東芝CT事業の展開とこれから 
今井喜与志(東芝メディカルシステムズ株式会社CT営業部 部長)

2013-12-25


ヘリカルCTの原点「TCT-900S」

東芝のCTの歴史は,1978年の国産初となる全身用X線CTに始まります。海外メーカーが先行していたCT開発に,国産メーカーの先陣を切って参入しました。なかでもエポックメーキングな製品となったのが,1985年に市場投入された,1回転 1秒の連続回転撮影を可能にしたスリップリング方式の「TCT-900S」です。当時,“モンスターマシン”とも呼ばれたTCT-900Sはヘリカルスキャンの原点であり,東芝のCTが海外メーカーの後追いではなく,新しい価値を創造する独創的な製品であるという証明ともなりました。その遺伝子は,現在の開発陣に脈々と受け継がれています。TCT-900Sは,2012年に未来技術遺産(独立行政法人国立科学博物館)に登録されています。
東芝は,このTCT-900Sを用いて,1985年に世界に先駆けてヘリカルスキャンを開発,翌年には日・米・欧で特許を取得しました。そしてヘリカルスキャンは,広範囲を高速に撮影する根幹技術として確立され,全世界でCT撮影のスタンダードとなっています。1998年にはヘリカル技術を搭載したマルチスライスCT「Aquilion」が誕生。Aquilionは,わずか6年間で4列から64列へと16倍の多列化を果たし,ヘリカルCTは画像診断装置として医療に欠かせない存在となっています。

CT事業の展開

東芝は,2004年に面検出器を搭載した「Aquilion ONE」を発売しましたが,すべてのCTを320列面検出器に置き換えようとしているわけではありません。東芝のCT事業は,Aquilion ONEによって得られた技術革新をヘリカルCTに投入する相乗効果で,近年大きく躍進しました。Aquilion ONEの80列,160列ヘリカルの経験をもとに,最もトータルバランスの良い次世代のヘリカルCTとして開発されたのが,「Aquilion PRIME」です。
世界初の64列ヘリカルCTであるAquilionは,64列だけでも日本で1000台,世界で4000台を出荷し,日本だけでなく全世界でのスタンダードCTとなっています。しかし,登場から10年を迎え,64列を超える次世代ヘリカルCTを,という臨床現場からの要望に応えて開発したのがAquilion PRIMEです。
2009年に発売された初代Aquilion PRIMEは,ソフトウェアだけでなく,ハードウェアも含めて多くのパーツをAquilion ONEと共有して設計されています。2013年4月に,Aquilion PRIMEの新しいラインナップとして追加された“Focus Edition”と“Beyond Edition”は,技術革新によりコンパクトでさまざまな医療施設に対応した装置となっています。新Aquilion PRIMEにおけるAquilion ONEのイノベーションを移植して実現した,驚異的なトランザクションが生み出すワークフローと高画質は,ベースとなる堅牢なアーキテクチャと相まって,まさに次世代のヘリカルCTと言えます。

ADCTとヘリカルCTのフィードバックループよる相乗効果

ADCTとヘリカルCTのフィードバックループよる相乗効果

 

拡大するヘルスケア事業と東芝の使命

株式会社東芝は2013年8月,経営方針の新しい3本柱の1つにヘルスケア事業を位置づけ,東芝の総力を挙げて拡大させると宣言しました。その最初の成果として,東芝のREGZA開発部隊とコラボレーションした世界初の医療用裸眼3Dディスプレイを2013年9月に発売しました。現在は,Aquilion ONEのオプションとなっていますが,Aquilion PRIMEにも対応すべく開発を進めています。
もう一つのご報告は,被ばく低減,低線量撮影技術である“AIDR 3D”の普及活動についてです。東芝の現行販売機種への標準搭載は2012年7月に,AIDR 3Dが搭載可能な既存のCT装置へのインストールは2013年2月にすべて完了し,現在AIDR 3Dが搭載された国内のCTは1300台を超えています。弊社社長・綱川の「AIDR 3Dは金儲けの道具にしない,すべての機種に標準装備する」という決断のもと,東芝は「日本におけるCTの医療被ばくを一気に半減させたい!」という強い意志を掲げ,CTの医療被ばく低減に邁進しています。東芝の使命感を理解していただき,昔から変わらぬ情熱で支えてくださっている日本のユーザーの皆さまに改めて深く感謝申し上げます。

AIDR 3Dをすべての機種に標準搭載

AIDR 3Dをすべての機種に標準搭載


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