CTの被ばく管理と線量低減 
赤羽 正章(国際医療福祉大学医学部放射線医学)
Session 1

2021-12-24


赤羽 正章(国際医療福祉大学医学部放射線医学)

本講演では,CTの開発と進化の歴史を振り返った上で,被ばく管理として重要な,(1) 情報量あたりの被ばく線量の抑制,(2) バラツキの抑制,(3) 線量管理プロセスの推進について述べる。

■CTの性能向上と被ばく低減・管理の在り方の変遷

キヤノンメディカルシステムズは1975年に「EMIスキャナ」(英EMI社製)を日本で発売し,以降,CTの国産化に取り組み,数々のCTを開発してきた。1985年にヘリカルスキャンを実現した「TCT-900S」が発売され,高速化と分解能向上が進んだが,当時の画像は常に線量不足でノイズが多かった。そのためCTメーカーは,大容量の管球を開発し,いかに線量を上げて画質を向上させるかを競い合っており,線量を増やすことが診断能の向上という患者の利益につながる時代であった。
2000年代に入ってマルチスライスCTが登場し,2007年にArea Detector CT「Aquilion ONE」が発売される頃には,どのような患者であっても線量不足になることはなく,むしろ十分すぎるほどの高画質が得られるようになった。その一方で,医療被ばくが問題になり始め,同社も被ばく低減にCT開発の重点を置くようになる。2000年以前とは逆に,線量を下げることが患者の利益になる時代となった。
そして現在,必要最小限の線量での検査や損益バランスが重視される時代となった。そのため医療被ばくについても,単純に被ばくを低減するのではなく,より複雑で専門性の高い繊細な線量管理が求められるようになっている。

■被ばく管理の対応

CTの被ばく管理としては大きく分けて,(1) 情報量あたりの被ばく線量の抑制,(2) バラツキの抑制,(3) 線量管理プロセスの推進の3つの対応がある。

1.情報量あたりの被ばく線量の抑制
情報量あたりの被ばく線量を減らす方法としては,装置の線量効率の向上,画像再構成法やノイズ低減アプリケーションの進化,アーチファクトの低減,フォトンカウンティングなどが挙げられる。

1)装置の線量効率の向上
同社は,第4世代ADCT(2016年)に新世代プラットフォームガントリのX線光学系技術“PUREViSION Optics”を搭載し,装置の線量効率が大きく向上した。PUREViSION Opticsは,X線エネルギーの最適化やジオメトリの変更など,さまざまな技術を複合したものであるが,私が最も重要と考えているのが検出器“PUREViSION Detector”による線量効率の向上である。光出力の40%向上,電気ノイズの28%低減を実現し,同じ被ばく線量でもより高画質な画像を得られるようになった。患者にはデメリットのない進歩であり,このような技術革新を実現したメーカーの努力に謝意を表したい。

2)画像再構成法,画像ノイズ低減
画像再構成法は,逐次近似応用再構成法(Adaptive Iterative Dose Reduction 3D:AIDR 3D)や逐次近似再構成法(Forward projected model-based Iterative Reconstruction SoluTion:FIRST)にとどまらず,近年はDeep Learning技術を用いた“Advanced intelligent Clear-IQ Engine(AiCE)”が登場し,同じ線量でも大幅にノイズを低減した画像を得られるようになった(図1)。われわれとしても,こうした技術を積極的に臨床に導入していきたいと考えている。

図1 AiCEの特徴 (画像提供:キヤノンメディカルシステムズ株式会社)

図1 AiCEの特徴
(画像提供:キヤノンメディカルシステムズ株式会社)

 

3)アーチファクト低減
画像は,ノイズが同等でも動きや金属のアーチファクトを低減することで,情報量を飛躍的に高めることができる。同社の金属アーチファクト低減技術“Single Energy Metal Artifact Reduction(SEMAR)”は,rawデータレベルやイメージレベルでのさまざまな工夫により金属アーチファクトの低減が可能で,情報量あたりの被ばく線量低減のために重要な技術である。今後は動きのアーチファクトへの対応にも期待したい。

4)フォトンカウンティングへの期待
一般的にフォトンカウンティングは,同じ被ばく線量でも複数のコントラスト画像の取得や物質弁別解析,また空間分解能向上の期待ができるとされており,情報量あたりの被ばく線量を低減することが期待されている。

