国内CT導入50年 CTがもたらす胸部画像診断の進展 
森谷 浩史(大原綜合病院画像診断センター)

2026-1-23


森谷 浩史(大原綜合病院画像診断センター)

1975年に国内でCT装置が導入されてから50年が経過した。その間,連続撮影や高速撮影,高精細化などの技術的進化に伴い,胸部画像診断では従来の診断法が順次,CT撮影に置き換えられてきた。本講演では,CTの技術的進化が肺がん診療に与えた影響や先端的技術の臨床応用への展望について報告する。

■胸部画像診断へのCTの導入(図1)

演者は1981年に福島県立医科大学放射線科に入局後,断層撮影法の改良や早期肺がん診断に取り組んできた。1980年代の胸部画像診断では,胸部X線写真,断層撮影,気管支造影,血管造影が行われていたが,1985年に福島県立医科大学が共同研究した世界初のスリップリング連続回転CT「TCT-900S」が東芝(現・キヤノンメディカルシステムズ)から発売され,胸部撮影への応用を開始した。当時,胸部X線写真で無所見にもかかわらず喀痰細胞診でがん細胞が検出された症例に対しては気管支鏡検査を行っていたが,TCT-900S導入後は2mmスライス厚画像でのスクリーニングに移行した。
その後,ヘリカルCTや多列化などの技術開発が進み,広範囲の等方ボクセル情報の取得が可能になり,描出気管支数が増加した。さらに,等方ボクセルデータから作成した仮想気管支鏡画像のナビゲーションへの応用についても有用性が認められ,現在では『肺癌診療ガイドライン』でも「行うよう推奨する」とされている。

図1 CTの進化と肺がん画像診断への応用

図1 CTの進化と肺がん画像診断への応用

 

■320列CT「Aquilion ONE」と高精細CT「Aquilion Precision」(図1)

2007年に登場した320列面検出器CT(ADCT)「Aquilion ONE」は0.5mm×320列(総幅160mm)の検出器を搭載,連続撮影で血行・呼吸動態などの四次元情報取得が可能になった。肺動静脈瘻
症例では約30mLの造影剤で明瞭かつ精緻な画像が得られ,血管造影からの置換が進んだ。胸膜癒着診断にも有用で,現在は全肺の動態撮影や全身検索,気管支樹マッピングなどの包括的検査を肺がん術前診断として行っている。また,呼吸動態撮影ですりガラス陰影の濃度や大きさが観察可能なことから,質的診断への応用も検討している。
続いて登場した高精細CT「Aquilion Precision」は,従来CTの1/4の検出器画素サイズを実現,空間分解能が0.15mmに向上した。マトリクスサイズも従来CTの512×512マトリクスに対し,1024×1024マトリクスの微細な画像の取得が可能になった(図2)。細気管支炎症例での小葉中心性斑状影の内部構造や,造影CT画像上の血管側枝や微細な気管支なども明瞭に確認できる(図3)。また,死亡時画像診断(Ai-CT)で線量を制限せず1秒/回転で撮影したところ,内径0.4mmの細気管支まで描出可能であった。

図2 従来CTと高精細CTの比較

図2 従来CTと高精細CTの比較

 

図3 高精細CTによる造影画像

図3 高精細CTによる造影画像

 

■被ばく・ノイズ低減技術の進化

CT装置の被ばくやノイズ低減技術も進化を続けている。逐次近似応用再構成法「Adaptive Iterative Dose Reduction 3D(AIDR 3D)」やDeep Learningを用いた「Advanced intelligent Clear-IQ Engine(AiCE)」などのノイズ低減技術により,胸部単純X線写真と同程度の低線量で肺野の微細構造まで描出可能となった(図4)。

図4 ノイズ低減技術の進歩

図4 ノイズ低減技術の進歩

 

■最新フラッグシップCT「Aquilion ONE/INSIGHT Edition」

320列ADCT「Aquilion ONE / INSIGHT Edition」は,高精細技術と四次元動態技術を統合した最新装置である。超解像画像再構成技術「Precise IQ Engine(PIQE)」は,Aquilion PrecisionのSHRデータを教師データに使用し,1024マトリクス再構成が可能で,すりガラス濃度結節の内部構造や気管支を高精細に描出する。撮影後に後処理で適用できることは大きな利点であり,また,呼吸動態CT画像にも対応する。AIDR 3Dとの比較でも,微細構造や腫瘍の内部構造がより明瞭に描出され,臨床実用性が高い(図5)。

図5 超解像画像呼吸動態CT(肺がん症例)

図5 超解像画像呼吸動態CT(肺がん症例)

 

■モーションアーチファクト低減技術「CLEAR Motion」や検査自動化技術「INSTINX」を搭載

Aquilion ONE/INSIGHT Editionには,モーションアーチファクト低減技術「CLEAR Motion」や検査自動化技術「INSTINX」が搭載された。CLEAR Motionは,血管や気管支,葉間膜,大動脈などのブレを低減する技術で,導入当初に行った検討では,心臓左縁のブレが改善し,PIQEとの組み合わせにより心臓・縦隔近傍の気管支樹描出の向上が確認された(図6)。呼吸停止困難症例での体動補正や血管造影検査などでも有用である。
INSTINXの一つである「3D Landmark Scan」は,ヘリカルスキャンで取得した位置決め画像から骨や臓器,筋肉などの位置情報を解析し,撮影範囲を自動設定する。このデータから画像再構成もでき,胸部撮影範囲外の腎がんを拾い上げられた症例もある。また,低線量撮影技術「SilverBeam Filter」が搭載されており,PIQEを用いることで胸部X線撮影相当の線量で肺野の細部まで確認できる。

図6 CLEAR Motionによる気管支樹描出の向上

図6 CLEAR Motionによる気管支樹描出の向上

 

■まとめ

CT撮影は,技術的進化に伴う高精細化や高速化などによる診断精度の向上や新たな臨床的ニーズへの対応により,従来の診断法を置換してきた。今後は,先端的なCT技術を活用可能な臨床領域を探索することで,さらなる技術進化につながると考えている。

*記事内容はご経験や知見による,ご本人のご意見が含まれます。
*本記事中のAI 技術については設計の段階で用いたものであり,本システムが自己学習することはありません。

一般的名称:全身用X線CT診断装置
販売名:CTスキャナ Aquilion Precision TSX-304A
認証番号:228ACBZX00019000

一般的名称:全身用X線CT診断装置
販売名:CTスキャナ Aquilion ONE TSX-308A
認証番号:305ACBZX00005000

 

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