【File 2】ソフトクオリティ/東芝メディカルシステムズ:FileMakerによる柔軟なレポートとデータベースの活用が可能なシステムを臨床現場に密着して開発された「CardioAgent」

2013-2-28


CardioAgent レポートシステム

CardioAgent レポートシステム
【図1】 湘南鎌倉総合病院の動画ネットワーク・レポートシステム
カテーテル検査3,500件/年,カテーテル治療1,000件/年,
心エコー2,000件/年,心臓CT1,600件/年のレポートを
FileMakerで作成,学会発表では検索,統計機能が威力を
発揮する。

東芝メディカルシステムズ(株)が販売する循環器動画像ネットワークシステム「CardioAgent」のレポートシステムの開発を手掛けているのが(株)ソフトクオリティである。ソフトクオリティは,京都南病院で診療放射線技師として勤めていた齊藤孝行社長が,FileMakerによる心臓カテーテル検査や超音波,内視鏡などのレポートシステムなどの開発を行うベンチャー企業として2004年に設立した。齊藤社長を筆頭に,臨床検査技師や臨床工学士など医療の現場を知る有資格者をそろえて,ユーザーのニーズを先取りし,FileMakerを使ってきめ細かいシステム開発を行うのが特長だ。CardioAgentは,米国Heartlab社製の動画像管理システムの信頼性に加え,カスタマイズ可能なソフトクオリティ開発のレポートシステムを採用した2004年以降,大きく売上を伸ばしている。FileMakerによるカスタマイズ対応力によって市場から高い評価を受けているCardioAgentのレポートシステムの特長を紹介する。

●診療放射線技師の経験を生かし,FileMakerによるシステム開発を行うベンチャー企業を設立

【臨床での活用例】 三井記念病院では,心臓カテーテルから超音波検査,CT,MRI,RIまでの検査と治療のすべてのレポートが記録される。学会発表ではすべてのデータから一括して統計を取ることができる(図2)。

【臨床での活用例】三井記念病院では,心臓カテーテルから超音波検査,CT,MRI,RIまでの検査と治療のすべてのレポートが記録される。学会発表ではすべてのデータから一括して統計を取ることができる(図2)。

ソフトクオリティの齊藤孝行社長は,京都南病院で診療放射線技師として20年間にわたって心臓領域の画像診断,カテーテル検査に携わってきた。業務の中でカテーテルの管理や所見レポートなどをFileMakerで自作していたが,齊藤社長は「当初は,現在のようなDICOMといった標準規格がなく画像,特にアンギオや内視鏡,超音波といった動画の保存や運用には苦労していました。循環器科の医師からの要望で,そういった画像データや検査結果などを記録するデータベースを構築したのが最初のきっかけでした」と振り返る。
一方で,循環器用X線撮影装置「Infinix Celeveシリーズ」などを扱う東芝メディカルシステムズは,2002年に,米国Heartlab社(吸収合併により現在はAgfa社のCardiac部門となっている)のシステムで循環器動画ネットワークに参入した。当初は,心臓カテーテル検査などのレポートシステムは提供できるアプリケーションがなく,各施設でユーザーが使っていたレポートシステムなどをそのまま利用していたと,営業本部SI営業部の大江光雄画像担当部長は言う。「循環器部門のレポートシステムは,FileMakerで自作されている施設が圧倒的に多かったのですが,その中でも特に完成度が高かったのが,齊藤社長が京都南病院で作っていたシステムでした」。
齊藤社長は,2004年1月に独立しソフトクオリティを設立,東芝メディカルシステムズと協力して循環器のレポートシステムや内視鏡ファイリングシステムの開発をスタートした。「病院でFileMakerでの構築を進めている時に,例えば病院情報システムとの接続や装置との連携など,個人の力ではどうにもならない部分があり,装置メーカーである東芝メディカルシステムズと連携を取っていました。そんな関係もあって,起業にあたって協力して開発を進めることになりました。技師時代に臨床現場で得たノウハウを核にして,他システムとの連携やデザインなど東芝メディカルシステムとともに相談しながら開発を進めて,2005年に最初のバージョンをリリースしました」(齊藤社長)。

図3 線量管理ソフト 面積線量計,X線保持装置の情報,寝台の情報より寝台に横たわっている患者の皮膚面の入射線量を計算するもの。これによりどこの部分にどれだけ線量が照射されたか管理できる。

図3 線量管理ソフト
面積線量計,X線保持装置の情報,寝台の情報より寝台に横たわっている患者の皮膚面の入射線量を計算するもの。これによりどこの部分にどれだけ線量が照射されたか管理できる。

 

