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医療法人博恵会 町田整形外科 
IP-RAPIDの高速撮像技術が高画質と撮像時間の短縮化を実現し整形専門クリニックの診療を支援
3D薄スライス画像や脂肪抑制画像を手術支援に活用

2022-4-25


医療法人博恵会 町田整形外科

高知県吾川郡いの町の町田整形外科は,地域のかかりつけ医として手術まで含めた幅広い診療を行っている。同院では,従来から使用してきたオープンMRIを更新して,検査のワークフローを向上させるコンセプトである“SynergyDrive”を搭載した0.3T オープンMRI装置「AIRIS Vento Plus」を2021年4月に導入した。日常の整形外科疾患から上肢下肢の関節疾患の手術まで対応する同院での運用を,町田崇博院長と山本功次技師長に取材した。

地域のかかりつけ医としてリハビリから手術まで対応

町田整形外科は,1993年に町田院長の父親で現理事長の博久氏が開院した。高知市のベッドタウンとして発展した天王ニュータウンの一角に位置し,整形外科とリハビリテーション科を中心に診療を行ってきた。町田院長は診療の現況について,「いの町の北(山側)には医療機関が少なく,立地的にも地域のかかりつけ医としてさまざまな患者さんを診ています。高齢者の患者が多いですが,リハビリテーション科を中心に学生からプロ野球独立リーグの選手までスポーツ整形の受診もあります。また,当院には手術や入院の設備も整っており,上肢下肢の関節鏡を用いた手術など専門性の高い診療にも対応し,幅広い医療を提供しているのが特徴です」と説明する。
町田院長は,大阪医科大学を卒業後,岡山大学,高知医療センターなどを経て2020年に院長に就任した。専門は上肢(肩,肘,手指),下肢(膝)の関節疾患,リウマチなどで,手術は肩関節の腱板縫合術,手指腱鞘切開術・腱剥離術,膝関節の半月板縫合術,滑膜切除術など年間133件(2021年実績)で,そのうち鏡視下手術が約半分を占める。また,メディカルフィットネス施設「OXY」,メディカルエステ「LAXIA」を併設している。町田院長は,「リハビリ部門での治療は元の状態に戻すまでが中心ですが,さらにその先の競技復帰を考えた継続的なリハビリや,運動による健康増進やロコモの防止などをねらいとしたものです」と述べる。

町田崇博 院長

町田崇博 院長

山本功次 技師長

山本功次 技師長

 

オープンMRIでの実績を評価してAIRIS Vento Plusを選定

同院には,MRIのほか,一般撮影装置,超音波診断装置,骨密度測定装置(DEXA法)などが導入されている。同院では,2000年に最初のMRIとして「AIRIS mate」を導入,2008年に「AIRIS Elite」に更新するなど,長くオープンMRIを使用してきた。今回,三代目の装置として選定されたのも0.3TのオープンタイプのAIRIS Vento Plusである。MRIの選定について町田院長は,「MRIは単純X線撮影だけはわからない疾患の診断から手術の支援,フォローアップまで整形外科にとっては重要なモダリティです。これまでも整形外科領域の診断や治療方針の決定に役立つ画像が得られていたことと,閉所が苦手な患者さんにもやさしい装置で,ランニングコストを含めたバランスの良さを評価して,引き続きオープンタイプの装置を選定しました」と述べる。
AIRIS Vento Plusは,1.5T超電導MRIに搭載されている検査のワークフローを向上させるコンセプトSynergyDriveが搭載されている。SynergyDriveは,高速化ソリューション“IP-RAPID”や操作性向上機能の“AutoExam”で構成されるが,低磁場のオープンMRIでも高速撮像技術によって,高画質,低ノイズ,撮像時間の短縮などの恩恵が得られるようになった。町田院長はAIRIS Vento Plusの導入について,「当院は予約検査よりも,当日の判断でMRIを撮ることが多く,撮像時間が速くなったことは待ち時間の短縮にもつながっています。当日に検査できれば再来院の必要がなくなりますし,早期診断できれば痛みなど患者さんの抱える問題にいち早く対処できます」と評価する。検査件数は,月間150〜160件。検査では腰,膝が多く,肩などの関節の撮像がそれに続く。

