GE Healthcare Japan Edison Seminar 2021

2022年1月号

GE Healthcare Japan Edison Seminar 2021 Series 2

【心臓・循環器】CTはSnapShot Freeze 2による画像精細化でSHD interventionのnew standardとなる

磯谷 彰宏(小倉記念病院 循環器内科)

磯谷 彰宏(小倉記念病院 循環器内科)

GE社の“SnapShot Freeze 2”は,心臓CTの時間分解能を高め,モーションアーチファクトを抑制し,画像の高精細化を図る技術である。本講演では,構造的心疾患(SHD)のインターベンションにおけるSnapShot Freeze 2の有用性を,症例を交えて報告する。

SnapShot Freeze 2とは

SnapShot Freeze 2は,冠動脈に特化した動き補正技術“SnapShot Freeze”(0.35s/rot,時間分解能29ms)の進化版で,0.28s/rot,時間分解能24msにより,心臓全体の動き補正が可能となる。オプティカルフローなどの基礎原理を用い,画像の動きをトラッキングして三次元的な構造と軌道に置き換え,動き量をベクトル演算解析することで形状を復元。これにより,ハーフ再構成と比較し6倍のモーションアーチファクト抑制を実現した。動きのある心臓においてもブレのない静止画像が得られるため,冠動脈や僧帽弁,大動脈弁などの描出能が向上する。また,経カテーテル大動脈弁留置術(TAVI)後の画像では,自己拡張型人工弁のアーチファクトが抑制され,きわめて明瞭に観察可能となる。

臨床応用

1.大動脈弁への応用
症例1は,超音波にて明らかな弁の開放制限を認め,二尖弁は左冠尖と無冠尖が癒合しているように見える(fused bicuspid)。CTでは,通常の4D画像にて二尖弁の癒合を確認できるが,アーチファクトの影響で時折描出が不鮮明となる(図1 b)。一方,SnapShot Freeze 2を適用すると,動きや石灰化の影響が抑制されて薄い弁尖の輪郭が明瞭となり,fused bicuspidであると確実に診断できる(図1 a)。また,TAVI術前評価にて左室流出路(LVOT)の面積を計測する際,通常のCTと比べてSnapShot Freeze 2を適用した画像ではLVOTの輪郭が明瞭であり,計測値に影響を与えるレベルの補正効果を得られた。

図1 症例1:大動脈弁狭窄症

図1 症例1:大動脈弁狭窄症

 

2.僧帽弁への応用
僧帽弁閉鎖不全症に対する「MitraClip NTシステム」(アボット社製)を用いた経カテーテル僧帽弁形成術(MitraClip治療)の術前には,経食道心エコー(2D,3D)にて僧帽弁および腱索の状態を確認するが,腱索が不明瞭なことも多い。それに対し,SnapShot Freeze 2を適用したCT画像では,前尖,後尖,および弁接合部の構造や,腱索においてはChordae Free Zone(CFZ)の有無まで明瞭に観察可能である。
症例2は肥大型心筋症を伴う僧帽弁閉鎖不全症に対しMitraClip治療を行った症例である。SnapShot Freeze 2を適用したCT画像では,経食道心エコーで不明瞭であった後尖の接合部付近のCFZが確認できた。また,SnapShot Freeze 2の適用の有無を比較すると(図2),適用なしの画像(b)では弁尖が消失しているが,適用ありの画像(a)では弁尖の全体像や腱索も明瞭に描出されている。
SnapShot Freeze2を用いることで,MitraClip治療においてクリップの留置位置を自信を持って決定できるなど,治療戦略の構築に寄与する。

図2 症例2:僧帽弁閉鎖不全症

図2 症例2:僧帽弁閉鎖不全症

 

3.三尖弁への応用
症例3は,超音波にて弁尖同士の離開を認め,重度の三尖弁閉鎖不全症である。このような症例では通常,中隔尖と前尖の間に逆流口があることが多いが,本症例は経食道心エコーにて中隔尖と後尖の間に逆流口を認め,CTでも同様の所見であった。SnapShot Freeze 2を適用したことで,逆流口の輪郭をきわめて明瞭に描出可能であった(図3)。

図3 症例3:三尖弁閉鎖不全症

図3 症例3:三尖弁閉鎖不全症

 

4.先天性心疾患への応用
症例4は,三尖弁囊の発達した心室中隔欠損症である。超音波や通常のCTでは欠損口の描出が不明瞭であった。SnapShot Freeze 2を適用した画像では,欠損口の存在やサイズも明瞭に確認可能であった(図4)。

図4 症例4:心室中隔欠損症

図4 症例4:心室中隔欠損症

 

まとめ

SnapShot Freeze 2は,モーションアーチファクトを抑制し,冠動脈の高精細化はもとより弁や腱索,心筋など,薄くて動きのある構造物の描出能を大幅に向上することができる。また,任意の時相に対して適用可能である。SnapShot Freeze 2は,SHDのインターベンションのレベルを一段階押し上げるベーシックツールとなると考える。

 

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