セミナーレポート(キヤノンメディカルシステムズ)

第85回日本医学放射線学会総会が2026年4月16日(木)〜19日(日)の4日間,パシフィコ横浜(神奈川県横浜市)で開催された。17日(金)に行われたキヤノンメディカルシステムズ(株)共催のランチョンセミナー21では,金沢大学医薬保健研究域医学系放射線科学の小林 聡氏が座長を務め,秋田大学大学院医学系研究科放射線医学講座の森 菜緒子氏と聖マリアンナ医科大学放射線診断・IVR学講座の森本 毅氏が,「『変化を読む』 ─Abiertoによる日常読影の進化」をテーマに講演した。

2026年7月号

第85回日本医学放射線学会総会ランチョンセミナー21「変化を読む」─Abiertoによる日常読影の進化

〈講演2〉統合プラットフォームが支える日常読影:Abiertoの臨床的有用性

森本  毅(聖マリアンナ医科大学放射線診断・IVR学講座)

日常臨床において,画像検査数は増加の一途をたどり,検査部位も増加している。一方,放射線科医は不足しているほか,画像診断管理加算の算定要件を満たすための読影負荷もあり,病変の見逃しなどによる診断の質の低下が懸念されている。また,昨今の働き方改革によって,院内でもワークシフトや業務効率化が図られており,放射線科においても診断の質を維持しながら効率的な読影を行うことが求められている。そのための手段の一つが,人工知能(AI)を用いた読影支援システムの活用であり,当院ではキヤノンの読影支援ソリューション「Abierto Reading Support Solution(Abierto RSS)」を使用している。本講演では,当院におけるAbierto RSSの活用の実際と有用性を報告する。

Abierto RSSの概要

Abierto RSSを用いた当院のデータフローを図1に示す。画像解析サーバである「Automation Platform」は,PACSから画像を受け取るとその画像の付帯情報から適したアプリケーションを判別し,自動解析を行う。読影者はレポーティングシステムで通常の読影を行い,必要に応じて専用ビューワ「Findings Workflow」で解析結果を閲覧する。Abierto RSSにはウィジェット機能が備わっており,表示中の検査について,解析の進捗状況がポップアップで表示され,解析結果をウィジェット上で簡易的に参照することも可能である。
Abierto RSSでは,臨床領域ごとに多数のAIアプリケーションが提供されている。Oncology領域では代表的なものとして,胸部CT画像の肺野領域の解析を行う「EIRL Chest CT」や,骨経時差分処理の「Temporal Subtraction For Bone(TSB)」などがある。

図1 Abierto RSSを用いた当院のデータフロー

図1 Abierto RSSを用いた当院のデータフロー

 

EIRL Chest CTの有用性

EIRL Chest CTは,ディープラーニングを用いた解析処理によって,肺野領域における関心領域を抽出するアプリケーションである。抽出した領域の体積と長径を自動で計測し,サムネイルリストに表示される。それぞれの結果のサムネイルをクリックすると画像がそのスライス断面に移動するため,確認しながら評価を進めることが可能である。
日本CT検診学会は,肺結節検出のピットフォールとして,10mmを超える大きな結節でも見落とす可能性があるほか,太い血管や縦隔に隣接する肺結節,気管・気管支内の病変,胸膜・葉間胸膜・縦隔・横隔膜に接する病変なども見落とす可能性があるとしている1)。また,経過観察中の病変とは別の病変や,新たな肺結節を見つけた時の他部位の病変なども見落としの危険性があるとしている。これらに対し,AIによる支援が有効であると考える。
図2は,当院で経験した見逃し症例である。呼吸困難の精査目的で撮影された胸部CTにて両肺野に広範なすりガラス状高吸収像を認め(図2 a),7年後のCTでは右肺に結節を認めた(b。改めて過去のCT画像を確認すると,同部位に肺血管径と同程度の大きさの結節が存在しており,増大していた(図2 a,b。呼吸困難精査という肺結節評価とは異なる依頼情報と派手な所見に気を取られていたこと,結節と同程度の径の血管の近傍に病変があったことが,見逃しの原因と推察される。当該病変はEIRL Chest CTでは指摘されており(図2 c,指摘しにくい状況下でも見逃しを防ぐことができる可能性が示唆されている。
EIRL Chest CTでは,今回検査の解析結果を表示するSingle表示のほか,過去に同様の検査が行われている場合は,Compare表示を用いて過去と今回の画像を比較することが可能である。図3は実際の画面であるが,左側に過去画像,右側に今回画像,中央にそれぞれを解析した関心領域が表示されている。それらが同一のものと認識された場合はペアリングし,それぞれの長径の変化に応じて増大・変化なし・縮小・新規の4種の色づけされたアイコンで表示されるため,経時的変化がわかりやすい。病変の数が多くても,色づけされたアイコンを確認しながら全体をスクロールして見ることで,大まかな病勢を把握できる。また,画像は通常,頭側から順に並んでいるが,増大率順や大きさ順にソートすることも可能である。長径の経時的変化はグラフ表示することもできるほか,各病変候補の解剖学的部位や性状を選択することで所見文テンプレートを作成することができ,キー画像とともにレポートに貼り付けることも可能である。

