技術解説(キヤノンメディカルシステムズ)

2017年3月号

US Today 2017 超音波最新動向

プレミアム超音波診断装置「Aplio iシリーズ」登場

島野 俊彰(東芝メディカルシステムズ(株)超音波営業部)

直感的で(intuitive),知的で(intelligent),革新的な(innovative)プレミアム超音波診断装置として,プラットホームからすべてを一新させた「Aplio iシリーズ」が発売開始されている(図1)。この装置には,さらに鮮明な画像を描出し,さまざまな先進のアプリケーションを提供する“iPerformance”技術や,直感的なワークフローとやさしいエルゴノミクスを追究した“iSense”技術が結集されている。ここでは,その中の特長となる技術と機能を紹介する。

図1 Aplio iシリーズ

図1 Aplio iシリーズ

 

“iBeam Forming”でスキャン方向のビームを鋭く絞り込んだ送受信を実現

Aplioシリーズでは,“Differential THI”により広帯域で細いビームの送受信を行い,アーチファクトの少ない画像描出を行ってきたが,iシリーズになり,さらに理想的な送受信ビームの形成とサイドローブアーチファクトの低減を実現させた。
新しいiBeam Formingでは,まず“Multi-Sync Pulser”でプローブの個々の素子に異なる波形を組み合わせて駆動することにより,浅部から深部まできわめて細いビームを構成するとともに,基本波成分を高精度に除去して高純度なTissue Harmonic Imaging(THI)成分を取り出し,アーチファクトを低減。次に,“Multi-Beam Receiver”で一度に多くの走査線分のエコーを同時に受信することにより,高密度で高フレームレートな画像化ができるようになった。さらに,これら複数のハーモニックビームを組み合わせて,1本の走査線上のビームをさらに細く,均一に鋭くする“Multi-Harmonic Compounding”を行うことで,きわめて高画質な超音波画像を描出する(図2)。

図2 iBeam FormingによるDifferential THI画像の飛躍的な高画質化

図2 iBeam FormingによるDifferential THI画像の飛躍的な高画質化

 

「iDMSプローブ」による“iBeam Slicing”と各種の新開発プローブ

iシリーズ装置用に新たに開発されたマトリックスアレイのiDMSプローブでは,超広帯域の送受信を実現するとともに,スライス方向にも素子が分割されており,それぞれの素子を異なる信号で駆動し,走査線の全点に対して電子フォーカスをかけることで,プローブ直下から深部まで薄く均一なスライスを生成することができ,小さな病変でも抜けの良いクリアな画像の描出が行える(図3)。

図3 iDMSプローブと超高周波リニアプローブによる高精細画像

図3 iDMSプローブと超高周波リニアプローブによる高精細画像

 

また,このほかにも臨床に役立つ各種のプローブが,iシリーズ装置用に開発された。
薄型コンベックスプローブは,薄さ9mmの腹部用コンベックスプローブで,高齢者などの狭い肋間でも圧迫痛などを与えることなく,体表に密着し鮮明な画像が得られる。煽り操作も行いやすく,腸管ガスの影響を受けやすい部位の観察もしやすい。
超高周波リニアプローブは,24MHzまで高周波の帯域を広げたリニアプローブで,今までにない表在の高分解能画像を描出できる。整形外科,乳腺,甲状腺,皮膚科領域,血管領域など多くの領域での応用が期待されている。
Real time 3D imageが得られるvolume matrixセクタプローブには,3D-TEE(経食道)と3D体表セクタの2つのプローブがある。動きのある心臓の三次元画像を取り込み,“3D LV Tracing”や“3D RV Tracking”などで壁運動を解析すれば,Area Change RatioやPolar Map表示を診断に利用することができる(図4)。

図4 “3D Wall Motion Tracking”のQuad Chamber Tracking

図4 “3D Wall Motion Tracking”のQuad Chamber Tracking

 

臨床で役立つ代表的なアプリケーション

高速信号処理で,並列同時処理を可能にした高次元臨床アプリケーションのいくつかを紹介する。

1.Smart Fusion
超音波診断で描出しにくい部位でも,CT/MRIのリファレンス画像と同期させることで,病変・腫瘍の位置を特定することが容易になり,穿刺術でのより正確な位置決めをサポートする。また,過去に収集した超音波画像をリファレンス画像として同期することも可能で,治療前後の効果確認が行いやすくなる。Quad Viewでは,リファレンス画像,超音波画像リファレンスと超音波を重ね合わせたブレンド画像,およびプローブ表示付き3D画像(3Dボディマーク)を組み合わせた4画面表示が可能である。さらに,“Auto Track”機能を使えば,検査中の体位変換や装置移動を行っても同期を維持することが可能で,CT/MRI画像の収集時に「omniTRAXブラケット」(シブコ社製)を体表に装着しておけば,自動位置合わせで超音波画像と同期させることもできる(図5)。

図5 Smart FusionとAuto Track

図5 Smart FusionとAuto Track

 

2.Smart Sensor 3D
2D用のプローブに取り付けた磁気センサの位置情報を利用して,プローブをスライス方向にスキャンするだけでボリュームデータを作成し,MPRや3D画像などさまざまな方式で表示できる機能である。超高周波プローブを利用すれば高精細な3D画像とともに,微細な低流速血流を表示できる“Advanced SMI(Superb Micro-vascular Imaging)”の3D画像とも組み合わせた表示が可能で,詳細な血管構築の観察が行える。また,3D画像では,生体の表面構造を透かし表示にして内部構造と重ね合わせる“Shadow Glass”表示を利用すれば,位置関係の把握も行いやすくなる(図6)。

図6 超高周波リニアプローブによるSmart Sensor 3D

図6 超高周波リニアプローブによるSmart Sensor 3D

 

3.Auto EF with GLS
心エコーにおいて,ASEガイドラインで推奨されているMOD法によるEFの計測をワンボタンで行え,瞬時に結果が表示される機能である。心筋ストレインの指標であるGlobal Longitudinal Strain(GLS)も,同時に算出し提供する。

使う人への思いを込めたエルゴノミクス

23インチの大型ワイドモニタや,前後・左右・上下に広い可動範囲を持つ操作パネル,そしてスワイプも可能な大型のタッチコマンドスクリーンの採用やきわめて短い起動時間など,使う人にやさしい装置である。さらに,操作パネルから離れた位置でも画像確認,フリーズや画像保存などの操作が行える2nd Consoleを使用すれば,難しい体勢で行わなければならない検査やエコー検査の指導なども容易に効果的に行うことができる。

 

●問い合わせ先
キヤノンメディカルシステムズ(株)
広報室
TEL 0287-26-5100
https://jp.medical.canon/

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