FUJIFILM MEDICAL SEMINAR 2015 Report デジタル画像処理技術がもたらす未来

2015.7.18 in 仙台 講演『FPDの実運用とそれにかかわる諸問題』より

CALNEOシリーズによる一般撮影およびポータブル撮影の運用

続橋順市(星総合病院放射線科)

星総合病院は,病床数430床,診療科目33科で,救急告示医療機関(二次救急),地域医療支援病院,臨床研修指定病院に指定されている。本講演では,当院におけるFPDの運用の実際と工夫点などについて述べる。

FPDの運用の実際

1.一般撮影室でのシステム構成
一般撮影室は2部屋あり,ともにX線撮影装置は日立メディコ社製「Radnext50」,立位,臥位共に撮影台は大林製作所製,FPDは「FUJIFILM DR CALNEO C 1717 Wireless SQ」を使用している。このほか,「FUJIFILM DR CALNEO C 1417 Wireless SQ」「FUJIFILM DR CALNEO C mini Wireless SQ」を利用している。

2.ポータブル・手術室でのシステム構成
当院では,手術室(OR)の隣の撮影室にOR用とポータブル撮影用として2台のDRコンソールを設置し,FPDはそれぞれCALNEO C 1417 Wireless SQとCALNEO C mini Wireless SQを1枚ずつ用意している。ポータブル撮影は日立メディコ社製「Sirius Star Mobile 130 HP」1台でほぼ運用し,DRコンソールを載せられるように改造した。OR撮影にも同社製のX線撮影装置を使用している。

3.検査の流れ
当院では,一般撮影,ポータブル撮影,ORのいずれも,患者受付はバーコード読み取りで行っている。放射線科のRIS端末にて受付された患者を選択し,撮影開始とするとMWM接続でコンソールに送信される。撮影室に患者を案内し,バーコード読み取りを行うと,情報が合致したもののみ自動的にコンソールに検査部位や撮影パラメータが展開される。ポータブルや手術室の撮影でも同様であり,これによって患者誤認を防ぎ,迅速な検査が可能になった。
一般撮影でのCR,FPD連携前,連携後の当院の1週間の平均検査受付時間–実施時間を調査した。その結果,CR使用時は9分であったが,FPD連携前では8分,FPD連携後では5分に短縮した(図1)。MWMによるFPD連携によって,患者誤認の防止に加え,患者の待ち時間短縮も実現できた。

図1 FPD導入後の平均検査受付時間の変化

図1 FPD導入後の平均検査受付時間の変化

 

FPD導入時に知っておくこと

1.重量について
FPDは,14 インチ× 17 インチでバッテリーを含めて3.6 kgの重量がある。Virtual Grid を使用すればグリッドが不要になり,その分軽量化されるが,それでも撮影部位への挿入は,男性でも片手では困難なため,別のスタッフに患者の身体を支えてもらうなどの工夫が求められる。

2.キャリブレーションについて
CALNEOシリーズのFPDでは,日常のキャリブレーションの際にX線の直接照射が不要なため,使用していない時に自動的にキャリブレーションが行われる。まれではあるが,撮影準備前に動作すると完了まで少し待つ必要がある。

3.モニタの違いによる画質の違い
ポータブルのコンソール用PCと検像モニタでは輝度と階調が異なるため,演者はコンソール上で画質調整は行わず,検像担当者に任せている。

4.線量の適正値について
Exposure Index(EI)は,IECにより標準化された新しい感度指標である。
従来のS値との比較では,同じ線量で撮影した画像でも,濃度安定性を表すS値は撮影メニューによって数値が変化するが,EIはFPDへの到達線量を基に算出されるため,ほとんど変動しない(図2)。当院でもEIを実装しており,検査の目標値(Target EI:EIT)やDeviation Index(DI)を利用することで自施設の線量最適化が可能となる。

図2 撮影メニューとS値,EI値の関係

図2 撮影メニューとS値,EI値の関係

 

5.院内の無線環境の構築
当院では,無線環境下でポータブル撮影装置のデータ送信を行っているが,導入前には電波状況を調査するサイトサーベイを実施し,フロアの信号強度を確認した。万が一に備えて有線でのバックアップを確保することも必要である。

6.Virtual Gridについて
Virtual Gridを使用することで,撮影時間の短縮や大幅な線量低減が可能となるが,感度域を超える過線量で撮影すると黒潰れしてしまうため,適正な線量設定が求められる。なお,管電圧±5kV,管電流(mAs)1/2〜2倍の範囲で撮影すれば,設定値のままで許容範囲だとされている。

まとめ

FPDの導入に当たっては,運用やバックアップを考慮すること,FPDの特徴を理解し適切な撮影線量を求めることが重要である。また,Virtual Gridは画期的な処理法であり,ポータブル撮影においては被ばく低減や時間短縮に効果的である。今後のさらなる適用部位の拡張に期待する。

 

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