技術解説(GEヘルスケア・ジャパン)

2015年4月号

Cardiac Imagingにおけるモダリティ別技術の到達点

心臓領域におけるGE社製CTの最新アプローチ

坪内 伸介(Radiology推進本部CT営業推進部)

GE社製CTは,より治療に直結する診断能の高い画像を低侵襲で得られるよう日々開発を進めている。本稿では,心臓領域におけるGE社製CTの最新アプローチ法について紹介する。

■SnapShot Freezeによる高心拍/不整脈患者へのアプローチ

冠動脈CTの診断能に大きく影響するのが冠動脈のモーションアーチファクトである。“SnapShot Freeze”は,得られた冠動脈CT画像から血管の動きやブレなどを認識し,流体力学を用いたベクトル演算処理にてモーションアーチファクトの影響を抑え,自動で冠動脈の静止画像を構築する動態解析アルゴリズムである。SnapShot Freezeは,インテリジェンスアルゴリズムにより再構成された複数の心位相データの各冠動脈をトラッキングし,モーションアーチファクトの形状や強度,冠動脈の動きなどを三次元的に解析し,ベクトル演算にてモーションアーチファクトを低減する。心拍数76bpmの臨床例で示すと,Segment Reconstructionにおいて20〜90%の全位相でモーションアーチファクトが観察される(図1 上段)。一方,同一raw dataを使用しSnapShot Freeze処理を行うことにより,すべての位相でモーションアーチファクトが抑制されていることが確認できる(図1 下段)。従来,高心拍や冠動脈の動きの影響が大きいデータには,再構成方式の変更(セグメント・セクター再構成)や最適心位相の検索,またはECG Editorの活用などでモーションアーチファクトに対応していたが,動態解析アルゴリズムのSnapShot Freezeの登場により,自動で冠動脈静止画像が得られ,オペレーターのワークフローも改善することが期待できる。

図1 SnapShotFreeze臨床画像

図1 SnapShotFreeze臨床画像

 

■Fast kV Switching法を用いたデュアルエネルギー撮影によるアプローチ

高速スイッチング法を用いた心電同期デュアルエネルギー撮影“GSI Cardiac”は,従来のデュアルエネルギー撮影とは異なり80kVpと140kVpを高速にスイッチングし,2種のX線エネルギーをサンプリングすることで,時間位相差のない双方のraw dataが収集可能となる。双方の時間位相差のないraw dataの計算から,40〜140keVのモノクロマティック画像(keV画像)を1keVごとに構築することが可能である。それにより,検査目的に合わせたエネルギーの画像化が可能となる。
Cardiac Imagingにおいて,低エネルギーkeV画像はコントラスト差が大きくプラーク診断に有用であり,高エネルギーkeV画像はビームハードニングの影響を抑えたステント内腔の評価に有用である(図2)。同時に,両エネルギーの時間位相差のないraw dataが得られることで,“水”と“ヨード”に着目した計算から,物質の密度値や密度画像を構築することが可能である。心臓領域においては高度石灰化の近傍評価などに有用で,冠動脈石灰化の主成分とされるハイドロキシアパタイト(HAP)などの密度値をNullにしたヨード密度画像にて,石灰化からの影響を受けず内腔の診断が可能となる(図3)。この密度画像は,近年注目されるプラークの性状診断や心筋Perfusionにおいても有用性が期待されている。シングルエネルギーやCT値ベースのデュアルエネルギーではビームハードニングの影響を強く受ける下行大動脈と左室の間の領域においても,GSI Cardiacのヨード密度画像を用いることでビームハードニングによるCT値シフトの影響を受けず,精度の高い虚血診断能が期待される(図4)。

図2 モノクロマティック画像

図2 モノクロマティック画像

 

図3 モノクロマティック画像と密度画像

図3 モノクロマティック画像と密度画像

図4 ビームハードニングによる影響とGSIの効果

図4 ビームハードニングによる影響と
GSIの効果

 

