検診領域への応用 長澤宏文(国立がん研究センター中央病院 放射線診断科/がん予防・検診研究センター)
<Technology of Aquilion PRIME>

2013-12-25


長澤宏文

国立がん研究センター中央病院では,Aquilion PRIME 3台,Aquilion/CXL Edition(64列) 1台の計4台を使用し,1日に160~180人の検査を行っており,うち約80%が造影CTとなっている。また,がん予防・検診研究センターでは,Aquilion/CXL Editionを用いて1日に肺がんCT検診を約15件,肺フォローアップ外来で約10件の撮影を行っている。当施設では今後,肺がんCT検診にAquilion PRIMEおよびAIDR 3Dを使用することで,さらなる低線量化を目指すこととし,そのための検討を行った。
本講演では,肺がんCT検診における,AIDR 3DとFiltered Back Projection(FBP)の画像による物理データの比較とパラメータの検討,そして,LSCTファントム画像での比較および撮影条件の決定について報告する。

物理データの比較,パラメータの検討

CTの基本的な画質のModulation Transfer Function(MTF)とNoise Power Spectrum(NPS)を比較すると,従来のワイヤー法を用いたMTFでは,FBPとAIDR 3D(WEAK,MILD,STANDARD,STRONGの4種類)は,ほぼ変わらないMTFになる(図1a)。また,NPSでは,AIDR 3Dの強度が上がるにつれ,主に高周波成分のノイズが大きく低減されていることがわかる(図1b)。
高周波のみの画像と低周波のみの画像を“Image J”を用いて作成した(図2)。高周波成分には,ノイズやストリークアーチファクトが含まれているが,物体辺縁も描出されていることがわかる。AIDR 3Dを用いることで,スムージングされ辺縁がボケてしまう可能性があるため,実際に使う場合は,高周波強調関数などを用いて,画質のバランスをとることが必要である。
水ファントムを用いたSDの変化を図3に示す。肺野関数の比較では,高線量領域では線量の変化によってSDは大きく上下しないが,検診で使う低線量領域になるとノイズ増加が多くなる。したがって,低線量領域でノイズ変化が少ない縦隔関数を用いて検診を行っている。

図1 基本的な画像(MTF,NPS)FBPとAIDR 3Dの比較

図1 基本的な画像(MTF,NPS)
FBPとAIDR 3Dの比較

 

図2 高周波画像と低周波画像(Image Jで作成)

図2 高周波画像と低周波画像
(Image Jで作成)

 

図3 基本的な画質(SD)FBPとAIDR 3Dの比較

図3 基本的な画質(SD)FBPとAIDR 3Dの比較

 

LSCTファントム画像での比較,撮影条件決定

Aquilion PRIMEによる肺がんCT検診における被ばく低減を目的とする撮影条件の検討項目として,管電流は35,30,20,10mA,NPSとSDデータから再構成関数は従来のFC3にFC4,FC5を加え,さらにAIDR 3Dは,WEAK,MILD,STANDARD,STRONGの4種類にて検討を行った。また,心臓周辺のモーションアーチファクト低減を考慮して,管球回転速度やピッチファクタの高速化も含めて検討した。すべての評価画像は,撮影スライス厚1mm×40列,画像スライス厚5mmとしている。
まず初めに,Aquilion/CXL EditionとAquilion PRIMEの画像を合わせる必要がある。Aquilion PRIMEでは線量が従来のAquilion/CXL Editionにおける30mAから35mAへと増加しているが,CTDIvolでは従来同様1.9mGyで変化はなかった。しかし,LSCTファントム+30cmチェンバーで実測したところ,Aquilion/CXL Editionでの線量を1とすると,Aquilion PRIMEは0.84と低値となっていた。これは,アクティブコリメータやボウタイフィルタなどの違いから,実測値に差が出たものと考えられる。本検討では,従来条件を超えずに,かつ画質に相違が出ない条件をAquilion PRIMEにて設定した(120kV,35mA,0.5s/rot,PF0.825,FC3,FBP)。この設定によって得られた画像をAquilion PRIMEの元画像(FBP)とし,AIDR 3Dを使用した画質と比較検討した。

