セミナーレポート(キヤノンメディカルシステムズ)

画論26th The Best Image

時代を先駆ける!超音波画像の新たな進化
Aplio iシリーズでみる血管エコーの世界

濵口 浩敏(北播磨総合医療センター 脳神経内科 部長/脳卒中・神経センター 副センター長)

濵口 浩敏(北播磨総合医療センター 脳神経内科 部長/脳卒中・神経センター 副センター長)

評価が全身に及ぶ血管エコーにおいて,キヤノンメディカルシステムズ社製超音波診断装置「Aplio iシリーズ」は,細やかな工夫やプローブの種類が豊富なことが大きな魅力である。当センターでは,マトリックスリニアプローブや4種類の高周波リニアプローブを検査部位などに応じて使い分けており,いずれも明瞭な画像が得られ,診断や治療に大きく貢献している。また,“SMI(Superb Micro-vascular Imaging)”は低流速の血流評価に有用なほか,超高周波プローブと組み合わせることでより詳細な病態の把握が可能となる。当センターでは現在,Aplio iシリーズのほかに4機種の同社製超音波診断装置が稼働しているが,適切な場所に配置してこそ真価を発揮すると考える。

血管エコーは,他の領域と異なり評価が全身に及び,各血管領域によって評価法も異なるため,複数のプローブを持ち替えながら検査を行うのが基本となる。また,計測値による評価だけでなく,動画による評価,血流評価,性状評価を組み合わせる必要がある。これらの特徴に対し,プローブの種類が多いことは,キヤノンメディカルシステムズ社製超音波診断装置「Aplio iシリーズ」の魅力の一つと言える。
本講演では,Aplio iシリーズにみられる細やかな工夫や,最新技術を用いた血管エコー診断について述べ,また,当センターの臨床現場における複数の同社製超音波診断装置の活用法を紹介する。

こんなところにもみられる細やかな工夫

2017年に,「超音波による頸動脈病変の標準的評価法」1)が改定され,内中膜厚(IMT)の計測部位として,IMT-C10とmean IMTの2つが示された。IMT-C10は新しい計測法であり,頸動脈洞より10mm近位側の遠位壁で計測する。また,mean IMTは従来からの計測部位であるが,計測方法が若干変更となり,10mm長の領域で複数点計測した平均値を出す。
Aplio iシリーズでは,IMTが明瞭に描出されるほか,IMT-C10の計測ポイントと計測結果が自動で表示される。さらに,IMT-C10モードは左右どちらにも基準設定が可能なため,患者の頭側が右でも左でも対応することができる(図1)。また,mean IMTの計測法にはトレース法と数点のマニュアル計測があり,現在,ガイドラインではトレース法を基本とする方向性が示されているが,Aplio iシリーズでは,計測法の変化に速やかに対応できる点も魅力である。

図1 Aplio iシリーズによるIMT-C10の計測 IMT-C10モードは頭側が左右どちらでも基準設定が可能

図1 Aplio iシリーズによるIMT-C10の計測
IMT-C10モードは頭側が左右どちらでも基準設定が可能

 

Aplio iシリーズの最新技術を用いた血管エコー診断

Aplio iシリーズには,高画質を実現するさまざまな機能が搭載されているが,なかでもマトリックスリニアプローブ,“SMI(Superb Micro-vascular Imaging)”,超高周波リニアプローブによって,血管エコーは大きな進化を遂げた。当センターでは,従来型プローブに加えて,4種類のリニアプローブを導入しており,症例や検査部位などによって使い分けを行っている。

1.マトリックスリニアプローブの有用性
7MHzのマトリックスリニアプローブ「PLI-705BX」は,従来のプローブよりも性能が向上し,プラーク性状や血栓の可動部位の動きの範囲がより正確に視認可能となった。
症例1は,60歳代,男性。繰り返す左片麻痺で受診。脳梗塞と診断され,精査のため頸動脈エコーを行った。従来のリニアプローブでは,高輝度のプラークが認められるものの動きはないが(図2a),PLI-705BXでは,プラーク内部に血流が流入して渦を巻いているのが観察でき(図2b),脳梗塞の原因は潰瘍病変であると判断できた。

図2 症例1:脳梗塞精査にてPLI-705BXで病変が明瞭になった症例

図2 症例1:脳梗塞精査にてPLI-705BXで病変が明瞭になった症例

 

