技術解説(キヤノンメディカルシステムズ)

2019年5月号

MSK Solution No.1[MRI]

整形MRI検査における撮像ワークフロー改善技術

キヤノンメディカルシステムズ株式会社次世代MR開発プロジェクトチーム 藤巻 拓哉

臨床現場においてMRI検査に対する確実な検査,高い検査効率,高画質へのニーズは日に日に高まっている。このような要望を実現していくためにはシーケンスの最適化はもちろんであるが,患者やコイルのポジショニングの簡易化,断面設定の精度向上など,MRI検査でのワークフローの改善も重要となってくる。本稿では整形領域にスポットを当て,当社MRIの検査ワークフロー改善技術に関して解説する。

■プランニング省略化のアプローチ

MRIは任意の断面を撮像することが可能である一方,適切な断面を撮像できるかは操作者の技量に依存するところが大きい。特に,ポジショニングが制限される場合や,疾患などで解剖学的構造が変化している患者の場合,効率的に再現性良くプランニングするためには,操作者がある程度経験を積んでいる必要がある。必要な断面が撮像できなかった場合には再撮像が必要となり,大きなスループット低下につながる。プランニング中における撮像断面の確認や,プランニングの自動化ができれば,このような問題を解決することが可能となる。

●ForeSee View
通常,プランニングは断面設定→撮像→撮像断面の確認を順次実施していく。“ForeSee View”は,図1で示すように,撮像ROIから位置/角度情報を取得し,取得した情報を基にMPR(multi planar reconstruction)画像を作成/表示することで,撮像予定断面をプランニング中にリアルタイムで確認することができる。
また,表示しているMPR画像を保存してロケータ画像として設定し,即座にプランニングで使用することが可能となっている。そのため,図2のように撮像終了を待たずしてプランニングに必要なMPR画像が作成でき,次の撮像のプランニングを順次行っていくことが可能である。
このように,ForeSee Viewは再撮像のリスクとスループット低下を減らすことが可能である。

図1 ForeSee View概要

図1 ForeSee View概要

 

図2 MPR画像でのプランニング例

図2 MPR画像でのプランニング例

 

SUREVOI Knee /KneeLine+
SUREVOI Knee/KneeLine+”は当社の撮像操作アシスト機能“EasyTech”の一つである。機械学習によって膝の解剖学的特徴を検出し,撮像断面/MAPなどの撮像領域や,コイルと膝のズレ量を算出し,コイルの再設定を促すことが可能である1)〜3)。撮像操作をアシストできるため,プランニングの労力を軽減してワークフローを改善することが可能である。
検出プロセスの概要を図3に示す。検出処理には両膝を含むボリューム画像を使用している。
まず,左右どちらかの撮像対象となる膝領域の抽出を行う。抽出に当たっては,コイルが設定されている検査対象の膝領域がボリューム画像内で高輝度値を示すことを利用している。

図3 SUREVOI Knee/KneeLine+の検出プロセス概要

図3 SUREVOI Knee/KneeLine+の検出プロセス概要

 

次に,機械学習によって抽出した領域から膝の複数の解剖的特徴を検出して撮像断面を求める。ここでは,膝形状のバリエーションにロバストとなるように,そして,膝領域が十分に含まれていない場合に検出精度が低下するのを抑えるため,機械学習と画像処理を組み合わせて安定的な検出結果を実現している。図4は,同一人物でそれぞれ回転方向や頭足方向の位置,さらにコイルを変えて撮像し検出を行った結果で,ほぼ同じ撮像断面を検出できていることがわかる。

図4 同一ボランティアによる検出性能の比較

図4 同一ボランティアによる検出性能の比較

 

さて,撮像領域を求めるためには撮像対象の膝の位置と反対の膝の位置を識別する必要がある。しかし,撮像対象外の膝は明瞭に写らないため,膝の対称性を利用して撮像対象外の膝の位置を識別している。具体的には,ボリューム画像内で検査対象膝以外の領域における高輝度領域を特定する。その後,すでに算出されている撮像対象膝の領域の大きさを利用することで位置を識別している。図5は,検査対象外の膝の背側/外側の境界の検出結果の検出誤差(青)と,複数技師間で目視指定した境界位置の誤差(赤)の比較だが,同程度の精度で検出ができていることがわかる。
コイルと膝のズレ量は,コイル中心が磁場中心に設定されることを利用して算出している。磁場中心に対しての膝の中心位置と方向は,検出された特徴点の位置から求められる。
このようにSUREVOI Knee/KneeLine+は,操作者の経験や慣れに依存することなく煩雑な断面設定をすばやく再現性よく実現でき,検査時間の短縮に貢献できる。

図5 検出結果と複数技師による境界位置指定の比較

図5 検出結果と複数技師による境界位置指定の比較

 

■撮像時間短縮のアプローチ

●Fast3Dモード
従来,3Dシーケンスは高分解撮像に適しており,また,撮像された3D画像からMPR画像を作成することにより任意断面での診断が可能になる。一方,3Dシーケンスは撮像時間が長く,拘束時間が長くなることにより患者への負担が増大する場合がある。
当社アプリケーションの一つである可変フロップアングル法を使用したMPV(multi planar voxel)対応シーケンスで“Fast3Dモード”を使用すると,図6に示すように,従来の1TR内で1 slice encode(SE)を収集する撮像方法と比較して,コントラストを維持しつつも従来の約半分の撮像時間で撮像することが可能となる4)
MPV対応シーケンスのFast3Dモードは,1TR内でphase encode(PE)方向とSE方向とを混合して収集する高速撮像手法である。Fast3Dモードの収集法の一つであるwheel の場合,k-space中心からPEおよびSEをwheel状に収集する。Fast3D factorはk-spaceの実収集率を示し,残りはhalf Fourierにより補間される。
また,より高分解能の撮像を行う場合はSNRの低下は避けられないが,撮像時間短縮の代わりに加算回数を2倍にすることにより,同じ撮像時間でSNRを担保した画像を撮像することが可能である。

図6 従来手法とFast3Dモードのコントラスト比較

図6 従来手法とFast3Dモードのコントラスト比較

 

■おわりに

本稿では,整形領域でのMRI検査のワークフローを改善する技術の一部について解説した。キヤノンメディカルシステムズの技術がMRI検査を受ける患者,装置を扱う技師の負担軽減の一助となれば幸いである。

●参考文献
1)Sugiura, T., et al. : Automated slice positioning for knee MRI by combining landmark detection and image processing. 第45回日本磁気共鳴医学会大会, 2017.
2)Sugiura, T., et al. : Knee region detection method using similarity of both knees to Automate knee MRI workflow. 第45回日本磁気共鳴医学会大会, 2017.
3)Sugiura, T., et al. : Knee-to-coil automatic distance detection for misalignment alert system. 第45回日本磁気共鳴医学会大会, 2017.
4)Ishi, K., et al. : k-space trajectory investigation for shorten imaging time of 3D Fast Advanced Spin Echo(FASE3D).第45回日本磁気共鳴医学会大会, 2017.

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