技術解説(キヤノンメディカルシステムズ)
2026年3月号
腹部領域におけるITおよびAIの最新技術
「Abierto Vision」の画像解析技術
熊野 泰大[キヤノンメディカルシステムズ(株)エンタープライズ画像ソリューション部]
キヤノンメディカルシステムズはヘルスケアITブランド「Abierto」シリーズを展開している。その中で,新たな医用画像解析ソリューションとして 「Abierto Vision」を立ち上げ,2024年11月に販売を開始した。本製品は,これまで培われてきた当社の画像解析の技術ベースを維持しながらも,人工知能(AI)を活用した自動化技術や,直感的な操作性を実現するGUI(グラフィカルユーザーインターフェイス)を採用することで,より快適な画像解析ワークフローを実現しようとしている。本稿では,Abierto Visionの特長と腹部領域の一部機能を紹介する。
■Abierto Visionの特長
Abierto Visionには3つの特長がある。
1.直感的操作性
これまでの医用画像解析システム(AZE Virtual Place)からGUIを一新し,最新の当社撮影装置と統一感のあるインターフェイスを採用した。撮影から画像解析までの一貫した流れを意識して製品化している。
2.AIを活用したワークフロー簡略化
AIを活用した自動化技術「Auto Extract」により,骨(頭頸部,体幹部,下肢)や脳動脈/脳静脈の分離抽出,冠動脈芯線トラッキングを搭載し,画像解析ワークフローの簡略化をサポートする(図1)。
図1 Auto Extract
AI 技術を活用し,解析ワークフローの効率化を実現するセグメンテーション機能
3.先進的な解析アプリケーション
循環器,脳神経,オンコロジーなど,幅広い領域における先進的な解析アプリケーションを実装する。例えば,撮影装置と連動する「CT Spectral Analysis」や,ベイジアンアルゴリズムを搭載した「CTボリュームパフュージョン解析(Bayesian)」を新規搭載し,診断から治療計画まで業務支援する豊富な機能を提供する。
■腹部領域解析(標準機能)
Abierto Visionの標準機能にあるセグメンテーションツールは,一部にAI技術Auto Extractを使い,業務効率の向上を支援している。
最も多く使われる機能が骨外しであるが,高い精度で実行できるようになっていると自負している。東和会第一東和病院にて,当社の従来の非AIアルゴリズムとAbierto VisionのAuto Extractを用いて,腹部血管系の同一症例(5例)の骨外し処理比較をいただいた。その結果,CT担当診療放射線技師(4名)の処理時間が,1症例平均約300秒(非AIアルゴリズム)だったものが,約40秒(Abierto Vision)にて解析完了するようになった,と報告をいただいている1)。
Auto Extractは,椎体のワンクリック骨抽出においても活用されている。任意の椎体を選択(あるいは除外したい骨を複数選択)することで,自動抽出可能になっている。
こうした機能は「1 Click Extract」というツールの中に格納され,肺動静脈分離や腎臓抽出などと同様に,手軽に利用することが可能である。併せて,マクロ3D機能を活用することで,病院のルーチン処理を効率的に実行できるよう,技術開発を進めている。
また,近年,健診および検診,リハビリ,手術など,各方面で筋肉の測定を希望されるケースが出てきている。従来の体脂肪用の解析ツールを応用し,大腰筋計測を行うことで,サルコペニアのリスク評価などを簡易的に記録することができるレポートのベースを用意している(図2)。
図2 簡易レポート機能
左:内臓脂肪量評価,右:筋肉量評価
■腹部領域解析(オプション解析機能)
1.肝臓解析
肝臓3フェーズの画像から,Auto Extractにより肝実質,下大静脈,動脈,門脈,肝静脈を自動抽出することが可能となっている。外科手術シミュレーションとして血管支配領域の推定とその体積計測を行うことができ,その検討をするまでの事前作業工程の負荷を減らすことができる。PET画像やSPECT画像(機能画像)も併せて評価できるため,肝臓ボリュームに対するカウント割合(機能)も評価可能である(図3)。
図3 肝臓解析
肝実質と血管を自動抽出し,肝切除のシミュレーションなどに利用