図2 EIRL Chest CTによる見逃し病変の検出

図2 EIRL Chest CTによる見逃し病変の検出

 

図3 EIRL Chest CTによる過去画像比較

図3 EIRL Chest CTによる過去画像比較

 

TSBの有用性

1.日常臨床におけるTSBの意義
日常の読影において,体幹部CTでは骨の評価は後回しになりやすいほか,全身の骨をくまなく検索するのは労力を要する。また,骨病変の検索に多くの時間を割くことは難しい一方で,偶発的に見つかる骨病変も少なくないため,見落としのリスクがある。
TSBは,過去画像と今回画像の経時的差分処理を行い,骨の性状変化(CT値の増減)を強調して表示するアプリケーションである。骨転移の経時的評価を目的に開発されたが,骨折や,がん治療関連骨減少症,転移以外の骨悪性腫瘍・良性病変における有用性が学会発表などで報告されており,さまざまな骨病変評価への応用が期待されている。これらを踏まえ,当院での日常使用におけるTSBの有用性を検討した。
日常的に撮影された胸腹部CT 208例(担がん症例165例,通常症例43例)の読影レポートとTSBの解析結果を比較したところ,差異を認めたのは24例(11.5%)であった。差異の内訳は,骨折16例,転移7例,そのほかの骨変化1例で,いずれもTSBでは指摘されていたが,読影レポートには記載されていなかった。さらに詳しく見ると,骨折の16例のうち11例が肋骨の骨折であり,転移の7例のうち2例は見逃し(指摘なし),5例は経時的変化の過小評価であった。
以上より,TSBは骨転移や骨折の評価,特に肋骨や肩甲骨など,辺縁部にあって観察しづらい領域の評価に有用であると考える。今回の骨折症例については,依頼医自身も認識していないケースが少なくなかった。また,日常診療では検査依頼情報の記載が不十分であることも多いため,TSBは偶発病変の拾い上げなど,日常読影支援としての有用性が期待される。

2.転移性骨腫瘍の早期診断におけるTSBの有用性
骨転移は,脊柱管に進展すると脊髄神経を圧迫し,神経障害や麻痺を生じるため,早期発見・早期治療が重要である。TSBでは骨の変化が赤と青に色づけされるが,従来バージョンでは脊柱管進展については読影者自身が確認する必要があった。バージョンアップで追加されたVertebral Subtractionでは,脊柱管内の経時的変化も可視化できるようになった。図4では,右の3D画像にて椎体のCT値の変化が赤く表示されていることに加え,中央下段のFusion画像では同レベルの脊柱管内の吸収値の変化が黄色で表示されている。3D上でのグラフの高さが,脊柱管内でCT値が変化した部分の占有率を示している(図4 。また,このグラフをワンクリックすることでWW/WLが軟部条件へと変わり拡大表示される(図5)。こうした手数の減少が読影者の負担軽減の一助となっている。

図4 TSB Vertebral Subtractionによる脊柱管内の経時的変化の可視化

図4 TSB Vertebral Subtractionによる脊柱管内の経時的変化の可視化

 

図5 脊柱管進展の拡大表示

図5 脊柱管進展の拡大表示

 

まとめ

Abierto RSSは,一連の読影ワークフロー内で複数の部位を網羅的に評価できる有用なツールである。当院での簡易的な検討では,TSBを用いることで中央値で1分ほど読影時間が延長するものの,病変の見逃し防止や,微細な病変の検出,心理的な安心感など読影時間の延長を上回るメリットが得られており,日常臨床における有用性は高いと考える。

*記事内容はご経験や知見による,ご本人のご意見や感想が含まれる場合があります。
*システムによる検出結果のみで病変のスクリーニングや確定診断を行うことは目的としておりません。
*AIは設計段階で用いられており,自己学習機能はありません。

●参考文献
1)日本CT検診学会:低線量CTによる肺がん検診の肺結節の判定基準と経過観察の考え方 第6版, 2024.

一般的名称:汎用画像診断装置ワークステーション用プログラム
販売名:汎用画像診断ワークステーション用プログラム Abierto SCAI-1AP
認証番号:302ABBZX00004000
製造販売元:キヤノン株式会社

*以下はエルピクセル株式会社の医療機器です。
一般的名称:汎用画像診断装置ワークステーション用プログラム
販売名:医用画像解析ソフトウェア EIRL Chest CT
製造販売認証番号:304AGBZX00037Z00

 

森本  毅

森本  毅(Morimoto Tsuyoshi)
2000年 聖マリアンナ医科大学卒業。2008年 同大学院博士課程修了。横浜栄共済病院,国立がん研究センター中央病院などを経て,2008年 聖マリアンナ医科大学放射線医学講座助教。2015年 同大学横浜市西部病院放射線科医長。2018年〜同大学放射線医学講座(現・放射線診断・IVR学講座)講師。同大学附属病院放射線科(現・放射線診断・IVR科)医長。

 

 

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