FUJIFILM MEDICAL SEMINAR 2015 Report デジタル画像処理技術がもたらす未来

Cross Talk 未来に向けて キーパーソンとFUJIFILM技術者が語るこれからの技術

「CALNEO SmartとFPDの未来」

船橋正夫 氏(大阪府立急性期・総合医療センター医療技術部部長)× 技術者:北田 信(R&D統括本部メディカルシステム開発センター)小倉良介(デザインセンター)今邨 亮(R&D統括本部メディカルシステム開発センター)

「FUJIFILM DR CALNEO Smart」シリーズは,国内外の数々のデザイン賞を受賞するなど,性能・画質はもとより使い勝手を考慮したデザインも高く評価されている。CALNEO Smartの有用性や今後のFPDへの期待について,FCRの黎明期にいち早く臨床応用に取り組んだ船橋正夫氏に聞いた。

使い勝手を追究したデザイン

船橋正夫 氏(大阪府立急性期・総合医療センター医療技術部部長)× 技術者:北田 信(R&D統括本部メディカルシステム開発センター,中)小倉良介(デザインセンター,右)今邨 亮(R&D統括本部メディカルシステム開発センター,左)

船橋正夫 氏(大阪府立急性期・総合医療センター医療技術部部長)× 技術者:北田 信(R&D統括本部メディカルシステム開発センター,中)小倉良介(デザインセンター,右)今邨 亮(R&D統括本部メディカルシステム開発センター,左)

小倉:CALNEO Smartのデザインに当たっては,見た目はもとより実臨床にいかに貢献するかを念頭に置き,全国の医療機関の先生方の声を多く取り入れました。その結果生まれたのが,側面に曲線を取り入れたシェルデザインです。1mm単位で側面の厚みを削りながら,ベッドを巻き込まずにほどよく差し込める形状を追究しましたが,実際の使い勝手はいかがでしょうか。
船橋:患者さんの身体の下でFPDを出し入れさせる際に,縁に指を掛けられるというのは画期的なことです。CRカセッテを動かす場合の摩擦はかなり大きいのですが,CALNEO Smartはベッドに沈み込んでいてもしっかりつかめます。また,Virtual Gridによりグリッドが不要になったことも含め,軽くて丈夫でスマートな設計を高く評価しています。
小倉:CALNEO Smartは,剛性,軽量,操作性,そして清掃性がコンセプトです。特に,外装からネジを極力排除し,凹凸をなくすという新しい考え方の実現や,銀処理コーティング技術“Hydro Ag”,IPX6準拠の防水性能により清掃性を高めています。
船橋:血液などの汚れが溝に溜まらないということは,医療においてとても重要です。また,CALNEO Smartは色も黒みがかった光沢のあるシルバーで,鋼のような安定感と清潔感があります。これは患者さんの視点でも大変大切なことです。

ノイズ低減への評価

船橋正夫 氏(大阪府立急性期・総合医療センター医療技術部部長)

船橋正夫 氏

北田:シェルデザインにおいて最も苦労したのは,ノイズを極力低減しつつ電子基板をより小型化することでした。ノイズには電気的なものと磁気的なものの2種類あります。耐ノイズ性では鉄が有効ですが重いので,どこに鉄を使い,どこにアルミを使うかというギリギリの検討を行いました。やはりどうしても軽量化と画質は相反する部分があり,そのバランスは常に大きな悩みです。
今邨:当社では,線量低減をコンセプトにパネル開発を進めています。ISS方式を採用したTFTパネルの開発もその1つですが,常にノイズをどうやって抑えるのかが課題です。基板内でのデジタル変換の際にもノイズは紛れ込む可能性があり,CALNEO Smartでは基板の設計と同時にデザインの要求にも応えることが必要で,かなり苦労しました。
船橋:われわれがFPDに求める優先順位は,1に画質・感度,2に機能性です。われわれが制御できるのは,量子モトルの影響範囲です。その意味で,TFTパネルをシンチレータ層の前面に持ってきたISS方式は素晴らしいアイデアだと思います。さらにCALNEO Smartでは新たにノイズ低減回路が搭載され,限界だと考えていた構造モトルが改善されます。つまり,CALNEO Smartは,すでに究極の高感度システムと言えるのではないでしょうか。
今邨:ノイズは電子の数でカウントしますが,実はいま,CALNEO Smartのノイズは電子何個というレベルになっています。 船橋:画質向上の観点では,今回改良されたノイズ抑制処理技術(FNC)がすばらしいというのが私の結論です。Virtual Grid技術の散乱線成分の除去だけでは線量低減は困難で,FNCと組み合わせることにより,不可能と考えられていた線量低減と高画質化を同時に実現できたのだと思います。

今後のFPD開発への期待

北田:今後,FPDが進むべき方向性についてどのようにお考えでしょうか。
船橋:1つは,フォトンカウントのような波光分析ができる能力を持たせて,従来とは異なる次元のデータを得るという方向性があります。断面は見られませんが,成分分析が可能になり,領域によってはCTに近い情報が得られる可能性もあります。もう1つは,FPDの硬い表面が,患者さんが乗ったとたん軟らかくなるような素材にして,しかも撮影された画像は歪んでいないという,まったく新しい方向性です。これが実現すれば,背骨が突出してしまった高齢者でも痛みを感じずに撮影できます。X線管球とそうした素材との関係がシミュレーションの世界で完全に把握できていれば,歪んだデータを元に戻すことは理論上可能だと思います。夢のような話ですが,新しい技術は得てしてこうした発想から生まれてくるものです。
小倉:まさに未来のFPDのあるべき姿かもしれませんね。

(2015年12月7日取材)

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