IP-RAPIDで画質向上と撮像時間短縮の自由度が向上

高速撮像技術であるIP-RAPIDは,アンダーサンプリングと繰り返し演算Iterative Process(IP)を活用した再構成処理によって,画質を維持したままさらなるノイズ低減や撮像時間の短縮を両立することが可能だ。同院では基本的に全撮像でIP-RAPIDを適用しているが,山本技師長は,「低磁場のAIRIS Vento PlusでもIP-RAPIDのSNR向上によって,画質が上がっていることを実感しています。以前の装置でも時間をかければ画質を上げることはできましたが,検査時間が延長したり,時間内に検査を収めるために何かシーケンスを省略したりというデメリットがありました。AIRIS Vento Plusでは,ルーチンの撮像時間も短くなり,新たにシーケンスを追加しても時間枠に収まります」と述べる。検査枠は以前と同じ時間で設定しているが,検査全般で撮像時間は短縮している。特に頸椎の検査時間は20分程度になっており,町田院長は,「繰り返し検査を受けている患者さんはMRIは時間がかかることを知っているので,20分で終わりますよと言うとびっくりしていますね」と話す。
IP-RAPIDの適用について山本技師長は,「IP-RAPIDではSNRが向上したことで,その分を画質の向上に振るのか,時間短縮に充てるのか,患者さんの状態や検査部位,目的によって選択でき,検査の自由度が上がったと感じています。例えば,関節の鏡視下手術の術前検査では3Dシーケンスを追加してより精細な画像を提供するとか,反対に体動が抑えられない患者さんや,頸椎の撮像時に呼吸や嚥下の影響がある場合には短い撮像時間で撮るなど臨機応変に対応できます」と説明する。手術支援の画像について町田院長は,「鏡視下手術では,肩の腱板や関節唇,膝の靭帯などの状態を詳細に把握することが必要です。術式の選択を含めてMRIの画像が重要ですが,AIRIS Vento Plusでは画質の向上でその判断が容易になっています」と言う。また,術後のフォローアップでは,「腱板修復術で筋膜パッチによる修復術を行っていますが,移植腱が明瞭に確認できるようになって評価がしやすくなりました。また,低磁場のメリットとして金属アーチファクトが少なく,インプラントのハレーションで評価が難しいというケースは少ないですね」(町田院長)と評価する。
また,山本技師長は,IP-RAPIDによって関節における3D撮像が可能になり関節唇や腱などの軟部組織をより詳細に描出できるようになったと次のように話す。
「肩,膝,手関節では,従来は2DのT2強調画像で撮像していましたが,より薄いスライスで連続して均一なデータが得られるので3DのT2強調画像で撮っています。2Dとほぼ変わらない時間でより詳細な画像が得られます」
脂肪抑制についてはWFSを使用しているが,これも旧機種と比べて撮像時間が短縮し,分解能の高い画像が得られている。

■症例1:右肩腱板断裂

症例1:右肩腱板断裂

70歳代,女性。広範囲断裂に対して,鏡視下腱板修復術(大腿筋膜パッチ)を施行。術前(a)と術後(b)のT2強調画像。同等の撮像時間だが,bではIP-RAPID の効果で画質が向上している。
a:AIRIS Elite,T2WI,FOV:220mm,TR/TE:3000/100,マトリックス:256×180,スライス厚:4.0mm,撮像時間:3:36
b:AIRIS Vento Plus,T2WI,FOV:180mm,TR/TE:3000/100,マトリックス:256×200,スライス厚:4.0mm,撮像時間:3:36

 

■症例2:右膝内側半月板後根断裂(MMPRT)

症例2:右膝内側半月板後根断裂(MMPRT)

40歳代,女性。鏡視下半月板修復術(pull out修復)を施行。術前(a)と術後(b)。術後画像では後根部分の連続性が確認できる。
a:AIRIS Elite,T2*WI,FOV:200mm,TR/TE:580/15,マトリックス:320×224,スライス厚:3.5mm,撮像時間:4:21
b:AIRIS Vento Plus,T2*WI,FOV:160mm,TR/TE:550/15,マトリックス:320×200,スライス厚:3.5mm,撮像時間:3:31

 

■症例3:腰椎すべり症

症例3:腰椎すべり症

40歳代,女性。後方椎体間固定術(PLIF)を施行。インプラント(チタン合金,コバルトクロム合金)挿入後のアーチファクトが低減されており,術後の除圧部位の評価も可能となっている。
a:T2WI,FOV:300mm,TR/TE:2500/90,マトリックス:288×200,スライス厚:5.0mm,撮像時間:3:23
b:T2WI,FOV:240mm,TR/TE:2500/68,マトリックス:288×192,スライス厚:5.0mm,撮像時間:4:03

 

オープンMRIの高速化を幅広い診療に生かす

AIRIS Vento Plusでは,コンソールも一新されOSも最新バージョンとなるなど処理能力が向上している。操作性について山本技師長は,「タイムラグがなくなり,すぐに撮像に入れることで患者さんの不安も軽減していると思います」と評価する。
オープンMRIでは,トンネル型に比べて空間が広く検査時のセッティングの自由度も高い。町田院長は,「肩や膝など関節の撮像時には,肢位を自由に動かせることで患者さんに負担の少ない検査が可能です」と言う。撮像時間の短縮で抑制時間が短くなり,痛みを持つ患者さんの負担が減っているという。町田院長は,「特に肩の術後の患者さんは長く同じ姿勢でいることで痛みが出ることが多く,より短い時間で検査がすむメリットは大きいです」と評価する。

関節撮像用の各種コイルを活用

関節撮像用の各種コイルを活用

 

AIRIS Vento Plusを活用してより患者にやさしい医療を展開

同院では,超音波を使った筋膜リリースなど痛みの軽減を目的とした処置を行っているが,町田院長は,「今後は動的な評価も求められてきます。動きの中で痛みを感じる部位を特定したり,MRIのガイド下でのアプローチなど,空間の広いオープンMRIならではの検査や手技にも期待したいところです」と言う。
低磁場のオープンタイプのMRIの高速化ソリューションによる恩恵は,地域のかかりつけ医として最善の医療を提供する同院の診療をより一層後押ししていくに違いない。

(2022年2月3日取材)

 

医療法人博恵会 町田整形外科

〒781-2123
高知県吾川郡いの町天王南1-6-3
TEL 088-891-6565
https://machidaseikeikochi.com
診療科目:整形外科,リハビリテーション科,リウマチ科,麻酔科

 

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