Aquilion PRIMEの性能評価 舩山和光(公益社団法人 北海道勤労者医療協会 勤医協中央病院 第2放射線部)
<Technology of Aquilion PRIME>

2013-12-25


舩山和光

勤医協中央病院では,2013年5月の新築移転を機に,他社製シングルスライスCTを「Aquilion PRIME/Beyond Edition」に,Aquilion64を「Aquilion/CXL Edition」にそれぞれ更新した。2台のCT装置においては,冠動脈CTにはPRIME,CT透視や治療計画CTにはCXLを使用しているが,それ以外の使い分けは行っておらず,現状では全体の65%の検査をAquilion PRIME/Beyond Editionで実施している。検査件数は,移転前の同月比で115%(2013年7月実績)と増加している。
本講演では,Aquilion PRIME/Beyond Editionの特長である新設計ガントリ,ルーチンでの高速撮影,新アプリケーション“Dynamic Helical Scan”について,当院で行った評価を報告する。

新設計ガントリ

Aquilion PRIME/Beyond Editionは従来機と比べ,780mmの開口径はそのままに,体積を34%,重量を28%削減した新設計となっている(図1)。
当院では新築移転にあたり,従来機の導入を想定して設計していたが,操作窓のすぐ前にガントリが置かれるため,患者の様子を観察しにくいことが懸念されていた。しかし,移転時にAquilion PRIME/Beyond Editionに更新できたことで,装置を操作窓に対して斜めに設置して,寝台までの視野を確保することが可能となった(図2)。ガントリがコンパクトになったことで,施設側の多様な状況にも対応できると考えられる。

図1 Aquilion PRIME/Beyond Editionのガントリサイズ(東芝メディカルシステムズ社提供)

図1 Aquilion PRIME/Beyond Editionのガントリサイズ
(東芝メディカルシステムズ社提供)

 

図2 斜めに設置して視野確保を実現

図2 斜めに設置して視野確保を実現

 

ルーチンでの高速撮影

Aquilion PRIME/Beyond Editionにおける80列検出器の新しい専用Data Acquisition System(DAS)は,データのサンプリング精度が64列CTの約1.5倍になったため,0.35 s/rotで900view,秒間2572viewを実現している。64列CTの0.5s/rot,900viewと比較すると,常時0.35s/rotで撮影しても十分な高精細画像を取得できる。また,0.5s/rotでは1200viewとなり,さらなる高画質が可能となる。当院のように2台体制の場合,どのような設定にするか,運用面で検討の余地があると考える。

■MTFの評価

ガントリのセンターとオフセンター(中心から約150mm)のMTFを,0.5s/rotと0.35s/rotにて,ヘリカルピッチ(HP)51(PF0.637),65(PF0.813),111(PF1.388)の各ピッチで測定した。撮影条件は,120kV,250mA,D-FOV 50cm,FC13で,ワイヤ法にて測定した。
センターでは,どの条件でも同様の結果になったのに対し,オフセンターでは,0.35s/rotで低下する傾向が見られた(図3)。回転速度ごとに見ると,0.5s/rot,0.35s/rotともに,PF1(HP111)を超えるとMTFの低下が見られた(図4)。
また,0.35s/rotのAquilion PRIME/Beyond Edition(80列)と0.5s/rotのAquilion/CXL Edition(64列)でも比較した。PFがほぼ同等になるHP(Aquilion PRIME/Beyond Edition:HP65,CXL Edition:HP53)で検討したところ,オフセンターではAquilion PRIME/Beyond Editionの方がわずかに低下したが,ほぼ同等であった(図5)。

図3 MTF測定結果:オフセンター(+150mm Offset)

図3 MTF測定結果:オフセンター(+150mm Offset)

 

図4 MTF測定結果:オフセンター(+150mm Offset 0.5s/rot vs. 0.35s/rot)

図4 MTF測定結果:オフセンター(+150mm Offset 0.5s/rot vs. 0.35s/rot)

