技術解説(富士フイルム)

2021年12月号

技術から見えるDRシステムの最前線

小型拡張ユニット「EX-Mobile」─AI技術活用の場を救命救急室,クリニック,在宅診療,災害現場など幅広い臨床現場に拡大

山下 真未[富士フイルム(株)メディカルシステム事業部]

昨今,院内読影室における画像診断人工知能(AI)技術の活用の広がりとともに,救急現場や病棟のベッドサイド,在宅診療など,幅広い臨床現場において,スピーディで適切な診断につなげるためのソリューションが求められている。一般的に,AI技術を活用した画像解析ソフトウエアは処理負荷が大きいため,汎用PCでは解析処理の時間短縮と,さまざまな現場で使用するための可搬性の双方を兼ね備えることが課題となっていた。
本稿では,このような臨床現場においても胸部X線画像診断を支援するために開発した,当社のカセッテサイズデジタルX線画像診断装置(以下,カセッテDR)などと連携する小型拡張ユニット「EX-Mobile」について紹介する。

 ■特 長

1.カセッテDRと“胸部X線画像病変検出ソフトウェアCXR-AID”*1が連携するための動作環境を提供
CXR-AIDは,AI技術*2を活用して胸部単純X線画像から結節・腫瘤影,浸潤影,気胸の3つの画像所見を検出し,医師の画像診断を支援するソフトウエアであり,それらの異常領域の存在の可能性(確信度)を青から赤までのグラデーションカラーで表示。医師の見落とし防止を支援する。
EX-MobileにインストールしたCXR-AIDが,カセッテDRから胸部X線画像データを受信し,拡張ユニットに内蔵されたGPUで高速処理した解析結果をカセッテDRのコンソール上に即時に提示することが可能となっている(図1*3

図1 カセッテDRとEX-Mobile連携イメージ コンソール上でCXR-AIDの解析結果を表示する。

図1 カセッテDRとEX-Mobile連携イメージ
コンソール上でCXR-AIDの解析結果を表示する。

 

2.ポータビリティに優れた軽量小型デザイン
EX-Mobileは,重量約500gと軽量小型で,汎用X線撮影装置や移動型X線撮影装置などを使う現場で使用できるため,救急や在宅診療,また,新型コロナウイルス感染症対策として設置された発熱外来用仮設テント内など,さまざまな環境下におけるX線撮影において,迅速な診断のための活用が期待される。操作者である診療放射線技師が,CXR-AID解析結果をコンソール上で確認後,すぐに診断用ワークステーションへ元画像とともに解析結果画像を転送でき,読影医の速やかな画像診断を支援する。

3.さまざまな機種と組み合わせることで5つのソリューションを展開*4
EX-Mobileは,当社のカセッテDR「FUJIFILM DR CALNEO Smart」シリーズおよび「FUJIFILM DR CALNEO Flow」シリーズと連携する。また,クリニック向け画像診断ワークステーション「C@RNACORE」にも対応しており,クリニックの医師がC@RNACORE上で画像診断を行う際に,CXR-AID解析結果を参照することで,異常所見の見落とし防止を支援する。C@RNACOREでは,DRカセッテのみならず,CRシステムを含む汎用X線撮影装置で撮影した画像を解析することが可能となる。
さらに,移動型デジタルX線撮影装置「FUJIFILM DR CALNEO AQRO」,および「FUJIFILM DR CALNEO Go PLUS」上で,EX-Mobileと同様の動作環境を提供する外部画像処理キットも展開する。本キットを装置に搭載することにより,コンソール上でCXR-AID解析結果を確認可能となる。

本稿で紹介したEX-Mobileを用いたソリューションは,富士フイルムがこれまで培ってきた画像認識技術とAI技術を,ハードウエア,ソフトウエアの両面に活用したことで生み出された。AI技術とX線診断機器が連携することで高い相乗効果を生み,X線撮影装置での撮影時から診断まで一連のワークフローを効率化し,医療従事者の負担軽減と医療の質向上の一助となることを期待している。

*1 「胸部X線画像病変検出ソフトウェア CXR-AID」(販売名:胸部X線画像病変検出(CAD)プログラム LU-AI689型/承認番号:30300BZX00188000)
*2 AI技術の一つであるディープラーニングを設計に用いた,コンピュータ支援検出ソフトウエア(Computer-Aided Detection=CAD)。導入後に自動的にシステムの性能や精度が変化することはない。
*3 コンソールでの解析結果の表示は,CXR-AIDによる処理が実施されたことを確認するためのものであり,診断を目的としたものではない。CXR-AIDの解析結果を利用した読影は画像診断ワークステーションで行う必要がある。
*4 拡張ユニット EX-Mobileは下記製品のオプションの総称。

・カセッテサイズデジタルX線画像診断装置
「FUJIFILM DR CALNEO Smart」シリーズ
(販売名:デジタルラジオグラフィ DR-ID 1200/認証番号:第226ABBZX00085000号)
「FUJIFILM DR CALNEO Flow」シリーズ
(販売名:デジタルラジオグラフィ DR-ID1800/認証番号:第302ABBZX00021000号)
・クリニック向け医用画像診断ワークステーション
「C@RNACORE」(販売名:富士画像診断ワークステーション CC-WS674型/認証番号:第22200BZX00909000号)外部画像処理キットは下記製品のオプションとして提供。
・移動型デジタルX線撮影装置
「FUJIFILM DR CALNEO AQRO」(販売名:富士フイルム DR-XD 1000/認証番号:第228ABBZX00132000号)
「FUJIFILM DR CALNEO Go PLUS」(製造販売業者:株式会社島津製作所/販売名:回診用X線撮影装置 CALNEO Go/認証番号:第225ABBZX00080000号)

 

【問い合わせ先】
富士フイルムメディカル(株)マーケティング部
TEL 03-6419-8033
URL https://www.fujifilm.com/fms/

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