技術解説(GEヘルスケア・ジャパン)

2026年4月号

腹部領域におけるCTの最新技術

Dual energy技術を応用したディープラーニング再構成─True Enhance DL─

箱石  卓[GEヘルスケア・ジャパン(株)イメージング本部CT部]

昨今,人工知能(artificial intelligence:AI)は医療分野で急速に普及し,診断支援,業務効率化など多方面で活用されている。CTに関しても,すでに各社さまざまなAI技術が活用されており,その中でも深層学習(ディープラーニング)を活用した技術が登場し,これまで以上の画質の向上やワークフローの向上に大きく寄与している。
GE HealthCareでは,ディープラーニングを活用したCTの技術として,画質向上を目的とした「TrueFidelity DL」,ワークフロー向上を目的とした自動ポジショニング用カメラなどの技術を開発してきたが,今回,新たにコントラスト向上を目的とした「True Enhance DL」というGE HealthCare独自のAI画像再構成アルゴリズムを開発し,リリースしたため,本技術について解説する。

■True Enhance DLの概要と仕組み

True Enhance DLは,GE HealthCareの「Gemstone Spectral Imaging(GSI)」によって取得された高品質な臨床dual energyデータを用いて,CT技術開発チームとAI技術開発チームにより開発された,GE HealthCare独自のAI画像再構成アルゴリズムである。GE HealthCareの15年を超えるdual energy CT製品開発の歴史を通じて培ってきたGSI技術により取得されたGSI臨床画像データと,AI技術を含め積み重ねてきた画像再構成技術により生み出されたものである。日本を含めた世界中の専門医からのフィードバックを基に,画質のバランスが最も良い仮想単色X線画像である70keVと50keVの画像データをground truth(教師画像)として採用し,学習させることで,ニューラルネットワークを構築した。この技術により,GSI技術を搭載していないCT装置においても,dual energy撮影の大きなメリットであるコントラスト向上効果が実現できると期待している。
True Enhance DLの学習と推論の仕組みを図1に示す。教師画像として採用した仮想単色X線画像の70keV画像は,single energyの120kVp画像と同等の画像コントラストとノイズテクスチャを持ち1)〜3),一方,50keV画像は,ヨード造影剤のコントラスト向上を目的として広く使用されている4),5)。True Enhance DLの学習モデルは,これら2つの画像を教師画像として,70keVから50keV相当の画像を生成するモデルとなっている。このようなモデルを構築することにより,GSIが使用できないCT装置においても,70keV画像と同等の画像コントラストの120kVp画像から,仮想的に50keV相当のコントラストの向上した画像を取得することが可能となる。

図1 True Enhance DLの学習と推論の仕組み

図1 True Enhance DLの学習と推論の仕組み

 

■最適なディープラーニングモデルの構築

適切なコントラスト向上のための重要な設計要素は,人体の全身循環系における造影効果向上のタイミングを考慮することである。一般的なCT造影検査では,造影剤が静脈注射されると,造影剤は循環生理学に従って体内を循環し,造影剤注入開始からのスキャン取得タイミングに応じて,造影剤が増強される解剖学的領域は動的に変化する。つまり,各臓器のCT値もそれに応じて変化するため,臨床現場では,血管を通る造影剤の循環とスキャンタイミングは,目的に応じてCT画像で患者の状態をとらえるために慎重に計画されている。これらのスキャンタイミングは,循環系における4つの主要な位相に分類することができ,それぞれ大血管を目的とした位相(CTA),動脈優位相,門脈/静脈優位相,遅延相となる。True Enhance DLは,これら4つの位相ごとにディープラーニングモデルを有しており,ユーザーがそれぞれの画像再構成シリーズにて選択することが可能となっている。4つのディープラーニングモデルは,同じニューラルネットワークを共有しているが,最適なアウトプット画像を提供するため,各ディープラーニングモデルで異なったトレーニングデータを使用している。したがって,各ディープラーニングモデルは,CTA,動脈優位相,門脈/静脈優位相,遅延相,それぞれに最適なコントラストの向上をもたらすようにトレーニングされている。True Enhance DLの画像再構成シリーズにおける適切な造影位相の選択画面を図2に示す。