2.ECV解析
ヨード画像を読み込み,指定したROIのヨード密度値と入力したヘマトクリット値から細胞外容積分画(ECV)を計算することができる。肝臓領域と心臓領域が主なターゲットとなる。なお,心臓領域は,短軸像を作成してBull’s Eyeの表示をすることも可能としている。
3.大腸解析
CT colonographyの専用解析として,2体位の画像データを並列表示して,読影可能になる。疑似注腸画像表示や関心ポイントの計測,所見入力,CT Colonography Reporting and Data System(C-RADS)準拠レポートの作成を支援する。
4.Spectral解析
当社でdual energy撮影されたCT画像(基準物質画像)を基に,monochromatic画像(仮想単色X線CT画像)やIodine map画像(造影剤マップ),仮想非造影画像(virtual non-contrast image)を作成表示することができる。これらの画像は,CT装置からデータ受信後,「Advanced Auto Analyzer(AAA)」により自動作成され,指定した外部画像保管装置(PACSなど)に自動転送することが一部機種にて実装されており,ルーチン業務の追加画像作成負荷を軽減する仕組みを提供している。
本解析アプリケーション上では,グラフ(スキャッタプロット,ヒストグラム,spectralカーブ,scaled Iodine map)として表示することもできる。各画像の重ね合わせ表示や各グラフの範囲を指定したカラー表示ができるようになっている。
また,指定した特定の組成領域を抽出し,その領域の分布を,MPRや3D画像上に表示する「Spectral Composition解析」,石灰や結石といった指定領域にある物質の成分を判別する情報(領域の抽出)を提供する「Spectral Stone解析」も実装している(図4)。
図4 Spectral Stone解析
結石などの成分組成判定にかかわる情報を表示
Abiertoシリーズは,撮影後のシームレスな画像解析,診断,処置に向けたキヤノンメディカルシステムズの医用画像ITソリューションである。これまで,医療でデータを共有,統合する医療情報統合管理システム「Abierto VNA」,その蓄積した価値あるデータを表示,利活用する医療情報統合ビューワ「Abierto Cockpit」,各種領域の診断補助アプリを提供する読影支援ソリューション「Abierto Reading Support Solution」があり,本稿で紹介したAbierto Visionは画像解析処理にフォーカスしたシステムである。
今後も,キヤノンメディカルシステムズは医療ITのメディカルソリューションとして,Abiertoシリーズを通して,医療現場の効率的な運用を提案していく所存である。
* 本内容には次の医療機器プログラムが含まれます。
●Abierto Vision
一般的名称:汎用画像診断装置ワークステーション用プログラム
販売名:汎用画像診断ワークステーション用
プログラム Abierto Vision AVP-001A
認証番号:22000BZX00379000
●Abierto Reading Support Solution
Abierto Reading Support Solutionは,Automation Platform(SCAI-1PF),汎用画像診断ワークステーション用プログラム Abierto SCAI-1AP,およびパートナー企業から提供される解析アプリケーションなどによって構成されるソリューションの名称です。
一般的名称:汎用画像診断装置ワークステーション用プログラム
販売名:汎用画像診断ワークステーション用プログラム Abierto SCAI-1AP
認証番号:302ABBZX00004000
* 本文中のAI技術は設計の段階で用いたものであり,本システムは自己学習機能を有しておりません。
●参考文献
1)古川泰広 : AI解析×自動化で変わるCT現場 : Abierto Visionの力. 第41回日本診療放射線技師学術大会, ランチョンセミナー4, 2025.
●問い合わせ先
キヤノンメディカルシステムズ(株)
広報室
TEL 0287-26-5100
https://jp.medical.canon/
