50年の時を超えて,CT新時代へ 〜今後の10年を見据えたCTの進化と可能性
瀧口 登志夫(キヤノンメディカルシステムズ株式会社 代表取締役社長)
2026-1-23
画像の高精細化とさらなる被ばく低減に向けて
X線CT装置が日本国内で臨床稼働を開始してから,今年でちょうど50年を迎えました(図1)。1975年8月26日に,われわれの先達が導入を進めた「EMI Scanner」によって,東京女子医科大学脳神経センターにて国内初のCT検査が行われました。このような記念すべき年に,「Global Standard CT Symposium 2025」においてCTの新しい知見を皆様と共有できることを大変喜ばしく思います。
本シンポジウムは,320列Area Detector CT(ADCT)「Aquilion ONE」をグローバルスタンダードCTとして世界に普及させ,新たな臨床的知見を共有するとともに,国内で推進している「被ばく半減プロジェクト」の進捗と成果を報告することを主目的としています。14回目となる今回は,「50年の時を超えて,CT新時代へ」をテーマに,今後の10年を見据え,画像の高精細化とさらなる被ばく低減に向けた取り組みの現状をご報告いただきます。
図1 CT国内導入〜50年の歩み
Deep Learning画像再構成技術のさらなる進化
当社では,2024年より,販売するすべてのCTラインアップにDeep Learning画像再構成技術「Advanced intelligent Clear-IQ Engine(AiCE)」を標準搭載し,2025年7月現在で2050台と急速に普及しつつあります。AiCEは,既存技術で課題となっていた被ばく低減と画質のバランスにおいて,「Adaptive Iterative Dose Reduction 3D(AIDR 3D)」と比較しても新たな効果を発揮していることが多くの論文で報告されています。われわれは,この次世代の被ばく低減技術であるAiCE搭載装置の普及を通じて,医療被ばくの低減に努めてまいります。
また,画像の高精細化とさらなる被ばく低減の取り組みとして,超解像Deep Learning画像再構成技術「Precise IQ Engine(PIQE)」の搭載を進めています。PIQEは,高精細CT「Aquilion Precision」によってもたらされた高精細CT画像を,320列ADCT「Aquilion ONE」で実現する技術です。今後,新たなグローバルスタンダードCTとして普及を推進していきます。
フォトンカウンティング検出器搭載型X線CTの早期実用化をめざす
2024年11月,世界で4台目となる当社のフォトンカウンティング検出器搭載型X線CT装置(PCD-CT)を米国ペンシルベニア大学病院に納入し,共同研究を開始しました。当社はこの共同研究で得られた意見や評価を開発にフィードバックし,PCD-CTの研究開発を加速するとともに,これまでに培ってきた数々の技術を結集した当社ならではの次世代PCD-CTの早期実用化を図り,画像診断技術のさらなる発展に寄与してまいります。
全身用マルチポジションCT*でCTの新時代を切り拓く
慶應義塾大学医学部放射線科学教室との産学連携により,全身用マルチポジションCT「Aquilion Rise」を開発し,今年4月より販売を開始しました。Aquilion Riseは,臥位,立位,座位での検査を可能とした先進的なCT装置です(図2)。臥位撮影ではわからなかった病変を早期に発見できる可能性があり,患者さんの健康寿命の延伸につながることが期待されます。これまでに積み重ねてきた知見や臨床ニーズを踏まえ,われわれは今後も,CTの新時代を切り拓いていくために邁進していきます。
図2 全身用マルチポジションCT「Aquilion Rise」
*臥位,立位,座位の3体位が撮影可能なCT装置の総称
**本記事中のAI技術については設計の段階で用いたものであり,本システムが自己学習することはありません。