2.バラツキの抑制
線量分布の中央値が同じでも,バラツキが大きいと過剰線量や過少線量のリスクが高まってしまう。このため,患者の体格や放射線感受性の違いに応じた対応や,施設間・装置間・スタッフ間・検査間などのバラツキ抑制は,適切な被ばく管理に不可欠である。
体格への対応としては,部位や患者の体格によって線量を調整する自動露出機構(AEC)がある。同社ではこれらを早期から導入しており,体格への対応はかなり進んでいる。また,線量管理の観点では,患者の被ばく線量の指標として,局所線量の指標であるCTDIvolを体格で補正したSSDE1)が近年用いられるようになっている。SSDEの活用に当たっては,実効線量への換算が難しいのが課題であるが,DLPから実効線量を求める換算係数のようなパスがSSDEにも用意されることが期待される。また,線量管理アプリケーションにおいてもSSDEが積極的に採用されており,この傾向が継続することが望まれる。
一方,放射線感受性の個人差に対する対応はまだ不十分である。必要最小限の線量での検査が注目されがちだが,本当に必要なのは損益バランスを最高にすることであり,本来は個人ごとに適切な線量,画質は変わるものである。小児用プロトコルの設定や若年者に対する低線量CTの活用,女性の胸部CTへの対応などは臨床応用されつつあるが,患者の利益を最大限にするために,ほかの要因に対しても対応が進むべきだと考える。毛細血管拡張性運動失調症やLi-Fraumeniなどの遺伝的要因により特に放射線感受性の高い患者に対しては特別な対応ができるようになっているが,今後は正常範囲内での個人差を扱えるようになることを期待している。現在,CT被ばくによるDNA損傷や染色体異常についての研究が進められており,将来的には,例えばDNA損傷が起きやすいかどうかで対応を変えるようなことが出てくるかもしれない。
ただし,現場では今でさえ小児や若年者へのプロトコル適用の対応で手一杯なため,正常範囲も含めた個別化を進めていくには電子カルテと連携する仕組みが必要だろう。電子カルテからの情報を基に線量の荷重係数を指示するような機能の実装をめざして,装置メーカーと電子カルテベンダーの連携が望まれる。
また,施設間,装置間,スタッフ間,検査間におけるバラツキの抑制も重要である。施設間に関しては,2020年に改訂された診断参考レベル(DRLs)の運用が肝要だ。装置間,スタッフ間,検査間のバラツキの抑制については,線量管理システムに期待している。線量管理システムはDRLs運用にも有用であるが,施設内で経験年数に差があるスタッフ間のバラツキを是正することなどにも役立てられるだろう。

3.線量管理プロセスの推進
線量管理に必要なプロセスを推進していくことも重要である。特にDRLs設定のための全国的な線量調査への協力は大切で,DRLs運用の労力を下げて普及を図るとともに,調査への回答率を上げるような工夫が求められる。また,線量低減と診断能担保を拮抗させることが損益バランスを取ることにつながるため,院内で医療放射線管理委員会を設置することも重要である。
さらに,DRLsの管理だけでは対応できないはずれ値の検出や対応,プロトコル管理に関しては,装置やアプリケーションのメーカーに今後の役割を期待したい。
同社の線量管理システムでは,はずれ値を検出して検査内容を確認し,インシデントの有無を検討できるようになっている(図2)。また,はずれ値を除外して線量調査の結果をまとめることが可能で,これらの機能により線量管理を省力化できる。さらに,医用画像処理ワークステーション「Vitrea」の“CTプロトコルマネジメント”機能(図3)では,複数台のCTのプロトコルをまとめて管理することができ,管理者の負担を軽減し,円滑な線量管理を支援する。このようなシステムが今後も進歩していくことを期待している。

図2 線量管理システムによるCTプロトコルの分析 (画像提供:キヤノンメディカルシステムズ株式会社)

図2 線量管理システムによるCTプロトコルの分析
(画像提供:キヤノンメディカルシステムズ株式会社)

 

図3 VitreaのCTプロトコルマネジメント (画像提供:キヤノンメディカルシステムズ株式会社)

図3 VitreaのCTプロトコルマネジメント
(画像提供:キヤノンメディカルシステムズ株式会社)

 

* AiCEは画像再構成処理の設計段階でAI技術を用いており,本システム自体に自己学習機能は有しておりません。
* 記事内容はご経験や知見による,ご本人のご意見や感想が含まれる場合があります。

●参考文献
1)Christner, J.A., et al.:Size-specific dose estimates for adult patients at CT of the torso. Radiology, 265(3), 841-847, 2012.

一般的名称:全身用X線CT診断装置
販売名:CTスキャナ Aquilion ONE TSX-306A
認証番号:301ADBZX00028000

一般的名称:汎用画像診断装置ワークステーション
販売名:医用画像処理ワークステーション Vitrea VWS-001SA
認証番号:224ACBZX00045000

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