■‌肺がんCT検診で見つけなければならない 病変の描出

肺がんCT検診では『肺癌検診用MDCT撮影マニュアル』(日本CT検診学会)により,“充実性を呈する癌では5mm以上の病変,すりガラス状を呈する癌では10mm以上の病変を見つけなければならない”とされている。このマニュアルに準じターゲットとする腫瘤サイズの決定を行い,LSCTファントムの模擬腫瘤を使用し検討した。LSCTファントムは,肺尖部と気管分岐部,肺底部において模擬腫瘤のサイズが異なり,また,右肺と左肺でΔCT値の異なる模擬腫瘤が入っている。
肺がんの中で最も視認性の悪い部位が,ストリークアーチファクトや線量不足等になりやすい肺尖部である。これらからLSCTファントムの左肺ではCT値Δ270HU(4mm),右肺ではΔ100HU(8mm)の2種類の模擬腫瘤をターゲットに設定し視覚評価を行った。評価者は,当施設の肺がんCT検診認定技師3名,
X線CT認定技師3名,肺がんCT検診認定医師1名である。
視覚評価の方法は,境界明瞭にターゲットが認識でき,構造物の見え方や質感がFBPでの条件と同様,あるいは類似した画質を維持し,可能な限り線量を低減した「画質優先」と,境界不明瞭だがターゲットが認識でき,構造物がある程度明瞭に見えて最小まで線量を低減した「検出能優先」の2種類で行った。Δ270HUではCTDIvol 0.5mGyでも4mmが検出可能であるため,Δ100HU 8mmで画像の評価を行った。
AIDR 3Dを使用すると,従来検診条件の画像に比べ,AIDR 3DがWEAK,MILD,STANDARD,STRONGと強くなるに従って,物質辺縁のボケも強くなることがわかる(図4)。しかし,低線量領域で目立つストリークアーチファクトにおいては,AIDR 3Dで最も処理の弱いWEAKを用いるだけでも効果的に改善した画質が得られることがわかった。また,CTDIvol 0.6mGyのように極端に線量を落としたところでは,ストリークアーチファクトは改善しきれず残っている。

図4 AIDR 3D使用による画質変化

図4 AIDR 3D使用による画質変化

 

■撮影条件の決定

画質優先の検討結果を図5に示す。従来検診画像に比べて管球回転速度が0.35秒と速くなり,AIDR 3DのWEAK使用によりストリークアーチファクトとノイズが低減されている。関数は従来同様,FC3を使用した。今回検討した8mmより小さい6mmの模擬腫瘤も観察できている。
図6は,検出能優先での検討結果である。管電流を20mAまで低減し,管球回転速度も0.35秒と速くなったが,ノイズは増加するため,AIDR 3DのMILDを用いている。AIDR 3Dの強度が強くなるに伴い,再構成関数をFC3からFC4に調整した。

図5 画質優先での検討結果 従来検診画像より管球回転速度UP。AIDR 3D WEAK使用によりストリークアーチファクトとノイズが低減している。

図5 画質優先での検討結果
従来検診画像より管球回転速度UP。AIDR 3D WEAK使用によりストリークアーチファクトとノイズが低減している。

 

図6 検出能優先での検討結果 Δ270HU 4mm および Δ100HU 8mm検出は可能だが,信号の辺縁はFBPより劣る。

図6 検出能優先での検討結果
Δ270HU 4mm および Δ100HU 8mm検出は可能だが,信号の辺縁はFBPより劣る。

 

撮影条件決定時の注意点

現状の空間分解能などの物理評価と視覚評価には相違があり,物理データのみでの撮影条件決定は危険である。物理データは基礎データとしてパラメータなどの調整に利用し,最終的な画像決定は視覚評価で行うことが望ましい。
次に,ターゲットのoff center画像(体軸方向)を確認することが重要である。CT画像は,常に腫瘍の中心(体軸方向)を再構成できるとは限らず,腫瘍の端を再構成してパーシャルボリュームの影響を受けて画像がぼけてしまい,腫瘍が検出しにくくなっていることもありうる。よって,撮影条件決定の際に,ターゲットとなる腫瘍が最もずれた位置での画像から検出可能であるかを確認する必要がある。

肺がんCT検診におけるAquilion PRIMEの撮影条件

図7は,今回検討により決定した撮影条件である。従来検診条件で注目すべき点は,実効線量である。実効線量値は,それぞれのDLP値とICRPの胸部実効線量変換係数0.014を乗じた値になる。Aquilion/CXL Editionでは0.87mSvであったが,Aquilion PRIMEでは画質優先の実効線量が0.62mSvとなり,従来条件に比べ,線量を約3割低減,検出能優先の実効線量では0.35mSvとなり,約6割低減できる可能性がある。

図7 決定したAquilion PRIMEの撮影条件

図7 決定したAquilion PRIMEの撮影条件

 

まとめ

Aquilion PRIMEのAIDR 3Dを用いた画像により,FBP画像より低線量な撮影条件の検討を行った。今回の撮影条件を決定した手順は,(1) AIDR 3Dの物理特性を理解し,撮影条件の変更点(画質改善点)を考慮する,(2) 検出すべき病変をイメージしてファントム撮影を行う,(3) 画像の最終決定は多人数で視覚評価を行う,(4) 最も見えにくい画像も想定し,評価する,ことである。


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