図2 True Enhance DLの画像再構成シリーズにおける造影位相の選択画面

図2 True Enhance DLの画像再構成シリーズにおける造影位相の選択画面

 

■臨床症例

1.症例(1):肝細胞がんdynamicスキャン
本症例は,同一検査における120kVp撮影とTrue Enhance DLを用いたdynamicスキャンを施行した肝細胞がんの症例である。True Enhance DLによる各造影相に最適なディープラーニングモデルを適用することで,ヨウ素が腫瘍に流入する動脈優位相のコントラストが向上し,腫瘍の大きさや広がりの視認性も向上している。門脈/静脈優位相のTrue Enhance DL画像も120kVp画像と同様に,動脈と静脈だけでなく肝実質も強調している。遅延相ではTrue Enhance DL画像において,肝細胞がんのwashoutの視認性が向上している(図3)

図3 症例(1):肝細胞がんdynamicスキャン

図3 症例(1):肝細胞がんdynamicスキャン

 

2.症例(2):高体重による造影剤量不足症例
この症例は,BMIが41.4の大柄な患者において造影剤量が不足した症例に対して,True Enhance DLが有効だった症例である。同一WW/WLにおいても,大きくコントラストが向上していることを確認することができる。さらに,本症例では,True Enhance DL画像に,前述したTrueFidelity DLを併用しているため,コントラストの向上だけではなく,ノイズも除去することができている(図4)。大柄な患者の場合,ノイズも除去できることで,より診断精度の向上に寄与できると考えている。

図4 症例(2):高体重による造影剤量不足症例

図4 症例(2):高体重による造影剤量不足症例

 

True Enhance DLは,GE HealthCareのCT技術開発チームとAI技術開発チームにより開発された,新しいAI画像再構成アルゴリズムである。True Enhance DLにより,single energyの120kVp画像を用いて,dual energyの仮想単色X線画像である50keV画像で得られるコントラスト向上効果が期待できる。本稿で紹介したさまざまな臨床的有用性が,今後多くの臨床現場で活用されることを期待し,GE HealthCareはさらなる多様な市場ニーズにおけるさまざまな臨床目的に対応するため,ハードウエアベースの高性能イメージングとAI/DL(ディープラーニング)ベースの革新的なイメージングソリューションを通じて,開発を継続していく。

Revolution Ascend (レボリューションアセンド) 
医療機器認証番号:302ACBZX00041000

●参考文献
1)Krishna, S., Sadoughi, N., McInnes, M.D.F., et al.:Attenuation and degree of enhancement with conventional 120-kVp polychromatic CT and 70-keV monochromatic rapid kilovoltage-switching dual-energy CT in cystic and solid renal masses. Am. J. Roentgenol., 211(4): 789-796, 2018.
2)Matsumoto, K., Jinzaki, M., Tanami, Y., et al.:Virtual monochromatic spectral imaging with fast kilovoltage switching : Improved image quality as compared with that obtained with conventional 120-kVp CT. Radiology, 259(1): 257-262, 2011.
3)Cui, Y., Gao, S.Y., Wang, Z.L., et al.:Which should be the routine cross-sectional reconstruction mode in spectral CT imaging : Monochromatic or polychromatic? Br. J. Radiol., 85(1018): e887-e890, 2012.
4)Shuman, W.P., Green, D.E., Busey, J.M., et al.:Dual-energy liver CT : Effect of monochromatic imaging on lesion detection, conspicuity, and contrast-to-noise ratio of hypervascular lesions on late arterial phase. Am. J. Roentgenol., 203(3): 601-606, 2014.
5)Mileto, A., Ananthakrishnan, L., Morgan, D.E., et al.:Clinical implementation of dual-energy CT for gastrointestinal imaging. Am. J. Roentgenol., 217(3): 651-663, 2021.

 

●問い合わせ先
GEヘルスケア・ジャパン株式会社
〒191-8503
東京都日野市旭が丘4-7-127
TEL:0120-202-021(コールセンター)
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