 

図5 Aquilion PRIME/Beyond Edition(0.35s/rot)とAquilion/CXL Edition(0.5s/rot)のMTFの比較:オフセンター(+150mm Offset)

図5 Aquilion PRIME/Beyond Edition(0.35s/rot)とAquilion/CXL Edition(0.5s/rot)のMTFの比較:オフセンター(+150mm Offset)

 

■HPの違いによるノイズ,CNRの評価

HPの違いによるノイズ(SD)とCNRについて評価した。CTP 486 Image uniformity moduleを用い,SDを測定してCNRを算出した。撮影条件は,120kV,150mAs,FC13,スライス厚5mm(0.5×80)で,HP51(PF0.637),64(PF0.813),111(PF1.388)で,0.5s/rotと0.35s/rotにてそれぞれ測定している。その結果,X線管回転時間が短いほど,また,HPが大きいほどノイズが増加し(図6),CNRが低下した(図7)。ハイピッチでの撮影の際には,AIDR 3Dを組み合わせ,ノイズ低下を図る必要があると考えられる。

図6 HPの違いによるSDの変化

図6 HPの違いによるSDの変化

 

図7 HPの違いによるCNRの変化

図7 HPの違いによるCNRの変化

 

Dynamic Helical Scan

Aquilion PRIME/Beyond Editionでは高速往復撮影により,最大500mmの広範囲の時間軸データを取得できるDynamic Helical Scanが新しく搭載された。これは,一定範囲内をヘリカルスキャンモードで往復スキャンし,折り返しの両端で寝台移動を停止して約1回転(+α)撮影するもので,Helicalスキャン(撮影範囲の中心)とVolumeスキャン(撮影範囲の端)を混合した,ハイブリッド的な撮影方法と言える。

■撮影位置によるSDの変化

Dynamic Helical Scanでの撮影位置によるSDの変化を検討した。全長870mm,内径200mm,重量38.8kg(水充填時)の大型の筒状ファントムを用いて,211mmの範囲を連続モード(2往復)にて撮影し,1mm間隔で得られた画像のSDをすべて計測して,同じ撮影方向で平均化した。その結果,ガントリに入るIN方向とガントリから出るOUT方向では,どちらも同様の傾向を示した。なお,スキャン方式が変わることから,線量一定で撮影すると両端と中央ではSDが異なってしまうが,CT-AEC(VolumeEC)を使用することで,全体のSDをおおむね平均化することが可能となる(図8)。

図8 AEC使用における撮影位置によるSDの変化

図8 AEC使用における撮影位置によるSDの変化

 

■体軸方向の分解能

Helicalスキャン部分とVolumeスキャン部分の分解能について,櫛ファントムを用いて検討した。櫛ファントムのサイズは0.30~0.55mmまで0.05mm間隔で変化させ,ガントリのほぼ中央で撮影した。若干の見た目の違いがあるものの,Helicalスキャン部分とVolumeスキャン部分の分解能はほぼ同等で,ともに0.40mmか0.45mmあたりが体軸方向分解能の限界であった(図9)。

図9 Dynamic Helical Scanにおける体軸方向分解能

図9 Dynamic Helical Scanにおける体軸方向分解能

 

■撮影位置によるCNRの変化

Helicalスキャン部分とVolumeスキャン部分のCNRを測定したところ,Helicalスキャン部分の0.94に対し,Volumeスキャン部分は1.19となった(図10)。これは,撮影範囲の両端とそれ以外では,スキャン方式が異なるためと考えられる。

図10 Dynamic Helical ScanにおけるCNR

図10 Dynamic Helical ScanにおけるCNR

 

まとめ

今回,一部ではあるが,Aquilion PRIME/Beyond Editionの性能を評価した。これを機に,今後さらに,Aquilion PRIME/Beyond Editionの可能性を引き出す検討を行っていきたい。


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