経営者のための医療ITセミナー(東京)/ 医療現場のワークフロー変革セミナー(大阪)

2018年12月号

医療現場のワークフロー変革セミナー(大阪)

VNA + OCDB(Open Connect Database)によりもたらせること

川眞田 実(大阪国際がんセンター放射線診断・IVR科副技師長)

本講演では,当院のVNA+OCDBによる医用画像管理について,導入経緯やシステムの概要,運用開始までの検討事項,稼働後の評価などを説明する。

VNA+OCDBの導入経緯と概要

当院は,2017年3月に大阪府立成人病センターから大阪国際がんセンターに名称を変更し,大阪城の西側の現在地に新築移転した。病院,研究所,がん対策センターの3施設で構成され,病床数は500床。自治体病院としては全国初の特定機能病院に指定されている。放射線部門はCTが6台,MRIが3台など,多くのモダリティを配備している。
当院では,2001年に第1期のPACSを導入し,2006年に第2期として,GE製PACSに更新した。第1期,第2期のPACSは放射線部門内で運用していたが,2011年の第3期PACSへの更新では,超音波や内視鏡などの画像も保管することとし,院内全体での運用へと拡張を図った。その上で,2012年からはフィルムレス運用を開始した。さらに,2017年には,新築移転に合わせ第4期PACSに更新し,GEの協力の下,VNA+OCDBによる統合画像参照システムを構築した。
このように当院では,社会環境の変化や医療現場のニーズに合わせてPACSを導入・運用してきた。システム構築に当たっては,行政や学会から示されるガイドラインに準拠することを重視している。例えば,第3期,第4期PACSでは,日本放射線技術学会の「画像情報の確定に関するガイドライン」に示された,画像情報の確定のタイミングを明確にすることを考慮したシステムを構築した。
一方,従来のPACSは,モダリティで撮影した画像データをPACSに保管し,それを院内の電子カルテ端末に表示させるのが一般的であった。しかし,当院では新築移転に伴い,PACSだけでなく各部門システムなども稼働するため,複数のシステムの情報を基に診療する医師が,効率的に画像を閲覧できる環境が求められた。また,放射線部門や循環器部門など院内で発生する画像を,診療科のニーズに応じて適切な画像ビューワで見られるようにする必要があった。さらに,診療科からは,業務効率の向上につながるPACSを要望された。特に,乳腺外科からは,モニタ1台で画像などのすべての情報を表示して診療を完結したいとの意見や,循環器内科からは,ワークステーションの画像展開速度の向上,事務部門からは画像出入力の高速化を望む声も挙がった。
これらのニーズに対して,GEの提案を受け,VNAにより院内各所に分散する画像データを集約・一元管理して,画像ビューワ上で患者ごとに時系列,検査種別にマトリックス表示した上で閲覧するデータを選択するシステムを構築した(図1)。さらに,カンファレンス向けに,画像のフィルタリングなども行えるようにした。しかし,このままでは,GE以外の他ベンダーの画像ビューワやワークステーションからVNAの画像を閲覧する場合,DICOM Q/Rを用いるため表示に時間がかかってしまう(図2)。例えば,マンモグラフィ専用ワークステーションは,自らのキャッシュストレージに保管される直近の画像は速やかにデータを表示できるが,過去画像はVNAから取得するため表示に時間を要する。
そこで,高速配信を可能にする仕組みとして,京都大学医学部附属病院で稼働しているOCDBを採用した(図3)。OCDBとは,他ベンダーのシステムや画像ビューワに情報を公開するためのデータベースである。DICOM Q/Rの代わりに,各ビューワが対応可能な高速プロトコルを用いることで,ユーザーに最適な画像ビューワやワークステーションに画像を高速表示することが可能となる。

図1 VNAによるデータの一元化

図1 VNAによるデータの一元化

 

図2 画像閲覧時のDICOM Q/Rに起因する速度の問題

図2 画像閲覧時のDICOM Q/Rに起因する速度の問題

 

図3 VNA+OCDBを中心としたシステム構成図

図3 VNA+OCDBを中心としたシステム構成図

 

VNA+OCDB稼働に向けた検討事項

VNA+OCDBの稼働に向けては,前述のガイドラインに示された情報確定のタイミングを検討した。撮影したデータがVNA+OCDBで閲覧可能になるまでのどの段階で診断を行えるようにするのかといったことや,シリーズの追加,画像・患者情報の修正,ワークステーションで処理された一時保管画像の取り扱いなどを検証した上で運用管理規定に明記して,運用を開始した。
また,われわれは,画像配信の速度の検討も行った。画像ビューワへの画像の読み込み速度が不十分との指摘があり,速度を確保するためにVNA+OCDBのデータ形式を,JPEG 2000の可逆モード,JPEGの可逆モードと非圧縮モードのどれを選択するかを検証した。システムによっては,JPEG 2000のロスレスモードに対応していないことから,JPEGの可逆モードのデータでどの程度の速度で画像を表示できるかといったことを確認した。
さらに,最も重要なポイントである障害時の対応についても検討した。VNA+OCDBでは,ストレージがGE製で,画像ビューワなどアプリケーションは他ベンダーとなるため,画像の閲覧ができなくなった場合に原因の特定が難しい。そこで,障害の切り分けと,障害発生時における運用の切り替えを確認した。

VNA+OCDBの評価

VNA+OCDBは稼働後,各診療科からは高い評価を得ている。高速化により診断効率が向上し,カンファレンスでも有効活用されているほか,乳腺外科では,カラー・モノクロ画像を1画面上で表示できるようになった。さらに,比較読影もストレスなく行えており,ワークステーションの表示速度も向上している。
また,VNA+OCDBは,患者サービスの向上にも寄与している。紹介患者用のCDやDVDの作成は,例えば約2200枚の画像ならば,従来のDICOM Q/Rでは20分程度要していた。しかし,VNA+OCDBでは約12分30秒で完了しており,1/3程度時間を短縮できている。
このほか,VNAによってデータが一元化されているため,サブシステムを更新する際もそれぞれにデータを移行することなく,運用を続けられる。また,ユーザー自身のニーズに合った画像ビューワや医用画像ワークステーションを選択することも可能である。このように,システム選定・更新を柔軟に行えるのも,VNA+OCDBの大きなメリットだと言えよう。

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