 上段)。TSBでもCT値の上昇を認め,骨硬化の広がりを青い表示でとらえられている(図6 下段)。前立腺特異抗原(PSA)の値も著明に上昇し,臨床経過とも一致していた。前述のとおり,硬化性変化(青色表示)と骨シンチグラフィの集積には統計学的な関連が認められ,病勢の把握が可能であった。
以上より,TSBは,骨転移の経過観察における有用な補助ツールとなる可能性があると考えられる。

図6 症例5:前立腺がん骨転移の増悪症例

図6 症例5:前立腺がん骨転移の増悪症例

 

まとめ

骨転移の経時的な評価において,TSBは骨病変の診断能や読影効率の向上に寄与する可能性がある。また,経時的な評価を重ねて行う「縦断の縦断」によって,骨評価の精度をさらに高めることができると考える。

●参考文献
1)Sakamoto, R., et al., Radiology, 258(2) : 629-639, 2017.

*記事内容はご経験や知見による,ご本人のご意見や感想が含まれる場合があります。
*システムによる検出結果のみで病変のスクリーニングや確定診断を行うことは目的としておりません。
*AIは設計段階で用いられており,自己学習機能はありません。

一般的名称:汎用画像診断装置ワークステーション用プログラム
販売名:汎用画像診断ワークステーション用プログラムAbierto SCAI-1AP
認証番号:302ABBZX00004000 
製造販売元:キヤノン株式会社

 

森 菜緒子(Mori Naoko)
2001年 東北大学医学部卒業。関連病院を経て,2009年 同大学特任助教。2015年 シカゴ大学放射線科留学。2022年〜秋田大学医学部放射線医学講座教授。

 

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