■高分解能型ワイドカバレッジCT「Revolution CT」でのアプローチ

Revolution CTは,“妥協しない─Uncompromised”をテーマに開発され,過去に実現されることのなかった3大要素“高分解能”“高速化”“ワイドカバレッジ”を1台のCTシステムで実現した。回転速度の高速化を実現するためにさまざまなシミュレーションを行い,ガントリなどのメカニカル機構の設計を一新した。また,高分解能化とワイドカバレッジ化の両立を実現するために,GE社製「Discovery CT750 HD」(HDCT)の開発時に実現した優れた応答特性を持つGemstoneシンチレータと,秒間8914ビューをサンプリングするHD-DAS(Data Acquisition System)などを採用することで,0.23mmの空間分解能を実現した(図5)。

図5 2.5倍のサンプリングによる高分解能化

図5 2.5倍のサンプリングによる高分解能化

 

しかし,高分解能を維持した上でワイドカバレッジ化を実現するためには,原理上発生するX線管ターゲットでのヒール効果や散乱線の対策は必要不可欠となる。そこで,Revolution CTでは,ハードウエアとソフトウエアの両面で従来の課題を解決している。ハードウエアについては,X線受光からデジタル信号化までを1ユニットで行えるコンパクト化された“Integrated Module”が採用され,従来に比べ25%の電気ノイズの低減を実現している。1つのIntegrated Moduleは,体軸方向に20mmをカバーする構造で体軸方向に8個並べ,すべてがX線焦点の方角に偏向された配置で160mmワイドカバレッジを実現する。すべてをX線焦点方向に偏向させることで,X線の斜入を避けた理想的なX線の受光が可能である(図6)。また,160mmカバレッジになることで大きく増加する散乱線の量は,40mmカバレッジと比較して何倍もの散乱線が被写体から発生し,X線検出器まで到達する。それにより,散乱線の信号が画像再構成上,ノイズやアーチファクトとして画像に影響してしまう。Revolution CTに搭載されている“Gemstone Clarity Detector”は,従来のX方向のコリメーターに加え体軸方向のコリメーターを有する“3Dコリメーター”を搭載し,約50%の散乱線除去を行う。この3Dコリメーターにより,画像再構成上必要とされるPrimary X線の情報をコリメーターで減少することなくX線検出素子に到達させ,よりピュアなX線での高画質を構築することが可能になる(図7)。

図6 Integrated Module(a)とGemstone Clarity Detector(b)

図6 Integrated Module(a)とGemstone Clarity Detector(b)

 

図7 従来(a)と3Dコリメーター(b)の比較

図7 従来(a)と3Dコリメーター(b)の比較

 

ソフトウエアでの散乱線やヒール効果の対策として,X線物理挙動を考慮した新しいコーンビーム画像再構成法“VHD(Volume High Definition Reconstruction)”と,ビームハードニングの影響を大幅に抑える画像再構成アルゴリズム“MMAR(Multi Material Artifact Reduction)”を搭載している。これらの新アルゴリズムにより,160mmビーム内におけるビームハードニングの影響を抑え,同時に高いCT値均一性の良好な画質が160mmコンベンショナル撮影で得られる。これにより,心筋Perfusionにおいて通常のシングルエネルギーCTや従来のデュアルエネルギー撮影ではビームハードニングの影響で低吸収を呈する下行大動脈と左室間の領域も,高い虚血診断能が期待される(図8)。心電同期撮影法は1心拍内に3回照射まで行え,160mmの1回転撮影や,不整脈や高心拍症例における1心拍2,3回転撮影,経時的に撮影を行う心筋Perfusion撮影,Cardiac 4D Imagingなどが可能である(図9)。

図8 従来(a)とMMAR(b)の比較

図8 従来(a)とMMAR(b)の比較

 

図9 1心拍でのマルチフェーズ撮影

図9 1心拍でのマルチフェーズ撮影

 

本稿では,心臓領域における代表的な3つのアプローチを紹介させていただいた。すべては患者への「診断能の高い画像情報での貢献」「治療判断となる新たな画像情報での貢献」「被ばく低減を代表とする安全性での貢献」を実現するものであり,今後も患者のメリットに直結する新たなCTイメージングの開発を進めていく所存である。

JB28152JA
*マルチスライスCTスキャナLightSpeed 医療機器認証番号:21100BZY00104000
類型 Revolution
*マルチスライスCTスキャナ Revolution 医療機器認証番号:226ACBXZ00011000

 

●問い合わせ先
GEヘルスケア・ジャパン株式会社
CT営業推進部
〒191-8503
東京都日野市旭が丘4-7-127
TEL:0120-202-021
www.gehealthcare.co.jp

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