症例2は,90歳代,女性。右片麻痺,歩行困難で受診。脳梗塞と診断され,精査のため頸動脈エコーを行った。他社製装置では,頸動脈洞にプラークによる狭窄が認められ,一部が可動しているようにみえた。しかし同日,「Aplio i800」のPLI-705BXで撮像したところ,プラークではなく,可動性の血栓であると考えられた。これにより治療が大きく変更され,抗凝固薬の投与を開始したところ血栓が消失し,もやもやエコー像の残存が確認された(図3)。
また,同じ装置やプローブでも,“Precision Imaging”や“ApliPure”などの高画質化技術を適用し,装置条件を変えることで画像のみえ方も変化する。微調整を行うことで,より細かい評価が可能となることも,Aplio iシリーズの魅力である。

図3 症例2:脳梗塞精査にてPLI-705BXにより治療が変更となった症例

図3 症例2:脳梗塞精査にてPLI-705BXにより治療が変更となった症例

 

2.SMIの有用性
SMIは,全身のさまざまな領域に用いられており,造影剤を使用することなくプラーク内新生血管内の微細な血流評価も可能である(図4)。これは,SMIが低流速な血流の評価に有用であることを示していると言える。

図4 SMIによるプラーク内新生血管の描出(脳梗塞の原因精査)

図4 SMIによるプラーク内新生血管の描出(脳梗塞の原因精査)

 

また,SMIでは血管の内腔面と壁との境界を明瞭に描出可能である。断層像やカラードプラはもとより,ADF(Advanced Dynamic Flow)でも描出が不十分であった頸動脈の潰瘍病変が,SMIでは明瞭に描出されている(図5)。

図5 SMIによる頸動脈潰瘍病変の描出能の向上

図5 SMIによる頸動脈潰瘍病変の描出能の向上

 

図6は大腿静脈で,ADF(a)でも逆流の有無は視認できるが,SMI(b)では逆流に加え,不全弁周囲に残存する遅い血流の特定も容易である。

図6 SMIによる不全弁周囲の低流速部位の特定

図6 SMIによる不全弁周囲の低流速部位の特定

 

Aplio iシリーズでみる超高周波リニアプローブの世界

SMIと超高周波リニアプローブを組み合わせることで,さらなる新しい世界がみえてくる。当センターでは現在,24MHzリニアプローブ「PLI-2004BX」,22MHzホッケー型リニアプローブ「PLI-2002BT」,33MHz超・超高周波リニアプローブ「PLI-3003BX」の3種類を使用している。

1.24MHzリニアプローブ
症例3は,巨細胞性動脈炎(血管炎)である。浅側頭動脈に好発するため側頭動脈炎とも呼ばれ,主に血管周囲が低輝度にみえるhypoechoic halo signが典型的な特徴である。従来の12MHzプローブと比較し24MHzリニアプローブでは,hypoechoic halo signに加え血管周囲の情報や内腔面が明瞭となり,周囲の浮腫もクリアかつ低輝度に描出される。また,正常例との比較では,血管内腔のわずかな狭窄や,壁の肥厚が確認できた。さらに,SMIを追加したところ,浅側頭動脈からの栄養血管が明瞭に描出され(図7),24MHzリニアプローブとSMIの組み合わせは,病態の把握に有用であった。

図7 症例3:24MHzリニアプローブとSMIによる巨細胞性動脈炎の描出

図7 症例3:24MHzリニアプローブとSMIによる巨細胞性動脈炎の描出

 

症例4は,レイノー現象の評価である。レイノー現象は,寒冷暴露やストレスにより血管攣縮が誘発され,左右対称性に両手指を侵すが,壊死や壊疽は認めない。エコー所見としては,血流の途絶や側副血行路の発達,cork screw signなどがみられる。本症例を24MHzリニアプローブとSMIを組み合わせて観察すると,患指では血流の途絶や微細な側副血行路が明瞭に描出された(図8)。

図8 症例4:‌24MHzリニアプローブとSMIによるレイノー現象の評価

図8 症例4:‌24MHzリニアプローブとSMIによるレイノー現象の評価

 

2.22MHzホッケー型リニアプローブ
22MHzホッケー型リニアプローブは,指先を走査して血管走行を観察できるのが血管領域において大きな利点であり,画質も24MHzリニアプローブとほぼ同等である。また,22MHzホッケー型リニアプローブは足趾の間に入れて観察することも可能である(図9)。

図9 22MHzホッケー型リニアプローブ(b)による足趾の血流評価

図9 22MHzホッケー型リニアプローブ(b)による足趾の血流評価

 

図10は,プローブによる足背動脈の描出能の違いであるが,従来型リニアプローブ(a)と比較し,24MHzリニアプローブ(b)ではより表在に近い血管まで明瞭に描出され,22MHzホッケー型リニアプローブ(c)でも描出能は同等であり,血流の評価も可能である。

図10 プローブによる足背動脈の描出能の違い

図10 プローブによる足背動脈の描出能の違い

 