●東芝メディカルシステムズの循環器動画ネットワークのレポートシステムとして提供

CardioAgentの循環器動画ネットワークの中核となるHeartlab社のシステムは,循環器分野の動画像ネットワーク構築では世界トップクラスの実績があるが,東芝メディカルシステムズでは,Heartlab社と協力して日本でのニーズを取り入れた改良や機能拡張を行っている(図4)。そのひとつの核となるのがレポートシステムである。
CardioAgentレポートシステムでは,循環器科で必要とされる心カテ関連の入力やレポートだけでなく,術前検査やフォローアップで必要とされるCT,MRI,RI,心臓超音波(UCG)などのレポートをそろえ,医師だけでなく看護師,診療放射線技師,臨床工学士など検査にかかわる多くのスタッフの入力を支援し,その結果を統合してレポートとして作成し,電子カルテへの配信まで行えることが特長だ。入力では,電子カルテなど病院情報システムからの患者基本情報などの取り込みや,X線装置からの撮影条件,線量情報,ポリグラフ(カテラボシステム)からの心電図や圧波形のデータ連携,血管解析アプリケーションの解析データ,DICOM-SRによる超音波診断装置からの取り込みなどに対応する。術中の経過記録や使用デバイスの入力ではバーコードなどでの入力にも対応している。
レポートシステムのもうひとつの特長は,FileMaker開発プラットフォームの採用によるカスタマイズへの対応だ。レポートには基本的なフォーマットが複数用意されており,施設の運用に近いシステムを選択できることはもちろん,導入から当初数か月は現地で,その後は電話やメールなどとリモートによるカスタマイズに対応する。「循環器科のデータ管理は,研究が主な目的です。検査や治療を行った結果をもとに解析や統計処理を行うために,データベースが必要とされてきました。運用や体制によって施設ごとに違いがありますし,手技やデバイスなどは日々変化しますので必要な項目も変わります。それに対応できるソフトウエアとして,FileMakerがベストの選択でした」(齊藤社長)。
また,日本心血管インターベンション治療学会(CVIT)の学会症例登録のWebのフォーマットに対応している。CVITでは,認定医や専門医,研修施設の認定取得のために200〜500例の症例登録が必要で,CVITのホームページ上で登録が可能だが,多くの項目があり,5年に1度更新が必要となっている。CardioAgentでは,通常作成しているレポートシステムから,学会と同じフォーマットを作成しワンクリックで登録を可能にしたほか,最新バージョンでは複数の症例をまとめて登録できる機能も実現した。「CVITの登録項目自体が変更になることがあり,それにあわせてシステムを変更する必要があり,その場合にもカスタマイズで対応しています」(齊藤社長)。

●臨床現場のニーズを的確に把握し製品にフィードバックして信頼性の高いシステムを構築

ソフトクオリティが開発したFileMakerレポートシステムの搭載以降,CardioAgentは循環器動画像システム領域で売上を伸ばした。現在は,230施設以上で稼働しており,三井記念病院(図1)や湘南鎌倉総合病院(図2)など,循環器領域でトップクラスの医療機関で多く使われている。大江部長は,「東芝メディカルシステムズには,CTや超音波診断装置の専門技術者が多く在籍しており,そういった技術開発チームからの 情報提供を背景として,最先端の先生方から要求にも応えることができます。FileMakerでの開発についても,診断装置やシステムの高い技術力をベースにした上で,カスタマイズを行うことが信頼を得ている要因だと思います」と述べる。CardioAgentレポートシステムでは,循環器X線診断装置から撮影条件や面積線量などのデータを取得して検査中の患者ごとの線量管理レポートを提供している(図3)。
また,CardioAgentでは,液晶ペンタブレットを使いドローソフトなどと連携してシェーマの作成などが行えることも特長のひとつだ(図5)。ソフトクオリティと東芝メディカルシステムズでは,この機能をさらに拡張し,東京大学循環器内科が開発した,シェーマ上でラインを引くことで,狭窄の程度や留置したステントの位置を細かく設定できる新しい入力モジュール「CAIRS-PCI」を,CardioAgentレポートシステムに組み込んだ(図6)。さらに,これを多くの病院・研究機関に普及させることで,同大学が進める将来の臨床研究のための共有データベース化事業にも協力している。

図4 CardioAgentは,米国Heartlab社(現Agfa社)の高速動画ネットワークと,ソフトクオリティ社の臨床技術の高いレポートの組合せである。

図4 CardioAgentは,米国Heartlab社(現Agfa社)の高速動画ネットワークと,ソフトクオリティ社の臨床技術の高いレポートの組合せである。

 

図6 東京大学 CAIRS-PCIの取り組み

図6 東京大学 CAIRS-PCIの取り組み

図5 液晶ペンタブレットの組合せ 超音波レポートでは,液晶ペンタブレットによりシェーマによるビジュアルなレポートを作成することができる。基本シェーマは100種類以上備え,描画ソフトはレポート用に開発されたもの。

図5 液晶ペンタブレットの組合せ
超音波レポートでは,液晶ペンタブレットによりシェーマによるビジュアルなレポートを作成することができる。基本シェーマは100種類以上備え,描画ソフトはレポート用に開発されたもの。

 

●ビジュアルを活用した簡単でわかりやすいレポートシステムの提供をめざす

CardioAgentレポートシステムは,カスタマイズだけでなく,ハードウエアの更新にあわせて新バージョンへの更新も行うが,近くFileMakerバージョン12への対応にあわせてバージョンアップを予定している。今後の開発の方向性としては,FileMaker12の新機能を生かしながらシステム障害時のバックアップや,データの二重化などによる信頼性強化を図っていくという。齊藤社長は,「レポートシステムとしては,視覚的に簡単に入力できるツールを開発して,医療者だけでなく患者さんにもやさしくわかりやすいシステムを提供することがひとつの目標です。循環器領域の進歩は日進月歩で,われわれも学会などに積極的に参加しながら常に最新の治療の動向を把握して,ユーザーとの関係を大事にして成長していきたいですね」と語る。大江部長は,「ソフトクオリティとの連携によって,ユーザーとより深い関係を築くことができ,フィードバックと開発のサイクルによってより信頼性の高い製品が提供できています。このサイクルを継続して今後もより良い製品とサービスを提供していきたい」と述べている。

株式会社ソフトクオリティ 代表取締役 齊藤孝行氏(右) 東芝メディカルシステムズ株式会社 営業本部SI営業部画像担当部長 大江光雄氏(左)

株式会社ソフトクオリティ
代表取締役 齊藤孝行氏(右)
東芝メディカルシステムズ株式会社
営業本部SI営業部画像担当部長 大江光雄氏(左)

 

●問い合わせ先
株式会社ソフトクオリティ
〒601-8457 京都市南区唐橋琵琶町24-4 SQビル
TEL 075-692-3539
URL http://www.softquality.co.jp


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