22MHzホッケー型リニアプローブで特筆すべきは,例えば,前脛骨動脈や足背動脈においてもIMTを明瞭に描出可能なほか,プローブの形状を生かして圧迫法を用いることも可能なことである(図11)。画質はPLI-705BXと遜色なく,IMTの描出においては,むしろ22MHzホッケー型リニアプローブの方が良好である。

図11 22MHzホッケー型リニアプローブによる前脛骨動脈および足背動脈のIMTの描出

図11 22MHzホッケー型リニアプローブによる前脛骨動脈および足背動脈のIMTの描出

 

3.33MHz超・超高周波リニアプローブ
33MHz超・超高周波リニアプローブは,プローブの接触面を非常に小さくしたことで,微細な構造物の描出能が向上した。
図12aは大伏在静脈の評価であるが,皮下脂肪が厚いにもかかわらず血管が明瞭に描出されており,体表面から2mm程度の位置でも血管の評価が可能である。図12bは爪母の血流評価で,血液の流入が確認できる。

図12 33MHz超・超高周波リニアプローブによる大伏在静脈と爪母の評価

図12 33MHz超・超高周波リニアプローブによる大伏在静脈と爪母の評価

 

33MHz超・超高周波リニアプローブは,指先直下からの血流評価が可能なことから(図13),今後はより微細な血流の評価にも使用可能であると考えられる。

図13 33MHz超・超高周波リニアプローブによる指先直下からの血流評価

図13 33MHz超・超高周波リニアプローブによる指先直下からの血流評価

 

臨床現場における超音波診断装置の使い分け

当センターでは,Aplio iシリーズ(Aplio i800)に加え,「Xario 200」「Aplio a450」「Aplio 500」の据え置き型4機種の同社製超音波診断装置が稼働している。
ハイエンド装置であるAplio i800は2台稼働しており,1台は全領域に対応できるよう超音波検査室に,もう1台は手術室に設置している。また,Aplio 500も超音波検査室に設置している。
2018年に導入したAplio a450は,据え置き型の4機種の中で最も起動が速くバッテリー駆動のため,救急室での使用に適している。コンパクト設計のため,ベッド脇の狭いスペースにも設置可能である。Xario 200の方がさらにコンパクトであるが,救急室における検査の質を追究し,Aplio a450を配備した結果,検査室まで患者を移動させることなく詳細な評価が可能になり,有用性を発揮している。
Xario 200は外来と筋電図室に設置している。外来はスペースの都合上,常時設置は困難だが,小回りの利くXario 200であれば外来への移動も容易である。具体的な使用法として,痙縮に対するボツリヌス注射の際にXario 200を用いれば,深部の後脛骨筋や腓腹筋に薬剤が注入される様子が明瞭に視認できる。また,Xario 200の筋電図室への設置は当センター特有と思われるが,主に神経生理検査に活用している。超音波診断装置があれば,神経伝導検査の際,評価したい神経の位置を確認しながら電気刺激を与えることができ,不随意運動を観察することもできる。当センターでは,筋電図・誘発電位検査装置の隣にXario 200を並べて配置し,筋電図・誘発電位検査装置のモニタに筋電図と超音波画像を並列表示して検査を行っているため,首の動きや視線移動を最小限に抑えることができる(図14)。

図14 Xario 200の神経生理検査への活用

図14 Xario 200の神経生理検査への活用

 

最後に,タブレット端末型のViamo sv7の血管エコーへの応用について提案したい。Viamo sv7は,救急外来や手術室などでも使用可能であり,少しの工夫で据え置き型装置とほぼ同等の画質が得られる点は秀逸である。また通常,特に下肢静脈エコーで下腿の観察を行う際には,超音波のモニタをみるために首をひねる無理な体勢をとる必要がある。しかし,Viamo sv7を患者が腰掛けているベッドの上に置けば,首をひねることなく楽な姿勢で検査することが可能となる(図15)。Viamo sv7は画質が良好であり,血流の動きも観察できるため,使い勝手の良い装置であると言える。

図15 Viamo sv7の下肢静脈エコーへの活用

図15 Viamo sv7の下肢静脈エコーへの活用

 

まとめ

Aplio iシリーズやAplio aシリーズの登場など装置の進歩によって,いままで以上に詳細な病態評価が可能となった。また,超音波診断装置は,適切な場所に配置してこそ,真価を発揮すると考える。今後も,Aplio iシリーズのさらなる進化に期待したい。

●参考文献
1)超音波による頸動脈病変の標準的評価法2017.
https://www.jsum.or.jp/committee/diagnostic/pdf/jsum0515_guideline.pdf

 

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開催:2018年12月16日(日) 会場:東京国際フォーラム
主催:キヤノンメディカルシステムズ株式会社
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